出っ歯は歯列矯正で治る?原因のタイプ別に見る治療方法と費用

「出っ歯は歯列矯正で治せるの?」「手術が必要になったらどうしよう」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

出っ歯は正式には上顎前突と呼ばれ、前歯の傾きが原因の歯性と、あごの骨の位置が原因の骨格性に分けられます。

歯性であれば矯正装置だけで改善が見込める一方、骨格性で程度が大きい場合には外科的な処置を組み合わせた治療が検討されることになります。

この記事では、出っ歯の2つのタイプと原因から、それぞれの治療方法、費用と期間の目安、抜歯の要否まで詳しくお伝えしますので、治療を検討している方はぜひ参考にしてください。

出っ歯(上顎前突)とはどんな状態か

前歯が前に出ていることを長く気にしてきた方にとって、その状態が治療の対象になるのかどうかは切実な問いでしょう。

写真に写るたびに口元を手で隠してしまう、笑うときに口を大きく開けられないという方も少なくありません。

出っ歯は歯並びの乱れの一つとして医学的に分類されており、程度に応じた治療法が確立されています。

どんな状態を指すのか、そしてどこからが治療の対象になるのかを知っておけば、自分に当てはまるかどうかも判断しやすくなります。

まずは、出っ歯という状態そのものから整理していきましょう。

上の前歯が前方に出ている状態

出っ歯とは、上の前歯が下の前歯に対して大きく前方に出ている状態を指し、正式には上顎前突と呼ばれます。

歯並びやかみ合わせに問題がある状態は不正咬合として分類されており、上顎前突はそのなかの一つに位置づけられています[1]。

上下の前歯がどれだけ重なっているかには目安があり、その範囲を超えて前に出ている場合に出っ歯と判断される仕組みです。

同じように前歯が出て見えても、上のあごが前方にあることで生じている場合と、下のあごが後ろに下がっていることで相対的に目立っている場合の両方が含まれます。

鏡で見た印象だけでは、自分がどちらの状態にあたるのかまでは分かりません。

程度も原因も検査によってはじめて明らかになりますから、気になっているのであれば一度診断を受けてみると納得のいく判断ができます。

見た目以外に生じる影響

出っ歯は見た目の悩みとして語られることが多いものの、実際には噛む働きにも影響が及ぶ場合があります。

前歯が正しく噛み合っていないと、麺類やサンドイッチのように前歯で噛み切る動作が必要な食べ物を、うまく処理できなくなるためです。

前歯で噛み切れないぶん、無意識のうちに奥歯を使う頻度が高くなり、特定の歯に負担が偏っていく可能性も指摘されています。

前歯が前方に突き出た状態は、転倒したりぶつかったりした際に歯を損傷しやすいという面も持ち合わせています。

口が閉じにくいことで前歯が乾燥しやすくなり、口の中の環境が保たれにくくなるという指摘もあります。

見た目をきっかけに治療を考える方が多いものの、噛む働きの改善も同時に得られると考えれば、治療の価値も見えやすくなるでしょう。

口ゴボとの違い

出っ歯と似た文脈で使われる言葉に口ゴボがありますが、これは医学的な診断名ではなく、口元全体が前方に盛り上がって見える状態を表す一般的な言い方です。

出っ歯が上の前歯の突出を指すのに対して、口ゴボは上下の前歯がともに前に出ている状態まで含めて使われている点に違いがあります。

上下の前歯がどちらも前方へ傾いている状態は、医学的には上下顎前突と呼ばれ、上顎前突とは区別されます。

上顎前突では上のあごだけが前に出ているのに対し、上下顎前突では上下の両方が突出しているという構造の違いがあるためです。

自分の状態がどちらにあたるかによって、動かす歯の範囲も治療の方針も変わってきます。

気になっている部分が前歯なのか口元全体なのかを具体的に伝えれば、カウンセリングでの説明も自分の状況に沿ったものになります。

放置するとどうなるか

出っ歯を治療せずに過ごした場合、状態が自然に改善していくことは期待できません。

歯の位置やあごの骨格は、成長が終わったあとに自然と正しい位置へ戻るものではないためです。

むしろ年齢を重ねるにつれて、歯周病の進行や噛みしめる癖の影響で前歯が少しずつ前方へ広がり、状態が進むこともあります。

奥歯への負担が長く続けば、その歯を早い時期に失うリスクにつながる可能性があり、失った結果としてあごへの負担がさらに増すという連鎖も考えられます。

見た目を気にして人前で笑えない状態が続くことも、日々の過ごしやすさに関わってきます。

治療を受けるかどうかは自分で決めることですが、どんな影響があるのかを知ったうえで判断すれば、あとから悔いが残りにくくなります。

出っ歯は2つのタイプに分けられる

出っ歯の治療を調べていると、歯性と骨格性という2つの言葉に必ず行き当たります。

聞き慣れない専門用語に見えますが、この区別こそが治療方針を決める最も大きな分かれ道になっています。

どちらのタイプかによって、装置だけで対応できるのか、外科的な処置まで検討することになるのかが変わってくるためです。

同じように前歯が出て見えていても、原因が違えば必要な治療もまったく異なるものになります。

ここでは、2つのタイプの違いと、自分がどちらに近いかを考える手がかりを整理します。

前歯の傾きが原因の歯性

歯性の出っ歯は、あごの骨の位置関係には大きな問題がなく、前歯が前方へ傾いていることで突出して見える状態を指します。

上のあごと下のあごの前後関係が標準の範囲に収まっているにもかかわらず、上の前歯だけが外側に傾斜しているという構造です。

原因としては、歯が並ぶスペースの不足によって前歯が押し出されている場合や、指しゃぶりなどの習慣によって前方へ傾いた場合が挙げられます。

このタイプでは傾いた前歯を後ろへ起こす動きが中心になるため、矯正装置だけで改善が見込めるケースが多くなります。

程度が軽ければ前歯を中心とした範囲で対応できることもあり、期間や費用を抑えられる可能性も残されています。

歯性と診断されたのであれば、選べる治療の幅は比較的広いと考えて説明を聞いてみるとよいでしょう。

あごの骨の位置が原因の骨格性

骨格性の出っ歯は、あごの骨そのものの位置や大きさに原因があり、歯を並べ替えるだけでは口元の印象が変わりにくい状態にあたります。

上のあご全体が前方にあるパターン、下のあごが後ろに下がっているパターン、その両方が重なっているパターンの3つに分かれるとされています。

いずれの場合も歯の傾きではなく土台の位置がずれているため、前歯を後ろへ動かしても突出感が残ってしまうという構造上の限界があります。

このタイプでは、程度によってあごの骨を動かす外科的な処置を組み合わせた治療が検討されることになります。

遺伝的な要因が関わっていることが多く、家族に似た顔立ちの方がいる場合はこのタイプである可能性も考えられます。

骨格性と言われても治療の道が閉ざされるわけではありませんから、どこまで改善が見込めるのかを具体的に聞いてみてください。

両方が混ざっている場合もある

実際の症例では、歯性と骨格性がきれいに分かれるとは限らず、両方の要素が混ざっていることも珍しくありません。

あごの位置に軽度のずれがありつつ、前歯も前方へ傾いているという状態が典型的な例にあたります。

このような場合は、どちらの要素がどの程度を占めているかによって治療方針が決まっていきます。

骨格のずれが軽度であれば、歯を動かす範囲でカバーできると判断され、装置だけの治療が選ばれることもあります。

一方で骨格の要素が大きければ、歯を動かすだけでは希望する仕上がりに届かないという説明を受けることになります。

自分がどのあたりに位置しているのかを聞いておけば、提示された治療方針の意味も理解しやすくなります。

自分がどちらかを知る手がかり

自分がどちらのタイプに近いかは検査でしか確定しませんが、日常のなかで気づける手がかりはいくつか存在します。

口を閉じようとしたときにあごに力が入り、梅干しのようなシワが寄る状態は、骨格的な要素が関わっている可能性を示すサインの一つとされています。

横顔で鼻の先とあごの先を結んだ線から口元が大きくはみ出している場合も、突出の程度が大きいことをうかがわせます。

反対に、前歯の傾きだけが目立ち、口を自然に閉じられるのであれば、歯性の要素が中心である可能性が考えられます。

ただしこれらはあくまで傾向にすぎず、見た目が似ていても中身がまったく違うということは実際によく起こります。

自己判断で治療をあきらめたり、逆に軽く見積もったりせず、手がかりは検査を受けるきっかけとして使ってみてください。

確定するには検査が必要

タイプを確定させるには、側面から撮影するエックス線検査が欠かせません。

この検査によって、上下のあごの前後関係と前歯の傾きが数値として明らかになり、どちらの要素がどの程度を占めているかが判断できるためです。

不正咬合の成り立ちは、こうした精密な検査を経てはじめて明らかになります[2]。

歯型の採取や口の中の写真撮影、パノラマ撮影とあわせて行われ、その結果をもとに治療計画が組み立てられていきます。

検査を受けずに治療方針を提示された場合は、その根拠がどこにあるのかを確かめてみる価値があります。

相談だけなら無料という医療機関も多くありますから、まずは診断を受けて自分の立ち位置を知るところから始めてみましょう。

出っ歯になる原因

出っ歯がなぜ自分に生じたのかを知りたいと感じている方は多いはずです。

原因が分かれば、治療の方針を理解しやすくなるだけでなく、お子さんへの対応を考えるうえでの材料にもなります。

出っ歯の原因は遺伝だけではなく、生まれたあとの習慣が関わっていることも少なくありません。

先天的な要素と後天的な要素の両方があると知っておけば、できることも見えてきます。

ここでは、代表的な4つの原因を整理します。

遺伝によるあごの骨格

あごの骨の大きさや位置関係には、遺伝的な要素が関わっていることが知られています。

上のあごが前方に出やすい骨格、下のあごが小さめの骨格といった特徴は、家族のあいだで似ることがあるためです。

骨格性の出っ歯では、この要素が背景にあるケースが多くみられます。

あごの大きさに対して歯が大きいという組み合わせも遺伝の影響を受けやすく、歯が並びきらずに前方へ押し出される原因になります。

生まれ持った条件であるため、本人の努力で防げるものではありません。

自分を責める必要はありませんから、いまの状態からどう改善できるかという視点で考えてみてください。

指しゃぶりや爪を噛む癖

幼少期の指しゃぶりは、前歯を前方へ押し出す力として働きます。

指を吸う動作が繰り返されると、上の前歯には外へ押す力が、下の前歯には内側へ押す力が加わり続けるためです。

永久歯に生え変わる時期まで習慣が続いた場合、その影響が歯並びに残ることがあります。

爪を噛む癖や、唇を噛む癖も同じように歯へ力を加え、前歯の傾きに影響する要因として挙げられています。

大人になってから続いている癖も、長い年月をかけて少しずつ歯を動かしていく可能性があります。

心当たりのある習慣があれば、治療と並行して見直していくことが再発を防ぐことにつながります。

口呼吸と舌の位置

普段の呼吸のしかたや舌の位置も、歯並びを左右する要素として知られています。

歯は内側から舌に、外側から唇や頬に押される力を受けており、その均衡の上に並んでいるためです。

口呼吸が習慣になっていると唇が開きがちになり、外側から歯を押さえる力が弱まってしまいます。

飲み込むときに舌先で前歯を押す癖がある場合は、内側から押す力が加わり続け、前歯が前方へ傾いていく要因になります。

こうした癖は自分では気づきにくく、指摘されてはじめて自覚する方も少なくありません。

意識して直せる部分でもありますから、気になる場合は改善する方法があるか尋ねてみるとよいでしょう。

大人になってから変化する場合

出っ歯は子どもの頃に決まるものと思われがちですが、大人になってから状態が進むこともあります。

歯周病が進行して歯を支える骨が減ると、歯が動きやすくなり、前歯が少しずつ前方へ広がっていくためです。

歯ぎしりや食いしばりによって特定の歯に強い力がかかり続けることも、前歯の位置が変わる要因になります。

奥歯を失ったまま放置すると、噛む力のかかり方が変わり、前歯への負担が増すという流れも考えられます。

以前は気にならなかった前歯が最近出てきたように感じる場合は、こうした変化が背景にあるかもしれません。

原因によって対応が変わりますから、いつ頃から気になり始めたのかを伝えたうえで診断を受けてみてください。

タイプ別に見る治療方法

自分のタイプがつかめてくると、次に気になるのは具体的にどう治すのかという点でしょう。

治療方法は歯性か骨格性かによって大きく分かれ、それぞれのなかでも選べる装置に違いがあります。

同じ出っ歯という悩みでも、必要な工程がまったく異なるものになるためです。

どの方法がどんな場合に選ばれるのかを知っておけば、提案を受けたときの理解も深まります。

ここでは、タイプごとの治療方針と装置の選択肢を整理します。

歯性の出っ歯を治す方法

歯性の出っ歯では、前方へ傾いた前歯を後ろへ起こす動きが治療の中心になります。

あごの骨の位置関係には大きな問題がないため、歯の位置を整えるだけで口元の印象が変わる余地があるからです。

矯正装置だけで対応でき、外科的な処置を検討する場面は基本的に生じません。

前歯が2〜3mm程度前に出ている軽度の状態であれば、前歯を中心とした範囲で対応できることもあり、期間も費用も抑えやすくなります。

一方で歯を並べるスペースが不足している場合は、余地を確保するための処置が加わり、歯列全体を動かす計画に広がっていきます。

いずれにしても装置で改善が見込める範囲にありますから、どこまで変化が得られるのかを診断時に確かめてみてください。

骨格性の出っ歯を治す方法

骨格性の出っ歯では、あごの骨の位置そのものに働きかける必要が生じます。

歯を並べ替えても土台がずれたままでは、口元の突出感が残ってしまうという構造上の限界があるためです。

程度によって、対応の方針は大きく2つに分かれます。

ずれが軽度であれば、歯を動かす範囲でカバーする方針が取られ、矯正装置だけで治療できる場合があります。

ずれが大きい場合には、あごの骨を切る手術と矯正治療を組み合わせた方法が検討され、この治療は手術の前後にわたって進められます。

手術と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、根本から整えられる方法でもありますから、説明を聞いたうえで判断してみましょう。

装置の選択肢と向き不向き

出っ歯の治療で使われる装置には、歯の表面に接着するワイヤー矯正と、透明な装置を交換していくマウスピース矯正があります。

ワイヤー矯正は歯の根まで届く力をかけ続けられる構造のため、前歯を大きく後退させる計画や抜歯をともなう症例に向いています。

歯の裏側に装置を付ける方法を選べば、見た目への影響を抑えながら同じ精度の治療を受けることもできます。

マウスピース矯正は装置が目立ちにくく食事の制限も少ない一方、抜歯した隙間へ歯を根ごと動かす工程を苦手とする特性があります。

軽度から中等度の出っ歯であれば対応できる範囲が広く取れますが、重度の症例では対応が難しいと判断されることもあります。

見た目を優先するか確実性を優先するかで選び方が変わりますから、自分の症例で何が選べるのかを聞いてみてください。

アンカースクリューという方法

前歯を後ろへ動かす際に、アンカースクリューと呼ばれる小さなネジを使う方法があります。

歯を動かすには力を受け止める支点が必要ですが、通常は奥歯がその役割を担うため、奥歯自体も前へ引っ張られてしまうという課題があるためです。

歯ぐきの骨に小さなネジを埋め込んで固定源にすれば、奥歯を動かさずに前歯だけを後退させられます。

この方法によって、これまで抜歯が必要とされた症例でも歯を残せる可能性が生まれ、前歯を確実に下げられる範囲も広がりました。

処置は局所麻酔のもとで短時間で終わり、治療が終われば取り外されます。

抜歯を避けたいという希望がある場合は、この方法を扱っているかどうかを相談時に尋ねてみるとよいでしょう。

抜歯が必要になるかどうか

出っ歯の治療を検討するうえで、抜歯の要否は多くの方が気にする点です。

健康な歯を抜くと聞けば、ためらうのが自然な反応でしょう。

出っ歯では前歯を後ろへ下げる余地が必要になるため、抜歯が選択肢に上がりやすい傾向があります。

ただし必ず抜くと決まっているわけではなく、避けられる可能性も残されています。

ここでは、抜歯をめぐる3つの視点を整理します。

前歯を下げるスペースが要る

出っ歯の治療で抜歯が検討されるのは、前歯を後ろへ移動させる空間を確保する必要があるためです。

歯列にすでに余地がなければ、前歯を引っ込めようとしても動かせる先がないという状態になります。

抜歯によって生まれた隙間を使い、前歯を後方へ下げていくという考え方です。

抜かれるのは前から数えて4番目の第一小臼歯か5番目の第二小臼歯が中心で、かみ合わせの均衡を保つために上下左右で4本という計画が基本になります。

小臼歯を1本抜くと、その位置に7〜8mm程度の隙間が生まれ、前歯を大きく動かす余地が確保できます。

抵抗を感じるのは当然ですから、なぜその本数が必要なのかを数値で説明してもらったうえで判断してみてください。

抜歯を避けられる可能性がある方法

抜歯以外にスペースを作る方法もいくつか用意されており、症例によっては選択肢に入ります。

歯と歯の間をわずかに削る方法では、1か所あたり0.2〜0.5mm程度を削ることで歯列全体に少しずつ余地を生み出せます。

奥歯を後方へ移動させる方法では、5mm前後のスペースを確保できるとされており、アンカースクリューを併用すればより確実に進められます。

ただしこれらの方法で作れる余地には上限があり、必要な量が7〜8mmを超えるような症例では組み合わせても足りない計算になります。

無理に非抜歯で進めれば、歯列が外側へ広がって口元がかえって前に出るという結果を招く可能性もあります。

自分の場合に何mm不足しているのかを聞いておけば、提案された方針にも納得しやすくなります。

判断は精密検査で決まる

抜歯が必要かどうかは、見た目の程度では判断できません。

必要なスペースの量や、あごの骨と歯の位置関係は、検査によってはじめて数値で明らかになるためです。

軽そうに見えて抜歯が必要な場合もあれば、重そうに見えて抜かずに済む場合もあります。

側面から撮影するエックス線検査で骨格と歯の傾きを測り、歯型の採取によって並べるのに必要な幅を計算したうえで方針が決まります。

歯科医師によって考え方が分かれることもあるため、判断に迷うときは別の医療機関の意見を聞くという方法も取れます。

抜歯を勧められたとしても、その根拠を確かめたうえで決めれば、後悔は残りにくくなります。

費用と期間の目安

治療の方向性が見えてくると、次に現実味を帯びてくるのが費用と期間の問題でしょう。

出っ歯の治療は数十万円単位の負担と年単位の時間がかかるため、見通しを持たないまま踏み出すのは難しいものです。

金額は選ぶ装置とタイプによって幅が生まれ、外科的な処置をともなう場合はまた別の考え方になります。

制度を使って負担を抑えられる場合もあるため、あわせて知っておきたいところです。

ここでは、費用と期間を4つの視点から整理します。

装置別の費用相場

出っ歯の治療費は、選ぶ装置によって大きく変わります。

歯の裏側に装置を付ける方法は歯科医師にとって作業しにくく、装置も一人ひとりに合わせて作られるため、技術と手間の差が価格に表れるためです。

歯列全体を動かす全体矯正の場合、歯の表側に装置を付ける方法で60万〜100万円程度、上の歯だけ裏側にする方法で80万〜140万円程度、上下とも裏側にする方法で100万〜170万円程度が目安になります。

マウスピース矯正は60万〜100万円程度が目安となり、前歯を中心とした部分矯正で対応できる軽度の症例であれば10万〜60万円程度まで抑えられることもあります。

これらに加えて、精密検査と診断料が3万〜6万円程度、抜歯をともなう場合は1本あたり5,000〜15,000円程度が上乗せされます。

装置代だけを比べても実際の負担は見えてきませんから、検査料やリテーナー代まで含めた総額で並べて確かめてみてください。

治療期間の目安

出っ歯の治療にかかる期間は、動かす距離と範囲によって決まります。

前歯を後ろへ大きく下げる必要があるほど、必要な工程も装置の枚数も増えていくためです。

歯の傾きが主な原因で軽度の症例であれば1〜2年程度、抜歯をともなって奥歯の位置から動かす症例では2〜3年程度が目安になります。

前歯を中心とした部分矯正で対応できる場合には、3か月〜1年程度で歯を動かす工程を終えられることもあります。

装置を外したあとには整えた歯並びを安定させる保定期間が1〜3年続くため、全体の見通しはもう少し長く考えておく必要があります。

治療が終わるまでの年数を先に把握しておけば、生活の予定も立てやすくなります。

外科的な処置をともなう場合

あごの骨を切る手術を組み合わせる治療では、費用の考え方が変わります。

矯正の費用に加えて、手術料や麻酔料、入院にかかる費用が発生するためです。

入院期間は1〜2週間程度になることが多く、手術は矯正と並行して進むため、治療全体の期間も2〜3年以上に及びます。

ただしこの治療では、条件を満たせば公的医療保険が適用される場合があります。

歯科矯正は、顎離断等の手術を必要とする顎変形症の手術前後における療養に限り、保険診療の対象とされているためです[3]。

保険で治療を受けられるのは地方厚生局へ届け出た医療機関に限られますから、骨格性と診断された場合は保険の可否についても質問してみてください。

保険適用と医療費控除

見た目の改善を主な目的とした出っ歯の治療は、原則として自由診療にあたり全額自己負担になります。

公的医療保険は病気やけがの治療に対して適用される制度であり、審美的な目的の治療はその枠組みから外れるためです。

保険が使えるのは、厚生労働大臣が定める疾患に起因する場合や、手術をともなう顎変形症の場合など限られた条件を満たすときだけになります。

保険が使えない場合でも、医療費控除によって負担が軽くなる可能性は残されています。

歯列矯正については、受ける人の年齢や矯正の目的などからみて必要と認められる場合の費用が対象になるとされている一方[4]、容姿を美しく整えることを目的とした費用は対象にならないと示されています[5]。

出っ歯の治療は見た目が動機になりやすいため、対象になるかどうかは診断書の内容とあわせて税務署に確かめておくと確実です。

子どもの出っ歯はいつ相談する?

お子さんの前歯が出ていることに気づいて、いつ相談すべきか迷っている保護者の方も多いはずです。

大人の治療とは異なり、子どもの場合はあごの成長という要素が関わってくるためです。

成長を利用できる時期には、大人になってからでは取れない方法を選べる場合があります。

一方で、早く始めることが常に良い結果につながるとも限りません。

ここでは、相談の時期をめぐる3つの視点をお伝えします。

あごの成長を利用できる時期

子どもの矯正では、あごが成長している時期にしかできない働きかけがあります。

矯正治療では、成長期にあごの成長を利用する治療と、永久歯を整える治療が段階的に行われるためです[2]。

下のあごが小さいことで出っ歯に見えている場合、成長を促す装置によってバランスを整えられる可能性があります。

上のあごが前に出ている場合には、その成長を抑える方向へ働きかける装置が用いられることもあります。

あごの成長が終わってしまうと、こうした土台への働きかけは選べなくなり、歯を動かす治療が中心になります。

成長期にしかできない選択肢があるという点は、相談の時期を考えるうえで押さえておきたいところです。

相談する目安の年齢

相談の時期に一律の正解はありませんが、永久歯が生え始める6〜7歳頃が一つの目安とされています。

乳歯と永久歯が混ざる時期は、あごの成長と歯の生え変わりが同時に進むため、状態を把握しやすいためです。

この時期に相談しておけば、治療が必要な場合の開始時期も、経過を見る場合の方針も定まります。

指しゃぶりや口呼吸といった習慣が続いている場合は、その改善を早めに始めることで歯並びへの影響を抑えられる可能性もあります。

相談したからといって、すぐに治療を始めることになるとは限りません。

まずは現状を把握するという目的で、気になった時点で相談してみるとよいでしょう。

早く始めることが常に良いとは限らない

早期に治療を始めれば良い結果になる、と考えている方も少なくありません。

ただし歯並びの状態によっては、成長を待ってから治療したほうが適している場合もあります。

歯の位置だけが問題であれば、永久歯が生えそろってからの治療で十分に対応できることもあるためです。

早く始めた場合、治療期間が長期にわたり、お子さん本人の負担が大きくなるという面も考えておく必要があります。

装置を装着する期間が長引けば、むし歯のリスクや通院の手間も積み重なっていきます。

いま始める理由と、待った場合に何が変わるのかを聞いたうえで、家族で相談して決めてみてください。

出っ歯の矯正治療に関するよくある質問

Q:出っ歯は歯列矯正で治りますか?

A:前歯の傾きが原因の歯性であれば、矯正装置だけで改善が見込めます。

あごの骨の位置が原因の骨格性でも、ずれが軽度であれば歯を動かす範囲で対応できる場合があります。

ずれが大きい場合には手術を組み合わせた治療が検討されますので、まずは検査を受けて自分のタイプを確かめてみてください。

Q:自分が歯性か骨格性かはどう分かりますか?

A:確定するには、側面から撮影するエックス線検査が必要になります。

口を閉じるときにあごに梅干しのようなシワが寄る、横顔で口元が大きくはみ出しているといった特徴は骨格的な要素をうかがわせる手がかりですが、あくまで傾向にすぎません。

見た目が似ていても中身が違うことは多いため、自己判断せず診断を受けることをおすすめします。

Q:出っ歯の矯正では必ず抜歯が必要ですか?

A:必ず必要というわけではなく、歯を薄く削る方法や奥歯を後方へ動かす方法でスペースを確保できる場合もあります。

アンカースクリューを使えば、奥歯を動かさずに前歯だけを後退させられる可能性も広がります。

ただし確保できる余地には上限があるため、必要な量が大きい症例では抜歯が選択肢になります。

Q:大人になってからでも治せますか?

A:あごの成長が終わっていても、歯を動かす治療は可能です。

成長を利用する方法は選べなくなりますが、抜歯やアンカースクリューによってスペースを確保する方法が用意されています。

年齢を理由にあきらめる必要はありませんので、まずは相談してみてください。

まとめ

出っ歯は正式には上顎前突と呼ばれ、前歯の傾きが原因の歯性と、あごの骨の位置が原因の骨格性に分けられます。

歯性であれば矯正装置だけで改善が見込める一方、骨格性でずれが大きい場合には手術を組み合わせた治療が検討されます。

原因は遺伝によるあごの骨格だけでなく、指しゃぶりや口呼吸、舌で前歯を押す癖といった習慣が関わっていることもあります。

自分のタイプを確定するには側面から撮影するエックス線検査が必要で、見た目だけでは判断できません。

抜歯は必ず必要というわけではなく、歯を薄く削る方法やアンカースクリューによって避けられる可能性も残されています。

費用は装置によって60万〜170万円程度が目安となり、手術をともなう顎変形症の治療では公的医療保険が適用される場合があります。

自分の出っ歯がどのタイプで何が選べるかは検査を受けてはじめて分かりますので、まずはカウンセリングで診断を受けてみましょう。

参考文献

[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「不正咬合」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/teeth/yh-019.html

[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「不正咬合の治療法の概要」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-06-002.html

[3] 厚生労働省保険局医療課医療指導監査室「保険診療の理解のために【歯科】」

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/dl/shidou_kansa_02.pdf

[4] 国税庁「No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1128.htm

[5] 国税庁「歯列を矯正するための費用」

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/08.htm

免責事項

※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療アドバイスではありません。

治療の適否や方法については必ず歯科医師にご相談ください。

※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。

※歯科医師の判断により治療をお受けいただけない場合があります。