
歯周病があると歯列矯正は受けられないのではないか、と不安になっていませんか?
歯周病があっても、まず歯周病の治療を行って状態が安定すれば、矯正治療を検討できるケースがあります。
一方で炎症が残ったまま歯に力を加えると症状が進む可能性があるため、治療の順序を守ることが欠かせません。
この記事では歯周病と矯正の関係、治療できる条件と進め方、矯正中に必要な管理、歯茎の変化への向き合い方まで整理しますので、歯周病を理由に矯正をためらっている方はぜひ参考にしてください。
歯周病があっても歯列矯正はできる?
歯並びを整えたいと思いながら、歯茎の状態を指摘されて一歩を踏み出せずにいる方は少なくありません。
歯周病があると断られるのではないか、と思い込んだまま相談にすら行けていないという方もいるのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、歯周病があることだけを理由に矯正治療をあきらめる必要はありません。
かつては難しいとされていた領域ですが、近年は段階を踏むことで検討できるという考え方が広がってきているためです。
ただし順序があり、歯周病の治療を先に行って状態を安定させることが前提になります。
条件と流れを知っておけば、自分がどの段階にいるのかも見えてきます。
ここでは治療の可否について、4つの視点から整理していきます。
治療して安定すれば検討できる
まず押さえておきたいのが、この前提です。
歯周病の治療によって炎症が落ち着き、状態が安定すれば矯正治療を検討できるケースがあるためです。
歯周ポケットが4〜6mm程度で歯を支える骨が少し減ってきている中等度の状態でも、対応が検討されることがあります。
歯の揺れが強くない段階であれば、選択肢は残されていると考えられます。
治療の順序としては、歯周病への対応を優先し、そのあとで矯正へ進むという流れになります。
歯周病があるから無理だと決めつけず、まず相談してみる価値があります。
炎症が残ったままでは進められない理由
一方で、順序を飛ばすことはできません。
矯正は歯を支える組織に力を加えて歯を動かす治療であり、その組織が炎症を起こしている状態では負担が大きくなるためです。
歯周病は歯を支える骨が溶けていく病気で、進行すると歯がぐらついてくることもあります[1]。
炎症がある状態で力を加えれば、症状が進んでしまう可能性が考えられます。
土台が不安定なまま歯を動かそうとすれば、期待した結果も得られません。
先に炎症を抑えることが、結果として矯正を安全に進めるための条件になります。
進行の程度によって対応が変わる
どこまで対応できるかは、状態によって変わってきます。
歯周病には進行の段階があり、歯を支える骨がどれだけ失われているかで判断が分かれるためです。
軽度であれば、基本的なクリーニングを行ったうえで矯正へ進める可能性があります。
中等度では、歯ぐきの奥深くの汚れを取り除く処置を優先し、安定を確認してから検討されます。
かなり進行している場合は、矯正が難しいと判断されることもあります。
自分がどの段階にあるのかを知ることが、次の行動を決める材料になります。
判断は検査を経て行われる
最終的な可否は、専門的な検査によって決まります。
歯周ポケットの深さや歯を支える骨の状態は、外から見ただけでは分からないためです。
歯周病の検査では、歯周ポケットの深さの測定やレントゲン撮影が行われます[2]。
歯の揺れの程度も、判断に関わる重要な要素になります。
これらの結果をもとに、まず何をすべきかという計画が立てられます。
自己判断であきらめず、検査を受けて現状を把握するところから始めてみてください。
歯周病と矯正の関係を整理する
歯周病と矯正は、単純に相性が悪いという関係ではありません。
一方が他方のリスクになる面もあれば、助けになる面もあるという双方向の関係にあるためです。
歯を支える組織に力を加える治療である以上、歯周病がある状態では慎重さが求められます。
その一方で、歯並びの乱れが歯周病を招いている場合もあり、整えることが管理を助けることもあります。
両面を理解しておけば、なぜ順序が重要なのかも納得しやすくなります。
ここでは両者の関係を、4つの視点から整理していきます。
歯を支える組織に力を加える治療である
矯正の仕組みを知っておくと、関係が見えてきます。
歯は顎の骨に直接くっついているわけではなく、歯根膜という薄い組織を介して歯槽骨に支えられているためです[1]。
矯正では歯根膜に力を加えることで、周囲の骨を作り替えながら歯を移動させていきます。
つまり歯を支えている組織が、そのまま治療の舞台になるという構造です。
その組織が健康であることが、矯正を進めるうえでの前提になります。
歯周病はまさにこの組織を蝕む病気であるため、両者は密接に関わっています。
炎症があると骨の吸収が進む可能性がある
順序を守るべき理由は、ここにあります。
歯周病は歯周ポケットに細菌が入り込み、歯を支える骨を溶かしていく病気だからです[1]。
炎症が起きている状態で矯正の力が加われば、その負担が重なることになります。
すでに骨が減っている歯に力を加えれば、支えがさらに失われる可能性も考えられます。
歯の揺れが強い状態では、動かすこと自体が難しくなります。
炎症を抑えて土台を整えることが、矯正を進めるための第一歩になります。
歯並びの乱れが歯周病のリスクになることもある
反対方向の関係も存在します。
歯が重なっていたりねじれていたりすると、歯みがきが行き届きにくく汚れが残りやすくなるためです。
みがき残しが続けば歯垢がたまり、歯周病の原因になっていきます[3]。
歯並びが乱れている部分ほど、清掃が難しく炎症も起こりやすい傾向があります。
噛み合わせのバランスが崩れていると、特定の歯に負担が集中することも考えられます。
歯並びの問題が、歯周病を招いている一因になっている場合もあるということです。
矯正が歯周病の管理を助ける場合もある
この関係から、前向きな側面も生まれます。
歯並びが整えば清掃がしやすくなり、汚れがたまりにくい環境が生まれるためです。
歯みがきがしやすい環境を作ること自体を、矯正治療の大きな目的とする考え方も示されています。
見た目を整えるためだけでなく、口の中を管理しやすくするための治療という位置づけです。
噛み合わせが整えば、特定の歯への負担も分散されていきます。
長期的に歯を保つという観点から、矯正が選択肢になる場合もあると理解しておいてください。
矯正を始めるまでの流れ
歯周病があっても矯正を検討できると分かっても、何から始めればいいのか分かりませんよね。
いきなり矯正歯科へ行くべきなのか、まず歯周病を治すべきなのか、順序に迷う方も多いはずです。
進め方には段階があり、歯周病への対応を先に行うという流れが基本になります。
炎症が残ったまま歯を動かせば、症状が進む可能性があるためです。
どの段階に何をするのかを知っておけば、今の自分がどこにいるのかも把握できます。
ここでは矯正に至るまでの流れを、5つの段階に分けて見ていきます。
まず歯周病の検査を受ける
出発点になるのが、現状の把握です。
歯周病がどの程度進行しているかによって、その後の対応がまったく変わってくるためです。
歯周病の検査では、歯と歯ぐきのあいだにある歯周ポケットの深さを測定します[2]。
レントゲン撮影によって、歯を支える骨がどれだけ残っているかも確認されます[2]。
歯の揺れの程度や、歯ぐきからの出血の有無も判断の材料になります。
この検査結果が、矯正まで進めるかどうかの判断の土台になります。
基本的なクリーニングから始まる
治療の第一段階は、汚れを取り除くことです。
歯周病の原因は歯垢や歯石にたまった細菌であり、それを取り除くことが治療の基本になるためです[3]。
歯の表面に付着した歯石を器具で取り除く処置が行われます。
自分では落としきれない部分の汚れを、専門的に清掃してもらうという段階です。
あわせて、日々の歯みがきの方法についても指導を受けることになります。
この段階で炎症が落ち着けば、次のステップへ進める場合もあります。
歯ぐきの奥の汚れを取り除く処置
中等度以上の場合は、さらに踏み込んだ処置が行われます。
歯周ポケットが深くなっていると、その奥に汚れがたまって通常の清掃では届かないためです。
歯ぐきの奥深くにたまった汚れを取り除く処置を優先して行うとされています。
歯の根の表面を滑らかに整えることで、汚れが再び付着しにくい状態を作ります。
処置には複数回の通院が必要になることもあります。
この段階を経て、炎症がどこまで改善するかを確認していく流れになります。
必要に応じた外科的な処置
状態によっては、さらに対応が加わることもあります。
深い歯周ポケットが残っている場合、通常の処置では汚れを取りきれないことがあるためです。
必要に応じて歯周外科治療などが行われ、そのうえで状態が安定してから矯正治療が検討されます。
歯ぐきを開いて奥の汚れを直接取り除くという処置が含まれます。
失われた組織の再生を目指す方法が検討される場合もあります。
これらを経て、土台となる環境を整えていくことになります。
状態が安定してから矯正へ
すべての段階を経て、ようやく矯正の検討に入ります。
炎症が落ち着き、歯を支える組織が安定していることが矯正を進める前提になるためです。
歯周ポケットの深さが改善し、出血が収まっているかが確認されます。
歯の揺れが落ち着いているかも、判断の材料になります。
安定の維持には日々の清掃と定期的な管理が欠かせず、その体制も含めて評価されます。
準備に時間がかかることもありますが、この段階を丁寧に進めることが結果につながります。
歯周病がある場合の矯正の進め方
矯正に進めることになっても、進め方には通常と違う配慮が必要になります。
歯を支える組織がすでに影響を受けている以上、同じように力を加えるわけにはいかないためです。
歯周病の既往がある場合、力の加え方や動かす範囲について慎重な計画が立てられます。
通常より時間をかけて進めるという判断がなされることもあります。
進め方の特徴を知っておけば、説明を受けたときの理解も深まります。
ここでは4つの特徴を、順に整理していきます。
力の強さと方向を細かく調整する
最も大きな違いが、力の加え方です。
歯を支える骨が減っている状態では、通常と同じ力をかけると負担が大きくなるためです。
矯正治療を行う際は、力の強さや方向を細かく調整するとされています。
弱い力をゆっくり加えることで、組織への負担を抑えながら動かしていきます。
そのぶん一度に動く量は小さくなり、時間がかかることも考えられます。
慎重に進めることが、結果として歯を守ることにつながります。
部分的に動かすという選択
動かす範囲についても、判断が変わることがあります。
すべての歯を同時に動かすより、範囲を絞ったほうが負担を分散できる場合があるためです。
部分的に動かしたり、段階を踏んだりしながら進めるという方法がとられます。
支えが弱っている歯を避けて、周囲の歯から整えていくという計画も考えられます。
清掃しやすくすることを主な目的として、限られた範囲だけを動かすという選択もあります。
目的をどこに置くかによって、必要な範囲も変わってきます。
段階を踏んで進める
時間軸の設計にも、配慮が加わります。
一度にすべてを進めるのではなく、区切りながら状態を確認していく必要があるためです。
ある段階まで動かしたところで、いったん歯周組織の状態を評価するという進め方があります。
問題がなければ次の段階へ進み、変化があれば計画を見直すという流れです。
治療期間が通常より長くなる可能性は、あらかじめ想定しておきたいところです。
急がずに進めることが、途中で中断せずに完了するための条件になります。
通院の間隔が短くなることもある
管理の頻度も、通常とは異なる場合があります。
歯周組織の状態を継続的に確認する必要があり、変化を早く捉えることが求められるためです。
矯正の調整だけでなく、歯周病の管理を目的とした通院が加わることもあります。
歯周ポケットの深さや出血の有無を定期的に確認していくという流れです。
クリーニングを定期的に受けることで、汚れの蓄積を防ぐという意味もあります。
通院の負担は増えますが、安全に進めるために必要な工程だと理解しておいてください。
矯正中に歯周病を悪化させないための管理
治療が始まってからは、日々の管理が結果を左右します。
装置が入ることで口の中の環境が変わり、これまでと同じケアでは行き届かなくなるためです。
歯周病の既往がある方にとって、この期間の管理は特に重要な意味を持ちます。
炎症が再び起これば、矯正を中断して治療を優先することにもなりかねません。
必要な道具と習慣を整えておけば、負担を抑えながら続けられます。
ここでは矯正中の管理について、4つの視点から整理していきます。
装置の周囲は汚れが残りやすい
まず理解しておきたいのが、環境の変化です。
装置が歯の表面にあることで、歯ブラシが届きにくい部分が新たに生まれるためです。
ブラケットとワイヤーの周囲は、汚れがたまりやすい典型的な場所にあたります。
歯と歯茎の境目に汚れが残れば、歯周ポケットの奥へと影響が及んでいきます[1]。
マウスピース矯正でも、装置を長時間装着することで唾液が行き渡りにくくなります。
装置が入る前と同じみがき方では不十分だという前提を、まず持っておいてください。
清掃の道具を使い分ける
対応としては、道具を増やすことが有効です。
歯ブラシだけでは装置の周囲や歯と歯のあいだに届かないためです。
毛束の小さいブラシを使えば、装置の周囲を細かく清掃できます。
歯と歯のあいだには、歯間ブラシやデンタルフロスを組み合わせると効果が高まります[3]。
ワイヤー矯正では、フロスを通すための補助器具が用いられることもあります。
どの道具をどう使うかは通院時に指導してもらえるため、一度教わっておくと実践しやすくなります。
定期的な検査とクリーニング
自分でのケアだけでは、限界があります。
日々の清掃で落としきれない汚れは、専門的な処置で取り除く必要があるためです[3]。
歯周ポケットの深さを定期的に測定すれば、状態の変化を数値で確認できます[2]。
矯正の調整とは別に、歯周病の管理を目的とした通院が組み込まれることもあります。
装置が入っている期間は汚れがたまりやすいため、通常より頻度を上げる判断がなされる場合もあります。
自分では気づけない変化を早く捉えるという意味でも、定期的な確認は欠かせません。
歯茎の変化に早く気づく
日々の観察も、管理の一部になります。
歯茎の状態は自分でも確認でき、変化に早く気づけば対応も早くなるためです。
みがいたときに血が出る、歯茎が赤く腫れているといった変化は分かりやすいサインです。
歯茎を押したときに違和感がある、口臭が気になるといった点も手がかりになります。
鏡で歯茎の色や形を見る習慣をつけておけば、変化に気づきやすくなります。
気になる点があれば、通院日を待たずに連絡してよい場合もあります。
矯正中に起こり得る歯茎の変化
矯正を進めるなかで、歯茎の様子が変わることがあります。
炎症によるものと、歯が動いたことによるものがあり、性質はまったく異なります。
どちらなのかによって、必要な対応も変わってきます。
前者は早めの処置が必要ですが、後者は歯が移動した結果として自然に生じる場合もあります。
見分けの手がかりを知っておけば、慌てずに判断できます。
ここでは起こり得る4つの変化を、順に整理していきます。
歯茎が腫れる・出血する
最も注意すべき変化が、炎症のサインです。
歯茎が赤く腫れる、みがくと出血するといった症状は、歯周組織に炎症が起きていることを示している可能性があるためです[1]。
装置の周囲に汚れがたまり、細菌が繁殖している状態が背景にあると考えられます。
歯周病の既往がある方では、再発の兆候として受け止めたい変化です。
放置すれば歯を支える骨に影響が及び、矯正の計画そのものを見直すことにもなります。
気づいた時点で連絡し、清掃の方法を含めて相談してみてください。
歯茎が下がって見える
歯が動いたことによる変化も、現れることがあります。
歯の位置が変われば、それを覆う歯茎の形も一緒に変化していくためです。
歯が外側へ移動すれば、その部分の歯茎が薄くなって下がったように見えることがあります。
もともと歯茎が薄い方や、歯を支える骨が薄い部位では起こりやすいとされています。
炎症によって歯茎が下がっている場合とは、原因も対応も異なります。
どちらによるものかは診てもらわなければ判断できないため、確認しておきたいところです。
歯と歯のあいだに隙間ができる
見た目に関わる変化として、この現象もあります。
歯が並ぶことで隣り合う歯の接触の仕方が変わり、根元側に三角形の隙間が見えることがあるためです。
もともと歯が重なっていた部分では、並んだあとにこの隙間が現れやすくなります。
歯周病によって歯を支える組織が減っている場合、より目立ちやすい傾向があります。
清掃が必要な部分でもあるため、歯間ブラシなどでの手入れが求められます。
事前に起こり得る変化として説明を受けておけば、受け止め方も変わってきます。
変化に気づいたときの対応
いずれの場合も、伝えることが出発点になります。
自分では炎症によるものか歯の移動によるものか判断できないためです。
いつから、どの部分に、どんな変化があるかを整理して伝えてください。
炎症であれば清掃の見直しや処置によって改善が見込めます。
歯の移動に伴う変化であれば、計画のなかで想定されている場合もあります。
我慢して次の通院日まで待つより、早めに伝えたほうが対応の選択肢は広く残ります。
装置による清掃のしやすさの違い
歯周病の管理という観点では、どの装置を選ぶかも結果に関わってきます。
装置の構造によって、汚れのたまりやすさや清掃の難しさが変わってくるためです。
歯周病の既往がある方にとって、この違いは無視できない判断材料になります。
ただし装置は症例に適したものが優先されるため、清掃のしやすさだけで選べるわけではありません。
それぞれの特徴を知ったうえで、希望として伝えるという使い方が現実的です。
ここでは3つの装置と選び方の考え方を、順に見ていきます。
ワイヤー矯正の場合
歯の表面に装置を接着する方法では、清掃に工夫が求められます。
ブラケットとワイヤーが歯の表面にあり、その周囲に汚れがたまりやすい構造になっているためです。
歯ブラシだけでは装置の隙間に届かず、みがき残しが生じやすくなります。
毛束の小さいブラシや歯間ブラシを組み合わせることで、届く範囲を広げられます。
ワイヤーがあるためデンタルフロスを通しにくく、補助器具が必要になることもあります。
自分で取り外せないぶん、日々の清掃の精度が問われる方法といえます。
マウスピース矯正の場合
取り外せる装置では、清掃の面で利点があります。
食事や歯みがきの際に装置を外せるため、これまでと同じ方法でみがけるためです。
歯ブラシもフロスも装置に妨げられることなく使えます。
一方で装置を長時間装着することで、唾液が行き渡りにくくなるという課題もあります。
汚れが残ったまま装着すれば、それを歯に密着させた状態が続いてしまいます。
装置自体の洗浄も必要になるため、手間そのものが減るわけではありません。
裏側矯正の場合
歯の裏側に装置を装着する方法にも、固有の事情があります。
装置が見えにくい位置にあるため、汚れが残っていても自分では確認しづらいためです。
鏡で見ても装置の周囲を把握しにくく、清掃の精度を保つのが難しくなります。
舌が触れる位置にあることで、装置の周囲に汚れがたまりやすいという指摘もあります。
清掃の難しさという点では、より丁寧なケアが求められる方法といえます。
歯周病の管理を重視する場合は、この点も含めて相談してみてください。
装置は症例に合うものから選ぶ
最後に、選び方の前提を押さえておきましょう。
装置によって対応できる歯の動きに違いがあり、症例に適した方法が優先されるためです。
清掃しやすい装置を希望しても、その方法では目標に届かないと判断される場合があります。
歯周病がある場合は、力の加え方を細かく調整できるかという観点も判断に加わります。
清掃のしやすさは希望として伝えたうえで、適応の範囲内で選ぶという順序になります。
なぜその装置が提案されたのかを説明してもらえば、納得して選べます。
矯正後も続く歯周病の管理
装置が外れた時点で、すべてが終わるわけではありません。
歯周病は完治するというより、管理し続ける性質の病気だからです。
矯正が終わっても、日々の清掃と定期的な確認は続いていきます。
保定期間にはリテーナーという装置を使うため、その間も口の中の環境に配慮が必要です。
一方で歯並びが整った状態は、清掃という面では有利に働きます。
長期的な視点で、どう管理していくかを整理しておきましょう。
ここでは矯正後の管理について、4つの視点から見ていきます。
保定期間中も清掃が必要
装置を外したあとも、口の中には別の装置が入ります。
動かした歯の位置を安定させるため、リテーナーを装着する期間が続くためです。
マウスピースタイプのリテーナーであれば、装着時に歯を覆う状態が生まれます。
歯の裏側にワイヤーを接着する固定式のタイプでは、その周囲に汚れがたまりやすくなります。
固定式の場合はフロスを通すのに工夫が必要で、清掃の難しさが残ります。
保定期間中も、矯正中と同じ意識でケアを続けたいところです。
定期検診を続ける意味
通院そのものも、続けていく必要があります。
歯周病は自覚症状が乏しいまま進行することがあり、定期的な確認でしか変化を捉えられないためです[1]。
歯周ポケットの深さを測定すれば、状態の変化を数値で追えます[2]。
日々の清掃で落としきれない汚れは、専門的な処置で取り除いてもらえます[3]。
矯正が終わったからと通院が途切れやすい時期でもあるため、意識して続けたいところです。
保定の確認とあわせて受診すれば、通院の負担も抑えられます。
歯並びが整うと清掃しやすくなる
長期的には、前向きな変化も期待できます。
歯が重なっていた部分が解消されれば、歯ブラシやフロスが届きやすくなるためです。
みがき残しが減れば、歯垢がたまりにくい環境が生まれます[3]。
噛み合わせが整うことで、特定の歯への負担も分散されていきます。
歯みがきがしやすい環境を作ること自体を、矯正の目的とする考え方もあります。
治療の成果を保つためにも、この環境を活かした清掃を続けていきましょう。
後戻りと歯周病の関係
保定を続けるべき理由にも、歯周病が関わってきます。
歯を支える組織が弱っている場合、動かした歯が元の位置へ戻りやすくなる可能性があるためです。
後戻りが起これば歯並びが再び乱れ、清掃しにくい状態に戻ってしまいます。
せっかく整えた環境が失われれば、歯周病の管理も難しくなっていきます。
リテーナーの装着を自己判断でやめないことが、両方を守ることにつながります。
いつまで続けるかは歯科医師の判断によるため、確認しながら進めてください。
歯周病がある場合の医院選びと相談
歯周病があるまま矯正を検討する場合、どこで相談するかという選択も結果に関わってきます。
歯周病の治療と矯正治療は別の領域であり、両方に対応できる体制かどうかで進め方が変わるためです。
矯正を専門とする医院では歯周病の治療を扱っていないこともあり、その場合は別の歯科医院との連携が必要になります。
一方で一般歯科と矯正の両方を行っている医院であれば、一貫して管理してもらえる可能性があります。
どちらが良いという話ではなく、体制を確認したうえで選ぶという視点が大切です。
矯正治療は一部の例外を除いて公的医療保険の対象外である自由診療にあたり、方針も医療機関ごとに異なります[4]。
まず確認したいのが、歯周病の治療にも対応しているかという点です。
対応していない場合、歯周病の治療を別の歯科医院で受けてから矯正へ進むという流れになります。
その際、両者のあいだで情報がどう共有されるのかも聞いておきたいところです。
検査の結果や治療の経過が伝わらなければ、適切な判断が難しくなってしまいます。
次に、矯正中の歯周組織の管理をどう行うのかを確認しておきましょう。
装置が入っている期間は汚れがたまりやすく、定期的な確認が欠かせないためです。
歯周ポケットの測定やクリーニングを、どの頻度で行う計画なのかを聞いてみてください。
矯正の調整とは別に歯周病の管理が組み込まれているかどうかは、重要な確認事項になります。
自分の歯周病の状態について、率直に伝えることも欠かせません。
過去に歯周病の治療を受けたことがある、歯茎から出血しやすいといった情報は判断の材料になります。
治療中の医院がある場合は、その旨も伝えておいてください。
隠したまま進めれば、想定外の事態が起こったときに原因を特定できなくなります。
説明を受けても判断がつかない場合は、複数の医院で相談するという方法もあります。
歯周病の程度によって矯正の可否は分かれ、判断が異なる場面もあるためです。
初回のカウンセリングを無料としている医院も多く、契約せずに話だけ聞くことができます。
その場で契約を求められた場合は、持ち帰って検討したいと伝えて構いません。
契約内容に不安が残る場合は、独立行政法人国民生活センターや自治体の消費生活センターに相談するという方法もあります[5]。
歯列矯正と歯周病に関するよくある質問
Q1. 歯周病があっても矯正できますか?
歯周病の治療を行って状態が安定すれば、矯正治療を検討できるケースがあります。
歯周ポケットが4〜6mm程度の中等度でも、段階を踏むことで対応が検討されることがあります。
進行の程度によって判断は変わるため、まず検査を受けてください。
Q2. 矯正すると歯周病になりますか?
矯正そのものが歯周病を起こすわけではありません。
装置が入ることで清掃が難しくなり、汚れが残りやすい環境が生まれることが要因になります[1]。
道具を使い分けて丁寧に清掃すれば、リスクは抑えられます[3]。
Q3. 歯茎が下がるのはなぜですか?
歯が動くことで、それを覆う歯茎の形も一緒に変化するためです。
炎症によって下がっている場合もあり、原因によって対応が変わります。
どちらによるものかは診てもらわなければ判断できません。
Q4. 矯正中に歯茎が腫れたらどうすればいいですか?
炎症が起きている可能性があるため、早めに連絡してください。
放置すれば歯を支える骨に影響が及び、矯正の計画を見直すことにもなります[1]。
清掃の方法を含めて相談すると、改善につながる場合があります。
Q5. どのくらい歯周病を治療してから矯正できますか?
進行の程度と改善の状況によって変わるため、一律には決まっていません。
炎症が落ち着き、歯周ポケットの深さや歯の揺れが安定していることが前提になります。
検査結果を見ながら判断されるため、担当の歯科医師に確認してください。
Q6. 矯正すれば歯周病は治りますか?
矯正は歯周病の治療ではないため、それ自体で治るわけではありません。
歯並びが整えば清掃しやすくなり、管理しやすい環境が生まれる可能性はあります[3]。
日々の清掃と定期的な管理は、矯正後も続けていく必要があります。
まとめ
歯周病があることだけを理由に矯正をあきらめる必要はなく、治療して状態が安定すれば検討できるケースがあります。
一方で炎症が残ったまま歯に力を加えると症状が進む可能性があるため、順序を守ることが欠かせません[1]。
矯正までの流れは、検査、基本的なクリーニング、歯ぐきの奥の処置、必要に応じた外科処置を経て安定を確認するという順になります[2]。
歯周病がある場合の矯正では、力の強さや方向を細かく調整し、段階を踏んで進めるという配慮がなされます。
装置が入る期間は汚れが残りやすいため、道具を使い分けた清掃と定期的な確認が必要になります[3]。
歯茎の腫れや出血に気づいたら、通院日を待たずに連絡することで対応の選択肢が広がります。
歯並びが整えば清掃しやすい環境が生まれるため、まず検査を受けて現状を把握するところから始めてみましょう。
参考文献
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周病とは」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-03-001.html
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周病の検査と治療」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-03-004.html
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周病予防」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-03-003.html
[4] 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html
[5] 独立行政法人国民生活センター「医療・美容医療」
https://www.kokusen.go.jp/t_box/t_box-faq/g-1.html
免責事項
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療アドバイスではありません。
※治療の可否や進め方については必ず歯科医師にご相談ください。
※症状の程度や治療の経過には個人差がございます。
※医療機関によって対応できる範囲や方針が異なる場合があります。