受け口は治せる?原因別の治療法と子どもの相談時期

受け口が気になっているけれど、どう治せばいいのか分からず迷っていませんか?

受け口には前歯の傾きが原因の歯性のものと、顎の骨格に原因がある骨格性のものがあり、原因によって必要な治療がまったく変わってきます。

乳歯の時期の受け口が永久歯への生え変わりで自然に治る割合はわずか数%程度とされており、様子を見るという判断には慎重さが求められます。

この記事では受け口の原因、放置したときのリスク、大人と子どもそれぞれの治療法、保険が使える条件まで整理しますので、自分やお子さんの受け口が気になっている方はぜひ参考にしてください。

受け口(反対咬合)とはどんな状態か

横顔の写真を見るたびに下顎のラインが気になってしまう、という経験をお持ちの方は少なくありません。

お子さんの歯並びを見て、下の前歯が上より前に出ていることに気づき、不安になった保護者の方もいるのではないでしょうか。

受け口は歯科の分野では反対咬合と呼ばれ、上下の歯の噛み合わせが通常とは逆になっている状態を指します。

見た目の印象が変わるだけでなく、噛む機能や発音にも影響が及ぶ可能性がある噛み合わせの問題です。

同じ受け口でも、原因が歯にあるか顎の骨にあるかで必要な治療はまったく変わってきます。

まず自分やお子さんの状態がどちらに近いのかを知ることが、判断の出発点になります。

ここでは受け口の基本を、4つの視点から整理していきます。

下の前歯が上より前に出ている状態

受け口とは、上下の前歯の位置関係が逆転している状態です。

通常であれば上の前歯が下の前歯を覆うように噛み合いますが、その関係が反対になっているためです。

軽く噛み合わせたときに、下の前歯が上の前歯より前に出ているかどうかが分かりやすい目安になります。

前歯の一部だけが反対になっている場合もあれば、奥歯まで含めて噛み合わせがずれている場合もあります。

下顎全体が前に出ているように見える状態は、しゃくれと表現されることもあります。

まずは鏡の前で噛み合わせを確認してみるところから始められます。

歯の傾きが原因の歯性のケース

受け口の原因のひとつが、歯の生え方にあるケースです。

顎の骨の位置関係には大きな問題がなく、前歯の傾きだけで上下の関係が逆転している状態だからです。

上の前歯が内側に傾いている、下の前歯が外側に傾いているといった状態が該当します。

歯を動かすことで改善が見込めるため、矯正治療の対象になりやすいタイプといえます。

前歯まわりの移動で対応できる場合は、費用も期間も比較的抑えられる可能性があります。

自分の受け口が軽度だと感じている方は、このタイプに当てはまる可能性を検査で確認してみてください。

顎の骨格が原因の骨格性のケース

顎の骨そのものの位置関係に原因があるケースもあります。

下顎が上顎に対して前方に出ている、あるいは上顎の発育が十分でないといった状態だからです。

歯を動かすだけでは骨の位置関係は変わらないため、根本的な改善には別の対応が必要になります。

程度が大きい場合は、顎の骨を切る外科手術を伴う治療が検討されることもあります。

横顔で下顎のラインが目立つ、口を閉じたときに下唇が前に出ているといった特徴が見られることもあります。

このタイプに該当する場合は、保険が適用される可能性も含めて相談することになります。

見た目だけでは見分けられない

自分でタイプを判断するのは難しいという点も、押さえておきたいところです。

鏡で見える範囲では歯の位置しか分からず、骨の位置関係までは確認できないためです。

歯性と骨格性の両方の要素が混ざっているケースも多く、単純に二分できるわけではありません。

軽度だと思っていた状態が、検査の結果では骨格の影響が大きいと分かることもあります。

逆に手術が必要だと思い込んでいた方が、矯正だけで対応できると説明されるケースも考えられます。

インターネットの情報で自己判断せず、専門的な検査を受けることが確実な方法です。

受け口の原因

なぜ受け口になるのか、その背景を知りたいという方も多いのではないでしょうか。

お子さんの受け口であれば、自分の育て方に問題があったのではないかと気にされる保護者の方もいます。

受け口の原因は一つに絞れるものではなく、複数の要素が重なって生じることがほとんどです。

生まれ持った骨格の特徴が関わる場合もあれば、日常的な癖が影響している場合もあります。

原因を知っておけば、治療と並行して取り組めることも見えてきます。

ここでは代表的な4つの要因を、順に整理していきます。

遺伝的な要因

顎の骨格には、生まれ持った特徴が関わってきます。

顔立ちや骨格の形は親から子へ受け継がれる要素があり、顎の大きさや位置関係も例外ではないためです。

家族に受け口の方がいる場合、同じ傾向が現れることがあります。

骨格が関わる受け口は、成長とともに差が広がっていく可能性がある点も特徴といえます。

ただし遺伝的な要因があるからといって、必ず受け口になるわけではありません。

家族に同じ傾向がある場合は、早めに相談しておくと選択肢が広がります。

舌や唇の癖

日常的にかかる力も、歯の位置に影響します。

歯は唇や頬の外側からの力と、舌の内側からの力のバランスが取れた位置に落ち着く性質があるためです。

舌で下の前歯を押す癖があると、その力が継続的に加わって前歯が前方へ動くことがあります。

舌の位置が低い状態が続くと、上顎の成長が十分に促されないという指摘もあります。

指しゃぶりや下唇を噛む癖も、噛み合わせに影響する要因として挙げられます。

癖への対応は装置を使わずに始められる場合もあるため、心当たりがあれば相談してみてください。

口呼吸や姿勢

呼吸や身体の使い方も、関わってくる要素です。

口を開けたまま過ごす習慣があると、唇からの力が弱まって歯を押さえる働きが低下するためです。

口が開いた状態では舌の位置も下がりやすく、上下のバランスが崩れる方向に働きます。

鼻づまりが続いて口呼吸が習慣化している場合は、その原因への対応も必要になることがあります。

頬づえをつく、うつ伏せで寝るといった習慣が影響する可能性を指摘する見方もあります。

生活のなかの習慣を見直すことが、治療の効果を支える場合もあります。

乳歯の生え方や虫歯

お子さんの場合、歯の生え変わりが関わることもあります。

乳歯が早く抜けたり長く残ったりすると、永久歯が正しい位置に生えにくくなるためです。

むし歯によって乳歯を早期に失えば、隣の歯が移動してスペースが不足することもあります[1]。

前歯が生えるときの向きによって、一時的に反対の噛み合わせになる場合もあります。

歯の生え変わりの時期は、噛み合わせが変化しやすい不安定な段階といえます。

定期的に確認してもらえば、変化に早く気づけます。

受け口を放置するとどうなる

見た目が気になるだけで日常生活に支障がないなら、そのままでもよいのではと考える方もいるかもしれません。

費用や期間を考えると、治療に踏み切る決断は簡単なものではありませんよね。

ただし受け口は見た目の問題にとどまらず、噛む機能や口の中の健康にも関わってきます。

上下の歯が正しく噛み合わない状態が続けば、食事や発音といった日常の動作にも影響が及ぶためです。

お子さんの場合は、成長とともに状態が変化していく可能性も考えておく必要があります。

リスクを知ったうえで判断すれば、治療するにしても様子を見るにしても納得できます。

ここでは放置した場合に考えられる5つの影響を、順に見ていきます。

咀嚼が不十分になりやすい

最も直接的な影響は、食べ物を噛む機能に現れます。

前歯が正しく噛み合わない状態では、食べ物を噛み切るという動作が難しくなるためです。

奥歯に負担が偏り、噛む効率そのものが下がってしまうことも考えられます。

咀嚼が不十分だと食べ物を丸呑みするような状態になり、消化管に影響が及ぶ可能性があります。

栄養が十分に吸収されにくくなれば、身体の成長にも影響が出ることがあるという指摘もあります。

見た目より先に、この機能面の影響を確認しておきたいところです。

発音に影響が出ることがある

話し方にも、影響が現れる場合があります。

発音は舌と歯の位置関係によって作られるため、噛み合わせが変わると音の出方も変わってくるためです。

受け口ではサ行など一定の音が発音しにくくなるという指摘があります。

舌足らずな話し方になり、コミュニケーションの場面で気になるという方もいます。

お子さんの場合、言葉を覚えていく時期と重なると影響が長く残る可能性も考えられます。

発音のしにくさを自覚している場合は、その点も相談時に伝えておきましょう。

むし歯や歯周組織のリスクが高まる

口の中の健康という面でも、注意が必要です。

噛み合わせや歯並びに問題があると、歯みがきが隅々まで行き届きにくくなるためです。

汚れが残りやすい部分が生まれ、むし歯のリスクが高まる要因になります[1]。

歯を支える組織に炎症が起これば、歯の安定にも影響が及んでいきます[2]。

受け口では口が閉じにくくなり、口の中が乾燥しやすくなるという性質もあります。

唾液による自浄作用が働きにくくなれば、細菌が繁殖しやすい環境が生まれてしまいます。

顎の成長が進んでしまう可能性

お子さんの場合、時間の経過が状態を変える要素になります。

下顎の成長は思春期まで続くため、反対の噛み合わせのまま過ごすと下顎が成長しすぎてしまう可能性が高くなるという指摘があるためです。

成長するにつれて上下の差が広がり、治療の難易度も上がっていきます。

軽度だった状態が、数年後には骨格の問題として扱われるようになることも考えられます。

成長が終わってからの治療では、外科的な処置が検討される場合もあります。

早い段階での相談が勧められる背景には、この成長という要素があります。

見た目と心理面への影響

外見に関わる影響も、無視できない要素です。

下顎が前に出た状態は横顔の印象を大きく変え、いわゆるしゃくれと呼ばれる見た目になるためです。

口元を気にして笑うときに手で隠す、写真を撮られるのが苦手になるという方もいます。

お子さんの場合、学校生活のなかで指摘を受けて心理的な負担を感じることも考えられます。

見た目の悩みは他人からは軽く見られがちですが、本人にとっては日常に影響する問題です。

機能面と見た目の両方から、治療の必要性を検討してみてください。

受け口は自然に治るのか

お子さんの受け口について、成長すれば治るのではと期待している保護者の方もいるのではないでしょうか。

歯が生え変わるときに位置が変わって、自然に整うという可能性を考えるのは自然なことです。

実際、かつては乳歯の時期の受け口について経過観察を勧める考え方が一般的でした。

しかし近年は、自然に治る割合の低さを踏まえて早期の相談を勧める見方が広がっています。

判断の材料となる数値を知っておけば、様子を見るかどうかの決断もしやすくなります。

ここでは自然治癒の可能性について、3つの視点から整理していきます。

乳歯の時期に自然に治る割合

期待とは異なる数値が示されています。

乳歯列期の受け口が、永久歯に生え変わることで自然に治る確率はわずか数%程度といわれているためです。

つまり大半のケースでは、生え変わりを待っても状態は変わらないということになります。

かつては様子を見ましょうと案内されることが多かった領域ですが、この数値を踏まえて方針が見直されつつあります。

乳歯列期から対応できる装置が登場したことも、早期治療が広がった背景にあります。

自然に治る可能性が低いという前提で検討するほうが、判断を誤りません。

「様子を見る」という判断の考え方

とはいえ、必ず今すぐ治療すべきというわけでもありません。

症状の程度やお子さんの年齢、生え変わりの状況によって、適した開始時期は変わってくるためです。

軽度で経過を見ながら判断するという方針が示されることもあります。

大切なのは、様子を見るという判断そのものが専門的な診断に基づいているかどうかです。

歯科医院で確認したうえで経過を追うのと、何も調べずに待つのとではまったく意味が違います。

定期的に診てもらいながら経過を見るという形にできれば、変化にも早く気づけます。

成長によって差が広がる場合がある

時間が味方にならない可能性も、知っておきたいところです。

下顎の成長は思春期まで続くため、待つあいだに上下の差が大きくなっていくことがあるためです。

成長が進んでから治療を始めると、選べる方法が変わってくる場合もあります。

成長期を過ぎてしまえば、顎の成長を利用した治療という選択肢は使えなくなります。

骨格の不調和が大きくなれば、外科的な処置を伴う治療が検討されることにもなります。

待つことのリスクも含めて、専門家と相談しながら判断していきましょう。

子どもの受け口の治療

お子さんの受け口は、成長という要素が加わるぶん大人とは考え方が変わってきます。

顎が発育している時期にしかできない働きかけがあり、その時期を過ぎると選べる方法も変わっていくためです。

3歳児健診で指摘されて相談に訪れる保護者の方も増えており、乳歯の段階から対応できる方法も広がってきました。

治療の目的は歯を一本ずつ並べることではなく、顎の成長を利用して上下の関係を整えることにあります。

年齢によって使える装置も目的も変わるため、段階に分けて理解しておきたいところです。

ここでは子どもの受け口の治療を、4つの段階に分けて見ていきます。

3歳から始められる装置がある

乳歯だけの時期でも、対応できる方法があります。

取り外しのできるマウスピース型の装置を使い、口の周りの筋肉の働きに働きかける方法が用いられているためです。

3歳から5歳の乳歯列期を対象とした装置があり、主に就寝時に装着するという使い方をします。

日中ずっと装着する必要がないため、小さなお子さんでも負担が少ないという特徴があります。

数か月から半年程度で変化が現れ、後戻りを防ぐためその後も続けて合計1年ほど使用するという流れが示されています。

3歳児健診で指摘された段階でも相談できるため、早めに診てもらう価値があります。

顎の成長を利用して整える

この時期の治療には、明確な目的があります。

歯並びを直接整えるのではなく、顎の成長を利用して上下の噛み合わせを正常な方向へ導くことを目指すためです。

舌の圧力と唇の圧力のバランスを改善し、舌を高い位置に保てるようにするという働きかけが行われます。

舌の位置が整えば、上顎の成長が促されて上下の関係が改善に向かう可能性があります。

歯を動かす治療ではないため、この段階で歯並びが完全に整うわけではありません。

土台となる関係を整えておくことが、その後の治療を軽くすることにつながります。

混合歯列期に行う治療

乳歯と永久歯が混在する時期にも、治療の選択肢があります。

6歳から12歳頃にかけて顎の成長が続いており、その力を利用できる時期にあたるためです。

上顎の成長を促す装置や、顎の幅を広げる装置が用いられることがあります。

この段階の治療は1期治療と呼ばれ、将来の歯並びの土台を整えることを目的とします。

顎に十分なスペースを作れれば、将来の抜歯を避けられる可能性が高まるという利点もあります。

生え変わりの状況を見ながら、適した時期に開始することになります。

永久歯が生え揃ってからの治療

すべての永久歯が生え揃ってからは、内容が変わってきます。

顎の成長を利用する段階が終わり、歯を一本ずつ動かして並べる治療に移行するためです。

この段階は2期治療と呼ばれ、大人の矯正とほぼ同じ内容になります。

1期治療で土台を整えていれば、2期治療の負担が軽くなる可能性があります。

一方で骨格の不調和が大きく残っている場合は、成長の終了を待って外科的な処置を検討することもあります。

どの段階でどこまでを目指すのかを、治療を始める前に共有しておきましょう。

大人の受け口の治療

成長が終わってから受け口を治したいと考えている方も、選択肢は残されています。

大人になってからでは手遅れではないかと感じている方もいるかもしれませんが、そうではありません。

大人の治療では顎の成長を利用できないため、歯を動かす治療か、骨の位置を変える治療かのどちらかになります。

どちらが必要かは、原因が歯にあるか骨格にあるかによって決まります。

治療の内容が変われば期間も費用も変わってくるため、まず原因を特定することが出発点になります。

ここでは大人の治療について、4つの視点から整理していきます。

歯性の場合はマウスピース矯正やワイヤー矯正

歯の傾きが原因であれば、矯正治療で対応できる可能性があります。

前歯の位置を動かすことで上下の関係を整えられるためです。

歯の表面に装置を装着するワイヤー矯正は、複雑な移動にも対応しやすいという特徴があります。

透明な装置を使うマウスピース矯正は目立ちにくい一方、対応できる動きに制約があります。

軽度であれば前歯を中心とした部分矯正で対応できる場合もあります。

どの方法が適しているかは検査によって判断されるため、希望を伝えたうえで相談してみてください。

骨格性で程度が大きい場合は外科矯正

顎の骨に大きな不調和がある場合は、別の対応が検討されます。

歯を動かすだけでは骨の位置関係が変わらず、根本的な改善につながらないためです。

顎の骨を切って位置を移動させる外科手術を伴う治療が選択肢になります。

手術の前後に矯正治療を行うため、期間は他の方法より長くなる傾向があります。

入院を伴うため、仕事や生活の予定を調整する必要も出てきます。

一方でこの方法であれば、骨格から改善できるという結果につながります。

治療期間の目安

期間についても、方法によって変わってきます。

動かす距離と、手術を伴うかどうかによって必要な時間が異なるためです。

歯を動かす矯正であれば、1年から3年程度が目安とされています。

外科手術を伴う場合は、術前矯正と術後矯正を合わせて2年から3年程度かかることが一般的です。

いずれの場合も、歯を動かし終えたあとに位置を安定させる保定期間が続きます。

保定まで含めた総期間を確認したうえで、生活の計画と重ね合わせてみてください。

大人になってからでも治療は可能

年齢を理由にあきらめる必要はありません。

歯を動かす仕組みは年齢を重ねても変わらず、実際に幅広い年代の方が治療を受けているためです。

ただし歯を支える骨や歯周組織の状態によっては、力の加え方を慎重にする必要が生じます[2]。

歯周組織に炎症がある場合は、そちらの治療を先に行うことになります。

成長を利用できないぶん、子どもより選べる方法が限られるという違いはあります。

まず検査を受けて、自分の状態でどこまで改善できるのかを確認するところから始めてみましょう。

受け口の治療に保険は使えるのか

矯正は自由診療という印象が強く、保険は使えないものと思い込んでいる方も多いのではないでしょうか。

実は受け口については、条件を満たせば健康保険が適用される可能性があります。

これは矯正治療のなかでも限られたケースにあたり、誰でも使える制度ではありません。

適用されるのは、噛む機能に著しい影響が及ぶと国が判断した症例に限られるためです。

該当すれば自己負担は大きく抑えられるため、確認しておく価値は十分にあります。

制度の内容を知っておけば、何を確かめればよいかも明確になります。

ここでは保険に関する4つの論点を、順に整理していきます。

顎変形症と診断された場合

保険が使えるのは、限られた診断がついた場合です。

健康保険が対象とするのは病気やけがの治療であり、機能に著しい影響が及ぶと認められた症例に限られるためです[3]。

受け口については、顎変形症で顎離断などの外科手術を必要とする場合の手術前後の矯正治療が対象になります。

つまり外科手術を伴う程度の症例であることが、適用の前提になります。

見た目を改善したいという理由だけでは、この基準に当てはまりません。

自分が該当するかどうかは、専門的な検査を経て判断されることになります。

届出のある医療機関でのみ受けられる

もう一つ、見落とされやすい条件があります。

保険で矯正治療を行うには、医療機関が国の定めた施設基準を満たし、地方厚生局に届け出ている必要があるためです[4]。

顎変形症の治療については、顎口腔機能診断料の届出をした医療機関が対象になります。

矯正を扱っている医療機関であっても、この届出がなければ保険での対応はできません。

届出のある医療機関は、各地方厚生局が公開している名簿で確認できます[4]。

保険適用を検討する場合は、まず届出の有無を確認するところから始めてください。

保険適用でも装置は限定される

保険で治療を受ける場合、使用する装置にも定めがあります。

保険診療では治療に用いる材料や装置まで細かくルールが設けられているためです[3]。

歯の表側にブラケットを装着してワイヤーでつなぐ方法などが用いられます。

マウスピース型の装置は保険で使える矯正装置に含まれていません。

目立ちにくさを優先したい場合は、その部分が自由診療になるという関係を理解しておきましょう。

装置を選べない代わりに負担が大きく抑えられるという関係になります。

医療費控除で負担を軽くできる場合がある

保険が使えない場合でも、税制上の仕組みは活用できます。

医療費控除は1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、確定申告によって所得税の一部が戻る仕組みだからです[5]。

歯列矯正については、受ける人の年齢や矯正の目的からみて必要と認められる場合の費用が対象になると示されています[6]。

そのうえで、発育段階にある子どもの成長を妨げないために行う不正咬合の歯列矯正は、対象となる例として明示されています[6]。

受け口は噛む機能に影響が及ぶ状態にあたるため、大人の場合も対象になる可能性があります。

判断は個別の事情によるため、歯科医師や税務署に確認してみてください。

治療にかかる費用の考え方

保険の可否が見えてくると、次に気になるのは実際の負担ですよね。

受け口の治療は選ぶ方法によって費用の水準が大きく変わるため、全体像を把握しておく必要があります。

自由診療となる場合は医療機関ごとに料金が設定され、同じ内容でも金額に差が生まれます[7]。

一方で保険が適用される場合は、他の保険診療と同じ仕組みで自己負担が決まります。

どちらに該当するかで負担の桁が変わるため、まず自分のケースを確認することが出発点になります。

ここでは費用について、4つの視点から整理していきます。

治療法によって水準が変わる

費用を左右する最も大きな要素は、選ぶ治療法です。

歯を動かすだけの矯正と、外科手術を伴う治療では、必要な処置の規模がまったく異なるためです。

前歯を中心に動かす部分矯正であれば、比較的抑えられる水準になります。

奥歯まで含めた全体矯正では、装置の量も期間も増えるぶん費用も上がります。

外科手術を伴う場合は、自由診療として受けるか保険が適用されるかで大きく変わってきます。

自分がどの範囲に該当しそうかを知っておけば、おおよその見当をつけられます。

保険適用なら自己負担は原則3割

保険が使えるケースでは、負担が大きく抑えられます。

健康保険では医療費のうち一定割合を患者が負担し、残りは保険から支払われるためです[3]。

検査、診断、装置の装着、通院ごとの調整といった一連の流れが保険算定の対象になります。

外科手術を伴う場合は入院費用も発生しますが、そこにも保険が適用される形になります。

自由診療と比べると負担は大きく下がるため、該当するかどうかの確認には意味があります。

年齢や所得によっては、さらに負担を軽減する制度が使える場合もあります。

費用の内訳を確認する

提示された金額の中身を確かめることも欠かせません。

自由診療では料金体系が医療機関ごとに異なり、含まれる項目にも違いがあるためです[7]。

精密検査料、診断料、通院ごとの調整料、保定装置の費用が確認の対象になります。

外科手術を伴う場合は、手術と入院にかかる費用が別に発生します。

治療が長引いた場合や、装置の作り直しが必要になった場合の扱いも聞いておきたい項目です。

書面で受け取って持ち帰り、項目ごとに比べてみると差が見えてきます。

支払い方を工夫する

まとまった資金を用意できない場合の方法もあります。

分割払いには医療機関が独自に行うものと、信販会社を介するデンタルローンの2種類があるためです。

月々の負担を小さくすることで、治療を始めるハードルを下げられます。

ただしデンタルローンでは金利や手数料が加わり、総支払額は現金払いより大きくなります。

医療費控除と組み合わせれば、実際の負担をさらに抑えられる可能性もあります[5]。

契約前に総支払額を確認し、無理のない範囲かどうかを見極めておきましょう。

受け口の治療を検討するときに確認したいこと

情報がそろってきたら、最後は実際に相談へ行く段階です。

限られたカウンセリングの時間で必要なことを聞けるよう、質問を準備しておきたいところです。

確認したいのは、原因が歯にあるか骨格にあるか、どの治療法が適しているか、保険が使える可能性はあるか、そして期間と総額はどうかという4点です。

いずれも遠慮すべき質問ではなく、納得して進めるために必要な情報にあたります。

矯正治療は一部の例外を除いて公的医療保険の対象外である自由診療にあたり、方針も料金も医療機関ごとに異なります[7]。

複数の医療機関で話を聞き、比べたうえで決めるという進め方も現実的な選択です。

まず確認したいのは、自分やお子さんの受け口の原因がどこにあるのかという点です。

歯の傾きが原因なのか、顎の骨格に原因があるのかで、必要な治療がまったく変わってくるためです。

顎の骨格を分析する検査を行ったうえで、その結果を説明してもらってください。

軽度だと思っていた状態が骨格の影響を含んでいたと分かることもあり、この確認は欠かせません。

次に、提案された治療法の根拠を聞いておきましょう。

なぜその方法が選ばれたのか、他の選択肢では対応できないのかを比べて説明してもらってください。

外科手術を伴う治療が提案された場合は、それ以外の方法での可能性についても確認しておきたいところです。

どこまでの改善を目指すのかという目標を共有しておけば、仕上がりの受け止め方も変わってきます。

保険が使える可能性についても、必ず確認しておいてください。

外科手術を必要とする程度の症例であれば、顎変形症として保険が適用される可能性があるためです[3]。

その場合は施設基準の届出をした医療機関である必要があるため、相談先の選び方にも関わってきます[4]。

自由診療の見積もりだけを比べる前に、この可能性を確かめておく価値があります。

お子さんの受け口であれば、開始時期についても聞いておきましょう。

顎の成長を利用できる期間には限りがあり、その時期を過ぎると選べる方法が変わってくるためです。

今すぐ始めるべきなのか、経過を見ながら判断してよいのかを、根拠とあわせて説明してもらってください。

経過観察になる場合も、どのくらいの間隔で確認するのかを決めておけば変化に早く気づけます。

説明を受けても迷う場合は、その場で決めず持ち帰って検討して構いません。

契約内容に不安が残る場合は、独立行政法人国民生活センターや自治体の消費生活センターに相談するという方法もあります[8]。

受け口に関するよくある質問

Q1. 受け口は自然に治りますか?

乳歯の時期の受け口が永久歯への生え変わりで自然に治る割合は、数%程度といわれています。

大半のケースでは、生え変わりを待っても状態は変わらないということになります。

様子を見る場合も、専門的な診断を受けたうえで判断してください。

Q2. 何歳から治療できますか?

乳歯だけの時期にあたる3歳から5歳でも、使える装置があります。

主に就寝時に装着するタイプで、顎の成長を利用して噛み合わせを整えることを目的とします。

3歳児健診で指摘された段階でも相談できます。

Q3. 放置するとどうなりますか?

咀嚼が不十分になる、発音に影響が出る、むし歯のリスクが高まるといった影響が考えられます[1]。

お子さんの場合は、下顎が成長しすぎてしまう可能性も指摘されています。

時間の経過が状態を変える要素になる点は知っておきたいところです。

Q4. 手術は必要ですか?

歯の傾きが原因であれば、矯正治療だけで対応できる可能性があります。

顎の骨格に大きな不調和がある場合は、外科手術を伴う治療が検討されます。

どちらに該当するかは検査を受けて判断されます。

Q5. 保険は使えますか?

顎変形症と診断され、外科手術を必要とする場合に適用される可能性があります[3]。

その場合も施設基準の届出をした医療機関でのみ受けられます[4]。

使用できる装置も定められた範囲に限られます。

Q6. 大人になってからでも治せますか?

年齢を理由にあきらめる必要はなく、幅広い年代の方が治療を受けています。

ただし顎の成長を利用できないため、子どもより選べる方法は限られます。

歯を支える組織の状態によっては、先に別の治療が必要になる場合もあります[2]。

まとめ

受け口には前歯の傾きが原因の歯性のものと、顎の骨格に原因がある骨格性のものがあり、原因によって必要な治療が変わります。

放置すると咀嚼や発音に影響が出るほか、むし歯や歯周組織のリスクが高まる可能性があります[1][2]。

乳歯の時期の受け口が自然に治る割合は数%程度とされ、様子を見る場合も専門的な診断が欠かせません。

お子さんの場合は3歳から使える装置があり、顎の成長を利用して噛み合わせを整えることを目指します。

大人の場合も治療は可能で、歯性であれば矯正治療、骨格性で程度が大きい場合は外科手術を伴う治療が検討されます。

顎変形症と診断され外科手術を必要とする場合は健康保険が適用される可能性があり、届出のある医療機関で受けられます[3][4]。

原因の特定には顎の骨格を分析する検査が必要なため、まず診てもらうところから始めてみましょう。

参考文献

[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「むし歯の特徴・原因・進行」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-002.html

[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周病とは」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-03-001.html

[3] 厚生労働省「保険診療の理解のために【歯科】」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/index.html

[4] 厚生労働省「地方厚生(支)局 施設基準届出受理医療機関名簿」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/shitei/index.html

[5] 国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm

[6] 国税庁「No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1128.htm

[7] 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html

[8] 独立行政法人国民生活センター「医療・美容医療」

https://www.kokusen.go.jp/t_box/t_box-faq/g-1.html

免責事項

※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療アドバイスではありません。

※治療の必要性や進め方については必ず歯科医師にご相談ください。

※効果の現れ方や治療期間には個人差がございます。

※医療費控除の適用可否は個別の事情により異なるため、詳細は税務署にご確認ください。