歯が根元から折れたらどうなる?残せるかどうかと治療法・費用を解説

歯が根元から折れてしまい、この歯はもう抜くしかないのかと不安になっていませんか。
歯が根元から折れても、根の状態や割れ方によっては、抜かずに残せる可能性がまったくないわけではありません。
一方で、根が縦に割れていたり深くまで折れていたりする場合は、抜歯が必要になることもあります。
根っこだけ残った状態を見ると、残せる望みはないのではと落ち込んでしまいますよね。
大切なのは、自分の歯が今どちらに近いのかを正しく知り、残す方法と抜いたあとの選択肢を理解しておくことです。
この記事では、歯が根元から折れたときに残せるかどうかの判断や、歯を残す治療法・抜歯後の治療法、治療費の目安までをやさしく整理しますので、これからの治療を考える参考にしてください。
歯が根元から折れたらどうなる?
歯が根元から折れると、歯の頭の部分が失われて、歯ぐきの中に根だけが残った状態になります。
歯は、口の中に見えている頭の部分と、歯ぐきや骨に埋まった根の部分に分かれており、根元から折れるとは、この境目あたりで頭を失い、支えとなる根だけが残ることを意味するためです。
この状態は、噛む力を受け止める部分がなくなっているため、そのままでは食事や見た目に支障が出ます。
残った根がどのような状態かによって、その後に残せるのか抜くことになるのかが分かれるため、まずは折れた状態がどういうものかを知っておくことが大切です。
根元から折れた状態(残根・歯根破折)とは
歯が根元から折れた状態は、大きく「残根」と「歯根破折」に分けられます。
歯の頭が虫歯や外傷で失われて根だけが残ったものを残根と呼び、根そのものにひびや割れが入ったものを歯根破折と呼ぶというように、同じ「根元から折れた」でも中身が異なるためです。
残根は、根がしっかり残っていれば、その根を土台として活用できる可能性がありますが、歯根破折で根が縦に割れている場合は、残すのが難しくなります。
見た目では同じ「根っこだけ」に見えても、この違いによってたどる治療がまったく変わってきます。
自分の歯がどちらの状態なのかは検査で判断されるため、まずは受診して確かめてもらうことが出発点になります。
歯が根元から折れる主な原因
歯が根元から折れる背景には、歯がもろくなっていたり、強い力が加わったりといった原因があります。
もともと弱くなっている歯や、大きな力を受けた歯は、根元という力の集中しやすい場所で折れてしまうことがあるためです。
代表的なのは、神経を抜いてもろくなった歯や、大きな虫歯・大きな詰め物で歯質が少なくなった歯が、噛む力の積み重ねで折れるケースです[1]。
また、転倒やスポーツ、事故などで口元に強い衝撃を受けて折れることや、就寝中の歯ぎしり・食いしばりで負担が積み重なって折れることもあります。
心当たりのある原因を知っておくと、残った歯を守るための予防にもつなげやすくなります。
歯が根元から折れたらまずすべき応急処置
歯が根元から折れたときは、まず折れた歯を乾燥させずに保存し、できるだけ早く歯科を受診することが大切です。
折れ方によっては折れた部分を治療に生かせることがあり、その成否は保存の仕方や受診までの早さに左右されるため、あわてて自己流の対処をするより、正しい応急処置を知っておくことが役立つためです。
とくに外傷で急に折れた場合は、その場の対応がその後の治療を左右することもあります。
ここでは、受診までにやっておきたい応急処置を見ていきましょう。
折れた歯・かけらは牛乳などで乾燥させない
折れた歯やそのかけらは、捨てずに拾い、牛乳などに浸けて乾燥させないようにします。
折れた部分は状態によっては治療に生かせることがあり、とくに歯が丸ごと抜けた場合は、根の表面の組織が乾かずに保たれていれば戻せる可能性があるためです[1]。
歯科用の保存液があればそれが最適で、なければ牛乳、それも手元になければ生理食塩水が代わりになります。
歯を持つときは白い頭の部分をつまみ、根には触れず、汚れていてもこすらずに軽くすすぐ程度にとどめます。
液体が用意できないときは、乾いた紙で包まずラップなどで乾燥を防ぎ、できるだけ早く受診に向かうことが望まれます。
市販の接着剤でくっつけず、早めに受診する
折れた歯を市販の接着剤で自分でくっつけるのは避け、早めに歯科を受診します。
瞬間接着剤などの市販の接着剤は口の中で使うことを想定しておらず、無理に貼りつけると接着剤が残って正しい治療の妨げになり、かえって処置を難しくしてしまうためです。
見た目が気になっても、自分で固定しようとせず、折れた歯やかけらを保存したうえで歯科に持参するのが確実です。
受診の際は、いつどのように折れたか、痛みの有無、破片を保存しているかを伝えると、その後の処置がスムーズになります。
自己判断で対処を完結させようとせず、専門家の診断にゆだねることが、結果的に歯を残す可能性を守ることにつながります。
歯が根元から折れても残せる?残せないの判断
歯が根元から折れても残せるかどうかは、残った根の状態によって判断されます。
同じ根元から折れた状態でも、根がしっかり残って割れていない場合と、根が短かったり縦に割れていたりする場合とでは、歯を支える土台として使えるかどうかが変わってくるためです。
「根っこだけになったから抜くしかない」と思われがちですが、実際には残せるケースもあり、その見極めには精密な検査が欠かせません。
どんな場合に残せて、どんな場合に抜歯になりやすいのかを知っておくと、診断の説明を落ち着いて受け止めやすくなります。
残せる可能性があるケース(フェルール・根の状態)
根がしっかり残り、縦の割れがなく、感染を抑えられる場合は、歯を残せる可能性があります。
被せ物を長く安定させるには、健康な歯質が歯ぐきの上に一定量残っていることが重要で、この歯質を土台として被せ物をしっかり固定できれば、抜かずに機能を回復できるためです。
被せ物を支える帯のように、歯ぐきの上に出た健康な歯質のことをフェルールと呼び、これがある程度確保できるかどうかが残せるかの一つの目安になります。
根の長さが十分にあり、縦の割れがなく、根の中の感染をきれいに取り除ける状態であれば、根管治療をして土台を立て、被せ物で修復できることがあります。
自分の歯にこうした条件がそろっているかは検査で判断されるため、まずは診てもらうことが残せる道を探る第一歩になります。
抜歯になりやすいケース(縦の割れ・根が短い)
一方で、根が縦に割れていたり、残った根が短すぎたりする場合は、抜歯になりやすくなります。
根が縦に割れている歯根破折では、割れ目から細菌が入り続けて炎症が治まらず、無理に残しても再び腫れたり割れたりしやすいため、保存が難しいとされるためです[1]。
また、残った根が短く土台を立てられない場合や、虫歯が歯ぐきのずっと奥深くまで進んでいる場合も、被せ物を安定させる土台が確保できず、抜歯が検討されます。
こうした状態で無理に歯を残しても、短期間で膿んだり取れたりして、かえって時間や費用の負担が増えてしまうことがあります。
抜歯と判断された場合でも、その理由を理解しておくことで、次の治療へ前向きに進みやすくなります。
歯を残す場合の治療法
歯を残せると判断された場合は、根の状態に応じていくつかの治療法が選ばれます。
残った根をそのまま土台にできる場合もあれば、歯ぐきの中に隠れた歯質を使えるように工夫が必要な場合もあり、状態によって適した方法が変わるためです。
どのような治療があるのかを知っておくと、提案された治療をイメージしやすくなります。
ここでは、歯を残すための代表的な治療法を見ていきましょう。
根管治療と土台・被せ物で修復する
もっとも基本となるのが、根管治療をして土台を立て、被せ物をかぶせる方法です。
根元から折れた歯は神経が露出していることが多く、感染を防ぐために神経の処置をしたうえで、失われた頭の部分を人工的に補う必要があるためです[2]。
まず根の中を消毒する根管治療を行い、その後に根の中へ土台を入れて、歯の強度と大きさを回復させます。
その土台の上から被せ物をかぶせることで、噛む機能と見た目を取り戻すことができ、いわゆる差し歯と呼ばれる状態になります。
根がしっかり残っていれば選びやすい方法で、多くの場合はこの流れで機能を回復させていきます。
矯正的挺出で歯根を引き上げる
歯質が歯ぐきの中に隠れている場合には、矯正的挺出で根を引き上げる方法があります。
被せ物を安定させるには歯質が歯ぐきの上に出ている必要があり、折れた位置が歯ぐきの中にある場合は、根を上方へ動かして被せ物ができる高さを確保する必要があるためです。
矯正的挺出は、針金とゴムなどの矯正の力を使って、埋もれた根をゆっくりと引き上げる治療で、歯根挺出術とも呼ばれます。
自分の根をそのまま活かせるため体への負担が少ない一方、数か月の期間がかかることや、対応できる医療機関が限られることが特徴です。
抜歯を避けて自分の歯を残したい場合の選択肢の一つとして、知っておくとよいでしょう。
歯冠長延長術で歯ぐき・骨を下げる
矯正的挺出と似た目的で、歯冠長延長術という方法が用いられることもあります。
こちらも折れた位置が歯ぐきの中にある場合に、被せ物ができる高さの歯質を確保するための治療で、根を動かすのではなく歯ぐき側を下げるという考え方に基づくためです。
歯冠長延長術は、歯ぐきと歯を支える骨の位置を外科的に下げることで、歯ぐきの中に隠れていた歯質を上に出す治療で、クラウンレングスニングとも呼ばれます。
歯周組織の状態が良い場合に検討され、根を引き上げる方法とは違って外科的な処置になる点が特徴です。
どちらの方法が向くかは根や歯ぐきの状態によるため、医師とよく相談して選ぶことが望まれます。
破折した歯を接着して残す
根に割れが生じている場合でも、状態によっては破折した歯を接着して残す治療が選べることがあります。
割れ目に入り込んだ細菌を取り除き、生体になじむ接着剤で割れをふさいで安定させられれば、抜歯を避けて歯を機能させられることがあるという考え方に基づく治療が存在するためです。
割れが浅ければ口の中で直接接着し、口の中では確実に接着できない場合には、いったん歯を抜いて口の外で接着してから元へ戻す方法がとられることもあります。
ただし、この治療はどの割れにも行えるわけではなく、割れの深さや位置によって適応が細かく分かれ、高度な技術を要するため、対応できる医療機関は限られます。
抜歯と言われた歯でも、接着治療に力を入れている医療機関で相談すると、別の道が見つかることもあるため、一度専門的な意見を聞く価値はあるでしょう。
歯を残せない場合(抜歯後)の治療法
歯を残すのが難しく抜歯となった場合も、そのままにせず、失った歯を補う治療へ進みます。
歯が抜けた空間を放置すると、両隣の歯が倒れ込んだり、噛み合っていた歯が伸びてきたりして、口全体の噛み合わせが崩れていくためです。
抜いたあとをどう補うかによって、その後の噛み心地や周りの歯への影響が変わるため、選択肢を知っておくことが役立ちます。
ここでは、抜歯後に失った歯を補う代表的な方法を見ていきましょう。
ブリッジ・入れ歯・インプラントで補う
抜いたあとを補う方法には、ブリッジ・入れ歯・インプラントの三つがあります。
いずれも失った歯の代わりに噛む機能を取り戻す治療ですが、支え方や周りの歯への負担、費用や治療期間が異なるため、状態や希望に合わせて選ぶ必要があるためです。
ブリッジは、両隣の歯を削って橋のようにつないで補う方法で、固定式で噛み心地が安定する一方、健康な隣の歯を削る必要があります。
入れ歯は取り外し式で補う方法で、隣の歯を大きく削らずに済みますが、装着感や安定性に個人差があります。
インプラントは顎の骨に人工の根を埋めて歯を作る方法で、隣の歯に負担をかけにくい一方、外科的な処置と費用がかかるため、それぞれの利点と注意点を踏まえて選ぶことが望ましいでしょう。
歯が根元から折れたときの治療費の目安
歯が根元から折れたときの治療費は、選ぶ治療法によって大きく幅があります。
保険が使える治療と自由診療になる治療があり、どの方法で歯を残すか、あるいは抜いたあとをどう補うかによって、負担する金額が変わってくるためです。
あらかじめおおよその考え方を知っておくと、治療の相談をするときに見通しを立てやすくなります。
ここでは、保険が使える場合と自由診療になる場合に分けて、費用の目安を見ていきましょう。
なお、以下の金額はあくまで一般的な目安で、歯の状態や医療機関によって異なります。
保険が使える治療の費用
噛む機能を回復させる基本的な治療は、多くの場合で保険が使えます。
折れた歯を根管治療して土台を立て、保険の被せ物で補うといった、機能を取り戻すための治療は保険診療の対象になることが多いためです[2]。
保険で行う被せ物は、前歯であれば表面が白く見える種類を選べることもあり、三割負担の場合で数千円程度から対応できることがあります。
抜歯後にブリッジや入れ歯で補う場合も、保険の範囲で対応できる方法が用意されています。
まずは費用を抑えて機能を回復したい場合は、保険でどこまで対応できるかを医師に確認するとよいでしょう。
自由診療になる治療の費用
見た目の自然さや特定の治療法を選ぶ場合は、自由診療となり費用が高くなります。
セラミックの被せ物や、根を引き上げる矯正的挺出、割れた歯を残す接着治療、インプラントなどは、保険の対象外となることが多いためです。
目安として、セラミックの被せ物はおよそ十万円台、根を引き上げる矯正的挺出は数万円から十数万円程度、インプラントは一本あたり数十万円程度とされることが多くなっています。
これらは見た目や機能の面で利点がある一方、費用が高くなるため、得られるものと負担のバランスを踏まえて選ぶことが大切です。
自由診療を検討する際は、治療前に費用の総額や保証の有無まで確認しておくと、安心して進めやすくなります。
歯が根元から折れたのを放置するとどうなる?
歯が根元から折れたまま放置すると、痛みや腫れが出るだけでなく、周囲にも問題が広がっていきます。
根だけが残った状態は自然に治ることがなく、そこが細菌のたまり場となって炎症を起こしたり、支えを失った周囲の環境が崩れていったりするためです。
「痛くないから」「根っこだけだから」と様子を見ているうちに、対応が難しくなってしまうこともあります。
放置がどんな影響を及ぼすのかを知っておくと、早めに受診しようという判断につながります。
痛みや腫れ・隣の歯や骨への影響
根元から折れた歯を放置すると、ある日突然の強い痛みや腫れ、そして隣の歯や骨への影響を招くことがあります。
残った根に虫歯菌や細菌がたまると、根の周りで炎症が進み、あるとき急に激しい痛みや大きな腫れとしてあらわれることがあるためです。
さらに、根にたまった細菌は隣り合う健康な歯にも影響し、隣の歯が虫歯になったり歯周病が悪化したりして、一本の放置が周りの歯の寿命まで縮めてしまうことがあります[1]。
歯が失われた部分では、支えを失った顎の骨が少しずつ吸収されていき、将来インプラントや入れ歯で補おうとしたときに、選べる治療の幅がせまくなることもあります。
痛みがない時期にこそ状態は静かに進んでいるため、根っこだけになった歯を見つけたら、放置せず早めに受診することが望まれます。
歯が根元から折れたときに関するよくある質問
Q. 根っこだけになっても歯を残せますか?
根っこだけになっても、状態によっては残せることがあります。
根が十分に残り、縦の割れがなく、感染を抑えられる場合は、根管治療をして土台を立て、被せ物で修復できる可能性があるためです。
まずは検査を受け、残せる状態かどうかを確かめてもらうことが大切です。
Q. 痛くないのですが受診したほうがいいですか?
痛みがなくても、早めに受診することがすすめられます。
根だけになった歯は痛みが乏しいまま細菌がたまり、あるとき急に強い痛みや腫れが出たり、隣の歯に影響したりすることがあるためです[1]。
自覚症状がなくても放置せず、状態を確かめてもらうと安心できます。
Q. 治療費はどのくらいかかりますか?
治療費は、選ぶ治療法によって幅があります。
保険の被せ物で補う場合は数千円程度から、セラミックや矯正的挺出、インプラントなどの自由診療では数万円から数十万円程度とされることが多くなっています。
金額は状態や医療機関によって異なるため、治療前に確認しておくとよいでしょう。
Q. 抜歯と言われたら諦めるしかないですか?
抜歯と言われても、諦める前に相談してみる価値があります。
近年は接着や矯正的挺出などの技術が進み、精密に診断すると残せるケースもあるためです。
とくに専門的な診断を行っている医療機関で改めて相談すると、別の見立てが得られることもあります。
まとめ
歯が根元から折れると、歯の頭を失って根だけが残った、残根や歯根破折の状態になります。
残せるかどうかは、根の長さや強度、縦の割れの有無、健康な歯質が歯ぐきの上に残っているかによって決まります。
根がしっかり残っていれば、根管治療をして土台を立て被せ物で修復でき、歯質が隠れている場合は矯正的挺出や歯冠長延長術で高さを確保することもあります[2]。
根が縦に割れていたり短すぎたりする場合は抜歯となり、ブリッジ・入れ歯・インプラントで補います。
治療費は保険の被せ物なら数千円程度から、自由診療では数万円から数十万円程度と幅があり、状態や医療機関によって異なります。
放置すると強い痛みや腫れを招き、隣の歯や顎の骨にも影響が及ぶため、根っこだけになった歯は早めに受診することが大切です。
抜歯と言われても諦めず、まずは精密な診断を受けて残せる可能性を確かめることが、自分の歯を守る一歩になるでしょう。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療アドバイスではありません。
治療に関しては必ず医師にご相談ください。
※症状の現れ方や治療の結果には個人差がございます。
※歯の状態により、行える治療が異なる場合があります。
※治療費は目安であり、歯の状態や医療機関によって異なります。
参考文献
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯・口腔の健康」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/information/teeth.html
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「むし歯の治療の流れ」(抜髄・被せ物について)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-02-004.html