開咬(オープンバイト)の治し方|原因と舌の癖への対処

奥歯を噛み合わせても前歯が閉じない状態が気になっていませんか?
前歯が噛み合わないこの状態は開咬と呼ばれ、舌を歯の間に入れる癖や口呼吸といった日常的な習慣が原因になっているケースが多く見られます。
装置で歯を動かして隙間を閉じることはできますが、原因となる癖が残っていると治療後に再び開いてしまう可能性があります。
この記事では開咬の原因、放置したときの影響、治療法の選択肢、舌の癖への対処法まで整理しますので、前歯の噛み合わせが気になっている方はぜひ参考にしてください。
開咬(オープンバイト)とはどんな状態か
麺類を前歯で噛み切れない、食事のたびに奥歯まで運んで噛んでいる、という不便を感じている方は少なくありません。
歯並び自体はそれほど乱れていないのに、なぜか前歯が使えないという状態に、原因が分からないまま過ごしてきたという方もいるのではないでしょうか。
この状態は歯科の分野で開咬と呼ばれ、英語ではオープンバイトと表現されます。
奥歯はしっかり噛み合っているのに、前歯だけが上下で接触しないという特徴を持つ噛み合わせの問題です。
見た目の印象より、食事や発音といった機能面に影響が現れやすいという点も特徴といえます。
まず自分の状態がこれに当てはまるかを確認するところから始めてみましょう。
ここでは開咬の基本を、4つの視点から整理していきます。
奥歯を噛んでも前歯が閉じない
開咬とは、上下の歯を噛み合わせても隙間が残る状態です。
通常であれば上の前歯が下の前歯にわずかに重なるように噛み合いますが、その接触が失われているためです。
奥歯を強く噛みしめても、前歯のあいだに空間が空いたままになります。
隙間の大きさは症例によって異なり、わずかに開いている程度から、はっきりと空間が見える状態までさまざまです。
前歯が使えないため、食べ物を噛み切る動作を奥歯で代用することになります。
歯並び自体は整って見えることもあり、噛み合わせの問題だと気づきにくい面もあります。
前歯だけでなく奥歯側で起こることもある
開咬は前歯に限った状態ではありません。
上下の歯が接触しない部分がどこに生じるかは、症例によって変わってくるためです。
多くは前歯の部分に現れますが、奥歯の一部だけが噛み合わないというケースも存在します。
奥歯側で起こる場合は、噛む力の分散という面で影響がより大きくなる可能性があります。
前歯は噛み合っているのに食事がしにくいと感じる場合は、この可能性も考えられます。
どの部分が接触していないかは、検査によって正確に把握されます。
自分で確認する方法
自宅でもある程度の確認はできます。
鏡の前で軽く噛み合わせたときに、前歯が接触しているかどうかを見れば分かるためです。
奥歯をしっかり噛んだ状態で、前歯のあいだに隙間が見えるかを確認してみてください。
薄い紙を前歯で挟んでみて、噛み切れないようであれば接触していない可能性があります。
麺類を前歯で噛み切れない、前歯でものをかじれないという自覚があれば手がかりになります。
ただし程度や原因までは自分では判断できないため、確認は入口として使ってください。
歯性と骨格性に分かれる
開咬にも、原因による分類があります。
歯の生え方や傾きに原因があるケースと、顎の骨格の形に原因があるケースでは、必要な治療が変わってくるためです。
歯の傾きや位置によって前歯が接触していない状態であれば、歯を動かす治療で改善が見込めます。
一方で顎の骨の形そのものが関わっている場合は、歯を動かすだけでは限界があります。
程度が大きい場合は、外科的な処置を伴う治療が検討されることもあります。
見た目が似ていても原因が異なるため、検査による判断が欠かせません。
開咬の原因
なぜ前歯が噛み合わなくなるのか、その理由を知りたいという方も多いのではないでしょうか。
自分の生活習慣に原因があるのなら、そこから見直したいと考えるのは自然なことです。
開咬の原因として特に多く挙げられるのが、舌の使い方に関する癖です。
歯は唇や頬の外側からの力と、舌の内側からの力のバランスが取れた位置に落ち着く性質があるためです。
このバランスが崩れれば、歯は押された方向へ動いていきます。
原因を知っておけば、治療と並行して取り組めることも見えてきます。
ここでは代表的な5つの要因を、順に整理していきます。
舌を歯の間に入れる癖
最も多く指摘されるのが、この癖です。
上下の歯のあいだに舌を挟む習慣があると、その位置に舌の厚みぶんの空間が保たれてしまうためです。
無意識のうちに行われていることが多く、自分では気づいていないケースも少なくありません。
飲み込むときに舌を前に出す動きが習慣になっている場合もあります。
一日に何度も繰り返される動作のため、積み重なった力が歯の位置に影響していきます。
この癖が残ったままでは、治療後に再び開いてしまう可能性がある点も重要です。
舌で前歯を押す癖
歯を直接押す動きも、原因として挙げられます。
舌の先で前歯の裏側を押す習慣があると、その力が継続的に加わって歯が前方へ傾いていくためです。
前歯が外側へ傾けば、上下の接触が失われて隙間が生じることになります。
考えごとをしているとき、集中しているときに無意識で行っているという方もいます。
舌を噛む癖がある場合も、同じように歯の位置に影響する可能性があります。
意識して気づけるようになることが、改善への第一歩になります。
指しゃぶりの習慣
お子さんの場合、指しゃぶりが関わることもあります。
指を吸う動作によって上下の歯のあいだに空間が作られ、その形のまま歯が並んでいくためです。
乳歯の時期に長く続いた場合、永久歯の生え方にも影響が及ぶ可能性があります。
爪を噛む癖や、鉛筆を噛む習慣が同じように働くこともあります。
年齢が上がるほど癖の改善が難しくなるため、早い段階での対応が有効とされています。
癖への対応は装置を使わずに始められる場合もあり、まず相談してみる価値があります。
口呼吸と舌の位置
呼吸の仕方も、噛み合わせに関わってきます。
口を開けたまま過ごす習慣があると、唇からの力が弱まって歯を押さえる働きが低下するためです。
口が開いた状態では舌の位置も下がりやすく、上下のバランスが崩れる方向に働きます。
鼻づまりが続いて口呼吸が習慣化している場合は、その原因への対応も必要になることがあります。
口が閉じにくい状態が続けば、口の中が乾燥して細菌が繁殖しやすい環境も生まれます[1]。
呼吸の仕方を見直すことが、治療の効果を支える場合もあります。
顎の骨格の形
癖とは関係なく、骨格が関わっているケースもあります。
顎の骨の成長する方向や形によって、上下の歯が接触しにくい構造になっている場合があるためです。
下顎が下方向へ成長する傾向が強い場合、前歯が届きにくくなることがあります。
遺伝的な要素が関わる部分でもあり、生活習慣だけでは説明できない要因といえます。
骨格の影響が大きい場合は、歯を動かすだけでは限界があり、別の対応が検討されます。
自分がどのタイプに当てはまるかは、顎の骨格を分析する検査によって判断されます。
開咬を放置するとどうなる
前歯が噛み合わないだけで、日常生活はなんとか送れているという方も多いのではないでしょうか。
奥歯で噛めているのなら急いで治す必要はないのでは、と考えるのも自然な判断です。
ただし開咬は見た目より機能への影響が大きい噛み合わせの問題です。
前歯が担うはずの役割を奥歯が肩代わりしている状態が続けば、その負担は少しずつ蓄積していきます。
食事や発音といった日常の動作に加えて、口の中の環境にも影響が及ぶ可能性があります。
リスクを知ったうえで判断すれば、治療するにしても様子を見るにしても納得できます。
ここでは放置した場合に考えられる5つの影響を、順に見ていきます。
前歯で食べ物を噛み切れない
最も直接的に現れるのが、食事の場面です。
前歯は食べ物を噛み切るという役割を担っており、その接触が失われれば機能を果たせなくなるためです。
麺類を前歯で噛み切れない、サンドイッチをかじれないといった不便が日常的に生じます。
食べ物を口の奥まで運んでから噛むという動作が習慣になり、食事に時間がかかることもあります。
前歯が使えない状態に慣れてしまい、不便だと自覚していないという方も少なくありません。
食事のたびに小さな負担が生じているという点は、意識しておきたいところです。
奥歯に負担が集中する
前歯が使えない分の負担は、他の歯にかかります。
本来なら前歯と奥歯で分担するはずの噛む力が、奥歯だけに集中してしまうためです。
特定の歯に強い力がかかり続ければ、その歯がすり減ったり動揺したりする可能性があります。
歯を支える組織にも負担がかかり、状態に影響が及ぶことも考えられます[2]。
年齢を重ねるほど、こうした積み重ねの影響は大きくなっていきます。
奥歯を失うことになれば、噛み合わせ全体がさらに崩れていくという流れも起こり得ます。
発音に影響が出ることがある
話し方にも、変化が現れる場合があります。
発音は舌と歯の位置関係によって作られるため、前歯に隙間があると音の出方が変わってくるためです。
サ行やタ行の発音がしにくくなる、息が漏れるような話し方になるという例が挙げられます。
舌が前に出やすい状態になっていれば、その動きが発音にも影響していきます。
人前で話す機会が多い方にとっては、日常的な負担として感じられることもあります。
発音のしにくさを自覚している場合は、相談時にその点も伝えてみてください。
口の中が乾燥しやすくなる
口が閉じにくい状態は、口の中の環境にも関わってきます。
前歯に隙間があると唇を閉じにくくなり、口呼吸になりやすい状態が生まれるためです。
口の中が乾燥すれば、唾液による自浄作用が働きにくくなります。
汚れが流されにくくなることで、むし歯のリスクが高まる要因にもなります[1]。
歯を支える組織に炎症が起これば、歯の安定にも影響が及んでいきます[2]。
見た目や噛む機能だけでなく、口の健康という面からも影響が生じる可能性があります。
顎の関節に影響が出る場合がある
噛み合わせのバランスは、顎の動きにも関わってきます。
上下の歯の接触の仕方が偏っていると、顎を動かす筋肉や関節に無理な力がかかることがあるためです。
口を開けるときに音が鳴る、顎が疲れやすいといった変化として現れる場合があります。
前歯で噛み切れないぶん、顎を前後に動かして食べるという癖がつくこともあります。
必ず症状が出るわけではありませんが、可能性として知っておきたい点です。
気になる症状がある場合は、噛み合わせとの関連も含めて相談してみてください。
開咬の治療法
原因と影響が見えてきたところで、実際にどう治すのかという話に入ります。
前歯の隙間を閉じるには、歯を動かす方法と骨の位置を変える方法があります。
どちらが必要かは、原因が歯にあるか骨格にあるかによって決まります。
開咬の治療では、前歯を伸ばす動きと奥歯を沈める動きを組み合わせて隙間を閉じていきます。
装置によって得意とする動きが異なるため、選択肢の特徴を知っておくと理解が深まります。
ここでは治療法について、5つの視点から整理していきます。
前歯を伸ばす・奥歯を沈める動き
隙間を閉じるには、2つの方向からのアプローチがあります。
上下の前歯を歯の先端の方向へ移動させるか、伸びすぎた奥歯を歯の根の方向へ移動させるかという考え方があるためです。
前歯を先端方向へ動かす移動は、挺出と呼ばれます。
奥歯を根の方向へ沈める移動は、圧下と呼ばれる動きにあたります。
どちらか一方だけの場合もあれば、両方を組み合わせる場合もあります。
奥歯が伸びすぎていることで前歯が届かなくなっているケースもあり、原因に応じて計画が立てられます。
マウスピース矯正が適しているとされる理由
透明な装置を使う方法は、開咬において有利な特徴を持つとされています。
マウスピースには一定の厚みがあり、装着することで奥歯に力がかかりやすい構造になっているためです。
奥歯が沈む方向に力が働けば、てこの原理で前歯の隙間が閉じる動きにつながります。
この特性から、開咬はマウスピース矯正が得意とする症例のひとつという見方が示されています。
ワイヤー矯正より適していると言われることもあり、選択肢として検討する価値があります。
ただし装着時間が不足すれば計画どおりに進まないため、自己管理が前提となる点は理解しておきましょう。
ワイヤー矯正で対応する場合
歯の表面に装置を接着する方法も、当然選択肢になります。
歯を細かくコントロールしやすく、対応できる動きの幅が広いという特徴があるためです。
前歯を挺出させる動きにも、奥歯を圧下させる動きにも対応できます。
歯を動かす支点として小さなねじを顎の骨に埋め込む方法を併用する場合もあります。
自分で取り外せないため、装着時間の管理という課題が生じない点も利点にあたります。
症例の内容によっては、こちらが適していると判断されることもあります。
外科手術を伴う治療
骨格に大きな原因がある場合は、別の対応が検討されます。
歯を動かすだけでは顎の骨の位置関係が変わらず、根本的な改善につながらないためです。
顎の骨を切って位置を移動させることで、上下の前歯の噛み合わせを整えるという方法があります。
手術の前後に矯正治療を行うため、期間は他の方法より長くなります。
下顎の骨格的な問題が大きい場合は、顎変形症の治療として保険診療が可能なケースもあるとされています。
該当する可能性がある場合は、その点も含めて相談してみてください。
治療の難易度は高い症例とされる
装置の適性とは別に、押さえておきたい点があります。
開咬は矯正のなかでも難しい症例とされ、診断と治療計画に専門的な判断が求められるためです。
原因が舌の癖にあるのか骨格にあるのかの見極めが、結果を大きく左右します。
隙間を閉じるだけでなく、閉じた状態を維持できるかまで考えた計画が必要になります。
マウスピース矯正が適しているという評価と、難しい症例であるという評価は矛盾しません。
装置の特性としては向いているが、診断の難易度は高いという意味だと理解しておいてください。
舌の癖への対処が欠かせない理由
装置で歯を動かせば隙間は閉じられる、と考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし開咬の治療では、装置による移動と同じくらい重要な要素があります。
それが、原因となっている舌の癖への対処です。
歯は舌からの力と唇や頬からの力が釣り合った位置に落ち着くため、力のバランスが元のままでは同じことが繰り返されるためです。
装置で無理に閉じても、癖が残っていれば再び押し開かれてしまう可能性があります。
開咬が他の不正咬合と性質を異にするのは、まさにこの点にあります。
ここでは癖への対処について、4つの視点から整理していきます。
装置で歯を動かすだけでは終わらない
開咬の治療には、他の症例とは違う前提があります。
歯並びの乱れの多くは歯が並ぶスペースの問題ですが、開咬は日常的にかかる力の問題であることが多いためです。
スペースを確保して歯を並べれば解決するという構造ではありません。
舌を歯のあいだに入れる癖が続いている限り、その空間は保たれ続けます。
装置による移動は原因ではなく結果への対処にあたるという理解が必要です。
原因への対応と並行して進めなければ、治療の成果を保てないという性質があります。
癖が残ると後戻りしやすい
治療後の安定という面でも、この点は重要です。
動かした歯は元の位置へ戻ろうとする性質を持ちますが、癖による力が加わればその動きが加速するためです。
一般的な後戻りに加えて、癖という継続的な力が働くことになります。
保定装置を使っていても、日中に舌で押し続けていれば影響は避けられません。
せっかく閉じた前歯が数年後に再び開いてしまえば、費やした時間と費用が無駄になってしまいます。
開咬が後戻りしやすい症例とされる背景には、この構造があります。
舌の正しい位置を身につける訓練
対処法として、専門的な訓練が用いられます。
舌や口の周りの筋肉の使い方を整えることで、歯にかかる力のバランスを改善するという考え方があるためです。
口腔筋機能療法と呼ばれる訓練が、矯正歯科で行われることがあります。
安静時に舌をどこに置くか、飲み込むときにどう動かすかといった基本的な動作を身につけていきます。
無意識の癖を意識的な動作に置き換えていくため、一定の期間が必要になります。
自己流で行っても効果が得られにくいため、指導を受けながら進めることが前提になります。
訓練は治療と並行して行う
進め方についても、押さえておきたい点があります。
装置による移動と癖の改善を同時に進めることで、閉じた状態を維持しやすくなるためです。
矯正を始める前の段階から訓練を取り入れる場合もあります。
お子さんの場合は、装置を使わずに癖の改善から始めるという方針がとられることもあります。
訓練の内容や期間は症例によって変わるため、計画に含まれているかを確認しておきたいところです。
装置の話だけでなく、癖への対応まで説明してくれるかどうかも医院を選ぶ材料になります。
開咬の治療にかかる期間と費用
治療の内容が見えてくると、次に気になるのは期間と費用ですよね。
数年にわたる治療になるため、生活の計画と重ね合わせて検討する必要があります。
開咬は難しい症例とされることから、他の不正咬合より期間が長くなる可能性もあります。
さらに癖への対処が加わるため、装置を外したあとの管理も重要になってきます。
費用については、保険が適用される可能性がある点も知っておきたいところです。
ここでは期間と費用について、4つの視点から整理していきます。
治療期間の目安
期間は、選ぶ方法と症例の程度によって変わります。
動かす距離と、外科手術を伴うかどうかによって必要な時間が異なるためです。
歯を動かす矯正であれば、1年から3年程度が一般的な目安とされています。
外科手術を伴う場合は、手術の前後に矯正を行うため2年から3年程度かかることが多くなります。
開咬は診断と計画に専門的な判断が求められる症例のため、想定より長くなる可能性も考えておきたいところです。
自分のケースでの見通しは、検査を受けたうえで確認してみてください。
保定期間が特に重要になる
開咬では、治療後の期間により大きな意味があります。
癖という継続的な力が働く可能性があるため、閉じた状態を保つ管理が欠かせないためです。
保定期間は1年から3年程度が目安とされますが、症例によってはさらに長く続けることが勧められる場合もあります。
装着をやめれば元に戻る方向に力が働くため、自己判断で終わらせないことが大切です。
癖の改善が十分に進んでいるかどうかも、保定の期間を左右する要素になります。
装置を外した時点が終わりではなく、そこから守る期間が始まると考えておいてください。
費用の考え方
費用は、治療法によって水準が変わります。
矯正治療は一部の例外を除いて公的医療保険の対象外である自由診療にあたり、料金は各医療機関が独自に設定しているためです[3]。
奥歯まで含めた全体矯正が必要になることが多く、部分矯正では対応しにくい症例といえます。
外科手術を伴う場合は、手術と入院にかかる費用が別に発生します。
口腔筋機能療法などの訓練にかかる費用が総額に含まれるかどうかも、確認しておきたい項目です。
見積もりを受け取ったら、保定装置の費用まで含まれているかを確かめておきましょう。
保険が適用される場合
条件を満たせば、健康保険が使える可能性があります。
顎変形症で顎離断などの外科手術を必要とする場合の手術前後の矯正治療は、保険の対象になるためです[4]。
下顎の骨格的な問題が大きい開咬では、この条件に該当する場合があります。
保険で治療を受けるには、施設基準を満たして地方厚生局に届け出た医療機関である必要があります[5]。
該当する場合も使用できる装置は定められた範囲に限られ、マウスピース型は対象になりません[4]。
自由診療の見積もりだけを比べる前に、この可能性を確認しておく価値があります。
子どもの開咬への対応
お子さんの前歯が噛み合っていないことに気づき、心配されている保護者の方もいるのではないでしょうか。
成長すれば自然に整うのか、それとも今から対応すべきなのか、判断がつかないという状況も起こりがちです。
子どもの開咬では、癖への対応が大きな比重を占めます。
指しゃぶりや舌の使い方といった習慣が原因になっているケースが多く、その改善が治療の中心になるためです。
成長期には顎の発育に働きかけられるという、大人にはない利点もあります。
一方で癖が続いたまま成長すれば、状態が固定されていく可能性も考えておきたいところです。
ここでは子どもの開咬について、4つの視点から整理していきます。
指しゃぶりや舌の癖への早期対応
まず取り組まれるのが、原因となっている習慣への対応です。
指を吸う動作や舌を歯のあいだに入れる動きが、上下の歯に空間を作り続けているためです。
乳歯の時期に癖が長く続けば、永久歯の生え方にも影響が及ぶ可能性があります。
年齢が上がるほど無意識の習慣は変えにくくなるため、早い段階での対応が有効とされています。
叱って無理にやめさせるのではなく、専門家の指導のもとで進めるほうが結果につながります。
癖が改善されれば、装置を使わずに状態が整っていくケースもあります。
成長期にできる働きかけ
顎が発育している時期には、大人にはない選択肢があります。
顎の成長を利用して、上下の関係を整える方向へ導けるためです。
舌の位置を整える装置や、口の周りの筋肉に働きかける方法が用いられることがあります。
歯を一本ずつ並べるのではなく、土台となる関係を整えることが目的になります。
成長が終わってからでは顎への働きかけができなくなり、選べる方法も変わってきます。
今できることと後からでもできることを、歯科医師に整理してもらうと判断しやすくなります。
癖の改善から始める場合もある
治療の順序についても、大人とは異なります。
原因が癖にある場合、装置を使う前に習慣を改善するという方針がとられることがあるためです。
口腔筋機能療法と呼ばれる訓練を、矯正の前段階として行う場合もあります。
舌の位置や飲み込み方を身につけることで、歯にかかる力のバランスが整っていきます。
装置を使わない期間があると治療が進んでいないように感じられるかもしれませんが、土台を作る段階にあたります。
なぜ今この段階が必要なのかを説明してもらえば、家庭での協力もしやすくなります。
永久歯が生え揃ってからの治療
生え変わりが終わってからは、内容が変わってきます。
顎の成長を利用する段階が終わり、歯を動かして並べる治療へ移行するためです。
この段階では大人の矯正とほぼ同じ内容になり、装置の選択肢も同様になります。
癖の改善が進んでいれば、この段階の治療も安定しやすくなります。
骨格の影響が大きく残っている場合は、成長の終了を待って外科的な処置を検討することもあります。
どの段階でどこまでを目指すのかを、治療を始める前に共有しておきましょう。
開咬の治療で医院を選ぶときの視点
開咬は診断と計画に専門的な判断が求められる症例とされています。
だからこそ、どこで治療を受けるかという選択が結果を大きく左右します。
とはいえ技術の高さを患者側から見極めるのは難しく、何を基準に選べばよいのか分からないという方も多いはずです。
判断の手がかりになるのは、検査の内容と、癖への対応まで説明してくれるかという2点です。
いずれも専門知識がなくても、カウンセリングで確認できる項目にあたります。
ここでは医院を選ぶときに見ておきたい4つの視点を、順に整理していきます。
原因を特定する検査を行っているか
最初に確認したいのが、診断の土台となる検査の内容です。
開咬の原因が癖にあるのか骨格にあるのかで、必要な治療がまったく変わってくるためです。
顎の骨格を分析する検査を行い、その結果を説明してもらうことが確認の第一歩になります。
口の中を見ただけで治療法が提案されるようであれば、その根拠を尋ねてみてください。
舌の動きや飲み込み方を確認してもらえるかどうかも、開咬では重要な要素です。
原因の特定が甘いまま進めば、治療後に元に戻る可能性が高まってしまいます。
癖への対応まで説明してくれるか
説明の内容からも、判断材料が得られます。
開咬では装置による移動と癖への対応をセットで考える必要があり、その両方が計画に含まれているかが結果を左右するためです。
装置の話だけで終わる説明であれば、癖への対応について尋ねてみてください。
口腔筋機能療法などの訓練を行っているか、その費用が総額に含まれるかも確認したい項目です。
後戻りのリスクについて触れてもらえるかどうかも、姿勢を測る手がかりになります。
医療機関の広告や説明については国が指針を定めており、適切な情報提供が求められています[3]。
複数の治療法を提示してくれるか
提案の幅も、確認しておきたい要素です。
開咬にはマウスピース矯正、ワイヤー矯正、外科手術を伴う治療という複数の選択肢があるためです。
自分の症例に対してどんな方法が適用できるのかを、比べて説明してもらってください。
1つの方法しか示されない場合は、他の選択肢について尋ねてみる価値があります。
骨格の影響が大きい場合は、保険が適用される可能性についても確認しておきたいところです。
それぞれのメリットとデメリットを並べて説明してもらえれば、自分で判断する材料がそろいます。
複数の医院で相談して比べる
一つの医院だけで判断しないという方法も有効です。
開咬は診断の難易度が高い症例であり、判断が分かれる場面もあるためです。
初回のカウンセリングを無料としている医院も多く、契約せずに話だけ聞くことができます。
2か所から3か所で相談すれば、共通している判断と分かれている判断が見えてきます。
同じ質問を用意しておけば、回答を並べて比較できます。
その場で契約を求められた場合は、持ち帰って検討したいと伝えて構いません。
開咬の治療を検討するときに確認したいこと
情報がそろってきたら、最後は実際に相談へ行く段階です。
限られたカウンセリングの時間で必要なことを聞けるよう、質問を準備しておきたいところです。
開咬で確認したいのは、原因がどこにあるか、癖への対応が計画に含まれるか、保険が使える可能性はあるか、そして期間と総額はどうかという4点です。
いずれも遠慮すべき質問ではなく、納得して進めるために必要な情報にあたります。
矯正治療は一部の例外を除いて公的医療保険の対象外である自由診療にあたり、方針も料金も医療機関ごとに異なります[3]。
複数の医療機関で話を聞き、比べたうえで決めるという進め方も現実的な選択です。
まず確認したいのは、自分の開咬の原因がどこにあるのかという点です。
舌の癖によるものなのか、顎の骨格の形が関わっているのかで、必要な治療がまったく変わってくるためです。
顎の骨格を分析する検査を行ったうえで、その結果を説明してもらってください。
舌の動きや飲み込み方についても確認してもらえれば、癖の影響がどの程度かも見えてきます。
次に、癖への対応が治療計画に含まれているかを聞いておきましょう。
開咬では装置による移動だけでは十分でなく、原因への対応がなければ後戻りする可能性があるためです。
口腔筋機能療法などの訓練を行っているか、その費用が総額に含まれるかを確かめておいてください。
訓練をいつから始めるのか、どのくらいの期間続けるのかも確認しておきたい項目です。
保険が使える可能性についても、確認する価値があります。
下顎の骨格的な問題が大きく、外科手術を必要とする場合は顎変形症として保険が適用される可能性があるためです[4]。
その場合は施設基準の届出をした医療機関である必要があるため、相談先の選び方にも関わってきます[5]。
自由診療の見積もりだけを比べる前に、この可能性を確かめておいてください。
最後に、期間と総額についても確認しておきましょう。
装置を外すまでの期間だけでなく、保定まで含めた総期間を聞いておくことが大切です。
開咬は後戻りしやすい症例とされるため、保定の期間が長くなる可能性も想定しておきたいところです。
説明を受けても迷う場合は、その場で決めず持ち帰って検討して構いません。
契約内容に不安が残る場合は、独立行政法人国民生活センターや自治体の消費生活センターに相談するという方法もあります[6]。
開咬に関するよくある質問
Q1. 開咬とはどんな状態ですか?
奥歯を噛み合わせても前歯が接触せず、隙間が残る状態を指します。
前歯で食べ物を噛み切れない、麺類が噛み切れないといった不便が生じます。
前歯だけでなく、奥歯の一部で起こる場合もあります。
Q2. 原因は舌の癖ですか?
舌を歯のあいだに入れる癖や、舌で前歯を押す癖が原因になっているケースは多く見られます。
指しゃぶりや口呼吸といった習慣が関わることもあります。
一方で顎の骨格の形が関わっている場合もあり、検査によって判断されます。
Q3. マウスピース矯正で治りますか?
マウスピースの厚みで奥歯に力がかかりやすいため、開咬に適しているという見方があります。
ただし装着時間が不足すれば計画どおりに進みません。
症例によって適応は変わるため、検査を受けたうえで確認してください。
Q4. 手術は必要ですか?
歯の傾きや位置に原因があれば、矯正治療だけで対応できる可能性があります。
顎の骨格に大きな問題がある場合は、外科手術を伴う治療が検討されます。
どちらに該当するかは検査によって判断されます。
Q5. 後戻りしやすいですか?
原因となる癖が残っていると、治療後に再び開いてしまう可能性があります。
装置による移動と並行して、舌の使い方を整える対応が欠かせません。
保定期間の管理も、他の症例以上に重要になります。
Q6. 放置するとどうなりますか?
前歯で食べ物を噛み切れず、奥歯に負担が集中する状態が続きます。
発音への影響や、口の乾燥によるむし歯のリスクも指摘されています[1]。
顎の関節に影響が出る場合もあるため、一度診てもらう価値があります。
まとめ
開咬は奥歯を噛み合わせても前歯が接触せず、隙間が残る噛み合わせの状態です。
原因には舌を歯のあいだに入れる癖や口呼吸といった習慣のほか、顎の骨格の形が関わる場合もあります。
放置すると前歯で噛み切れない、奥歯に負担が集中する、発音に影響が出るといった問題が生じます[1][2]。
治療では前歯を伸ばす動きと奥歯を沈める動きを組み合わせ、装置の特性からマウスピース矯正が適しているという見方もあります。
一方で開咬は診断の難易度が高い症例とされ、原因の特定と計画の立て方が結果を左右します。
装置で歯を動かすだけでなく、原因となる癖への対応がなければ後戻りする可能性がある点が最大の特徴です。
まず検査を受けて原因を特定し、癖への対応まで含めた計画を立ててもらうところから始めてみましょう。
参考文献
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「むし歯の特徴・原因・進行」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-002.html
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周病とは」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-03-001.html
[3] 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html
[4] 厚生労働省「保険診療の理解のために【歯科】」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/index.html
[5] 厚生労働省「地方厚生(支)局 施設基準届出受理医療機関名簿」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/shitei/index.html
[6] 独立行政法人国民生活センター「医療・美容医療」
https://www.kokusen.go.jp/t_box/t_box-faq/g-1.html
免責事項
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療アドバイスではありません。
※治療の必要性や進め方については必ず歯科医師にご相談ください。
※効果の現れ方や治療期間には個人差がございます。
※記載の期間や費用は一般的な目安であり、医療機関や症例により異なります。