マウスピース矯正とは?仕組み・費用・期間と向いている人をわかりやすく解説

「マウスピース矯正とは、結局どういう治療なの?」「ワイヤー矯正と何が違うの?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
マウスピース矯正とは、透明な矯正装置を決められた順番で交換しながら、少しずつ歯を動かしていく歯列矯正の方法です。
装置は自分で取り外せる一方、1日20時間以上の装着が治療計画の前提となっており、歯並びの状態によってはワイヤー矯正を勧められる場合もあります。
この記事では、マウスピース矯正の仕組みからメリット・デメリット、費用相場、治療期間、向いている人の特徴、医療機関を選ぶ際の確認ポイントまで詳しくお伝えしますので、矯正を始めるかどうか迷っている方はぜひ参考にしてください。
マウスピース矯正とは?透明な装置で歯を動かす矯正治療
マウスピース矯正という言葉は聞いたことがあっても、実際にどんな装置でどうやって歯が動くのかは、想像しにくいかもしれません。
透明な装置を口に入れるだけで本当に歯並びが変わるのか、疑問に感じる方もいるでしょう。
マウスピース矯正は、一人ひとりの歯型をもとに作られた複数の装置を、決められた順番で交換しながら歯を移動させていく矯正治療です。
装置の形や治療の対象範囲によって呼び名も費用も変わってくるため、まずは全体像をつかんでおくと、この先の判断がしやすくなります。
ここでは、歯が動く仕組みから他の矯正方法との違いまで、順に整理していきます。
マウスピース矯正で歯が動く仕組み
マウスピース矯正で歯が動くのは、装置が歯にごくわずかな力を持続的にかけ続けているからです。
歯は、一定方向に力が加わると、歯を支えている周囲の骨が少しずつ作り替えられるという性質を持っています。
矯正治療は、この性質を利用して歯を計画した位置へ移動させる治療にあたります[1]。
1枚の装置で動かせる量はごくわずかで、一般的には0.25mm前後とされ、1〜2週間ごとに次の装置へ交換していきます。
新しい装置に替えた直後は、歯が締めつけられるような圧迫感を覚える方もいますが、数日のうちに落ち着いていくケースが多いといえます。
1回ごとの変化は小さくても、装置を積み重ねていくことで歯並びは着実に整っていきますから、焦らず計画どおりに進めることが大切です。
全体矯正と部分矯正の違い
マウスピース矯正は、動かす歯の範囲によって全体矯正と部分矯正の2種類に分かれます。
全体矯正は奥歯を含めた歯列全体を動かし、見た目だけでなくかみ合わせまで含めて整えることを目的としています。
部分矯正は前歯を中心とした限られた範囲だけを動かす方法で、かみ合わせ全体の改善までは対象に含まれません。
前歯のわずかなでこぼこが気になるという状態であれば、部分矯正で対応できる場合があり、費用も治療期間も抑えやすくなります。
一方、奥歯のかみ合わせにずれがある場合や、歯を大きく動かす必要がある場合には、全体矯正が選ばれることが多いといえるでしょう。
どちらが適しているかは見た目の印象だけでは決まらず、かみ合わせや骨格まで含めた検査で判断されますから、自己判断せずに歯科医師の診断を受けておくと安心です。
マウスピース矯正とワイヤー矯正の違い
マウスピース矯正とワイヤー矯正の最も大きな違いは、装置を自分で取り外せるかどうかという点にあります。
ワイヤー矯正は歯の表面にブラケットという部品を接着し、ワイヤーで力をかけ続ける方法のため、治療が終わるまで装置は外れません。
対してマウスピース矯正は着脱式であり、食事や歯みがきのときには外して過ごせます。
装置が透明で目立ちにくいことや、金属の部品を使わないことも、毎日の生活のしやすさを左右する違いにあたります。
反面、外している時間が積み重なると計画どおりに歯が動かず、治療期間が延びる可能性があります。
取り外せる自由と、装着時間を守る責任はセットになっていると理解しておくと、治療を始めてからのギャップを感じにくくなるでしょう。
歯ぎしり用マウスピースとの違い
歯科で作られるマウスピースには矯正用以外の種類もあり、歯ぎしり用のものとは目的がまったく異なります。
歯ぎしり用のマウスピースはナイトガードとも呼ばれ、就寝中の食いしばりから歯やあごを守ることを目的としており、歯を動かすための装置ではありません。
厚みのある1個の装置を繰り返し装着し続ける点も、薄い装置を順番に交換していく矯正用との大きな違いです。
診断の内容によっては公的医療保険が適用される場合がある点も、自由診療である矯正用とは扱いが分かれます。
同じマウスピースという名前で呼ばれていても役割は別物ですから、カウンセリングでは何を目的にしたいのかをはっきり伝えておくと、行き違いを防げます。
マウスピース矯正のメリット
マウスピース矯正に関心を持つ方の多くは、見た目の負担が少ないという点にひかれています。
矯正はしたいけれど装置が目立つのは避けたい、と感じる方は少なくありません。
マウスピース矯正には、見た目以外にも日常生活を続けやすくする特徴がいくつかあります。
どこに魅力を感じるかは人によって違いますから、自分の生活スタイルと重ね合わせながら読み進めてみてください。
ここでは、代表的な4つのメリットを整理します。
装置が目立ちにくく周囲に気づかれにくい
マウスピース矯正の最大の魅力は、装置を着けていることが周囲に気づかれにくい点です。
装置は透明な樹脂で作られており、歯の表面を薄く覆う形になっています。
ワイヤー矯正のように金属のブラケットが歯の表面に並ぶわけではなく、正面から見ても装置の輪郭が目立ちません。
接客や営業など人と話す機会が多い仕事の方、結婚式や就職活動を控えている方にとっては、この違いが大きく感じられるでしょう。
写真に写ったときにも金属が反射しにくく、口元を気にせず笑えたという声もあります。
矯正中であることを知られたくないという気持ちは自然なものですから、その不安が小さくなるだけでも治療を続けやすくなります。
食事や歯みがきのときに取り外せる
食事と歯みがきのときに装置を外せることは、毎日の生活を大きく変えずに済む利点です。
ワイヤー矯正では装置の間に食べ物が挟まりやすく、硬いものや粘着性の強いものを避けるよう指示される場合があります。
マウスピース矯正は外して食事ができるため、食べ物の制限が原則としてかかりません。
歯みがきもいつもどおりの方法で行えますから、装置のまわりに汚れがたまりにくく、むし歯や歯周病のリスクを抑えやすくなります。
カレーやコーヒーなど色の濃いものを口にしたあとも、装置を外した状態でしっかり歯を磨けます。
食事と口腔ケアを普段どおり続けられる点は、長い治療期間を乗り切るうえで心強い条件といえるでしょう。
金属を使わないため金属アレルギーの心配が少ない
金属アレルギーが気になる方でも、マウスピース矯正なら選択肢に入れやすくなります。
装置は歯科用の樹脂で作られており、金属の部品を含みません。
ワイヤー矯正では金属製のブラケットやワイヤーが長期間口の中に入るため、体質によっては反応が出る可能性があります。
過去にアクセサリーや腕時計で皮膚が赤くなった経験がある方は、矯正装置でも同じことが起きないか気になるところでしょう。
マウスピース矯正であれば、そうした心配は比較的少ないと考えられます。
金属アレルギーの有無は自分では判断しにくい部分ですから、気になる症状があるときはカウンセリングの段階で歯科医師に伝えておくと安心です。
通院回数が少なく痛みが比較的おだやか
通院の回数が少なく、痛みが比較的おだやかな点も、マウスピース矯正が選ばれる理由のひとつです。
装置の交換は自宅で行うため、医療機関への来院は1〜3か月に1回程度で済むケースが多くなります。
1枚あたりの歯の移動量が小さく設計されていることから、歯にかかる力もゆるやかです。
仕事や学校の都合で頻繁に通えない方、遠方から通う方にとっては、通院負担の軽さが治療の続けやすさに直結します。
新しい装置に替えた最初の1〜2日は締めつけ感が出るものの、日常生活に支障が出るほどではなかったと感じる方もいます。
痛みの感じ方には個人差がありますが、強い痛みが何日も続く場合は我慢せず歯科医師に相談してください。
マウスピース矯正のデメリットと注意点
マウスピース矯正には利点が多い一方で、始めてから気づくと後悔につながる注意点もあります。
「思っていたより不便だった」「費用が想定より高くなった」という声は、事前の情報不足から生まれやすいものです。
デメリットを先に知っておくことは、治療をあきらめるためではなく、自分に合うかどうかを見極めるために役立ちます。
ここでは、装着時間・適応範囲・費用・トラブルという4つの観点から、押さえておきたい点を整理します。
1日20時間以上の装着が必要になる
マウスピース矯正で最も負担になりやすいのは、1日20時間以上という装着時間の条件です。
治療計画は、1日20〜22時間装着することを前提に組み立てられています。
外している時間が長くなると歯が計画どおりに動かず、次の装置がうまくはまらなくなる可能性があります。
食事と歯みがきの時間を差し引くと、1日のうち自由に外していられるのは2〜4時間程度という計算になります。
間食の回数が多い方や、外食や会食の機会が多い方は、装着時間を確保する工夫が必要になるでしょう。
自分で管理していく治療だからこそ、いまの生活リズムに無理がないかを始める前に確かめておくことが大切です。
対応できない歯並びがある
歯並びの状態によっては、マウスピース矯正では対応しきれない場合があります。
不正咬合にはでこぼこの歯並びや出っ歯、受け口などいくつかの種類があり、原因が歯の位置にあるのか骨格にあるのかで治療の方針が変わります[2]。
あごの位置そのものにずれがある場合や、歯を大きく動かす必要がある場合には、ワイヤー矯正や外科的な処置が選ばれることもあります。
抜歯をともなう治療では歯の根まで大きく移動させる必要があり、着脱式の装置では力をかけ続けにくいという構造上の制約があります。
マウスピース矯正で始めたあと、途中からワイヤー矯正を組み合わせる方法が提案されるケースもみられます。
自分の歯並びで対応できるかどうかは検査を受けてはじめて分かりますから、あきらめる前に一度カウンセリングを受けてみるのも一つの方法です。
自由診療のため費用が全額自己負担になる
マウスピース矯正は自由診療にあたり、治療費は原則として全額自己負担になります。
公的医療保険が適用されるのは、顎変形症や厚生労働大臣が定めた特定の疾患にともなう矯正など、限られた場合だけです。
見た目を整えることを主な目的とした矯正は、保険の対象から外れます。
費用の設定は医療機関ごとに異なり、全体矯正か部分矯正かによっても幅が出ます。
装置代のほかに検査料や調整料、治療後のリテーナー代が別途かかることもあり、最終的な総額が当初の想定を上回る場合があります。
提示された金額に何がどこまで含まれているかを契約前に確かめておくと、後から慌てずに済むでしょう。
装置の紛失・破損や口の中のトラブル
取り外せる装置だからこそ、紛失や破損というトラブルが起こりやすくなります。
食事のときにティッシュに包んで置き、そのまま捨ててしまう、外出先に置き忘れるといった事例は珍しくありません。
再作製には費用と時間がかかり、その間は治療が止まってしまいます。
熱いお湯で洗うと装置が変形することがあるため、洗浄は水かぬるま湯で行うよう指示されます。
装着したまま糖分を含む飲み物を口にすると、装置と歯の間に糖が留まり、むし歯のリスクが高まる点にも注意が必要です。
外したら必ず専用ケースに入れる習慣をつけておくと、こうしたトラブルの多くは防げます。
マウスピース矯正にかかる費用の相場
矯正を検討するとき、最も気になるのが費用ではないでしょうか。
まとまった金額が動く治療だけに、総額がいくらになるのか見えないまま踏み出すのは不安なものです。
マウスピース矯正の費用は、治療する範囲と医療機関の設定によって幅が生まれます。
装置代だけを比べても実際の負担額は見えてこないため、内訳まで含めて確認する視点が欠かせません。
ここでは、相場の考え方から負担を抑える制度まで、順に整理していきます。
全体矯正と部分矯正の費用相場
マウスピース矯正の費用は、全体矯正でおよそ60万〜100万円、部分矯正でおよそ10万〜60万円が一つの目安になります。
金額に幅が出るのは、動かす歯の本数と治療にかかる期間が症例ごとに違うためです。
装置の枚数が増えるほど製作費がかさみ、通院の回数も増えていきます。
前歯のわずかなでこぼこを整えるだけなら装置の枚数は少なく済み、10万円台から対応している医療機関もみられます。
一方、奥歯を含めてかみ合わせから整える全体矯正では、装置が数十枚必要になることも珍しくありません。
同じ「マウスピース矯正」でも治療の中身は大きく異なりますから、金額だけを並べて比べるのではなく、何をどこまで動かす治療なのかを確かめておくことが大切です。
装置代以外にかかる費用
提示された金額のほかに、検査料・調整料・リテーナー代といった費用が別に発生する場合があります。
矯正治療は、カウンセリングから検査、診断、治療、そして保定という段階を踏んで進みます[1]。
それぞれの段階で費用が設定されている医療機関と、総額に含めて提示する医療機関があり、比較の前提がそろっていないケースがあります。
初診相談料が3,000〜5,000円程度、精密検査と診断料が3万〜6万円程度、通院ごとの調整料が3,000〜5,000円程度といった形で内訳が分かれていることもあります。
治療後に必要となるリテーナーの製作費も、総額に含まれているかどうかで最終的な負担額が変わってきます。
見積書を受け取った段階で「この金額のほかにかかる費用はありますか」と一言確かめておくと、後から想定外の出費に驚かずに済むでしょう。
医療費控除で負担を抑えられる場合がある
矯正治療の費用は、内容によっては医療費控除の対象になります。
医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、確定申告によって所得税や住民税の一部が戻ってくる制度です。
歯列矯正については、受ける人の年齢や矯正の目的などからみて必要と認められる場合の費用が対象になるとされています[3]。
かみ合わせや発音に支障があり、機能面の改善を目的とした治療であれば、大人であっても対象と判断される可能性があります。
一方で、容姿を美しく整えることを目的とした矯正の費用は対象にならないと示されています[4]。
自分の治療がどちらにあたるか迷ったときは、診断書の発行について歯科医師に、申告の可否については税務署に確認しておくと確実です。
支払い方法とローンを利用するときの注意点
高額な治療費に対しては、分割払いやデンタルローンといった支払い方法が用意されていることがあります。
一括での支払いが難しい方にとって、月々の負担を平準化できる仕組みは選択肢を広げてくれます。
ただし、ローンは医療機関ではなく信販会社との契約になる点を理解しておく必要があります。
金利手数料が上乗せされるため、総支払額が当初の治療費より膨らむケースがあります。
治療の途中で通院をやめた場合でも、ローンの支払い義務はそのまま残るという点は見落とされがちです。
契約書に目を通す時間をきちんと取り、返金の規定や中途解約の扱いまで確かめたうえで判断すると、後悔しにくくなります。
マウスピース矯正の治療期間と治療の流れ
矯正を始めるかどうか迷う理由として、「いつ終わるのか分からない」という不安を挙げる方は多くいます。
数か月で終わるのか、数年かかるのか、見通しが立たないままでは決断しづらいものです。
マウスピース矯正の治療期間は、動かす範囲と歯並びの状態によって変わります。
装置を外して終わりではなく、その後に保定という段階が続く点も知っておきたいところです。
ここでは、相談から治療完了までの流れを時系列で追いながら、期間の目安をお伝えします。
カウンセリングから治療開始までの流れ
治療は、カウンセリングと精密検査を経て、診断と治療計画の説明を受けてから始まります。
矯正診療は検査、診断、治療という順で進み、検査によって不正咬合の成り立ちが明らかになってから治療方針が決まります[1]。
歯型の採取やレントゲン撮影、口腔内の写真撮影などを行い、そのデータをもとに装置が製作されます。
カウンセリングから装置が手元に届くまでには、1〜2か月ほどかかるのが一般的です。
治療計画の説明時には、完成予想のシミュレーション画像を見せてもらえる医療機関もあり、ゴールのイメージを共有しやすくなります。
この段階で疑問を残したまま契約に進まず、納得できるまで質問しておくと、治療中の不安がぐっと減ります。
治療中の通院頻度とマウスピースの交換
治療が始まると、装置の交換は自宅で行い、通院は1〜3か月に1回程度になります。
交換の周期は1〜2週間ごとに設定されることが多く、歯科医師の指示に従って次の装置へ進みます。
通院時には歯の動き方が計画どおりかを確認し、必要に応じて装置の追加製作や調整が行われます。
全体矯正の治療期間はおよそ1〜3年、部分矯正であれば数か月〜1年程度が目安になります。
装着時間が守られている方ほど計画とのずれが小さく、予定した期間内に進みやすい傾向があります。
通院の間隔が空くぶん自己管理の比重は高まりますが、装置の違和感や痛みが気になるときは次の通院を待たず相談してください。
治療後の保定期間と後戻りを防ぐ方法
装置を外したあとには、歯並びを安定させるための保定期間が続きます。
歯を動かしたばかりの状態では周囲の骨がまだ固まっておらず、元の位置へ戻ろうとする力が働きます。
この後戻りを防ぐために、リテーナーと呼ばれる保定装置を装着して過ごします。
保定期間は動的治療にかかった期間と同程度、おおむね1〜3年が目安とされ、はじめは1日20時間程度、慣れてきたら就寝時のみへと段階的に短くしていく流れが一般的です。
自己判断でリテーナーをやめてしまい、数年後に歯並びが戻ってしまったというケースもみられます。
矯正治療は装置を外した日で終わりではなく、保定まで含めて一つの治療だと考えておくと、きれいに整った歯並びを長く保てるでしょう。
治療期間が延びる主な原因
治療期間が予定より延びる原因の多くは、装着時間の不足にあります。
1日20〜22時間という前提が崩れると歯の移動が計画から遅れ、次の装置がはまらなくなります。
装置を紛失したり破損したりした場合も、再作製の間は治療が止まってしまいます。
治療の途中でむし歯や歯周病が見つかると、そちらの治療を優先するため矯正を一時中断することがあります。
歯の動き方には個人差があり、計画どおりに進まず装置を作り直す「リファインメント」が必要になるケースもあります。
期間が延びること自体は珍しくないものの、多くは日々の管理で防げる範囲ですから、装着時間と口腔ケアの2点を意識して過ごすことが結果的な近道になります。
マウスピース矯正が向いている人・向いていない人
マウスピース矯正に関心はあっても、自分の歯並びで対応できるのか判断がつかない方は多くいます。
ここまで読んで魅力を感じたとしても、実際に適用できるかどうかは別の問題です。
向き不向きは歯並びの状態だけで決まるわけではなく、生活習慣や治療に向き合う姿勢も関わってきます。
自分がどちらに近いかを知っておくと、カウンセリングでの質問も具体的になります。
ここでは、対応しやすい歯並びと、別の方法を勧められやすいケースを整理します。
マウスピース矯正で対応しやすい歯並び
マウスピース矯正が力を発揮しやすいのは、歯の移動量が比較的小さいケースです。
軽度から中等度のでこぼこ、わずかなすき間、前歯の傾きといった状態は、着脱式の装置でも計画を立てやすくなります。
歯を並べるスペースが足りない場合でも、歯の側面をわずかに削って隙間を作る方法で対応できることがあります。
前歯が少し重なっている、上の前歯がやや前に出ているといった悩みであれば、部分矯正で短期間に整えられる可能性もあります。
過去に矯正を経験し、後戻りしてしまった歯並びを整え直す目的で選ばれるケースもみられます。
いまの歯並びが軽度に見えるかどうかは自己判断が難しいところですが、対応できる範囲は思っているより広いと考えてよいでしょう。
ワイヤー矯正を勧められるケース
骨格そのものにずれがある場合には、マウスピース矯正ではなく別の方法が提案されます。
不正咬合の問題が骨格にあるのか、歯が並ぶ土台にあるのか、あごの機能にあるのかは、精密な検査によって明らかになります[2]。
あごの位置に大きなずれがある症例では、外科的な処置を組み合わせた治療が検討されます。
抜歯をともなう治療のように歯の根まで大きく動かす必要がある場合、着脱式の装置では持続的な力をかけにくいという構造上の制約があります。
歯周病が進んで歯を支える骨が減っている方は、矯正より先にそちらの治療が優先されます。
ワイヤー矯正を勧められたとしても選択肢が狭まったわけではなく、確実にゴールへ近づける方法が示されたと受け止めておくと、前向きに検討できます。
生活習慣から見た向き不向き
歯並び以外に、日々の生活習慣もマウスピース矯正との相性を左右します。
1日20時間以上という装着時間は、自分でしか管理できないためです。
間食の回数が多い方や、外している時間を思い出せないほど忙しい方は、計画から遅れやすくなります。
反対に、決められたことを習慣として続けるのが苦にならない方、装置の紛失を防ぐ管理ができる方は、治療が予定どおりに進みやすい傾向があります。
喫煙の習慣がある方や、装着したまま甘い飲み物を口にする習慣がある方は、むし歯のリスクが高まる点にも注意が必要です。
自分に管理できるか不安なときは、その不安をカウンセリングでそのまま伝えてみてください。
マウスピース矯正で後悔しないための医療機関の選び方
矯正治療は数十万円単位の費用と数年の期間がかかるだけに、医療機関選びの影響は小さくありません。
料金の安さだけで決めてしまい、あとから後悔したという声も実際に寄せられています。
歯科医院やその他の医療サービスに関するトラブルは、消費生活相談の対象として実際に取り扱われています[5]。
契約前にどこを確かめておけばよいかを知っておけば、避けられるトラブルは少なくありません。
ここでは、確認すべき項目と注意したい勧誘について整理します。
契約前に確認しておきたい費用と契約内容
契約を結ぶ前に、総額と追加費用の有無、そして返金の規定を必ず確かめてください。
矯正治療は長期にわたるため、途中で転居や転職といった生活の変化が起こる可能性があります。
治療を中断したときや転院したときにどう扱われるかは、契約時の取り決めによって変わります。
提示された金額に検査料や調整料、リテーナー代が含まれているか、装置を作り直す場合に追加費用が発生するかを、書面で確認しておくと安心です。
説明を口頭だけで済ませようとする場合や、その場での契約を急がせる場合には、いったん持ち帰って考える姿勢が役立ちます。
疑問を残したまま署名しないという一点を守るだけでも、多くのトラブルは避けられるでしょう。
「実質無料」などの勧誘には注意が必要
治療費が実質無料になるといった勧誘には、慎重な姿勢が求められます。
SNSで治療の様子を発信すれば費用が返金されるという条件で契約したものの、返金が行われなかったという相談が実際に寄せられています。
高額なローンだけが手元に残り、通っていた医療機関が閉鎖されてしまったという事例も報道されています。
キャッシュバックや自己負担なしをうたう勧誘は、歯科に限らず消費生活相談の場でくり返し取り上げられてきた手口です[5]。
医療機関だから大丈夫だろうという思い込みが、判断を鈍らせる要因になることもあります。
条件が良すぎると感じたときは、その場で決めずに家族に相談したり、消費生活センターの相談窓口に問い合わせたりする時間を取ってください。
治療中に不安を感じたときの相談先
治療が始まってから不安を感じた場合にも、相談できる先はいくつか用意されています。
まず頼りになるのは、担当している歯科医師です。
歯が計画どおりに動いていない、痛みが続くといった状態は、自己判断せず伝えることで対応が変わる可能性があります。
治療方針そのものに納得できないときは、別の医療機関でセカンドオピニオンを受けるという選択肢もあります。
契約や費用に関する内容であれば、各地の消費生活センターや消費者ホットライン、医療の内容に関する心配であれば、自治体が設置する医療安全支援センターに相談できます。
一人で抱え込まずに済む窓口があると知っておくだけでも、治療中の心細さはやわらぐはずです。
マウスピース矯正に関するよくある質問
Q:マウスピース矯正の治療期間はどのくらいかかりますか?
A:全体矯正でおよそ1〜3年、部分矯正で数か月〜1年程度が目安になります。
装置を外したあとには歯並びを安定させる保定期間が1〜3年続くため、全体の見通しはもう少し長く見ておくと安心です。
装着時間を守れているかどうかで期間は変わりますから、具体的な見込みは診断時に確認してください。
Q:マウスピース矯正では治せない歯並びもありますか?
A:あごの位置そのものにずれがある場合や、歯を大きく動かす必要がある場合には、対応が難しいことがあります。
不正咬合の原因が骨格にあるのか歯の位置にあるのかは、精密な検査を経てはじめて明らかになります[2]。
自己判断であきらめる前に、一度カウンセリングで診断を受けてみるのも一つの方法です。
Q:1日に何時間つける必要がありますか?
A:1日20〜22時間の装着を前提に治療計画が組まれるのが一般的です。
食事と歯みがきの時間を差し引くと、外していられるのは2〜4時間程度という計算になります。
外している時間が長くなると次の装置がはまらなくなる可能性があるため、間食の回数を見直すなどの工夫が役立ちます。
Q:マウスピース矯正は医療費控除の対象になりますか?
A:受ける人の年齢や矯正の目的からみて必要と認められる場合の費用は、医療費控除の対象になるとされています[3]。
一方で、容姿を美しく整えることを目的とした歯列矯正の費用は対象にならないと示されています[4]。
判断に迷うときは、診断書について歯科医師に、申告の可否について税務署に確認しておくと確実です。
まとめ
マウスピース矯正とは、透明な装置を決められた順番で交換しながら、少しずつ歯を動かしていく歯列矯正の方法です。
装置が目立ちにくく、食事や歯みがきのときに取り外せる点が、日常生活を大きく変えずに続けられる理由になっています。
一方で、1日20時間以上の装着が前提となり、歯並びによっては対応できない場合があるという制約も併せ持ちます。
費用は自由診療のため全額自己負担となり、全体矯正でおよそ60万〜100万円、部分矯正でおよそ10万〜60万円が目安です。
治療期間は全体矯正で1〜3年、そのあとに保定期間が続くという流れを知っておくと、見通しを立てやすくなります。
契約前に総額と追加費用、返金の規定を書面で確かめておくことは、後悔を防ぐうえで欠かせない手順です。
自分の歯並びで対応できるかどうかは検査を受けてはじめて分かりますから、まずは気になる医療機関でカウンセリングを受けてみましょう。
参考文献
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「不正咬合の治療法の概要」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-06-002.html
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「不正咬合」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/teeth/yh-019.html
[3] 国税庁「No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1128.htm
[4] 国税庁「歯列を矯正するための費用」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/08.htm
[5] 独立行政法人国民生活センター「医療・美容医療(消費者トラブル解説集)」
https://www.kokusen.go.jp/t_box/t_box-faq/g-1.html
免責事項
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療アドバイスではありません。
治療の適否や方法については必ず歯科医師にご相談ください。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。
※歯科医師の判断により治療をお受けいただけない場合があります。