床矯正とは?子供のメリット・デメリットと後悔しないための注意点を解説

お子さんの歯並びで歯科に相談したら床矯正をすすめられ、「床矯正とは何だろう」「やって後悔しないだろうか」と気になっていませんか?
床矯正(しょうきょうせい)とは、主に子どもの成長期に、取り外し式の装置で顎の幅を広げ、永久歯が並ぶスペースを作る矯正方法です。
多くのメリットがある一方で、できることには限界があり、後悔や失敗を防ぐためには、事前にデメリットも知っておくことが大切です。
この記事では、床矯正の仕組みやメリット・デメリット、費用や対象年齢、後悔しないための注意点までを、一般の方にもわかりやすく解説していきます。
床矯正(しょうきょうせい)とは?
床矯正について詳しく知る前に、まずはそれがどんな治療なのか、基本を押さえておきましょう。
言葉自体を初めて聞いたという保護者の方も多いかもしれません。
基本を知っておくと、このあとのメリットやデメリットの話も理解しやすくなります。
まずは、床矯正とはどんな治療なのかを確認していきましょう。
取り外し式の装置で顎を広げてスペースを作る治療
床矯正(しょうきょうせい)とは、取り外しができる装置を口の中に装着して、顎の幅を少しずつ広げ、歯が正しく並ぶためのスペースを作る矯正治療のことです。
読み方は「しょうきょうせい」で、「床」は入れ歯の歯ぐきにあたる土台のような部分を指します。
上の歯を治療したいときは上顎に、下の歯を治療したいときは下顎に、この装置を装着します。
歯並びが乱れる原因のひとつに、顎の大きさに対して歯が並ぶスペースが足りないことがあります。
床矯正は、この足りないスペースを、顎を広げることで確保しようとする治療です。
まずは、床矯正とは「取り外し式の装置で顎を広げ、歯が並ぶスペースを作る治療」なのだと知っておくとよいでしょう。
拡大床という装置を使う
床矯正で使われる装置は、一般に「拡大床(かくだいしょう)」と呼ばれます。
拡大床は、歯科用のプラスチック(レジン)でできた床の部分に、金属のワイヤーやネジが組み込まれた装置です。
見た目は、部分的な入れ歯に似た形をしています。
この装置の中央にはネジが埋め込まれており、このネジを少しずつ回すことで、装置が外側に広がる仕組みになっています。
装置が広がる力を利用して、歯列を少しずつ横方向に拡大していきます。
取り外しができるタイプが基本のため、食事や歯みがきのときには外すことができます。
対象は主に子ども(混合歯列期)
床矯正は、主に子どもを対象とした治療です。
とくに、乳歯と永久歯が混在している「混合歯列期(こんごうしれつき)」と呼ばれる時期の子どもが対象になります。
これは、おおよそ6歳から11歳ごろにあたる時期です。
なぜこの時期かというと、子どものうちは顎の骨がまだ成長する途中にあり、その成長の力を利用できるためです。
成長期の顎は広がる余地があり、歯も動きやすい状態にあります。
こうした子どもの成長の特性をいかせることが、床矯正が主に子どもを対象としている理由です。
なお、大人でも床矯正ができるのかという点については、後ほどくわしく解説します。
床矯正の仕組み|どうやって歯を並べるスペースを作る?
床矯正が、どのようにして歯が並ぶスペースを作るのか、その仕組みを知っておくと、治療のイメージがわきやすくなります。
仕組みを理解しておくと、なぜ装着時間が大切なのか、なぜ子どもの時期に行うのかも見えてきます。
ここでは、床矯正の仕組みを見ていきましょう。
順番に整理すると、それほど難しいものではありません。
ネジを回して歯列を少しずつ横に広げる
床矯正では、装置の中央にあるネジを、少しずつ回して広げていきます。
ネジを回すと装置が外側に広がり、その力が歯や歯列にかかります。
この力によって、歯が並ぶ弓なりの列(歯列)が、横方向に少しずつ拡大されていきます。
ネジを回す量やペースは、歯科医師の指示にしたがって、家庭で少しずつ調整していくのが一般的です。
一度に大きく広げるのではなく、時間をかけて緩やかに広げていくのが特徴です。
このゆっくりとした力のかけ方が、子どもの顎に無理なく働きかけることにつながります。
成長期の顎の成長を利用する
床矯正の大きな特徴が、子どもの顎の成長を利用する点です。
装置の力だけで顎が広がるわけではなく、顎の骨が成長する時期に行うことで、無理なく顎を広げていくことができます。
成長期の子どもの顎は、まだ発達の途中にあり、広がる余地を持っています。
この時期に、緩やかに広げる力をかけることで、顎の成長を促しながらスペースを作っていくのです。
顎の成長が終わった大人では、この成長の力を利用できないため、床矯正での骨格的な拡大は難しくなります。
これが、床矯正が成長期の子どもに向いている理由です。
目的は「抜歯を避けるスペース作り」
床矯正の大きな目的のひとつが、将来の抜歯を避けられる可能性を高めることです。
歯並びを整える矯正治療では、歯が並ぶスペースが足りない場合に、歯を抜いてスペースを作ることがあります。
これは「便宜抜歯(べんぎばっし)」と呼ばれます。
子どものうちに床矯正で顎を広げ、あらかじめ歯が並ぶスペースを確保しておくと、永久歯が生えそろってから矯正をするときに、この抜歯を避けられる可能性が高まります。
ただし、床矯正はあくまでスペースを作るための治療であり、これだけで歯並びを完全に整えるものではない点には注意が必要です。
この点は、後ほどデメリットや限界のところでくわしく説明します。
床矯正のメリット
床矯正には、子どもの矯正治療として選ばれる、いくつかのメリットがあります。
メリットを知っておくと、床矯正がどんな治療なのかがより具体的に見えてきます。
ここでは、床矯正の主なメリットを見ていきましょう。
ただし、メリットとデメリットは両方を知ったうえで判断することが大切なので、このあとのデメリットもあわせて確認してください。
抜歯を避けられる可能性がある
床矯正のメリットとしてまず挙げられるのが、将来の抜歯を避けられる可能性があることです。
子どものうちに顎を広げて、歯が並ぶスペースをあらかじめ確保しておくことができます。
そうすると、永久歯が生えそろってから矯正をする際に、スペース不足を理由とした抜歯を回避できる可能性が高まります。
歯を抜かずに治療できる可能性が広がることは、多くの保護者にとって安心できる点でしょう。
とくに、成長期にしかできない顎へのはたらきかけを利用できることは、子どもの時期ならではのメリットといえます。
ただし、これはすべてのケースで抜歯を避けられるという意味ではなく、あくまで可能性が高まるということです。
取り外せて歯みがき・食事がしやすい
床矯正の装置は取り外しができるため、日常生活を送りやすいというメリットがあります。
歯に直接固定するワイヤー矯正とは異なり、食事や歯みがきのときには装置を外すことができます。
そのため、装置に食べ物が引っかかる心配が少なく、いつもどおりに食事を楽しめます。
また、歯みがきのときも装置を外して、普段どおりていねいに磨くことができます。
これにより、装置をつけている間も口の中を清潔に保ちやすく、虫歯や歯周病のリスクをおさえやすくなります。
装置自体も外して洗えるため、衛生的に保ちやすいのも利点です。
ワイヤー矯正より痛みが出にくい
床矯正は、ワイヤー矯正に比べて、痛みが出にくい傾向があるとされています。
これは、床矯正が、非常に緩やかで持続的な力をかけて、顎を少しずつ広げていく方法だからです。
急に強い力をかけるのではなく、時間をかけてゆっくり広げていくため、歯や顎への負担が比較的少ないとされています。
ネジを回して調整したときに感じるのは、強い痛みというより、押されるような圧迫感や違和感であることが多いようです。
痛みに敏感なお子さんでも、比較的取り組みやすい方法とされています。
ただし、感じ方には個人差があり、まったく違和感がないわけではない点は知っておくとよいでしょう。
本格矯正より費用をおさえられることも
床矯正は、子どもの時期に行う一期治療として位置づけられることが多い治療です。
すべての歯に装置をつける本格的なワイヤー矯正などと比べると、費用をおさえられる場合があります。
また、子どものうちに床矯正でスペースを確保しておくことで、その後の本格的な矯正が不要になったり、必要になっても期間が短くなったりする可能性があります。
治療期間が短くなれば、その分の費用をおさえられることにもつながります。
ただし、これはあくまで可能性であり、床矯正のあとに本格的な矯正が必要になるケースも少なくありません。
費用については、床矯正だけでなく、その後の治療も含めて総合的に考えておくことが大切です。
床矯正のデメリット・限界
床矯正には多くのメリットがある一方で、知っておくべきデメリットや限界もあります。
後悔しないためには、こうしたマイナス面もしっかり理解しておくことが何より大切です。
ここでは、床矯正のデメリットと限界を、正直にお伝えしていきます。
メリットとあわせて、両方を知ったうえで判断してください。
細かい歯並びの調整や大きな移動はできない
床矯正の大きな限界が、細かい歯並びの調整や、歯の大きな移動はできないという点です。
床矯正でできるのは、主に歯列の幅を広げて、歯が並ぶスペースを作ることです。
ワイヤー矯正のように、一本一本の歯の位置や向きを細かく整えたり、歯を大きく動かしたりすることはできません。
そのため、床矯正はあくまで「スペースを作る治療」であり、それだけで歯並びを完全に整えるものではありません。
歯並びのデコボコが大きい場合などは、床矯正のあとに、ワイヤー矯正などで仕上げの調整が必要になることが多くあります。
この点を「床矯正だけで治る」と誤解していると、後悔につながることがあるため、注意が必要です。
装着時間を守らないと効果が出ない(子どもの協力が必要)
床矯正は取り外しができることがメリットですが、それは同時にデメリットにもなり得ます。
というのも、床矯正の効果を得るには、装置を決められた時間、装着し続ける必要があるためです。
装着時間の目安は、一般的に1日12〜14時間程度とされることが多く、医院や装置によってはさらに長い時間が推奨されることもあります。
取り外しができるぶん、この装着時間を守れないと、計画どおりに顎が広がらず、効果が出にくくなってしまいます。
とくに子どもの場合、自分で装置を管理するのは難しく、嫌がって外してしまうこともあります。
そのため、保護者が装着時間を管理し、家族でサポートしていくことが欠かせません。
装置の違和感・発音しにくさ
床矯正の装置を使い始めたころは、口の中の違和感を感じることがあります。
口の中に装置が入るため、はじめは慣れずに、話しにくさを感じることがあります。
とくに、装置が舌の動きを制限することから、発音がしにくくなったり、滑舌が悪くなったりすることがあります。
国語や英語、音楽の授業など、正しい発音や発声が求められる場面で、気になることもあるでしょう。
こうした場面では一時的に装置を外すこともできますが、その分、装着時間の管理が必要になります。
多くの場合、時間とともに慣れていきますが、慣れるまでの間、お子さんがストレスを感じることもある点は知っておくとよいでしょう。
適応できない歯並びもある
床矯正は、すべての歯並びに対応できる万能な治療ではありません。
床矯正が向いているのは、主に、顎を広げてスペースを作ることで改善が期待できる、軽度の歯並びの乱れなどです。
一方で、歯並びのデコボコが重度の場合や、上顎と下顎の位置関係といった骨格的な問題が大きい場合には、床矯正だけでは対応が難しくなります。
また、顔立ちや噛み合わせの状態によっては、床矯正がかえって向かないケースもあるとされています。
自分の子どもに床矯正が適しているかどうかは、見た目だけでは判断できません。
そのため、精密な検査を受けて、歯科医師に適応かどうかを診断してもらうことが不可欠です。
床矯正で「後悔した」「失敗した」と言われる理由
床矯正について調べていると、「後悔した」「失敗した」といった声を目にして、不安になる方も多いのではないでしょうか。
こうした声には理由があり、その理由を知っておくことが、後悔を防ぐいちばんの近道になります。
ここでは、床矯正で後悔や失敗と言われる主な理由を、正直に整理していきます。
これらを事前に知っておくことで、同じ後悔を避けやすくなります。
床矯正だけで終わらず、結局2期治療が必要だった
後悔の理由として多いのが、床矯正だけで治療が終わると思っていたのに、結局その後に本格的な矯正が必要になった、というものです。
これまでお伝えしたように、床矯正は歯が並ぶスペースを作る治療であり、それだけで歯並びを完全に整えるものではありません。
そのため、床矯正のあとに、永久歯が生えそろってから、ワイヤー矯正などで仕上げの調整を行うケースが少なくありません。
この、永久歯が生えそろってから行う本格的な矯正を、二期治療と呼びます。
「床矯正だけで終わる」と思い込んでいると、追加の治療や費用が必要になったときに、こんなはずではなかったと感じてしまうことがあります。
最初の段階で、二期治療が必要になる可能性も含めて説明を受け、理解しておくことが大切です。
装着時間を守れず効果が出なかった
床矯正の効果が思うように出ず、後悔につながるケースもあります。
その大きな理由のひとつが、装置の装着時間を守れなかったことです。
床矯正は、決められた時間、装置を装着し続けることではじめて効果が得られます。
しかし、取り外しができるぶん、お子さんが装置を嫌がったり、つけ忘れたりして、装着時間が不足してしまうことがあります。
装着時間が足りないと、計画どおりに顎が広がらず、治療期間が延びたり、期待した効果が得られなかったりします。
これは装置そのものの問題というより、装着時間の管理の難しさによるもので、家族のサポートが結果を大きく左右します。
適応でないのに拡大しすぎてトラブルになった
床矯正が本来適していない状態に対して行われたり、顎を広げすぎたりして、トラブルになるケースもあります。
歯が並ぶアーチを必要以上に広げてしまうと、歯が大きく傾いてしまうことがあります。
その結果、歯が骨からはみ出すようにして歯ぐきが下がってしまったり、前歯が前方に傾いて口元が出たような状態になってしまったりすることがあるとされています。
こうしたトラブルは、適応の見きわめや、広げる量の調整が適切でなかった場合に起こりやすくなります。
床矯正は、成長過程の骨格にはたらきかける治療のため、歯を動かす角度や量を適切に見きわめる、専門的な知識と技術が必要です。
だからこそ、適応かどうかを正しく診断し、適切な治療計画を立ててくれる歯科医院を選ぶことが重要になります。
「簡単・安く治る」という情報を鵜呑みにした
「子どものうちに床矯正をすれば、簡単に、安く歯並びが治る」といった情報を鵜呑みにして、後悔につながることもあります。
床矯正は、たしかに子どもの成長を利用できる有用な治療ですが、万能ではなく、できることには限界があります。
すべての歯並びが床矯正だけできれいに治るわけではなく、二期治療が必要になることも多くあります。
こうした限界を知らないまま、期待だけをふくらませて始めてしまうと、思ったような結果が得られなかったときに後悔してしまいます。
大切なのは、都合のよい情報だけを鵜呑みにせず、メリットとデメリットの両方を正しく理解することです。
そのうえで、信頼できる歯科医師とよく相談して、治療を始めるかどうかを判断することが、後悔を防ぐことにつながります。
床矯正で「顔が大きくなる・変わる」って本当?
床矯正について調べていると、「顔が大きくなる」「顔つきが変わる」といった心配の声を目にすることがあります。
顎を広げると聞くと、顔まで大きくなってしまうのではと不安になるのは自然なことです。
ここでは、この「顔が大きくなる・変わる」という不安の真相を見ていきましょう。
正しく理解しておくと、不必要な心配をせずにすみます。
顎の骨全体ではなく歯槽骨を広げるので顔は大きくならない
まず結論からお伝えすると、床矯正によって顔そのものが大きくなることは、基本的にないとされています。
「顎を広げる」と聞くと、顔の輪郭を作る顎の骨全体が大きくなるようなイメージを持つかもしれません。
しかし、床矯正で広げるのは、主に歯を支えている歯槽骨(しそうこつ)と呼ばれる部分です。
これは、歯の根が埋まっている部分の骨であり、顔の輪郭そのものを作る骨とは異なります。
そのため、床矯正で歯列を広げても、顔そのものが大きくなったり、輪郭が大きく変わったりすることは、基本的にないと考えられています。
「顎を広げる=顔が大きくなる」というのは、誤解であることが多いのです。
むしろ歯並びが整い口元のバランスが良くなることも
床矯正で顔が大きくなる心配が少ないだけでなく、むしろ良い方向の変化が期待できることもあります。
歯が正しい位置に並ぶスペースができることで、歯並びや噛み合わせが整いやすくなります。
歯並びや噛み合わせが整うと、口元のバランスが良くなったり、顔の歪みが目立ちにくくなったりすることがあるとされています。
噛み合わせが悪いと、口の周りの筋肉に偏った負担がかかることがありますが、それが整うことで、表情の印象が良くなることもあります。
つまり、床矯正は顔を大きくするどころか、口元や表情の面で、良い変化につながる可能性もあるのです。
もちろん変化には個人差があるため、必ずこうなるというものではありません。
ただし過度な拡大は見た目のトラブルにつながることも
一方で、注意しておきたい点もあります。
先ほど後悔の理由でも触れたように、顎を必要以上に広げすぎると、見た目のトラブルにつながることがあります。
歯列を広げすぎると、前歯が前方に傾いて、口元が出たような印象になってしまうことがあるとされています。
これは、床矯正そのものが悪いのではなく、適応の見きわめや広げる量の調整が適切でなかった場合に起こりうる問題です。
こうした見た目のトラブルを避けるためにも、適切な診断と治療計画のもとで治療を受けることが大切です。
「顔が変わる」ことを過度に心配する必要はありませんが、そのためにも、信頼できる歯科医院で適切に治療を受けることが重要になります。
床矯正の対象年齢と治療期間の目安
床矯正を検討するうえで、いつ始められるのか、どのくらいの期間かかるのかは、気になるところでしょう。
対象年齢や治療期間の目安を知っておくと、治療の計画を立てやすくなります。
ここでは、床矯正の対象年齢と治療期間について整理していきます。
ただし、これらは目安であり、実際はお子さんの状態によって異なる点は、あらかじめお伝えしておきます。
まず、床矯正の対象となるのは、主に乳歯と永久歯が混在する混合歯列期の子どもです。
これは、おおよそ6歳から11歳ごろにあたる時期とされることが多いです。
この時期は、顎の骨がまだ成長する途中にあり、その成長の力を利用して、無理なく顎を広げやすいためです。
ただし、適切な開始時期は、お子さんの歯の生えかわりの状況や、顎の成長の具合によって一人ひとり異なります。
早ければよいというものでもなく、状態によっては、もう少し様子を見てから始めたほうがよいこともあります。
そのため、いつ始めるのがよいかは、歯科医師に診てもらったうえで判断することが大切です。
治療期間については、顎を広げる期間だけでも、おおむね数か月から1年以上かかることが多いとされています。
さらに、床矯正のあとに、永久歯が生えそろってから本格的な矯正が必要になる場合は、全体の期間はより長くなります。
床矯正は、成長を利用しながらゆっくり進める治療のため、ある程度の期間がかかることを理解しておくとよいでしょう。
床矯正の費用の目安と医療費控除
床矯正を検討するうえで、費用も大切な判断材料になります。
あらかじめ目安を知っておくと、治療を検討しやすくなります。
ここでは、床矯正の費用と、医療費控除について整理していきます。
なお、以下の金額はあくまで一般的な目安であり、実際の費用は歯科医院によって大きく異なる点にご注意ください。
まず、床矯正を含む子どもの矯正治療は、多くの場合、保険がきかない自費診療になります。
そのため、費用は歯科医院ごとに独自に設定されており、金額に幅があります。
床矯正を含む一期治療の費用は、一般的な目安として、総額でおおむね30万円から40万円程度とされることが多いようです。
これに加えて、治療前の検査料や診断料が別途必要になることが一般的です。
また、床矯正のあとに本格的な矯正である二期治療が必要になった場合は、その費用が別にかかります。
そのため、費用を考えるときは、床矯正だけでなく、その後の治療の可能性も含めて、全体で見ておくことが大切です。
なお、子どもの矯正治療は、噛み合わせの機能を改善するために必要と認められる場合、医療費控除の対象になることがあります[1]。
医療費控除は、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、確定申告をすることで所得税などの一部が軽減される制度です[1]。
対象になるかどうかは個別の状況によって異なるため、詳しくは国税庁の情報を確認したり、税務署に相談したりするとよいでしょう[1]。
支払った領収書は、申告に備えて保管しておくと安心です。
大人でも床矯正はできる?
「床矯正は子どもだけのものなのか」「大人でもできるのか」と気になる方もいるでしょう。
大人の床矯正については、知っておきたい前提があります。
ここでは、大人でも床矯正ができるのかについて整理していきます。
結論からお伝えすると、大人の場合、床矯正で顎の骨を広げることは基本的に難しいとされています。
これまでお伝えしてきたように、床矯正は、成長期の子どもの顎の成長を利用する治療です。
大人になると顎の骨の成長が終わっているため、子どものように顎を広げる力を利用することができません。
そのため、大人の歯並びの治療では、床矯正ではなく、ワイヤー矯正やマウスピース矯正といった方法が選ばれるのが一般的です。
大人でも歯列を広げる処置が行われることはありますが、その場合も、子どもの床矯正とは考え方や適応が異なります。
大人の歯並びが気になる場合は、床矯正にこだわらず、自分の状態に合った治療について、矯正歯科で相談するとよいでしょう。
床矯正で後悔しないためのポイント
ここまでの内容をふまえて、床矯正で後悔しないために大切なポイントを整理しておきましょう。
これらを押さえておくことで、納得して治療を進めやすくなります。
ここでは、後悔を防ぐためのポイントを見ていきます。
お子さんにとってよい選択をするための参考にしてください。
適応かどうかを精密検査で診断してもらう
まず大切なのが、床矯正がお子さんに適しているかどうかを、精密検査で正しく診断してもらうことです。
床矯正には、向いている歯並びと、そうでない歯並びがあります。
適応でない状態に無理に行うと、期待した効果が得られなかったり、トラブルにつながったりすることがあります。
レントゲンや歯型などの精密検査を受け、お子さんの歯や顎の状態を正確に把握したうえで、床矯正が適しているかを診断してもらいましょう。
メリットだけでなくデメリット・限界も説明してくれる歯科を選ぶ
歯科医院選びも、後悔を防ぐうえで重要なポイントです。
床矯正には、メリットだけでなく、これまで見てきたようなデメリットや限界があります。
信頼できる歯科医院は、良い面だけでなく、こうしたデメリットや、二期治療が必要になる可能性についても、きちんと説明してくれます。
反対に、メリットばかりを強調したり、「簡単に治る」といった説明ばかりだったりする場合は、慎重に検討したほうがよいでしょう。
疑問や不安に、ていねいに答えてくれる歯科医院を選ぶことが大切です。
装着時間を守り、家族でサポートする
床矯正の効果を得るには、装置の装着時間を守ることが欠かせません。
取り外しができるぶん、装着時間が不足すると、効果が出にくくなってしまいます。
とくに子どもの場合、自分だけで装置を管理し続けるのは難しいものです。
なぜ治療が必要なのかをお子さんに根気強く伝えながら、保護者が装着時間を管理し、家族でサポートしていくことが、治療の成功につながります。
お子さんが前向きに取り組めるよう、家族で支えていく姿勢が大切です。
床矯正に関するよくある質問
Q:床矯正だけで歯並びは治りますか?
床矯正は、歯が並ぶスペースを作ることが主な目的であり、それだけで歯並びを完全に整えられるとは限りません。
細かい歯並びの調整はできないため、永久歯が生えそろってから、ワイヤー矯正などの本格的な矯正(二期治療)が必要になることも少なくありません。
床矯正だけで終わると思い込まず、二期治療の可能性も含めて歯科医師に確認しておくことが大切です。
Q:床矯正で顔が大きくなりますか?
床矯正で広げるのは、主に歯を支えている歯槽骨の部分であり、顔の輪郭を作る骨全体ではありません。
そのため、床矯正によって顔そのものが大きくなることは、基本的にないとされています。
むしろ歯並びや噛み合わせが整うことで、口元のバランスが良くなることも期待できますが、変化には個人差があります。
Q:床矯正は何歳から何歳まで受けられますか?
床矯正は、主に乳歯と永久歯が混在する混合歯列期の、おおよそ6歳から11歳ごろの子どもが対象とされることが多いです。
これは、顎の成長の力を利用できる時期だからです。
ただし、適切な開始時期はお子さんの歯や顎の状態によって異なるため、歯科医師に診断してもらうことが大切です。
Q:大人でも床矯正はできますか?
大人は顎の骨の成長が終わっているため、床矯正で顎を広げることは基本的に難しいとされています。
大人の歯並びの治療では、ワイヤー矯正やマウスピース矯正といった方法が選ばれるのが一般的です。
歯並びが気になる場合は、床矯正にこだわらず、自分に合った治療について矯正歯科で相談するとよいでしょう。
まとめ
床矯正(しょうきょうせい)とは、主に成長期の子どもを対象に、取り外し式の装置で顎を広げ、歯が並ぶスペースを作る矯正治療です。
抜歯を避けられる可能性がある、取り外せて衛生的、痛みが出にくいといったメリットがあります。
一方で、細かい歯並びの調整はできない、装着時間を守る必要がある、適応できない歯並びもあるといった、デメリットや限界もあります。
「後悔した」「失敗した」と言われる背景には、床矯正だけで終わると思っていた、装着時間を守れなかった、適応でないのに行った、といった理由があります。
「顔が大きくなる」という心配については、広げるのは歯を支える骨の部分のため、顔そのものが大きくなることは基本的にないとされています。
床矯正で後悔しないためには、適応かどうかを精密検査で診断してもらい、デメリットも説明してくれる歯科を選び、家族でサポートしていくことが大切です。
お子さんの歯並びが気になるときは、床矯正のメリットとデメリットの両方をふまえて、小児歯科や矯正歯科でよく相談していきましょう。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療や特定の医療機関・治療法を推奨するものではありません。
床矯正が適しているかどうかや、必要な治療、費用は、実際に診察してみないと判断できません。
記載の費用はすべて目安です。
気になる症状がある場合は、自己判断せず歯科・矯正歯科などの医療機関にご相談ください。
参考文献
[1] 国税庁「医療費控除の対象となる医療費(No.1122)」(最終閲覧日:2026年7月6日)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1122.htm
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯・口腔の健康(歯並び・噛み合わせに関する情報)」(最終閲覧日:2026年7月6日)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/
[3] 厚生労働省「歯科口腔保健に関する情報」(最終閲覧日:2026年7月6日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kougien/index.html