矯正のアンカースクリューとは?痛みや費用・外れる不安を解説

矯正のカウンセリングでアンカースクリューが必要と言われ、戸惑っていませんか?
アンカースクリューは歯を動かす際の固定源として顎の骨に埋め込む小さなネジで、入院を伴う大きな手術ではなく、診療室で短時間のうちに行われる処置です。
局所麻酔を使うため埋入中の痛みは抑えられ、その後の違和感も長くて1週間ほどで落ち着くことが多いとされています。
この記事では処置の内容と流れ、痛みの実際、費用の目安、外れたときの対応まで整理しますので、不安を抱えている方はぜひ参考にしてください。
アンカースクリューとは何か
骨にネジを埋め込むという説明を聞いて、思わず身構えてしまった方は少なくありません。
大掛かりな手術が必要なのではないか、痛みに耐えられるのかと、不安ばかりが先に立ってしまいますよね。
まずお伝えしたいのは、これが矯正治療の一環として行われる比較的シンプルな処置だという点です。
入院を伴うような外科手術とは異なり、多くの場合は歯科医院の診療室で完結する処置だからです。
治療が終われば取り外すもので、生涯にわたって入れておくものでもありません。
正体を知っておけば、必要以上に恐れずに判断できるようになります。
ここではアンカースクリューについて、4つの視点から整理していきます。
歯を動かす固定源になる小さなネジ
まず、この装置が何をするものかを押さえておきましょう。
歯を動かすには力をかける支点が必要であり、その支点として顎の骨に埋め込まれるのがアンカースクリューだからです。
大きさは数ミリ程度の小さなネジで、歯茎の骨に埋め込んで使用します。
周囲の歯ではなくこのネジを固定源にすることで、狙った歯だけを確実に動かせるようになります。
矯正用インプラントやミニスクリューといった呼び方をされることもあります。
歯を支える構造の一部として、一時的に加わる補助装置という位置づけです。
チタン製で身体に馴染みやすい素材
素材についても、知っておくと安心につながります。
治療で用いるアンカースクリューはチタン製であることが一般的だからです。
チタンは人の身体に馴染みやすい性質を持つ金属として知られています。
そのためアレルギー反応などが起こるリスクはほとんどないとされています。
金属アレルギーが心配な方は、その旨を事前に伝えておくと確認してもらえます。
素材への不安がある場合も、遠慮せず質問してみてください。
治療が終われば取り外す
期間についての誤解も、解いておきたいところです。
アンカースクリューは矯正治療の期間中のみ使用されるもので、一般的には治療終了時に取り外すためです。
一度埋め込んだら一生そのままというものではありません。
取り外しの処置も、埋入時と同様に短時間で済むことが多いとされています。
取り外したあとの穴は、時間の経過とともに自然に塞がっていきます。
一時的な装置だと分かれば、受け止め方も変わってくるのではないでしょうか。
インプラントとは目的が異なる
名称が似ているため、混同されやすい点にも触れておきます。
失った歯を補うインプラントと、矯正で使うアンカースクリューは目的がまったく違うためです。
歯を補うインプラントは、その位置で歯として機能し続けることを目的としています。
一方でアンカースクリューは、歯を動かす力を受け止める支点としての役割にとどまります。
大きさも埋め込む深さも異なり、処置の規模も比べものになりません。
矯正用インプラントという呼び方をされることもありますが、別のものだと理解しておいてください。
なぜアンカースクリューが必要になるのか
そもそもなぜネジを埋め込む必要があるのか、疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
装置だけで歯を動かせるのなら、余計な処置は避けたいと思うのは自然な気持ちです。
必要になる背景には、歯を動かすときに必ず生じる反作用という物理的な現象があります。
力を加えれば、その力は動かしたい歯だけでなく支えとなる歯にも返ってくるためです。
この問題を解決する手段として、骨に固定された支点が用いられます。
仕組みを理解しておけば、提案された理由も納得しやすくなります。
ここでは必要になる理由を、4つの視点から整理していきます。
歯を動かすには反作用が生じる
まず理解しておきたいのが、力の性質です。
歯を動かすために力を加えると、その反対方向にも同じ力が働くためです。
前歯を後ろへ引く力を加えれば、支えにしている奥歯には前へ引かれる力がかかります。
この反作用は避けられない現象で、装置の種類を問わず生じます。
動かしたい歯と、支えとして動かしたくない歯を分けて計画する必要があるのはこのためです。
力をどこで受け止めるかが、矯正の設計における重要な要素になります。
動かしたくない歯まで動いてしまう問題
反作用がもたらす結果にも、目を向けておきましょう。
支えにしている歯が動いてしまえば、計画どおりの結果が得られなくなるためです。
前歯を後ろへ下げたいのに、奥歯が前へ出てきてしまうという事態が起こり得ます。
その分だけ前歯の移動量は減り、目標に届かないまま終わることも考えられます。
奥歯の位置が変われば、噛み合わせのバランスにも影響が及びます。
動かしたくない歯を確実に留めておくことが、精度を左右する課題になります。
固定源があると狙った動きができる
ここでアンカースクリューの役割が生きてきます。
骨に埋め込まれたネジは歯とは違って動かないため、確実な支点として使えるからです。
反作用を骨で受け止められれば、支えの歯が動く心配がなくなります。
その結果、動かしたい歯だけを狙った方向へ確実に移動させられます。
移動量を大きく取れるため、これまで難しかった動きにも対応できるようになります。
無駄な動きが減ることで、治療期間の短縮につながる場合もあります。
対応できる症例が広がる
治療の選択肢という面でも、意味を持ちます。
アンカースクリューを用いることで、従来の矯正治療では対応が難しかった症例にも取り組めるようになるためです。
歯茎が大きく見えるガミースマイルや、重度の出っ歯といったケースが挙げられます。
奥歯を後方へ移動させることで、抜歯を避けられる可能性が生まれる場合もあります。
外科手術を検討していた症例に、別の選択肢が加わることも考えられます。
提案された背景には、こうした治療の幅を広げるという目的があります。
アンカースクリューが使われるケース
すべての矯正治療でアンカースクリューが必要になるわけではなく、使わずに進められる症例のほうがむしろ多くを占めます。
提案された場合は、自分の歯並びのどこにその必要性があるのかを理解しておきたいところです。
用いられるのは、歯を大きく移動させる必要がある場合や、通常の装置だけでは実現しにくい方向へ動かす必要がある場合に限られます。
いずれも共通しているのは、動かしたくない歯まで動いてしまうと目標に届かなくなるという事情です。
代表的な場面を知っておけば、なぜ自分に提案されたのかという理由も見えてきます。
自分の症例がどれに当てはまるかを、説明を受けるときの手がかりにしてみてください。
ここでは使われることの多い4つの場面を、それぞれの背景とあわせて見ていきます。
前歯を大きく後ろへ下げたい場合
アンカースクリューが最も多く用いられるのが、この場面です。
前歯を大きく後方へ移動させようとすると、その反作用によって支えにしている奥歯が前へ引かれてしまうためです。
口元の突出が強い症例では前歯を下げる距離も長くなるため、反作用の影響もそれだけ大きくなります。
抜歯によってできたスペースを、できるだけ前歯の後退に使いたいという計画では特に有効に働きます。
奥歯が前へ動いてしまえば、その分だけスペースが消費されて前歯を下げられる量が減ってしまうためです。
骨に固定源を置くことで反作用を受け止め、前歯の移動量をしっかり確保できるという仕組みになっています。
奥歯を後方へ移動させたい場合
歯を並べるスペースを確保する方法としても、この装置が用いられます。
奥歯を後ろへ動かすことができれば、その分だけ前歯を並べるための隙間が生まれるためです。
ただし通常の矯正装置では、奥歯を後方へ引く力を受け止める場所が口の中に存在しません。
前方の歯を支えにすれば、今度はその歯が後ろへ引かれてしまうという堂々巡りに陥ります。
骨に固定源を置くことで初めて、奥歯を後ろへ動かすという移動が現実的な選択肢になります。
この方法によって歯を抜かずに済む可能性が生まれるため、抜歯を避けたい方にとっては意味の大きい手段といえます。
歯を沈める動きが必要な場合
前後の移動だけでなく、上下方向の動きでも固定源が役立ちます。
歯を歯茎の方向へ沈める動きは、通常の装置では力をかける方向を確保しにくいためです。
奥歯が伸びすぎていることで前歯が噛み合わない開咬では、奥歯を沈める動きが必要になります。
笑ったときに歯茎が大きく見えるガミースマイルでも、前歯を上方向へ移動させることが検討されます。
骨に埋め込んだ支点から力を加えれば、歯を上へ引き上げるという動きが実現できるようになります。
従来は外科的な処置が検討されていた症例に、別の選択肢が生まれることもあるという点は知っておきたいところです。
抜歯を避けられる可能性がある場合
治療方針そのものを左右する場面もあります。
奥歯を後方へ動かしてスペースを確保できれば、歯を抜かずに歯列を整えられる可能性が出てくるためです。
抜歯を避けたいという希望を持つ方は多く、その気持ちは自然なものといえます。
アンカースクリューを使うことで、非抜歯での治療が現実的な選択肢に入ってくる場合があります。
ただしスペースの不足が大きい症例では、この方法を用いてもなお抜歯が必要になることもあります。
自分の症例で抜歯を回避できるかどうかは、検査を受けて必要なスペースを算出したうえで判断されます。
埋入の流れと痛みについて
処置がどう進むのか分からないままでは、当日を迎えるまで不安が消えませんよね。
骨にネジを埋め込むという説明だけを聞けば、痛みを想像して身構えてしまうのも無理はありません。
実際の処置は、むし歯の治療で行われるのと同じように局所麻酔を使って進められます。
麻酔がしっかり効いた状態で行うため、埋入している最中に痛みを感じることは少ないとされています。
処置の流れをあらかじめ知っておけば、当日も落ち着いて臨めるようになります。
痛みについても、いつまで続くのかという見通しがあれば受け止め方が変わってきます。
ここでは処置と痛みについて、5つの視点から順に整理していきます。
診療室で行われる短時間の処置
まず知っておきたいのが、処置そのものの規模です。
入院などが必要な大きな外科手術とはまったく異なり、多くの場合は歯科医院の診療室で完結する処置だからです。
矯正治療の一環として、通常の診療の枠のなかで実施されるのが一般的です。
処置にかかる時間は短時間で済むケースが多いとされ、通院1回のなかで終えられます。
身体への負担も少なく、比較的シンプルな処置だと位置づけられています。
その日のうちに帰宅でき、翌日から通常どおりの生活を送れることがほとんどです。
表面麻酔から浸潤麻酔へ
痛みへの配慮は、段階を踏んで行われます。
麻酔の注射そのものが痛いのではないかという心配に対して、その前の準備が用意されているためです。
まず歯茎の表面に塗るタイプの麻酔を使い、感覚を鈍らせるところから始まります。
表面麻酔の効果がしっかり出てから、局所麻酔の注射を行うという順序が取られます。
この段階を踏むことで、注射の際に感じる痛みも抑えられる仕組みになっています。
痛みが苦手だと事前に伝えておけば、より丁寧に対応してもらえる場合もあります。
埋入中は痛みを感じにくい
処置そのものの感覚についても、押さえておきましょう。
局所麻酔が効いている状態で行うため、埋入時には痛みを感じない状態で施術されるとされているためです。
むし歯の治療で麻酔を使うときと同じ感覚だと考えると、イメージしやすくなります。
押される感覚や器具の振動を感じることはありますが、それらは痛みとは性質の異なるものです。
不安が強い場合は、その旨を伝えておけば処置中も声をかけながら進めてもらえます。
想像しているような痛みはないという前提で臨んで構いません。
処置後の痛みは1週間ほどで落ち着く
麻酔が切れてからの経過も、知っておきたいところです。
埋入後には痛みや違和感が生じることがあり、これは組織に処置を加えた以上避けられない反応だからです。
感じ方には個人差があり、違和感程度で済む方もいれば、はっきりとした痛みを自覚する方もいます。
装置が口の中にある状態に慣れてくるまでには、約1週間程度かかるとされています。
痛みについても、長くても1週間ほどで改善することが多いようです。
一時的なものだと分かっていれば、その期間を乗り切るための心の準備もできます。
痛みが強い場合の対応
想定を超える痛みがあったときの対処も、確認しておきましょう。
痛みが長引く、あるいは日を追って強くなるという場合は、別の要因が関わっている可能性があるためです。
処置後に鎮痛薬が処方される場合は、指示された用法を守って使用してください。
腫れが強くなってきた、周囲の歯茎が赤くなっているといった変化があれば連絡が必要です。
1週間を過ぎても痛みが引かない場合も、通院日を待たずに相談してよい状況といえます。
我慢を続けるより早く伝えたほうが、原因の特定も対応も早くなります。
アンカースクリューの費用
矯正の費用だけでも大きな金額になるなかで、追加の処置が必要と言われれば負担が気になりますよね。
いくらかかるのか分からないまま話が進めば、後から想定外の請求に驚くことにもなりかねません。
アンカースクリューの費用は、埋入する本数と医療機関の料金設定によって変わってきます。
矯正治療は一部の例外を除いて公的医療保険の対象外である自由診療にあたり、料金は各医療機関が独自に定めているためです[1]。
矯正の総額に含まれている場合と、別途請求になる場合の両方があります。
契約前に確認しておくべき項目として、押さえておきたいところです。
ここでは費用について、4つの視点から整理していきます。
1箇所あたりの目安
まず金額の水準を把握しておきましょう。
医療機関によって設定は異なりますが、1箇所あたり数万円程度という水準が示されることが多いためです。
矯正の総額と比べれば大きな割合を占めるものではありませんが、無視できる金額でもありません。
装置の種類や埋入する部位によって、費用が変わる場合もあります。
同じ医療機関でも、症例の難易度によって設定が異なることも考えられます。
見積もりを受け取る際に、1箇所あたりいくらなのかを確認しておいてください。
必要な本数は治療計画による
総額を左右するのが、本数です。
1本で済む場合もあれば、複数箇所への埋入が必要になる場合もあるためです。
上下の両方に必要なのか、片側だけでよいのかによって本数は変わってきます。
治療の途中で追加の埋入が必要になる可能性も、あらかじめ想定しておきたいところです。
必要な本数と部位は治療計画によって決まるため、精密検査後の診断の際に提示されます。
その段階で総額と合わせて明確に示してもらえるかどうかも、確認しておきたい点です。
総額に含まれるかを確認する
料金体系そのものも、医療機関によって異なります。
矯正の総額にアンカースクリューの費用が含まれている場合と、別途請求になる場合があるためです。
必要な費用をすべて含めて提示する体系であれば、後から追加されることはありません。
一方で処置ごとに費用が加算される体系では、その都度支払いが発生します。
矯正の見積もりを見ただけでは、どちらの体系なのか分からないこともあります。
提示された金額に何が含まれているのかを、書面で確認しておきましょう。
再埋入の費用の扱い
後で触れる脱落に備えて、この点も聞いておきたいところです。
万が一スクリューが外れた場合、再度埋入する処置が必要になるためです。
再埋入の費用がかからないという方針をとっている医療機関もあります。
一方で、その都度費用が発生する体系の場合もあります。
埋入位置の変更が必要になった場合の扱いも、あわせて確認しておくと安心です。
起こる可能性のある事態について、先に取り決めを知っておくことが不安の軽減につながります。
脱落するリスクと対応
骨に埋め込んだネジが外れることはないのか、という心配を抱く方も多いのではないでしょうか。
一度埋めたものが外れるという事態を想像すると、それだけで不安になってしまいますよね。
結論からお伝えすると、スクリューが緩んで外れることは実際に起こり得ます。
骨にしっかり定着せず、途中で緩んでしまうという現象があるためです。
ただし脱落したとしても、対応できる範囲のトラブルにとどまります。
起こり得ることと、その後どうなるかをセットで知っておけば、必要以上に恐れずに済みます。
ここでは脱落について、4つの視点から整理していきます。
骨に定着せず緩むことがある
まず、何が起こるのかを正確に把握しておきましょう。
埋入したスクリューが骨にしっかり定着せず、緩んでしまうことがあるためです。
矯正の力を受け止め続けるなかで、少しずつ動いてしまうという現象が生じます。
緩みが進めば、最終的に外れてしまうこともあります。
治療の初期に起こることもあれば、途中で生じることもあります。
起こり得る事態として、あらかじめ説明を受けておきたい項目です。
起こりやすい条件
どんな場合に起こりやすいのかも、知っておくと対策につながります。
骨の密度や日常の癖といった条件が、定着のしやすさに関わってくるためです。
骨の密度が低い場合は、スクリューが安定しにくいという傾向があります。
無意識に舌でスクリューを触ってしまう癖も、緩みの原因として挙げられています。
周囲に炎症が起きている場合も、定着に影響する可能性があります。
自分で気をつけられる部分については、意識しておく価値があります。
脱落しても再度埋め直せる
外れた場合の対応が、最も知りたい部分ではないでしょうか。
万が一脱落しても、時期や位置を少し変えて再度埋め直すことが可能とされているためです。
脱落する際に痛みを伴うことはないという説明も示されています。
治療が続けられなくなるような事態には、通常はつながりません。
再埋入までのあいだ、計画を一時的に調整して進めるという対応がとられることもあります。
取り返しのつかないトラブルではないという前提を持っておいてください。
舌で触らないという心がけ
予防としてできることも、押さえておきましょう。
無意識に舌で触ってしまう癖が、緩みの原因になり得ると指摘されているためです。
口の中に新しいものが入れば、気になって舌で確かめてしまうのは自然な反応です。
しかし繰り返し触れば、その力が少しずつスクリューに加わることになります。
気になっても触らないという意識を持つだけで、脱落のリスクは減らせる可能性があります。
違和感が強くて触ってしまうという場合は、その状態を歯科医師に伝えてみてください。
埋入後の清掃と日常の注意点
処置が無事に終われば、そこからは日々の管理という段階が始まります。
口の中に新しいものが加わることで、これまでと同じ歯みがきでは行き届かない部分が生まれてしまうためです。
スクリューの周囲は歯ブラシが届きにくく、汚れが残りやすい場所として意識しておく必要があります。
汚れが蓄積して周囲の歯茎に炎症が起きれば、スクリューの定着にも影響し、脱落につながる可能性も考えられます。
つまり日々の清掃が、そのまま治療を計画どおりに進めるための土台になっているということです。
必要な道具と手順をあらかじめ知っておけば、負担を最小限に抑えながら管理を続けられます。
ここでは埋入後の過ごし方について、4つの視点から整理していきます。
周囲は汚れがたまりやすい
まず理解しておきたいのが、口の中の環境が変わったという事実です。
スクリューは歯と歯茎の境目に近い位置に埋入されることが多く、もともと清掃が難しい場所にあたるためです。
そこに突出した構造が加わることで、歯ブラシの毛先がさらに届きにくくなります。
汚れが残ったままの状態が続けば、周囲の歯茎に炎症が起こる可能性が高まります。
歯を支える組織にまで炎症が広がれば、矯正治療そのものの進み方にも影響が及びかねません[2]。
装置が増えたぶん、清掃に向ける意識も一段引き上げる必要があるという前提を持っておいてください。
専用のブラシで優しく清掃する
対応として有効なのは、道具を使い分けるという方法です。
通常の歯ブラシではスクリューの周囲に毛先が届かず、細かい部分の汚れを落としきれないためです。
毛束の小さい専用のブラシを使えば、スクリューの周りにもピンポイントで当てられます。
このとき大切なのは、力を入れてこするのではなく優しく清掃するという点です。
強くこすればスクリューそのものに力が加わり、緩みを招く原因になることも考えられます。
清掃の方法は埋入した際に指導してもらえるため、その場で一度教わっておくと自宅でも実践しやすくなります。
腫れや痛みが続く場合
異常を見分けるための目安も、あわせて知っておきたいところです。
埋入後の痛みは1週間ほどで落ち着くとされており、それを超えて続く場合は別の要因が関わっている可能性があるためです。
周囲の歯茎が赤く腫れている、押すと痛むといった変化は炎症が起きているサインかもしれません。
歯みがきのたびに出血する場合も、清掃が行き届いていない状態を示している可能性があります[3]。
スクリューがぐらついているように感じる場合は、すでに緩みが生じているのかもしれません。
いずれの場合も通院日を待たずに連絡してよい状況にあたるため、我慢せずに伝えてください。
定期的な確認
自分で行う管理だけでは、どうしても限界があります。
スクリューがしっかり定着しているかどうかは、専門的に確認しなければ正確に判断できないためです。
矯正の調整で通院するタイミングで、周囲の状態もあわせて診てもらえます。
日々の清掃で落としきれない汚れも、専門的な処置によって取り除いてもらえます[3]。
緩みの兆候があれば早い段階で気づけるため、脱落を未然に防げる可能性も高まります。
定期的な通院を守ることが、そのまま治療を予定どおりに進めることにつながっていきます。
取り外しと治療後の状態
骨に埋め込んだものが後々どうなるのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。
一生入れたままなのか、外したあとに痕が残るのかという不安は、処置を受けるかどうかの判断を迷わせる要素になります。
結論からお伝えすると、アンカースクリューは矯正治療の期間中のみ使用されるもので、一般的には治療終了時に取り外されます。
歯を動かすための固定源という役割を終えれば、そのまま口の中に留めておく理由がないためです。
取り外しの処置も、埋入時と同様に短時間で済むことが多いとされています。
先の見通しを知っておけば、処置そのものへの受け止め方も変わってくるはずです。
ここでは治療後について、4つの視点から整理していきます。
治療終了時に取り外す
まず、使用する期間についてはっきりさせておきましょう。
アンカースクリューはあくまでも矯正治療の期間中のみ使用されるものだからです。
歯が計画された位置まで移動してしまえば、固定源としての役割はそこで終わります。
一般的には治療が終了する段階で取り外すことになります。
症例によっては治療の途中で不要になり、その時点で外される場合もあります。
一時的に加わる装置だという前提を持っておくだけで、不安はかなり和らぐのではないでしょうか。
取り外しの処置
外すときの流れについても、知っておくと当日に慌てずに済みます。
埋め込むときと同様に、短時間で終わる処置とされているためです。
多くの場合は専用の器具を使い、回して外すという方法がとられます。
骨を削ったり切開したりする必要がないため、埋入時より短い時間で済むことも少なくありません。
痛みへの配慮についても、必要に応じて麻酔を用いる対応がとられます。
不安がある場合は、事前に流れを説明してもらっておくと落ち着いて臨めます。
外したあとの穴はどうなるか
痕が残るのではないかという疑問にも、触れておきます。
スクリューを抜いた部分には小さな穴が残りますが、そこは時間の経過とともに塞がっていくためです。
歯茎の組織はもともと回復する力を持っており、自然に閉じていきます。
塞がるまでのあいだは清潔に保ち、強く触らないよう気をつけておきたいところです。
食事の際に食べかすが入り込まないよう、しばらくは意識しておくと安心できます。
見た目に大きな痕が残るという心配は、通常は必要ないと考えておいてください。
治療後の管理
スクリューを取り外したあとも、口の中の管理は続いていきます。
矯正が終われば歯の位置を安定させる保定の段階に入り、そこでも清掃と定期的な確認が必要になるためです。
装置が減ることで清掃そのものはしやすくなりますが、油断してよい段階ではありません。
整った歯並びを保つには、日々のケアを続けることが欠かせないからです[3]。
保定装置の状態を確認してもらうタイミングで、口の中全体も診てもらえます。
長い治療の成果を保つという視点で、管理を習慣として続けていきましょう。
提案されたときに確認したいこと
カウンセリングでアンカースクリューが必要だと言われたとき、その場で何を聞けばいいのか分からず頷いてしまう方も少なくありません。
専門的な説明を受けても、聞き慣れない言葉が並べば理解が追いつかないのも当然のことです。
しかし骨に処置を加える以上、納得したうえで判断したいという気持ちは自然なものといえます。
確認しておきたいのは、なぜ必要なのか、使わない場合はどうなるのか、費用と本数、そして万が一のときの対応という4点です。
いずれも遠慮すべき質問ではなく、患者として当然に聞いてよい内容にあたります。
矯正治療は一部の例外を除いて公的医療保険の対象外である自由診療にあたり、方針も料金も医療機関ごとに異なります[1]。
まず確認したいのは、なぜ自分の症例にアンカースクリューが必要なのかという点です。
前歯を大きく下げたいのか、奥歯を後方へ動かしたいのかによって、目的はまったく変わってくるためです。
どの歯をどの方向へ動かすために固定源が必要なのかを、具体的に説明してもらってください。
目的が理解できれば、処置に対する納得感もまったく違ってきます。
次に、使わない場合の見通しについても聞いておきましょう。
アンカースクリューを使わずに進めた場合、どこまで結果が変わるのかを知っておきたいためです。
移動量が減って目標に届かないのか、期間が長くなるだけなのかによって判断は変わってきます。
抜歯を避けるために必要だという場合は、抜歯を選ぶという代替案との比較も必要になります。
費用と本数についても、この段階で確認しておきたい項目です。
必要な本数や部位は治療計画によって決まり、精密検査後の診断の際に提示されるためです。
1箇所あたりいくらで、何本必要なのかを合わせて確認してください。
矯正の総額に含まれているのか別途請求になるのかも、書面で確かめておきましょう。
最後に、万が一のときの対応も聞いておくと安心できます。
スクリューが脱落した場合の再埋入について、費用がかかるのかどうかは医療機関によって異なるためです。
埋入位置の変更が必要になった場合の扱いも、あわせて確認しておきたい部分です。
説明を受けても判断がつかない場合は、その場で決めず持ち帰って検討して構いません。
契約内容に不安が残る場合は、独立行政法人国民生活センターや自治体の消費生活センターに相談するという方法もあります[4]。
アンカースクリューに関するよくある質問
Q1. アンカースクリューとは何ですか?
歯を動かす際の固定源として、顎の骨に埋め込む数ミリ程度の小さなネジです。
周囲の歯ではなくこのネジを支点にすることで、狙った歯だけを確実に動かせるようになります。
素材はチタン製が一般的で、治療が終われば取り外します。
Q2. 埋入するとき痛いですか?
局所麻酔を使うため、埋入している最中に痛みを感じることは少ないとされています。
表面麻酔を行ってから注射をするため、麻酔そのものの痛みにも配慮されています。
処置後には痛みや違和感が生じますが、長くても1週間ほどで落ち着くことが多いようです。
Q3. 費用はいくらですか?
自由診療にあたるため、料金は各医療機関が独自に設定しています[1]。
1箇所あたり数万円程度という水準が示されることが多くなっています。
必要な本数によって総額が変わるため、診断の際に確認してください。
Q4. 外れることはありますか?
骨にしっかり定着せず、緩んで外れることは実際に起こり得ます。
骨の密度が低い場合や、無意識に舌で触ってしまう癖が原因になるとされています。
万が一脱落しても、時期や位置を変えて再度埋め直すことが可能です。
Q5. いつ取り外しますか?
矯正治療の期間中のみ使用されるもので、一般的には治療終了時に取り外します。
症例によっては、途中で不要になった段階で外す場合もあります。
取り外しの処置も短時間で済むことが多いとされています。
Q6. 断ることはできますか?
治療方針は説明を受けたうえで判断するものであり、疑問があれば伝えて構いません。
ただし使わない場合に結果がどう変わるのかを、あわせて確認しておく必要があります。
判断がつかない場合は、他の医療機関の意見を聞くという方法もあります。
まとめ
アンカースクリューは歯を動かす際の固定源として顎の骨に埋め込む小さなネジで、治療が終われば取り外します。
歯を動かすと必ず反作用が生じるため、動かしたくない歯を守る目的で骨に支点を置くという仕組みです。
前歯を大きく下げたい場合や奥歯を後方へ動かしたい場合に用いられ、抜歯を避けられる可能性が生まれることもあります。
埋入は診療室で行われる短時間の処置で、局所麻酔を使うため施術中の痛みは抑えられます。
処置後の痛みや違和感は長くても1週間ほどで落ち着くことが多く、一時的なものとされています。
骨に定着せず脱落することもありますが、時期や位置を変えて再度埋め直すことが可能です。
周囲は汚れがたまりやすいため専用のブラシで優しく清掃し、定期的に状態を確認してもらいましょう[3]。
参考文献
[1] 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周病とは」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-03-001.html
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周病予防」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-03-003.html
[4] 独立行政法人国民生活センター「医療・美容医療」
https://www.kokusen.go.jp/t_box/t_box-faq/g-1.html
免責事項
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療アドバイスではありません。
※処置の必要性や進め方については必ず歯科医師にご相談ください。
※痛みの感じ方や経過には個人差がございます。
※記載の費用は一般的な目安であり、医療機関により異なります。