歯列矯正は医療費控除の対象?条件と申請の手順・戻る金額の目安

歯列矯正にかかった費用は医療費控除の対象になるのか、気になっていませんか。

歯列矯正の費用は、受ける人の年齢や矯正の目的などからみて必要と認められる場合には、医療費控除の対象になります。

ただし控除額がそのまま手元に戻ってくるわけではなく、実際の還付額は控除額に所得税率をかけた金額になるという点は押さえておく必要があります。

この記事では対象になる条件と戻る金額の考え方、支払いが年をまたぐ場合の扱い、申請の手順までを整理しましたので、確定申告の準備にお役立てください。

歯列矯正は医療費控除の対象になるのか

歯列矯正は自由診療にあたるため費用が高額になりやすく、少しでも負担を減らしたいと考えるのは自然なことです。

一方で見た目を整える治療という印象もあるため、税の制度が使えるのか判断がつきにくいという声もよく聞かれます。

結論としては、すべての矯正が対象になるわけではなく、一定の条件を満たした場合に限られます。

その条件は国税庁が公開しており、判断の軸は明確に示されています。

まずは何をもって対象と認められるのかを確認していきましょう。

判断の基準は年齢と目的

対象になるかどうかは、治療を受ける人の年齢と、その矯正の目的によって判断されます。

国税庁は、発育段階にある子どもの成長を阻害しないようにするために行う不正咬合の歯列矯正のように、歯列矯正を受ける人の年齢や矯正の目的などからみて歯列矯正が必要と認められる場合の費用は医療費控除の対象になるとしているためです[1]。

つまり、その矯正が医学的に必要なものと認められるかどうかが基準になります。

一方で、同じ歯列矯正であっても容ぼうを美化するための費用は医療費控除の対象にならないと明記されています[1]。

見た目を整えることだけを目的とした治療は、この制度の枠から外れるという整理になります。

自分の治療がどちらにあたるかは、治療の目的をどう説明できるかにかかってきます。

子どもの矯正が認められやすい理由

子どもの矯正治療は、対象として認められやすい条件を備えています。

国税庁が対象になる例として挙げているのが、まさに発育段階にある子どもの成長を阻害しないようにするために行う不正咬合の歯列矯正だからです[1]。

成長の途中にある子どもの歯並びや噛み合わせは、そのままにすると噛む、話すといった機能の発達に影響が及ぶ可能性があります。

そのため見た目のためではなく、成長を妨げないための治療という位置づけになりやすい構造があります。

年齢という条件が判断の材料として明示されている以上、大人の矯正より有利な立場にあるといえます。

お子さんの矯正を検討している方は、領収書を最初から整理しておく価値があります。

大人の矯正はどう判断されるか

大人の矯正は、子どもに比べて判断が分かれやすくなります。

年齢という条件で必要性を説明しにくく、目的の面から判断されることになるためです。

噛み合わせが悪くて食事に支障がある、発音に影響が出ているといった機能面の問題があれば、必要と認められる方向に働きます。

反対に、前歯の見た目だけを整えたいという目的であれば、容ぼうを美化するための費用と判断される可能性があります[1]。

治療の目的が機能の改善にあることを診断書などで示せるかどうかが分かれ目になりますので、治療を受けている医院に相談してみてください。

最終的な判断は税務署が行いますので、対象になると断定はできませんが、根拠となる資料を残しておけば選択肢は手元に残ります。

医療費控除はどういう制度か

対象になる可能性が見えてきたところで、制度そのものの仕組みを確認します。

金額の話に入る前に、この制度が何をするものなのかを理解しておく必要があるためです。

医療費控除は支払った医療費を返してくれる制度ではなく、税金の計算のもとになる所得を減らす仕組みです。

この違いを知らないまま計算すると、期待していた金額との差に戸惑うことになります。

制度の骨格を3つの角度から確認していきましょう。

支払った額がそのまま戻る制度ではない

まず押さえておきたいのは、支払った医療費が戻ってくる制度ではないという点です。

医療費控除は所得控除のひとつであり、課税の対象となる所得を減らすことで税額を下げる仕組みだからです。

100万円の矯正費用を支払ったとしても、100万円が振り込まれるわけではありません。

減った所得に対して税率をかけた分だけ税額が下がり、すでに納めた税金との差額が還付されるという流れになります。

そのため還付される金額は、支払った医療費の額だけでなく、その人の所得によっても変わってきます。

この仕組みを理解しておくと、次に見る計算式の意味も分かりやすくなります。

控除額の計算式

控除される金額には、決められた計算式があります。

支払った医療費のすべてが控除されるのではなく、一定の金額を差し引いた残りが対象になるためです。

国税庁が示す計算式では、実際に支払った医療費の合計額から、保険金などで補てんされる金額を差し引き、さらに10万円を差し引いた金額が控除額になります[2]。

この控除額には上限があり、最高で200万円までとされています[2]。

生命保険契約などで支給される入院費給付金や、健康保険から支給される高額療養費などが、補てんされる金額にあたります[2]。

矯正治療の場合は保険金が支払われる場面は少ないため、支払った医療費から10万円を引いた金額が控除額になると考えておくと計算しやすくなります。

10万円を超えなくても対象になる場合

医療費が10万円を超えないと対象外だと考えている方は少なくありません。

多くの説明で10万円という数字が使われているため、それが唯一の基準だと受け取られやすいためです。

しかし国税庁は、その年の総所得金額等が200万円未満の人については、10万円ではなく総所得金額等の5パーセントの金額を差し引くとしています[2]。

たとえば総所得金額等が150万円であれば、差し引かれるのは7万5,000円となり、10万円より低い金額が基準になります。

パートやアルバイトで働いている方、収入が少ない年に治療を受けた方は、この例外に該当する可能性があります。

10万円という数字だけで諦めず、自分の所得に照らして確認してみてください。

いくら戻るのかの考え方

医療費控除で最も関心が集まるのが、実際にいくら戻ってくるのかという点です。

高額な矯正費用を支払っているだけに、少しでも取り戻せるならという期待が生まれるのは自然なことです。

ただしここで多くの方がつまずくのが、控除額と還付額を混同してしまうという問題です。

控除額が50万円だったから50万円戻ってくると考えると、実際の金額との差に驚くことになります。

計算の考え方を3つの段階に分けて確認していきましょう。

還付額は所得税率で決まる

実際に戻ってくる金額は、控除額に所得税率をかけた金額になります。

医療費控除は課税の対象となる所得を減らす仕組みであり、減った所得に対応する税額の分だけ負担が下がるためです。

国税庁が示す計算式では、実際に支払った医療費の合計額から保険金などで補てんされる金額と10万円を差し引いた金額が控除額となり、上限は200万円とされています[2]。

この控除額に、その人の所得に応じた所得税率をかけた金額が、還付の目安になります。

所得税率は所得が高いほど上がる仕組みですので、同じ医療費を支払っても人によって戻る金額は変わります。

支払った額がそのまま返ってくるわけではないと理解しておけば、計算した結果に落胆せずに済みます。

住民税への影響

医療費控除の効果は、所得税だけにとどまりません。

所得を減らす仕組みである以上、その所得をもとに計算される住民税にも影響が及ぶためです。

ただし住民税については、所得税のようにお金が振り込まれる形にはなりません。

翌年度に納める住民税の額が下がるという形で反映されるため、実感としては分かりにくい部分があります。

確定申告で医療費控除を申告すれば、住民税のために別途手続きをする必要はありません。

還付金として目に見える金額だけでなく、翌年の負担も軽くなると知っておくと、申告の価値がより正確に見えてきます。

計算の具体例

実際の数字で追ってみると、金額の感覚がつかみやすくなります。

計算式は決まっているため、自分の状況に当てはめれば目安は出せるためです。

年間の矯正費用として60万円を支払い、保険金などで補てんされる金額がなかった場合、控除額は60万円から10万円を差し引いた50万円になります[2]。

この50万円に所得税率をかけた金額が、還付の目安になります。

所得税率が10パーセントであれば5万円、20パーセントであれば10万円という計算です。

同じ50万円の控除額でも所得によって戻る金額が倍変わりますので、自分の税率を確認したうえで見積もってみてください。

対象になる費用とならない費用

控除の計算に含められるのは、支払ったすべての費用ではありません。

制度上、医療費として認められる範囲が決められているためです。

矯正治療では治療費以外にも支払いが発生する場面が多く、どこまで含められるかで金額が変わってきます。

含められるものを漏らせば控除額が減り、含められないものを入れれば申告の内容が誤ったものになります。

3つの区分に分けて確認していきましょう。

治療費・検査料・調整料

矯正治療そのものにかかった費用は、控除の対象に含められます。

医師または歯科医師による診療または治療の対価が、医療費控除の対象となる医療費とされているためです[3]。

装置代はもちろん、精密検査や診断にかかった費用、通院ごとの調整料も治療の一環として支払うものです。

治療後の保定装置にかかる費用や、保定期間中の観察料も同様に含められます。

抜歯が必要になった場合の処置料も、治療のために支払った費用にあたります。

年間に支払った分をまとめて集計する必要がありますので、領収書は医院ごとに整理しておくと作業が楽になります。

通院にかかる交通費

治療費だけでなく、通院のための交通費も対象に含められます。

医師等による診療等を受けるために直接必要な費用として、通院費が医療費控除の対象に挙げられているためです[3]。

対象となるのは電車賃やバス賃といった公共交通機関の運賃です。

一方でタクシー代は、公共交通機関が利用できない場合を除いて控除の対象には含まれません[3]。

自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車場の料金も、控除の対象には含まれないとされています[3]。

矯正は数年にわたって通院が続くため、電車やバスで通っている方は積み重ねると無視できない金額になります。

対象にならない支出

一方で、対象に含められない支出もあります。

医療費控除は診療または治療の対価に対して認められる制度であり、それ以外の支出は範囲外になるためです。

矯正に関連する支出のうち、歯を白くするためのホワイトニングなど、治療にあたらないものは対象になりません。

先に確認したとおり、自家用車での通院にかかるガソリン代や駐車場代も含められません[3]。

そもそも矯正治療自体が容ぼうを美化するための費用と判断された場合は、治療費全体が対象外になります。

判断に迷う支出については領収書を残したうえで、税務署や医院に確認しておくと安心です。

支払った年ごとに申告する

矯正治療の医療費控除で最も見落とされやすいのが、いつ支払ったかという時期の問題です。

医療費控除は1年ごとに区切って計算する制度であり、治療の期間ではなく支払いの時期が基準になるためです。

矯正は総額が大きく治療も長期にわたるため、支払いが複数年にまたがることが珍しくありません。

この構造を知らないまま申告すると、控除を受けられたはずの分を逃すことにもなりかねません。

3つの場面に分けて確認していきましょう。

その年に支払った分が対象になる

医療費控除の対象になるのは、その年の1月1日から12月31日までに実際に支払った金額です。

制度が暦年単位で区切られており、支払いのあった年の医療費として集計する仕組みだからです。

治療が2年にわたって続いていても、申告するのはその年に支払った分だけになります。

反対に、治療が始まる前の年に検査料を支払っていれば、その分はその年の医療費として扱われます。

治療の開始日や終了日ではなく、お金が動いた日が基準になると覚えておくと整理しやすくなります。

年をまたぐ場合は、それぞれの年で控除額の計算を行うことになります。

分割払いとデンタルローンの扱い

支払い方法によって、申告する年の考え方が変わります。

分割払いでは実際に支払った年ごとに、ローンでは信販会社が立て替えた年に医療費が発生したものとして扱われる考え方があるためです。

医院で分割払いをしている場合、その年に支払った金額がその年の医療費控除の対象になります。

一方でデンタルローンを利用した場合は、信販会社が治療費を医院に立て替えた時点で支払いがあったものとして扱われるという整理があり、その年にまとめて申告する形になります。

ローンの返済金のうち利息にあたる部分は、診療の対価ではないため対象に含められません。

支払い方法によって申告の年が変わりますので、契約の内容を確認したうえで税務署に相談してみてください。

治療が年をまたぐ場合の考え方

年をまたいで支払う場合、控除の総額が変わってくることがあります。

控除額を計算する際に差し引く金額が、年ごとに発生するためです。

国税庁が示す計算式では、支払った医療費の合計額から10万円を差し引いた金額が控除額になります[2]。

総所得金額等が200万円未満の人については、10万円ではなく総所得金額等の5パーセントの金額が差し引かれます[2]。

100万円を1年で支払えば差し引かれるのは10万円ですが、50万円ずつ2年に分けて支払えば、それぞれの年で10万円ずつ差し引かれる形になります。

どちらが有利かは所得の状況によっても変わりますので、支払い方を選べる場合は事前に確認しておくと判断材料になります。

家族の分をまとめて申告できる

医療費控除は、申告する人が支払った医療費を集計する制度です。

その範囲は本人の医療費に限られず、家族の分まで含められる仕組みになっています。

矯正治療は子どもが受けることも多く、世帯として考えると合算の効果は小さくありません。

誰が申告するかによって戻る金額が変わることもありますので、世帯で相談しておく価値があります。

3つの観点から確認していきましょう。

生計を一にする家族の医療費を合算する

医療費控除では、家族の分をまとめて申告できます。

対象となるのは、自分自身または自分と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費とされているためです[3]。

同居している家族はもちろん、進学などで別居していても仕送りをしているといった場合には生計を一にすると扱われることがあります。

矯正費用に加えて、家族が支払った歯科や内科の治療費、薬の購入費も合算できます。

矯正費用だけでは10万円に届かない年でも、家族分を合わせれば超える場合があります。

年間の医療費を世帯単位で集計してみると、対象になる年が見つかることもあります。

誰が申告すると有利になるか

家族のうち誰が申告するかによって、戻る金額は変わってきます。

還付される金額は控除額に所得税率をかけて計算されるため、税率の高い人が申告するほど効果が大きくなるからです。

共働きの世帯であれば、所得の高いほうがまとめて申告するという選択が考えられます。

ただし控除の対象になるのは、その人が実際に支払った医療費に限られます。

家族の医療費を負担しているという実態があることが前提になりますので、支払いの記録は整理しておきましょう。

どちらが申告するかで迷う場合は、両方の税率を確認したうえで試算してみてください。

子どもの矯正費用の扱い

お子さんの矯正費用は、保護者が申告することになります。

生計を一にする親族のために支払った医療費として、保護者の医療費控除に含められるためです[3]。

子どもの矯正は、発育段階にある子どもの成長を阻害しないようにするために行うものとして対象になりやすい条件を備えています。

通院に付き添った保護者の交通費についても、患者本人の年齢や状態から一人での通院が難しいと判断される場合には対象に含められることがあります。

ただし対象となるのは公共交通機関の運賃に限られ、自家用車のガソリン代や駐車場代は含まれません[3]。

治療が始まった時点から領収書と通院の記録を残しておけば、申告の準備がそのまま整っていきます。

申請の手順

対象になることが分かったら、実際の手続きに進みます。

医療費控除は年末調整では処理されないため、会社員の方であっても自分で確定申告をする必要があるためです。

手続きと聞くと身構えてしまいますが、やることは1年分の医療費を集計して書類を作り、提出するという3つの工程に整理できます。

近年はオンラインで完結できる仕組みも整っており、税務署に足を運ばずに済ませることも可能です。

順を追って確認していきましょう。

1年分の医療費を集計する

最初の作業は、対象になる医療費を集計することです。

その年の1月1日から12月31日までに支払った金額をまとめて計算する仕組みだからです。

矯正治療の領収書に加えて、家族が支払った歯科や内科の治療費、薬の購入費もあわせて集めます。

通院にかかった公共交通機関の運賃も対象になりますので、日付と区間、金額を記録しておいたものを整理します。

集計は領収書1枚ごとではなく、医療を受けた人ごと、病院や薬局ごとにまとめて記入する形で問題ありません[4]。

年の途中から準備しておけば、確定申告の時期に慌てずに済みます。

医療費控除の明細書を作成する

集計ができたら、医療費控除の明細書という書類を作成します。

医療費控除の適用を受ける場合には、この明細書の添付が必要とされているためです[4]。

明細書には、医療を受けた人の氏名、病院や薬局などの支払先の名称、支払った医療費の額、保険金などで補てんされる金額を記入していきます。

健康保険組合などから届く医療費通知を添付すれば、その分の記入を省略できる仕組みもあります[4]。

保険金などで補てんされる金額が申告書の提出時までに確定していない場合は、見込額を記載し、後日確定した際に内容を訂正します[4]。

用紙は国税庁のホームページから入手でき、オンラインの作成画面を使えば計算も自動で行われます。

確定申告書を提出する

明細書ができたら、確定申告書とあわせて提出します。

医療費控除は年末調整の対象外であり、確定申告によって初めて適用される制度だからです。

提出の方法は、税務署の窓口に持参する、郵送する、オンラインで送信するという3つから選べます。

国税庁のウェブサイトにある作成画面を使えば、案内に従って入力するだけで申告書を作成できます。

会社員の方は源泉徴収票の内容を入力する必要がありますので、手元に用意しておきましょう。

還付金を受け取る口座の情報も入力しますので、通帳やキャッシュカードも準備しておくと作業が止まりません。

必要な書類と保管

手続きそのものは難しくありませんが、書類の扱いには決まりがあります。

提出するものと手元で保管するものが分かれており、この区別を知らないと必要な書類を捨ててしまうことにもなりかねません。

矯正治療は数年にわたるため、書類の管理も長期間続きます。

最初にルールを把握しておけば、毎年の作業が習慣になります。

3つの観点から確認していきましょう。

準備しておくもの

申告に必要なものは、それほど多くありません。

領収書そのものを提出する必要がなくなり、明細書にまとめる方式に変わっているためです。

用意するのは、医療費控除の明細書、源泉徴収票などの収入が分かる書類、還付金を受け取る口座の情報、本人確認書類です。

医療費通知が手元にある場合は、それを添付することで明細書の記入を一部省略できます[4]。

矯正治療の目的を示すために診断書を用意するかどうかは、医院と相談して判断します。

オンラインで申告する場合は、マイナンバーカードとそれを読み取れる環境が必要になります。

領収書の保存

提出しない領収書も、捨てずに保管しておく必要があります。

明細書の記入内容を確認するため、税務署から提示や提出を求められる場合があるためです[4]。

保管の期間は、確定申告期限などから5年間とされています[4]。

矯正治療は複数年にわたるため、年ごとに分けて封筒などにまとめておくと管理しやすくなります。

医療費通知に係る領収書については、提示や提出を求められる対象から除かれています[4]。

税務署から問い合わせが来ることは多くありませんが、求められたときに出せる状態にしておくことが条件になります。

診断書は必要か

矯正治療の申告で気になるのが、診断書を用意すべきかという点です。

矯正が容ぼうを美化するためのものではないと示す材料になるのではないかと考えられるためです。

確定申告の手続きとしては、医療費控除の明細書の添付が必要とされており[4]、診断書の提出は求められていません。

ただし、税務署から治療の内容について確認を求められた場合には、説明の材料になる可能性があります。

噛み合わせの改善を目的とした治療であることを示せる資料があれば、判断の助けになると考えられます。

必要かどうかは状況によって変わりますので、心配な場合は治療を受けている医院と税務署の双方に確認してみてください。

申告し忘れた場合と注意点

制度を知らないまま申告の時期を過ぎてしまったという方も少なくありません。

矯正治療は数年にわたるため、途中で制度の存在を知ったという状況も起こりえます。

過ぎてしまった年の分は諦めるしかないと考えている方もいるかもしれませんが、さかのぼって申告できる仕組みが用意されています。

あわせて、計算のときに見落としやすい点も確認しておきましょう。

3つの観点から整理していきます。

さかのぼって申告できる期間

申告し忘れた年の医療費についても、あとから手続きができます。

還付を受けるための申告は、確定申告の期間に限らず受け付けられる仕組みがあるためです。

医療費控除の適用にあたっては、確定申告期限などから5年間、税務署から領収書の提示や提出を求める場合があるとされており[4]、この期間が書類の保管期間の目安にもなっています。

数年前に矯正治療を受けて支払いを済ませている方も、当時の領収書が残っていれば申告できる可能性があります。

年ごとに計算し、それぞれの年について手続きを行う形になります。

過去の分の申告を検討している場合は、対象になる期間を税務署に確認したうえで進めてみてください。

保険金などで補てんされる金額

計算のときに見落としやすいのが、受け取った給付金の扱いです。

支払った医療費の額から、保険金などで補てんされる金額を差し引いて計算する決まりになっているためです[2]。

生命保険契約などで支給される入院費給付金や、健康保険などで支給される高額療養費、家族療養費、出産育児一時金などがこれにあたります[2]。

矯正治療そのものに給付金が支払われる場面は多くありませんが、同じ年に別の治療で受け取っている場合は注意が必要です。

補てんされる金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引くとされており、引ききれない金額が生じても他の医療費からは差し引きません[2]。

申告書の提出時点で金額が確定していない場合は、見込額を記載して後日訂正する形になります[4]。

判断に迷ったときの相談先

対象になるかどうか自分では判断がつかない場面もあります。

矯正の目的をどう説明できるかによって扱いが変わり、個別の事情も関わってくるためです。

制度の適用可否を最終的に判断するのは税務署ですので、迷う場合は事前に相談しておくのが確実です。

国税に関する相談は国税局の電話相談センターなどで受け付けられており、税についての相談窓口から案内を確認できます[2]。

治療の内容や目的に関わる部分については、通院している医院に確認しておくと説明の材料がそろいます。

判断がつかないまま申告を見送るより、まず相談してみるほうが選択肢は広がります。

歯列矯正の医療費控除に関するよくある質問

Q:大人の歯列矯正でも医療費控除の対象になりますか?

A:年齢や矯正の目的からみて必要と認められる場合は対象になります[1]。

一方で容ぼうを美化するための費用は対象にならないと明記されているため[1]、目的をどう示せるかが分かれ目になります。

噛み合わせの改善を目的とした治療であることを示せる資料があるか、医院に相談してみてください。

Q:いくら戻ってきますか?

A:支払った額がそのまま戻る制度ではありません。

支払った医療費から保険金などで補てんされる金額と10万円を差し引いた金額が控除額となり、上限は200万円です[2]。

実際の還付額は、この控除額に所得税率をかけた金額が目安になります。

Q:分割払いでも対象になりますか?

A:その年に実際に支払った金額が、その年の医療費控除の対象になります。

治療の期間ではなく支払いのあった時期が基準になるためです。

デンタルローンを利用した場合は扱いが異なりますので、契約内容を確認したうえで税務署に相談してください。

Q:診断書は必要ですか?

A:申告の手続きとしては、医療費控除の明細書の添付が必要とされています[4]。

診断書の提出は求められていませんが、治療内容について確認を求められた場合の材料にはなります。

必要かどうかは状況によりますので、医院と税務署に確認してみてください。

まとめ

歯列矯正の費用は、年齢や矯正の目的からみて必要と認められる場合に医療費控除の対象になります[1]。

一方で容ぼうを美化するための費用は対象にならないため、大人の矯正では目的の示し方が判断を左右します[1]。

控除額は支払った医療費から補てんされる金額と10万円を差し引いた金額で、上限は200万円です[2]。

総所得金額等が200万円未満の人は10万円ではなく総所得金額等の5パーセントが差し引かれますので、10万円に届かない年でも対象になる場合があります[2]。

対象には治療費のほか公共交通機関を使った通院費も含まれますが、自家用車のガソリン代や駐車場代は含まれません[3]。

申告には医療費控除の明細書が必要で、領収書は提出せず5年間手元で保管します[4]。

支払った年ごとに申告する制度ですので、治療が始まった時点から領収書と通院の記録を整理しておきましょう。

参考文献

[1] 国税庁「No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」(最終閲覧日:2026年9月2日)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1128.htm

[2] 国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」(最終閲覧日:2026年9月2日)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm

[3] 国税庁「No.1122 医療費控除の対象となる医療費」(最終閲覧日:2026年9月2日)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1122.htm

[4] 国税庁「医療費控除の明細書」(確定申告書の手引き)(最終閲覧日:2026年9月2日)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/06/6_01.htm