歯列矯正で人中は伸びる?見え方が変わる仕組みと対策

歯列矯正をすると人中が伸びると聞いて、不安になっていませんか?
矯正によって人中そのものの長さが変わるわけではなく、上唇の位置や形が変わることで見え方が変化するという性質のものです。
前歯が突出している状態では上唇が押し上げられて短く見えていることがあり、前歯が後ろへ下がるとその状態が解消されて長く見えることがあります。
この記事では人中の見え方が変わる仕組み、長く見える場合と短く見える場合の違い、事前に確認したいことまで整理しますので、口元の変化が気になっている方はぜひ参考にしてください。
歯列矯正で人中は伸びるのか
矯正を検討して調べているうちに、人中が伸びるという話を目にして不安になった方も多いのではないでしょうか。
歯並びを整えたいだけなのに、思わぬ副作用があるのではと感じてしまう気持ちは理解できます。
先にお伝えすると、矯正によって人中そのものが物理的に長くなるわけではありません。
人中は鼻の下から上唇までの部分を指す言葉で、その長さは骨格と軟組織の構造によって決まっているためです。
変化するのは上唇の位置や形であり、それによって人中の見え方が変わるという仕組みになります。
つまり「伸びた」という表現は、実際には見え方の変化を指していることになります。
ここでは人中の変化について、4つの視点から整理していきます。
人中の長さそのものは変わらない
まず押さえておきたいのが、この前提です。
一般的な矯正治療は歯を動かす治療であり、鼻の位置や上唇の付着している位置を変えるものではないためです。
鼻の下から上唇の境目までという距離は、骨格と軟組織の構造によって決まっています。
歯が数ミリ動いたからといって、その構造そのものが変化するわけではありません。
体験談で人中が伸びたと語られているものは、見え方の変化を指していると考えられます。
物理的な長さと見た目の印象は別のものだという理解が、この話を整理する出発点になります。
上唇の位置が変わることで見え方が変わる
では何が変化を生むのかというと、上唇の状態です。
前歯の位置や傾きが変われば、それを覆っている上唇の位置も一緒に動くためです。
前歯が前方に出ていれば、上唇はその形に沿って前へ押し出されます。
矯正によって前歯が後ろへ下がれば、上唇も内側へ収まっていきます。
上唇の位置が変われば、鼻の下から唇までの見え方も変わってくることになります。
歯の移動はミリ単位ですが、口元の印象は数ミリの違いで変わって見えることがあります。
「伸びた」のではなく押し上げが解消された状態
もう少し踏み込むと、変化の正体が見えてきます。
前歯が突出している状態では、上唇が前歯に押し上げられて本来より短く見えていることがあるためです。
上に持ち上げられた分だけ、鼻の下から唇までの距離が短く見えるという構造になります。
矯正によって前歯が後ろへ下がれば、押し上げられていた上唇が本来の位置へ戻ります。
その結果、鼻の下から唇までの距離が以前より長く見えるようになるということです。
伸びたのではなく、押し上げられていた状態が解消されたという表現のほうが実態に近いといえます。
変化の方向は人によって異なる
すべての方が同じ変化を経験するわけではありません。
もともとの前歯の状態や上唇の形によって、現れる変化が変わってくるためです。
前歯が大きく突出していた方ほど、変化を感じやすい傾向があります。
一方で前歯がそれほど出ていなかった場合、上唇の位置もほとんど動かない可能性があります。
後の章で触れますが、反対に人中が短く見えるようになるケースも存在します。
自分の場合どうなるのかは、口元の状態を診てもらったうえで確認しておきたいところです。
人中が長く見えるようになる仕組み
不安を感じている方が最も知りたいのは、なぜ長く見えるのかという理由ではないでしょうか。
原因が分からないままだと、治療そのものへの迷いが消えませんよね。
この現象には、上唇の位置の変化と口元全体の後退という2つの要素が関わっています。
いずれも歯が動いたことによる二次的な変化であり、予測できる範囲のものです。
仕組みを理解しておけば、治療前の相談で確認すべき点も見えてきます。
ここでは長く見える理由を、4つの視点から整理していきます。
前歯に押し上げられていた上唇が戻る
最も大きな要因が、この構造です。
前歯が前方に傾いていると、上唇はその歯の形に沿って持ち上げられた状態になるためです。
唇が上へ引き上げられている分だけ、鼻の下から唇の境目までの距離は短く見えます。
前歯が後ろへ下がれば、支えを失った上唇は自然な位置へ下りていきます。
下りた分だけ、鼻の下から唇までの見た目の距離が長くなるという流れです。
もともと押し上げられていた状態が解消された結果であり、異常な変化ではありません。
抜歯を伴う矯正で起こりやすい理由
抜歯の有無によっても、変化の大きさは変わってきます。
歯を抜いてスペースを作る治療では、前歯を後ろへ動かせる距離が大きくなるためです。
抜いた分の隙間を使って前歯を移動させるため、口元の位置も大きく変わります。
前歯が大きく後退すれば、上唇の位置もそれに応じて動くことになります。
抜歯を伴わない治療では動かせる距離が限られ、変化も小さくとどまる傾向があります。
抜歯すると人中が伸びるという情報の背景には、この構造があります。
口元全体が後退した場合の見え方
上唇だけでなく、周囲の印象も関わってきます。
口元が後ろへ下がれば、その周囲のボリュームも失われたように見えるためです。
口元の張りが減ることで、鼻から唇にかけての面が平坦に見えることがあります。
平坦な面が広がれば、その分だけ縦の距離が強調されて見える可能性もあります。
顔全体の印象としても、口元の存在感が薄れたと感じられることがあります。
どこまで口元を下げる計画なのかが、この見え方を左右する要素になります。
上唇の厚みや形の影響
軟組織そのものの性質も、結果に関わってきます。
上唇の厚みや弾力によって、歯が動いたあとの収まり方が変わってくるためです。
もともと上唇が薄い方では、支えを失ったときの変化が現れやすい可能性があります。
厚みがある場合は、唇自体のボリュームによって印象が保たれることも考えられます。
年齢を重ねるほど皮膚の弾力は変化していくため、その影響も加わってきます。
自分の口元の状態でどう見えるかは、シミュレーションで確認できる場合もあります。
反対に人中が短く見える場合
人中は伸びるものだという情報ばかりを目にしていると、必ずそうなると思い込んでしまいます。
しかし実際には、治療後に人中が短く見えるようになったという受け止め方も存在します。
変化の方向が逆になるのは、もともとの口元の状態が違うためです。
前歯の突出の仕方や上唇の形によって、歯が動いたときの見え方は変わってきます。
自分がどちらのパターンに当てはまりそうかを知っておけば、必要以上に不安を抱えずに済みます。
ここでは短く見える場合について、3つの視点から整理していきます。
上唇の突出が改善されるケース
口元が前に出ていた方では、逆の変化が現れることがあります。
上唇そのものが前方へ張り出していた状態が、前歯の後退によって引き締まるためです。
横から見たときに口元が突き出た印象だった状態が、なだらかなラインへ変わります。
正面から見たときも、口元の盛り上がりが和らいで見えることがあります。
輪郭が引き締まることで、鼻から唇にかけての印象が変わる可能性もあります。
前歯が押し上げていたのではなく前へ押し出していた場合、変化の方向は逆になるということです。
口が閉じやすくなることによる変化
機能面の改善も、見え方に影響します。
前歯が突出していると唇を閉じにくく、無意識に力を入れて閉じている状態が続くためです。
口元に力を入れ続けていると、上唇が引き伸ばされたような形になることがあります。
前歯の位置が整って自然に唇を閉じられるようになれば、その緊張も和らいでいきます。
力の抜けた上唇は本来の厚みに戻り、輪郭がはっきりすることも考えられます。
唇の見え方が変われば、人中の印象も一緒に変化していきます。
上唇がめくれ上がっていた場合
唇の形そのものが、変わることもあります。
前歯が強く前方に傾いていると、上唇が歯に押されてめくれ上がった状態になることがあるためです。
唇がめくれていれば、口を閉じたときにも上唇の赤い部分が薄く見えます。
前歯が後ろへ下がれば、めくれていた唇が本来の形に戻っていきます。
唇の厚みが戻ることで、鼻の下から唇までの見た目の距離が変わる可能性もあります。
この場合は歯が動いたことで、口元の印象が整う方向に働くことになります。
変化の程度を左右する要素
同じ矯正治療でも、人中の見え方が大きく変わる方とほとんど変わらない方がいます。
体験談を読んでも自分に当てはまるのか判断できないのは、この個人差があるためです。
変化の方向と程度を決めているのは、もともとの状態と治療の内容という2つの軸です。
前歯の突出の程度、動かす距離、上唇の性質、年齢といった要素が組み合わさって結果が決まります。
自分の条件を知っておけば、どの程度の変化が見込めるのかも見当がつけられます。
ここでは変化を左右する4つの要素を、順に整理していきます。
もともとの前歯の突出の程度
出発点になるのが、治療前の状態です。
前歯がどれだけ前に出ているかによって、動かせる距離も上唇が動く量も変わってくるためです。
前歯が大きく突出している方ほど、後ろへ下げたときの上唇の変化も大きくなります。
一方でもともと突出が軽度であれば、動かす距離も短く見た目の変化は限られます。
前歯が上唇を押し上げていたのか、前へ押し出していたのかによっても方向が変わります。
自分の口元がどのタイプなのかは、検査を受けたうえで説明してもらってください。
抜歯を伴うかどうか
治療の内容も、変化の大きさを左右します。
歯を抜いてスペースを作れば、前歯を後ろへ動かせる距離が大きくなるためです。
抜歯を伴う治療では、口元の位置が大きく変わる可能性があります。
抜歯を行わない治療では、歯を並べるスペースが限られるため移動量も小さくなります。
見た目の変化を抑えたい場合、抜歯の有無は重要な確認事項になります。
ただし抜歯の必要性は機能面から判断されるため、見た目だけで決められるものではありません。
上唇の厚みと弾力
軟組織の性質も、結果に関わってきます。
歯が動いたあとに上唇がどう収まるかは、その厚みや弾力によって変わってくるためです。
上唇が薄い方では、歯という支えを失ったときの変化が現れやすい可能性があります。
厚みがある場合は、唇自体のボリュームによって印象が保たれることも考えられます。
唇の形や口角の位置といった要素も、全体の見え方に影響します。
自分の軟組織の状態は、写真やシミュレーションで確認できる場合があります。
年齢による皮膚の状態
時間の経過という要素も、無視できません。
皮膚の弾力は年齢とともに変化し、余った部分の収まり方も変わってくるためです。
若い方であれば、皮膚の張りによって新しい位置に馴染んでいくことが期待できます。
年齢を重ねるほど、変化が定着しにくくなる可能性があります。
矯正には数年かかるため、その間の自然な変化も重なってきます。
矯正だけが原因ではない部分も含まれているという視点を持っておくと、冷静に受け止められます。
治療前に確認しておきたいこと
人中の見え方が気になるのであれば、治療が始まる前の段階が最も重要になります。
どこまで前歯を動かすかは治療計画の段階で決まっており、始まってから大きく変えるのは難しいためです。
見た目についての希望を伝えておけば、それを踏まえた計画を立ててもらえる可能性があります。
口元の変化について不安があることも、遠慮せずに共有しておきたいところです。
確認すべき項目を整理しておけば、限られたカウンセリングの時間で必要な情報を得られます。
ここでは治療前に確認しておきたい5つのことを、順に見ていきます。
口元をどこまで下げる計画か
まず確かめたいのが、移動量の見通しです。
前歯を後ろへ動かす距離が、上唇の位置の変化に直結するためです。
何ミリ程度動かす計画なのかを、具体的に説明してもらってください。
その結果として口元がどのくらい後退する見込みなのかも、あわせて聞いておきたい項目です。
数字だけでは想像しにくい場合は、写真や画像で示してもらうと理解が進みます。
どこまで下げるのが適切かという判断には幅があるため、希望を伝える意味があります。
抜歯の必要性と代替案
変化の大きさを左右する要素として、抜歯の有無は外せません。
歯を抜けば前歯を大きく動かせるぶん、口元の変化も大きくなるためです。
なぜ抜歯が必要なのか、抜かない場合はどうなるのかを両方説明してもらってください。
抜歯を避ける方法が選べるのであれば、その方法の限界もあわせて聞いておきたいところです。
一度抜いた歯は元に戻せないため、納得できるまで確認する価値があります。
医療機関によって判断が分かれる場合もあり、複数で相談するという方法もあります。
シミュレーションで見通しを確認する
治療後の状態を、事前に確認できる場合があります。
口の中を読み取った情報をもとに、歯の動きを画面上で確認できる仕組みを取り入れている医療機関があるためです。
歯の並びがどう変わるかを、治療前に視覚的に把握できます。
横顔の変化まで予測できる分析を行っている場合もあります。
ただしシミュレーションはあくまで計画上の予測であり、そのとおりになると保証されたものではありません。
参考として見たうえで、口元の変化について疑問があれば質問してみてください。
見た目の希望を具体的に伝える
言葉にして伝えることも、欠かせません。
歯並びを整えるという目的は共通していても、見た目についてどこまで求めるかは人によって違うためです。
口元を引っ込めたいのか、今の口元は保ったまま歯並びだけ整えたいのかを伝えてみてください。
人中の見え方が気になっているという不安も、率直に共有して構いません。
伝えておけば、口元を下げすぎない計画を検討してもらえる可能性があります。
見た目の話をするのは場違いではなく、納得のいく治療のために必要な情報です。
複数の医療機関で相談する
一つの意見だけで判断しないという方法も有効です。
矯正は治療方針の立て方に幅があり、抜歯の判断や口元の下げ方について見解が分かれる場面もあるためです。
初回のカウンセリングを無料としている医療機関も多く、契約せずに話だけ聞くことができます。
同じ質問を用意して2か所から3か所で相談すれば、判断が共通している部分と分かれている部分が見えてきます。
医療機関の広告や説明については国が指針を定めており、適切な情報提供が求められています[1]。
その場で契約を求められた場合は、持ち帰って検討したいと伝えて構いません。
抜歯の判断と口元の変化
人中の変化を心配する方が最も気にするのが、抜歯の有無ではないでしょうか。
抜歯をすると人中が伸びるという情報を目にして、不安を抱えている方も少なくありません。
抜歯を伴う矯正では前歯を大きく後ろへ動かせるため、口元の変化も大きくなります。
その変化が良い方向に働くか、気になる方向に働くかは、もともとの状態と下げる量によって決まります。
抜歯そのものが問題なのではなく、その結果としてどこまで口元が動くかが論点になります。
ここでは抜歯の判断について、4つの視点から整理していきます。
抜歯の判断は機能面から行われる
まず前提として、判断の基準を知っておきたいところです。
抜歯の必要性は、歯が並ぶスペースが足りているかという機能面から判断されるためです。
見た目のためだけに抜歯をする、あるいは避けるという判断は適切とはいえません。
スペースが不足しているのに抜歯を避ければ、歯が前方へ押し出されて口元が出てしまう可能性もあります。
反対に必要のない抜歯を行えば、口元が下がりすぎるリスクが生まれます。
なぜ抜歯が必要なのか、あるいは不要なのかという根拠を説明してもらってください。
抜歯を避ければ変化も小さくなる
歯を抜かない治療では、変化の幅が限られます。
前歯を大きく後ろへ動かすスペースがないため、上唇の位置もそれほど変わらないためです。
歯を並べるスペースは、歯列を横に広げる、歯の側面をわずかに削るといった方法で確保されます。
歯並びは整っても、口元の突出感はあまり変わらないという結果になることもあります。
人中の見え方を変えたくないという希望があれば、この方向が合う可能性があります。
ただし症例によっては非抜歯で対応できない場合もあるという点は理解しておきたいところです。
下げすぎないという選択もある
抜歯をする場合でも、調整の余地があります。
抜いた隙間をすべて前歯の後退に使うのか、一部を別の目的に使うのかで結果が変わるためです。
奥歯を前方へ動かして隙間を閉じるという方法をとれば、前歯の移動量は抑えられます。
どこまで前歯を下げるかは、治療計画の段階で決められる部分です。
口元の変化を抑えたいという希望があれば、その意向を計画に反映してもらえる可能性があります。
抜歯するかしないかの二択ではなく、程度の調整という視点も持っておいてください。
判断に迷う場合の進め方
決めきれないと感じたときの対応も、考えておきたいところです。
抜いた歯は元に戻せず、後から方針を変えられないためです。
その場で即決せず、持ち帰って検討して構いません。
抜歯を提案された場合と提案されなかった場合の両方の意見を聞くという方法もあります。
判断が分かれた場合は、それぞれの根拠を確認してみてください。
契約内容に不安が残る場合は、独立行政法人国民生活センターや自治体の消費生活センターに相談するという方法もあります[2]。
気になる変化が現れた場合の考え方
治療を進めるなかで、口元の変化に気づいて不安になることもあります。
想像していた仕上がりと違うと感じたとき、どうすればいいのか分からず抱え込んでしまいますよね。
まず知っておきたいのは、気づいた時点で伝えれば対応できる余地が残されている場合があるという点です。
治療の途中であれば、動かす量を調整できる段階にあることもあるためです。
一方で治療が完了してからでは、修正に別の治療が必要になってしまいます。
早い段階で相談することが、選択肢を残すことにつながります。
ここでは変化が気になったときの対応を、4つの視点から整理していきます。
治療中であれば計画の調整を相談する
最初に取るべき行動は、担当の歯科医師に伝えることです。
伝えなければ相手は問題を認識できず、対応の機会そのものが生まれないためです。
口元が想像以上に下がっている、人中が長く見えるようになったと感じたら、具体的に言葉にしてみてください。
治療の途中であれば、これ以上下げない方向で計画を調整できる可能性もあります。
不満をぶつけるというより、現状の確認と今後の見通しを求めるという姿勢で臨むと話が進みやすくなります。
通院のたびに現在の状態を確認してもらえば、変化にも早く気づけます。
口の周りの筋肉を意識する
自分でできる工夫も、いくつかあります。
皮膚は筋肉を覆う組織であり、筋肉の状態によって表面の見え方も変わってくるためです。
口の周りの筋肉を意識して使うことで、口元の印象を保てる可能性があります。
装置を装着している期間は硬いものが食べにくく、噛む筋肉を使う機会が減りがちです。
痛みが落ち着いてきたら、意識して噛みごたえのあるものを取り入れてみてください。
口を閉じる習慣を意識することも、口元の筋肉を使うことにつながります。
治療後にできること
治療が完了してからの対応も、考えておきたいところです。
装置を外したあとでは、歯の位置を大きく変えることが難しくなるためです。
気になる変化がある場合は、まず担当の歯科医師に相談してみてください。
歯の位置に起因する部分であれば、追加の矯正で対応できる可能性もあります。
ただし再度の治療には費用と期間がかかるため、判断は慎重に行いたいところです。
軟組織の状態によるものであれば、歯を動かしても解決しない場合もあります。
美容的な処置との関係
美容医療の施術を検討する方も、いるかもしれません。
人中の見え方を変える施術は美容医療の領域に存在し、矯正とは別の選択肢として位置づけられるためです。
ただしこれは矯正治療とはまったく異なる分野の処置にあたります。
矯正の結果に不満がある場合、まずは歯科医師に相談して原因を確認することが先になります。
歯の位置に原因があるのか、軟組織の状態によるものかで対応も変わってきます。
判断を急がず、複数の意見を聞いたうえで検討してみてください。
人中の見え方は矯正だけで決まらない
ここまで矯正と人中の関係を見てきましたが、最後に視野を広げておきたい点があります。
人中の見え方は矯正だけで決まるものではなく、複数の要素が重なって形作られているためです。
まず大きいのが、生まれ持った骨格と軟組織の構造です。
鼻の位置や高さ、上顎の骨の形、上唇が付着している位置は、人によって異なります。
これらは矯正で変えられる範囲を超えており、歯を動かしても変化しません。
自分の骨格でどこまでの変化が見込めるのかを知っておくことが、期待とのずれを防ぎます。
年齢による変化も、無視できない要素です。
皮膚の弾力や皮下脂肪の量は、年齢とともに少しずつ変化していきます。
上唇の厚みが薄くなる、口元の張りが減るといった変化は、矯正の有無にかかわらず起こります。
矯正には数年かかるため、治療前後の写真を比べればその変化も一緒に目に入ります。
矯正だけが原因ではない部分も含まれているという視点を持っておくと、冷静に受け止められます。
表情や姿勢といった日常の要素も、印象に関わってきます。
口を開けたまま過ごす習慣があれば、口元の筋肉が使われにくくなります。
口元に力を入れて閉じている状態が続けば、上唇の形にも影響が出ることがあります。
姿勢や呼吸の仕方が、口の周りの筋肉の使い方に関わっているという見方もあります。
日々の習慣を見直すことが、口元の印象を保つことにつながる可能性もあります。
そしてもう一つ、見え方の受け止め方という要素もあります。
人中の長さについて何を望ましいと感じるかは、時代や個人によって変わってくるものです。
近年は特定の見た目が話題になりやすく、自分の状態を過度に気にしてしまうこともあります。
矯正は歯並びと噛み合わせを整える治療であり、美容目的の施術とは目的が異なります。
医療機関の広告については国が指針を定めており、効果を保証するような表現は適切ではないとされています[1]。
何を目的として治療を受けるのかを整理しておくことが、納得のいく選択につながります。
口元の変化が気になる場合の相談の進め方
口元の見た目について相談するのは、なんとなく言い出しにくいと感じる方もいるのではないでしょうか。
歯並びの治療なのに人中の話をするのは場違いではないか、と遠慮してしまう気持ちも理解できます。
しかし矯正は前歯の位置を変える治療であり、口元の見え方に関わることは治療の一部といえます。
希望を伝えなければ機能面だけを優先した計画が立てられ、想定と違う結果になる可能性もあります。
相談の進め方を知っておけば、必要なことを漏れなく伝えられます。
矯正治療は一部の例外を除いて公的医療保険の対象外である自由診療にあたり、方針も医療機関ごとに異なります[1]。
まず伝えたいのは、自分が今の口元のどこを気にしているのかという点です。
前歯の突出が気になるのか、人中の見え方が変わることを心配しているのかを具体的に言葉にしてみてください。
写真を撮ったときの印象が嫌だ、横顔に自信が持てないといった場面から伝えるという方法もあります。
現状のどこをどう変えたいのか、あるいはどこは変えたくないのかが伝われば、計画に反映してもらえる可能性があります。
次に、どこまでの変化を望むのかという希望も共有しておきましょう。
口元を引っ込めたいのか、今の口元は保ったまま歯並びだけ整えたいのかで、計画の内容は変わってくるためです。
人中が長く見えるようになることを心配しているのであれば、その不安も率直に伝えて構いません。
伝えておけば、前歯を下げすぎない計画を検討してもらえる可能性があります。
そのうえで、自分の場合はどこまで変わる見込みなのかを説明してもらってください。
もともとの前歯の状態や上唇の性質によって、実現できる変化の幅は決まってくるためです。
前歯が上唇を押し上げているのか、前へ押し出しているのかによって、変化の方向も逆になります。
シミュレーションを見せてもらえる場合は、参考として確認しておくと理解が深まります。
説明を受けても納得できない場合は、他の医療機関の意見を聞くという選択もあります。
抜歯の判断や口元の下げ方について、見解が分かれる場面もあるためです。
複数で相談すれば、共通している判断と分かれている判断が見えてきます。
その場で契約を求められた場合は、持ち帰って検討したいと伝えて構いません。
契約内容に不安が残る場合は、独立行政法人国民生活センターや自治体の消費生活センターに相談するという方法もあります[2]。
歯列矯正と人中に関するよくある質問
Q1. 矯正で人中は伸びますか?
人中そのものの長さが物理的に変わるわけではありません。
前歯が後ろへ下がることで上唇の位置が変わり、見え方として長くなったと感じられる場合があります。
反対に短く見えるようになるケースもあり、変化の方向は人によって異なります。
Q2. なぜ長く見えるのですか?
前歯が突出していると、上唇がその歯に押し上げられて短く見えていることがあるためです。
前歯が後ろへ下がれば、押し上げられていた上唇が本来の位置へ戻ります。
伸びたのではなく、押し上げられていた状態が解消されたという表現が実態に近いといえます。
Q3. 抜歯すると必ず伸びますか?
抜歯そのものが原因ではなく、口元をどこまで下げるかによって結果が変わります。
抜歯を伴う治療では前歯を大きく動かせるため、変化も大きくなる傾向があります。
抜いた隙間の使い方によって、前歯の移動量を調整できる場合もあります。
Q4. 短く見えることもあるのですか?
上唇が前方へ張り出していた場合、前歯の後退によって口元が引き締まることがあります。
前歯に押されて上唇がめくれ上がっていた場合も、本来の形に戻る可能性があります。
もともとの状態によって、変化の方向は逆になります。
Q5. 防ぐ方法はありますか?
治療前に見た目の希望を伝え、前歯をどこまで下げる計画かを確認しておくことが基本になります。
抜歯の必要性と、下がる見込みの量もあわせて聞いておきましょう。
シミュレーションで見通しを確認できる場合もあります。
Q6. 変化が気になったらどうすればいいですか?
治療中であれば、気づいた時点で担当の歯科医師に伝えてください。
動かす量を調整できる段階であれば、計画の見直しで対応できる可能性があります。
治療が完了してからでは修正に別の治療が必要になるため、早めの相談が有効です。
まとめ
矯正で人中そのものの長さが変わるわけではなく、上唇の位置が変わることで見え方が変化します。
前歯が突出していると上唇が押し上げられて短く見えており、前歯が下がるとその状態が解消されます。
つまり伸びたのではなく、押し上げられていた状態が元に戻ったという表現が実態に近いといえます。
一方で上唇が前方へ張り出していた場合は、口元が引き締まって短く見えることもあります。
変化の程度は、もともとの前歯の突出、抜歯の有無、上唇の厚み、年齢によって人それぞれ異なります。
望まない変化を防ぐには、治療前に見た目の希望を伝え、前歯を下げる量を確認しておくことが有効です。
人中の見え方は骨格や年齢による変化も含めて決まるため、自分の状態を診てもらったうえで判断してみましょう。
参考文献
[1] 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html
[2] 独立行政法人国民生活センター「医療・美容医療」
https://www.kokusen.go.jp/t_box/t_box-faq/g-1.html
免責事項
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療アドバイスではありません。
※治療の内容や見た目への影響については必ず歯科医師にご相談ください。
※変化の現れ方には個人差がございます。
※記載の内容は一般的な傾向であり、すべての方に当てはまるものではありません。