インプラントの保険適用の条件は?対象になるケースと医療機関

歯を失ってインプラント治療を検討し始めたとき、健康保険が使えないものだろうかと調べている方は多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、インプラント治療は原則として自由診療にあたり、かかる費用は全額が自己負担となります。
ただし、生まれつきの疾患や事故、腫瘍などによって顎の骨が広い範囲にわたって失われている場合など、ごく限られたケースでは公的医療保険が適用されます。
その条件に当てはまる場合であっても、治療を受けられるのは入院設備を備えた病院の歯科や口腔外科など、一定の基準を満たした医療機関に限られています。
この記事では、保険が適用される具体的な条件から、対象となる医療機関の要件、そして条件に当てはまらなかった場合に負担を抑える方法までを、順を追って整理していきます。
自分が対象になるのかどうかを確かめたいという方が、判断の材料として使えるようにまとめていますので、ぜひ読んでみてください。
インプラントは原則として保険適用外
インプラント治療について調べていると、費用の高さに驚かれる方が少なくありません。
同じ歯を補う治療でも、入れ歯やブリッジには保険が使えるのに、なぜインプラントだけが違うのかと疑問に感じることもあるでしょう。
まずは、この治療が制度の上でどのように位置づけられているのかという前提を確認しておきましょう。
ここでは、原則としての扱いと、例外が認められている背景を整理していきます。
自由診療にあたり全額自己負担
インプラント治療は、原則として公的医療保険の対象外となる自由診療にあたります。
歯を失った部分を補う方法としては入れ歯やブリッジという保険の効く選択肢があり、噛む機能の回復という目的はそれらで果たせると考えられているためです。
そのため、費用は全額が自己負担となり、1本あたり数十万円という金額を自分で用意する必要があります。
自由診療では価格の設定も歯科医院ごとに任されているため、同じ治療でも医院によって金額に差が出てきます。
この前提を知っておくだけでも、なぜ費用が高くなるのかという疑問には一定の答えが得られるはずです。
限られたケースで保険が適用される
一方で、すべてのインプラント治療が保険の対象外というわけではありません。
生まれつきの疾患や事故、腫瘍の切除などによって顎の骨が広い範囲で失われている場合には、入れ歯やブリッジでは十分に噛む機能を回復できないことがあるためです。
こうしたケースについては、限られた条件のもとで保険が適用される道が設けられています。
対象となるのは、一般的な虫歯や歯周病で歯を失った場合とは大きく性質の異なる、特殊な状況に限られます。
自分が該当するかどうかは条件を一つずつ確認していく必要があるので、次の章からくわしく整理していきます。
診療報酬上の名称と位置づけ
保険が適用されるインプラント治療は、診療報酬の制度上では別の名称で扱われています。
一般に使われるインプラントという呼び方ではなく、広範囲顎骨支持型装置という項目として位置づけられているためです[1]。
この名称からも分かるとおり、広い範囲にわたって顎の骨が失われた状態を対象とした治療という位置づけになっています。
制度の内容は診療報酬の改定にあわせて見直されることがあり、対象となる範囲が調整されることもあります[2]。
自分の場合が該当するかどうかは、最新の基準にもとづいて医療機関に判断してもらう必要があるといえるでしょう。
保険が適用される条件【先天性】
保険が適用される条件は、大きく分けると生まれつきの原因によるものと、あとから生じた原因によるものの二つに整理できます。
まずは、先天的な疾患などが背景にあるケースについて見ていきましょう。
いずれも生まれつきの状態が関わっているため、成長の過程で診断を受けている方が多い領域です。
ここでは、対象となる代表的な条件を順に整理していきます。
顎の骨が3分の1以上連続して欠損している
先天性の条件のうち中心となるのが、顎の骨の欠損の範囲に関するものです。
上顎または下顎の骨が、連続して3分の1以上にわたって欠損している状態が対象とされているためです。
これほど広い範囲で骨が失われていると、入れ歯を安定させることが難しく、噛む機能を十分に回復できません。
そのため、骨に固定するインプラントによって機能を取り戻すという判断がなされることになります。
範囲の判定は画像による検査などをもとに行われるため、専門的な診断が欠かせません。
顎の骨に形成不全がある
骨が欠損しているのではなく、そもそも十分に育っていないという状態も対象になります。
生まれつきの疾患が原因で、顎の骨が広い範囲にわたって形成不全となっているケースが該当するためです。
骨の厚みや高さが不足していると、入れ歯を支える土台そのものが確保できません。
こうした場合にも、噛む機能の回復という観点からインプラントが選択肢となります。
形成不全の程度についても診断基準が定められているため、医療機関での評価が必要になります。
先天性部分無歯症(6歯以上の欠損)
生まれつき永久歯の数が足りないという状態も、条件のひとつに含まれています。
先天性部分無歯症と呼ばれる状態で、6歯以上の永久歯が生まれつき欠損しているケースが対象とされているためです。
歯が多数そろわないと噛み合わせが安定せず、食事や発音にも影響が及ぶことがあります。
なお、この条件については診療報酬の改定にあわせて対象範囲の見直しが行われたことがあります[1]。
自分の状態が現在の基準に当てはまるかどうかは、最新の内容を医療機関で確認してもらいましょう。
外胚葉異形成症・唇顎口蓋裂など
特定の先天性疾患が背景にある場合も、対象として扱われることがあります。
歯や骨の形成に影響する疾患では、通常の治療では機能の回復が難しいことがあるためです。
外胚葉異形成症や唇顎口蓋裂といった疾患が、その代表として挙げられます。
こうした疾患では幼少期から専門の医療機関で継続的に診てもらっていることが多く、その流れのなかで検討されることになります。
該当する可能性がある場合は、これまでかかってきた医療機関に相談してみるとよいでしょう。
保険が適用される条件【後天性】
先天的な原因によるもののほかに、生まれたあとに生じた原因によって保険が適用されるケースもあります。
事故や病気によって顎の骨を大きく失った場合には、入れ歯やブリッジでは噛む機能を十分に取り戻せないことがあるためです。
こちらは誰にでも起こりうる出来事が背景にあるため、思い当たる経験がある方は確認しておく価値があります。
ここでは、後天的な原因として対象となる条件を順に整理していきましょう。
腫瘍や顎骨骨髄炎による顎骨の欠損
後天性の条件でまず挙げられるのが、病気の治療によって顎の骨を失ったケースです。
がんなどの腫瘍を取り除く手術では、周囲の骨まで含めて切除しなければならないことがあるためです。
上顎または下顎の骨が連続して3分の1以上にわたって欠損している状態であれば、対象として検討されます。
骨の中で炎症が広がる顎骨骨髄炎の治療によって、同様に骨を失った場合も含まれます。
いずれも治療の経過が記録として残っているため、その情報をもとに判定が行われることになります。
事故などの外傷による顎骨の欠損
思いがけない出来事によって顎の骨を失った場合も、対象となることがあります。
交通事故や転落といった大きな外傷では、歯だけでなく骨そのものが損なわれてしまうことがあるためです。
この場合も、顎の骨が連続して3分の1以上欠損しているという範囲の条件が基準になります。
外傷では周囲の組織も同時に傷ついていることが多く、機能の回復には専門的な治療が必要になります。
事故の直後から医療機関にかかっている場合は、その担当医に相談してみるとよいでしょう。
骨移植で顎骨を再建した場合
失った骨を補う手術を受けた方についても、保険の対象として扱われる道があります。
骨移植とは、自分自身の骨や人工の材料を使って、欠けてしまった顎の骨を作り直す手術のことだからです。
腫瘍の切除や大きな外傷のあとに、機能を取り戻すための一連の流れとして行われることがあります。
こうして再建した骨にインプラントを埋め込む治療は、その流れの一部として認められています。
すでに骨移植を受けている方は、その後の選択肢としてこの方法があることを知っておくとよいでしょう。
上顎洞や鼻腔とつながっている場合
やや特殊なケースとして、口の中と鼻の周辺の空間がつながってしまった状態も対象になります。
腫瘍の切除などによって上あごの骨が失われると、口腔と上顎洞や鼻腔が直接つながってしまうことがあるためです。
この状態では食べ物や飲み物が鼻へ流れ込んでしまい、日常生活に大きな支障が出てしまいます。
入れ歯でふさごうとしても安定させることが難しく、従来の方法では回復が困難とされています。
そのためインプラントによって装置を固定するという方法が選択肢になるわけです。
共通するのは「従来の方法では難しい」という点
ここまで見てきた条件には、ひとつの共通した考え方が流れています。
いずれも入れ歯やブリッジといった保険の効く方法では、噛む機能を十分に回復できないという状況にあたるためです。
保険は必要な医療を支えるための仕組みであり、ほかに手段がない場合に限って適用が認められているといえます。
逆に言えば、入れ歯やブリッジで対応できる状態であれば、その範囲での治療が前提とされることになります。
この考え方を知っておくと、次の章で扱う対象外のケースについても理解しやすくなるはずです。
保険が使えないケース
ここまで条件を見てきて、自分は当てはまりそうにないと感じた方も多いのではないでしょうか。
実際のところ、インプラントを検討している方の大半は保険の対象にはならないというのが現実です。
その理由をはっきりさせておけば、次にどう動けばよいのかという判断もしやすくなります。
ここでは、保険が使えない代表的なケースを整理していきましょう。
虫歯で歯を失った場合
もっとも多い理由でありながら対象外となるのが、虫歯によって歯を失ったケースです。
虫歯が進行して歯を残せなくなった場合であっても、その部分は入れ歯やブリッジで補うことができるためです。
噛む機能を回復するという目的が保険の効く方法で果たせる以上、インプラントは選択肢のひとつという位置づけになります。
そのため、より快適さや見た目を求めてインプラントを選ぶ場合は、自由診療として全額を負担することになります。
同じ歯を補う治療でも、方法によって費用の仕組みが違うと理解しておきましょう。
歯周病で歯を失った場合
歯周病によって歯を失った場合も、同じく保険の対象にはなりません。
歯周病が進行すると歯を支える骨が失われていきますが、この骨の減り方は条件として定められた欠損には当てはまらないためです[1]。
歯を支える骨が痩せているという状態と、顎の骨が3分の1以上連続して失われている状態とは、まったく別のものとして扱われます。
歯周病は歯を失う原因として大きな割合を占めますが、その多くは保険の対象外となります。
なお、歯周病そのものの治療については保険が適用されるので、まずはそちらを優先することになります。
加齢による歯の喪失
年齢を重ねるなかで自然に歯を失っていったという場合も、対象には含まれません。
加齢にともなう歯の喪失は、疾患や外傷による広範囲な骨の欠損とは性質が異なるためです。
複数の歯を失っている場合であっても、条件として定められた範囲に当てはまらなければ保険は使えません。
こうしたケースでは、入れ歯やブリッジ、あるいは自由診療でのインプラントという選択肢を比べることになります。
それぞれの利点と負担を確認したうえで、自分に合う方法を選んでいくとよいでしょう。
条件を満たさない範囲の欠損
歯を何本も失っているのだから対象になるのではないか、と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし判定の基準になっているのは失った歯の本数ではなく、顎の骨がどれだけ失われているかという点だからです。
歯が抜けた部分の骨がある程度残っていれば、条件として定められた欠損には当たりません。
自分では判断が難しい部分なので、気になる場合は画像による検査を受けて確認してもらう必要があります。
対象にならなかったとしても負担を抑える方法はあるので、後の章で扱う内容も確認してみてください。
保険適用の治療を受けられる医療機関の条件
条件に当てはまることが分かっても、それだけで保険を使った治療が受けられるわけではありません。
この治療を保険診療として行うには、医療機関の側にも満たすべき基準が定められているためです。
どこでも受けられるわけではないと知っておけば、いざというときに探す手間を減らせます。
ここでは、医療機関に求められる条件を順に整理していきましょう。
入院ベッド20床以上の病院の歯科・口腔外科
まず求められるのが、治療を行う施設そのものの規模に関する条件です。
入院用のベッドを20床以上備えた病院のなかにある歯科または口腔外科であることが基準とされているためです。
対象となるのは顎の骨が広い範囲で失われた状態であり、治療そのものが大がかりになることが背景にあります。
手術後の経過観察や、状況によっては入院での対応が必要になる可能性も想定されています。
そのため、外来のみを行っている一般的な歯科医院では、この条件を満たすことができません。
常勤の歯科医師が2名以上
次に定められているのが、治療にあたる歯科医師の体制に関する条件です。
歯科または口腔外科での治療経験が5年以上ある、もしくはインプラント治療の経験が3年以上ある常勤の歯科医師が、2名以上配置されている必要があるためです。
複数の医師が関わることで、診断や治療の判断をより慎重に進められるという意味があります。
経験年数まで定められているのは、対象となる症例が高い専門性を要するものだからです。
こうした体制を整えられる施設は限られており、その点でも受けられる医療機関はしぼられてきます。
当直体制が整備されている
医師の人数だけでなく、時間帯を問わない対応ができるかどうかも問われます。
手術後に予期しない状態の変化が起こった場合に備え、当直の体制が整備されていることが求められているためです。
夜間や休日であっても、必要なときに医療者が対応できる状況を保っておく必要があります。
大がかりな手術をともなう治療である以上、安全を確保するための仕組みが欠かせません。
この条件も、規模の大きな医療機関でなければ満たすことが難しいものだといえます。
医療機器・医薬品の管理体制
設備や薬剤をどのように管理しているかという点も、基準に含まれています。
国が定めた要件に沿って、医療機器や医薬品が適切に管理されている体制が必要とされているためです。
治療に使う材料の品質を保ち、記録を残しながら管理していくことが求められます。
こうした体制を維持するには、専門の担当者や仕組みを備えておく必要があります。
安全に治療を進めるための土台として、施設全体の管理能力が問われているといえるでしょう。
実際には大学病院などが中心
これらの条件をすべて満たす医療機関は、現実にはかなり限られています。
規模、人員、体制、設備のすべてを備えている必要があるためです。
具体的には、歯科大学の附属病院や、規模の大きな総合病院の歯科・口腔外科などが該当します。
住んでいる地域によっては、通える範囲にそうした施設が見つからないこともあるかもしれません。
保険での治療を検討する場合は、まず対応している医療機関を探すところから始まることになります。
自分が対象かどうかを確かめる方法
条件と施設の基準を確認したうえで、次に気になるのは自分が該当するのかどうかという点でしょう。
ただ、ここまで見てきた条件は専門的な判断を必要とするものばかりで、自分で結論を出すのは簡単ではありません。
正しい手順を踏めば、迷わずに確認を進めることができます。
ここでは、対象かどうかを確かめるための進め方を整理していきましょう。
まずはかかりつけの歯科医院で相談する
最初の一歩としておすすめなのが、普段通っている歯科医院に相談するという方法です。
自分の口の中の状態を把握してもらっているため、話が早く進みやすいためです。
保険が使える可能性があるかどうかについて、まずは意見を聞いてみるとよいでしょう。
一般の歯科医院では保険での治療そのものは行えませんが、判断の手がかりは得られます。
いきなり大きな病院を探すより、身近なところから始めるほうが負担も少なく済みます。
必要に応じて紹介してもらう
相談の結果、対象になる可能性があると判断された場合には、次の段階へ進むことになります。
保険での治療を行える医療機関は限られているため、そこへの紹介が必要になるからです。
かかりつけの歯科医院から、対応している大学病院や総合病院の口腔外科を紹介してもらう流れが一般的です。
紹介状があれば、これまでの経過や検査の結果を引き継いでもらえるという利点もあります。
自分で一から探すより確実なので、まずは相談してみることをおすすめします。
画像による検査で範囲を確認する
実際の判定には、目で見るだけでは分からない情報が必要になります。
顎の骨がどれだけ失われているかという範囲は、画像による検査でなければ正確に把握できないためです。
レントゲンやCTによる撮影を行い、骨の状態を立体的に確認したうえで判断されます。
その結果と、これまでの病歴や治療の記録を合わせて、条件に当てはまるかどうかが検討されます。
検査を受けてはじめて分かることなので、思い込みで決めつけないことが大切です。
自己判断で決めつけない
最後にお伝えしたいのが、自分だけで結論を出さないという姿勢の大切さです。
条件には専門的な判断を要する部分が多く、思っていたのと違う結果になることがあるためです。
対象外だと思っていたのに実は該当した、あるいはその逆というケースも起こり得ます。
制度の内容は改定にあわせて見直されることもあるため、最新の基準で確認してもらう必要があります[2]。
気になる点があるなら、まずは専門家に相談してみるところから始めてみてください。
保険が適用された場合の費用の目安
条件に当てはまり、対応している医療機関で治療を受けられることになった場合、費用はどのくらいになるのでしょうか。
自由診療との差がどれほどあるのかを知っておけば、治療に向けた準備も進めやすくなります。
ただし、保険が適用されるケースは通常の歯の欠損とは状況が大きく異なるため、単純な比較はできません。
ここでは、費用の考え方と押さえておきたい制度を整理していきましょう。
自己負担は割合に応じて決まる
保険が適用される場合、窓口で支払う金額は自分の負担割合に応じて計算されます。
公的医療保険では、年齢や所得に応じて自己負担の割合が1割から3割に分かれているためです。
働く世代の多くは3割負担にあたり、かかった医療費のうち3割を支払うことになります。
全額を自分で負担する自由診療と比べれば、この差は非常に大きなものになります。
ただし、対象となる治療は大がかりなものが多いため、3割であっても相応の金額になる点は知っておきましょう。
治療の内容によって総額は変わる
実際にいくらかかるのかは、受ける治療の内容によって大きく変わってきます。
顎の骨の欠損の範囲や、骨移植をともなうかどうかによって、必要な処置が異なるためです。
入院が必要になる場合には、その費用も加わることになります。
治療の前に検査を受け、計画が立てられた段階で費用の見通しを示してもらえます。
金額が心配な場合は、その段階で率直に相談しておくと安心して治療に臨めます。
高額療養費制度も利用できる
保険が適用される治療であれば、負担を抑えるための制度もあわせて使えます。
医療機関の窓口で支払った額が一定の上限を超えた場合に、その超えた分があとから支給される高額療養費制度があるためです[3]。
上限額は年齢や所得の状況に応じて定められており、一定の要件を満たせばさらに負担が軽くなる仕組みもあります[3]。
事前に手続きをしておけば、窓口での支払いを上限額までにとどめられる方法もあります[3]。
大きな治療を受けることになった場合には、加入している健康保険の窓口に相談してみるとよいでしょう。
医療費控除もあわせて検討する
年間の医療費が一定額を超えた場合には、税の面から負担を軽くできる可能性もあります。
確定申告によって医療費控除を受けることで、納めた税金の一部が戻ってくる仕組みがあるためです。
歯科医師による診療や治療の対価は、一般的に支出される水準を著しく超えない範囲であれば対象になるとされています[4]。
高額療養費として支給を受けた分は差し引いて計算する必要があるため、その点は注意しておきましょう。
領収書は保管しておき、申告の時期に確認できるようにしておくことをおすすめします。
保険が使えないときに負担を抑える方法
ここまで読んで、自分は保険の対象にはならないと分かった方も多いはずです。
しかし、そこで治療そのものをあきらめる必要はありません。
自由診療であっても、負担を軽くするための方法はいくつか用意されているためです。
ここでは、保険が使えない場合に検討したい選択肢を整理していきましょう。
医療費控除を利用する
自由診療であっても、医療費控除の対象になる点は覚えておきたいところです。
この制度は保険が適用されるかどうかではなく、治療のために支払った医療費であるかどうかで判断されるためです。
インプラント治療についても、一般的に支出される水準を著しく超えない範囲であれば対象になるとされています[4]。
1年間に支払った医療費が一定額を超えていれば、確定申告によって税の負担を軽くできます。
家族全員分の医療費を合わせて計算できるので、まとめて確認してみるとよいでしょう。
デンタルローン・分割払いを検討する
まとまった資金をすぐに用意できない場合には、支払い方法の工夫という選択肢があります。
歯科医院が用意している分割払いや、信販会社が扱う医療費専用のローンを利用できることが多いためです。
長期の分割にすれば月々の負担を小さくでき、治療を始めやすくなります。
ただし金利がかかる場合は総支払額が増えるため、完済までの金額を確認したうえで判断することが大切です。
無理のない月々の金額を先に決めてから、方法を選んでいくとよいでしょう。
他の治療法と比較する
そもそもインプラント以外の方法で対応できないかを、あらためて検討してみる価値もあります。
歯を失った部分を補う方法には、保険が使える入れ歯やブリッジという選択肢があるためです。
これらは費用を大きく抑えられる一方、周囲の歯を削る必要があったり、装着感に慣れが必要だったりします。
それぞれの利点と注意点を並べて聞いたうえで、自分が何を優先したいかを考えてみましょう。
費用だけでなく、噛み心地や手入れのしやすさまで含めて比べることが納得につながります。
治療の範囲や時期を相談する
費用の総額は、治療する本数や進め方によっても変わってきます。
複数の歯を失っている場合、すべてを同時に治療するのか、優先度の高い部分から進めるのかで負担が変わるためです。
予算の上限を率直に伝えれば、その範囲でできる方法を一緒に考えてもらえることもあります。
急がない部分については、時期をずらして進めるという選択もできます。
一人で悩まず、費用の事情も含めて相談してみることが現実的な解決につながります。
将来的に保険適用は広がる?
いま対象外だと分かった方のなかには、この先制度が変わることはないのだろうかと考える方もいらっしゃるでしょう。
制度は一度決まったら変わらないというものではなく、実際に見直しが行われてきた経緯もあります。
ただし、その見通しについては慎重に受け止めておく必要があります。
ここでは、これまでの経緯と今後の考え方を整理していきましょう。
対象範囲は少しずつ見直されてきた
保険が適用される条件は、診療報酬の改定にあわせて見直されることがあります。
医療の進歩や現場の状況を踏まえて、対象となる範囲や算定の要件が調整されるためです[1]。
実際、生まれつき歯が足りない状態に関する条件については、対象の範囲が広がる形で見直しが行われたことがあります[1]。
このように、制度は少しずつではあるものの変化していく性質を持っているといえます。
一般的な歯の欠損まで広がるとは考えにくい
一方で、虫歯や歯周病で歯を失ったケースまで対象が広がることは、現時点では想定しにくい状況です。
保険は限られた財源で必要な医療を支える仕組みであり、入れ歯やブリッジという保険の効く方法がすでに用意されているためです。
インプラントは費用が高く、対象を広げれば制度全体の負担が大きくなるという事情もあります。
そのため、いま治療が必要な方が制度の変更を待つという判断は、現実的とはいえないでしょう。
制度を待つより今できる選択を
歯を失ったまま時間が経てば、周囲の歯が動いたり噛み合わせが崩れたりすることもあります。
将来の制度に期待するよりも、いまできる方法のなかから自分に合ったものを選ぶほうが確実だといえるためです。
なお、条件や施設の基準は改定によって変わる可能性があるため、判断の際は最新の情報を確認しておきましょう[2]。
インプラントの保険適用に関するよくある質問
Q:歯周病で失った歯は保険適用になりますか?
A:歯周病によって歯を失った場合は、保険の対象にはなりません。
判定の基準になっているのは顎の骨が3分の1以上連続して失われているかどうかであり、歯周病による骨の減り方はこれに当てはまらないためです。
この場合は自由診療となりますが、医療費控除や分割払いを使って負担を抑える方法があります。
Q:保険適用の治療はどこで受けられますか?
A:入院用のベッドを20床以上備えた病院の歯科または口腔外科など、定められた基準を満たした医療機関に限られます。
一定の経験を持つ常勤の歯科医師が2名以上いること、当直の体制が整っていることなども条件に含まれています。
実際には歯科大学の附属病院や規模の大きな総合病院が中心となるため、まずはかかりつけの歯科医院に相談して紹介してもらうとよいでしょう。
Q:保険が使えない場合はいくらかかりますか?
A:自由診療にあたるため価格の設定は歯科医院ごとに異なり、全額が自己負担となります。
治療する本数や骨を補う処置の有無によっても総額は変わってくるので、検査を受けたうえで見積もりを出してもらうことが確実です。
費用が心配な場合は、その事情も含めて相談してみると無理のない進め方を提案してもらえることがあります。
Q:インプラントに医療費控除は使えますか?
A:保険が適用されるかどうかにかかわらず、治療のために支払った医療費であれば医療費控除の対象になります。
歯科医師による診療や治療の対価は、一般的に支出される水準を著しく超えない範囲であれば対象とされています[4]。
1年間に支払った医療費が一定額を超えていれば申告できるので、領収書を保管しておきましょう。
まとめ
インプラント治療は原則として自由診療にあたり、かかる費用は全額が自己負担となります。
ただし、生まれつきの疾患や事故、腫瘍などによって顎の骨が3分の1以上連続して失われている場合など、限られた条件では保険が適用されます。
先天性では顎骨の欠損や形成不全、6歯以上の先天性部分無歯症などが、後天性では腫瘍や外傷による欠損、骨移植による再建などが対象です。
一方で、虫歯や歯周病、加齢によって歯を失ったケースは対象外となり、これが大多数を占めているのが実情です。
条件に当てはまる場合でも、治療を受けられるのは入院設備や当直体制を備えた病院の歯科・口腔外科などに限られます。
自分が対象かどうかは画像による検査を経て判断されるため、まずはかかりつけの歯科医院に相談し、必要に応じて紹介してもらいましょう。
保険が使えない場合でも、医療費控除や分割払い、ほかの治療法との比較といった選択肢がありますので、あきらめずに相談してみてください。
参考文献
[1] 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【歯科】」(最終閲覧日:2026年7月24日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001251542.pdf
[2] 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】」(最終閲覧日:2026年7月24日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671913.pdf
[3] 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(最終閲覧日:2026年7月24日)
[4] 国税庁「No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」(最終閲覧日:2026年7月24日)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1128.htm
免責事項
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療や税務に関する個別の助言ではありません。
※保険適用の条件・施設基準・費用は、診療報酬の改定によって変更される場合があります。判断の際は最新の情報をご確認ください。
※自分が対象になるかどうかは、検査を受けたうえで医療機関にご確認ください。