マウスピース矯正で下の歯だけの費用は?相場と注意点を解説

下の前歯のガタつきだけが気になっていて、そこだけ矯正できないかと考えていませんか?

下の歯だけを対象としたマウスピース矯正は部分矯正にあたり、費用の目安は10万円台から40万円程度とされ、全体を動かす場合の半分以下に収まるケースもあります。

ただし上下の歯は互いに噛み合って位置を保っているため、下だけを動かすと噛み合わせのバランスが変わる可能性があり、症状によっては上の歯も対象になります。

この記事では費用の目安と幅が出る理由、対象になる症状、噛み合わせへの影響、後戻りへの備えまで整理しますので、費用を抑えて下の歯を整えたい方はぜひ参考にしてください。

マウスピース矯正で下の歯だけの費用はいくら?

笑ったときに見える下の前歯の重なりが気になり続けている、という方は少なくありません。

上の歯は特に問題がないのに全体の矯正を勧められ、提示された金額を見て手が止まってしまったという経験をされた方もいるのではないでしょうか。

先にお伝えすると、下の歯だけを対象とした矯正は実際に行われており、費用も全体を動かす場合よりかなり抑えられます。

動かす歯の本数が限られ、必要なマウスピースの枚数も少なくて済むためです。

ただし安く済むという点だけで判断すると、噛み合わせや後戻りといった別の課題が後から表面化することもあります。

まず費用の全体像を把握したうえで、注意すべき点も含めて検討していきましょう。

ここでは費用に関する4つのポイントを、順に整理していきます。

部分矯正として10万円台から40万円程度が目安

下の歯だけを動かす治療は、部分矯正という枠組みに入ります。

歯列全体ではなく、前歯を中心とした限られた範囲だけを動かす治療にあたるためです。

下の歯だけを対象としたマウスピース矯正の費用は、10万円台から40万円程度が目安として示されています。

実際の症例では、下の前歯の歯列を約4か月かけて整え、費用が約33万円だったというケースも紹介されています。

この事例では抜歯を行わず、歯の側面をわずかに削ってスペースを確保する処置が含まれていました。

数値はあくまで目安であり、症状や医療機関によって変わるという前提で捉えてください。

全体矯正と比べた費用の差

金額の差を実感するには、全体矯正の相場と並べてみると分かりやすくなります。

奥歯まで含めて動かす全体矯正では、マウスピース矯正で50万円から100万円程度が目安とされているためです。

下の歯だけの部分矯正であれば、この半分以下に収まる可能性が十分にあります。

費用の差が生まれるのは、動かす歯の本数と、それに必要なマウスピースの枚数が違うためです。

治療期間も短くなるため、通院回数の少なさという形でも負担の差が現れてきます。

ただし全体矯正が必要な症状に部分矯正を選べば、目標に届かないという結果にもつながります。

費用に幅が出る4つの理由

同じ「下の歯だけ」でも、提示される金額には差が生まれます。

治療の内容が症状によって変わり、必要な工程も一人ひとり異なるためです。

動かす歯の本数が多いほど、必要なマウスピースの枚数も増えて費用は上がります。

歯を並べるスペースを作るための処置が必要かどうかによっても、金額は変わってきます。

さらに矯正治療は自由診療にあたるため、料金の設定は各医療機関に委ねられています[1]。

同じ内容でも医療機関によって金額が異なるという前提で、比較していく必要があります。

「下の歯だけ」でも装置は下の歯列全体を覆う

誤解されやすい点として、装置の形状があります。

動かすのは前歯だけであっても、マウスピース自体は奥歯まで覆う形で作られるためです。

奥歯をしっかり押さえることで、前歯を動かすための土台が安定するという仕組みになっています。

前歯の部分だけの小さな装置を想像していた方は、実物を見て意外に感じるかもしれません。

装着感は全体矯正の装置と大きく変わらないと考えておくほうが、始めてからのずれが生まれません。

「下の歯だけ」というのは動かす範囲を指す言葉だと理解しておきましょう。

費用の内訳を確認する

見積もりに書かれた総額だけを見比べても、実際の負担は分かりません。

同じ金額が提示されていても、そこに含まれる項目が医療機関によって違うためです。

矯正の費用は、治療前の検査、治療中の装置と通院、治療後の保定という3つの段階で発生します。

どこまでが提示額に含まれるかを確認しなければ、後から想定外の支出が生じてしまいます。

料金体系についても、必要な費用をすべて含めて提示する総額制を採用する医療機関がある一方、通院のたびに調整料が発生する医療機関もあります。

内訳を知っておけば、複数の医療機関を同じ土俵で比較できるようになります。

ここでは費用の内訳を4つに分けて確認していきます。

精密検査料と診断料

治療が始まる前の段階にも、費用が発生します。

下の歯だけで対応できるかどうかを判断するには、専門的な検査が欠かせないためです。

レントゲン撮影、歯型の採得、口の中の写真撮影などが行われ、その結果をもとに治療計画が立てられます。

奥歯の噛み合わせに問題がないかを確認する工程も、この段階に含まれます。

検査料と診断料が治療費に含まれる医療機関もあれば、別途請求となる医療機関もあります。

初回のカウンセリングを無料としている場合もあるため、どこから費用が発生するかを最初に確認しておきましょう。

装置代と治療費

中心となるのは、歯を動かすための費用です。

装置の製作と、治療全体を管理する技術料が含まれる部分だからです。

マウスピース矯正では治療計画に基づいて、必要な枚数の装置がまとめて製作されます。

下の歯だけであれば枚数も少なく済むため、この部分の費用は抑えられます。

歯を並べるスペースを作る処置が必要な場合、その費用が含まれるかどうかも確認したい項目です。

治療の途中で計画の修正が必要になり、追加の装置を作る場合の費用も聞いておきたいところです。

通院ごとの調整料

治療が始まってからの費用も、見落とせません。

歯の動きを確認し、必要に応じて調整していく通院が続くためです。

通院のたびに調整料がかかる方式と、総額に含まれていて追加の支払いが生じない方式があります。

調整料が発生する場合、1回あたり数千円という設定が見られます。

下の歯だけの治療は期間が短いため、通院回数も少なく済む傾向があります。

とはいえ回数分は積み上がるため、総額に含まれるかどうかを確かめておいてください。

保定装置と保定期間の費用

治療が終わったあとにも、費用が発生します。

動かした歯は元の位置へ戻ろうとする性質があり、保定装置を一定期間装着して位置を安定させる必要があるためです。

保定装置の製作費用に加えて、破損や紛失で作り直す場合は追加の費用が生じます。

下の前歯は後戻りが起こりやすい部位とされるため、保定の重要性は特に高くなります。

保定期間中の通院にも費用がかかる医療機関があり、治療が終われば支払いも終わりとは限りません。

見積もりに保定までの費用が含まれているかを確認しておくと、後から慌てずに済みます。

下の歯だけの矯正で対象になる症状

費用の目安が見えてくると、次に気になるのは自分が対象になるかどうかですよね。

安く済むと分かっても、自分の歯並びが適応の範囲外であれば意味がありません。

下の歯だけの矯正で対応しやすいのは、前歯を中心とした限られた範囲の乱れです。

奥歯の噛み合わせを大きく変える必要がなく、前歯の移動だけで見た目が整うケースが中心になります。

以下はあくまで目安であり、最終的な判断は検査を受けたうえで歯科医師が行います。

自分の状態がどれに近いかを知っておけば、相談に行くときの見通しも立てやすくなります。

ここでは対象になりやすい4つの症状を、順に見ていきます。

前歯の軽度なガタつき

下の前歯が少しだけ重なっている状態は、最も相談の多いケースです。

歯を並べるためのわずかなスペースを確保できれば、前歯の移動だけで整えられる可能性があるためです。

スペースの作り方としては、歯の側面をごく薄く削って隙間を生み出す方法が用いられることがあります。

下の前歯は面積が小さく、削って確保できる幅にも限りがあるため、重なりが軽度であることが条件になります。

数本が少し前後にずれている程度であれば、対応できるケースが多いようです。

重なりが大きい場合は必要なスペースを確保できず、範囲が広がることも考えられます。

前歯のねじれ

歯が回転して並んでいる状態も、部分矯正の対象になり得ます。

ねじれを直す動きは前歯の範囲で完結しやすく、奥歯に影響が及びにくいためです。

1本だけが斜めを向いている、2本が向かい合うようにねじれているといった状態が該当します。

見た目の変化が分かりやすく、比較的短い期間で結果を実感しやすい点も特徴です。

ただしねじれの角度が大きい場合は、動かすためのスペースがより多く必要になります。

どの程度まで対応できるかは、口の中の状態を見なければ判断できない部分です。

前歯の隙間

歯と歯のあいだに隙間がある状態も、対応しやすいケースにあたります。

隙間を閉じる動きは前歯の移動だけで完結しやすく、奥歯の位置を変える必要が少ないためです。

隙間が前歯に限られていて、奥歯の噛み合わせに問題がなければ対象になる可能性があります。

一方で隙間が歯列全体に広がっている場合や、原因が奥歯側にある場合は範囲が広がります。

歯周組織の状態が原因で隙間が生じている場合は、まずそちらの治療が優先されることもあります[2]。

隙間の原因がどこにあるかを確認したうえで、治療の範囲が決まっていきます。

過去の矯正からの後戻り

以前に矯正を受けたものの、下の前歯が戻ってきたという方も少なくありません。

保定装置の使用が途切れると、動かした歯は元の位置へ戻ろうとする性質があるためです。

一度整えた歯列の一部が戻った状態であれば、移動する距離が短く済む場合があります。

下の前歯は後戻りが現れやすい部位のため、この理由で相談に訪れる方は多くなっています。

わずかなねじれや重なりが再び現れたという程度であれば、対応しやすいケースといえます。

過去の治療の資料が残っていれば、カウンセリングに持参すると話がスムーズに進みます。

下の歯だけを動かすと噛み合わせはどうなる?

費用と適応の話が見えてきたところで、最も重要な論点に触れておきます。

下の歯だけを動かすという選択には、噛み合わせという避けて通れない課題があります。

見た目の改善だけを考えて片方だけを動かすと、上下の関係が変わってしまう可能性があります。

ここを理解しないまま治療を始めると、歯並びは整ったのに噛みにくくなったという結果にもなりかねません。

仕組みを知っておけば、なぜ検査が必要なのかも納得できるようになります。

安さだけで判断しないための、最も大切な部分だと考えてください。

ここでは噛み合わせに関する4つの視点を、順に見ていきます。

上下の歯は互いに位置を支えている

まず知っておきたいのは、歯が単独で立っているわけではないという点です。

上の歯と下の歯は噛み合うことで互いの位置を支え合い、全体としてバランスを保っているためです。

食事のたびに上下が接触し、その力が歯の位置を維持する役割も果たしています。

唇や頬からの外側の力と、舌からの内側の力も加わり、複数の力が釣り合った場所に歯は落ち着いています。

このバランスのなかで、上下の関係も一定に保たれているという構造です。

片方だけに変化を加えれば、この釣り合いが崩れる可能性があるということになります。

下だけ動かすとバランスが変わる可能性がある

実際に何が起こるのかを、具体的に見ていきます。

下の前歯の位置や角度が変われば、上の前歯との接触の仕方も変わってしまうためです。

これまで当たっていなかった場所が当たるようになる、逆に接触が失われるという変化が生じます。

特定の歯だけに力が集中すれば、その歯への負担が大きくなっていきます。

前歯で食べ物を噛み切りにくくなる、奥歯に力がかかりすぎるといった影響が出ることも考えられます。

見た目は整ったのに噛みにくいという状態は、日常生活に直結する問題になります。

上の歯も対象になる場合

検査の結果、下だけでは済まないと判断されることもあります。

上下の関係を整えるには、上の歯の位置も調整する必要があると判断される場合があるためです。

下の歯を動かせるスペースが、上の歯との関係で制限されているケースもあります。

奥歯の噛み合わせに前後のずれがある場合は、そこを含めた計画が必要になります。

下の歯だけで済むと考えて相談に行き、上下必要と言われて戸惑うという展開は実際に起こります。

費用も期間も変わってくるため、この可能性はあらかじめ想定しておきたいところです。

検査で影響を確認してから判断する

最終的な判断は、専門的な検査を経て下されます。

上下の歯がどのように接触しているか、動かした場合にどう変化するかを予測する必要があるためです。

レントゲン撮影や歯型の採得に加えて、噛み合わせの状態を詳しく確認する検査が行われます。

近年は口の中を読み取ったデータをもとに、治療後の状態をシミュレーションできる場合もあります。

その結果を見たうえで、下だけで対応できるか、上も必要かが判断されます。

自己判断で「下だけでいい」と決めず、まず診てもらうところから始めてみてください。

下の歯だけの矯正にかかる期間

費用と並んで気になるのが、どのくらいの期間がかかるかという点ではないでしょうか。

矯正は年単位で続くという印象が強いため、仕事や生活への影響を考えて踏み出せずにいる方も少なくありません。

下の歯だけを動かす部分矯正は、動かす歯の本数が限られるぶん期間も短く済む傾向があります。

実際の症例では、下の前歯を約4か月で整えたというケースも紹介されています。

ただし歯を動かす期間が終わっても、そこで治療が完了するわけではありません。

期間の全体像を把握しておけば、生活の計画も立てやすくなります。

ここでは期間について3つの視点から見ていきます。

数か月で終わるケースもある

部分矯正の期間は、全体矯正と比べて大きく短縮されます。

動かす歯の本数が少なく、移動させる距離も短いため、必要なマウスピースの枚数が少なくて済むためです。

軽度のガタつきであれば、数か月で目に見える変化が得られるケースもあります。

下の前歯を4か月ほどで整えたという事例も報告されており、年単位を覚悟していた方には意外に感じられるかもしれません。

全体矯正では2年前後かかることもあるため、期間の差は小さくありません。

ただし症状によって幅があるため、自分のケースは検査後に確認してください。

期間が短いことによる利点

短期間で終わることには、費用以外の利点もあります。

装着時間の管理や食事のたびの着脱といった負担が、続く期間も短くなるためです。

数年にわたる自己管理は途中で崩れやすく、それが治療の遅れにつながることも少なくありません。

期間が短ければ、その山を越えるまでの見通しが立ちやすく、続けるための動機も保ちやすくなります。

結婚式や就職活動など、目標とする時期がある方にとっても選びやすい選択肢になります。

通院回数も少なく済むため、仕事との両立という面でも負担が軽くなります。

保定期間は別に必要

見落とされやすいのが、歯を動かし終えたあとの期間です。

動かした歯は元の位置へ戻ろうとする性質があり、保定装置で位置を安定させる時間が必要になるためです。

保定期間は1年から3年程度が目安とされ、矯正方法や範囲にかかわらず必要になります。

歯を動かす期間が4か月で済んだとしても、そのあとに年単位の保定が続くという構造です。

治療が終われば終わりではなく、そこから守る期間が始まると考えておいてください。

見積もりを受け取る際は、保定までの費用と期間を含めて確認しておきましょう。

下の前歯は後戻りが起こりやすい

下の歯だけの矯正を検討するうえで、必ず知っておきたい性質があります。

下の前歯は、口の中でも特に後戻りが現れやすい部位とされています。

せっかく整えても数年後に元の状態に近づいてしまえば、費やした時間と費用が無駄になってしまいます。

後戻りは治療の失敗ではなく、歯が本来持っている性質によって起こるものです。

だからこそ保定をどう続けるかが、下の歯の矯正では特に重要な意味を持ちます。

リスクを理解したうえで備えておけば、長く整った状態を保てます。

ここでは後戻りに関する3つの視点を、順に見ていきます。

加齢に伴う自然な変化がある

まず知っておきたいのは、矯正の有無にかかわらず起こる変化です。

歯は生涯にわたってわずかずつ動き続けており、年齢を重ねるにつれて下の前歯が重なってくるという変化は多くの方に見られるためです。

矯正を受けていない方でも、若い頃と比べて下の前歯が詰まってきたと感じることがあります。

つまり下の前歯のガタつきは、そもそも戻りやすい方向への変化だということになります。

歯を支える組織の状態が変われば、歯の位置もさらに影響を受けていきます[2]。

整えたあとも変化は続くという前提を持っておくことが、備えの第一歩になります。

保定を続けることが前提になる

この性質があるからこそ、保定の位置づけが重要になります。

装置を外した直後の歯は周囲の組織がまだ安定しておらず、元へ戻ろうとする力が強く働いているためです。

保定を怠れば、数か月で整えた歯並びが崩れ始めることも起こり得ます。

保定期間が終わったあとも、装着をやめると歯は少しずつ動いていきます。

夜間だけでも長期間続けることを推奨する医療機関もあり、長期の視点が求められる部分です。

短期間で安く整えられるという利点は、保定を続けてこそ意味を持つという理解が必要です。

固定式のリテーナーが選ばれることもある

下の前歯では、装置の選び方にも特徴があります。

後戻りが起こりやすい部位のため、自分で取り外せないタイプが選ばれる場合があるためです。

歯の裏側に細いワイヤーを接着し、外さずに使い続けるという方法です。

つけ忘れの心配がなく、確実に位置を保てるという利点があります。

一方でワイヤーの周囲に汚れがたまりやすく、フロスを通すのに工夫が必要になります。

清掃が行き届かないと歯を支える組織に影響が及ぶため、丁寧なケアが求められます[2]。

費用を抑えるために確認したいこと

提示された金額をそのまま受け入れる前に、確認しておきたい項目がいくつかあります。

同じ「下の歯だけ」という説明でも、含まれる範囲や追加費用の扱いが医療機関によって異なるためです。

確認のポイントは、総額に含まれるもの、追加費用が生じる場面、使える制度、そして比較の仕方の4つです。

いずれもカウンセリングの場で質問できる内容であり、遠慮する必要はありません。

事前に項目を整理しておけば、限られた時間で必要な情報を引き出せます。

納得したうえで始められれば、途中で予定が狂う事態も避けられます。

ここでは費用に関わる4つの確認事項を、順に見ていきます。

総額に何が含まれるか

最初に確かめたいのは、提示された金額の範囲です。

矯正の費用は複数の段階で発生するため、どこまでが含まれるかによって実際の負担が変わってくるためです。

精密検査料、診断料、装置代、通院ごとの調整料、保定装置の費用が確認の対象になります。

必要な費用をすべて含めて提示する総額制を採用する医療機関もあれば、通院のたびに調整料が発生する医療機関もあります。

総額が安く見えた医療機関で調整料が別途かかり、最終的には変わらなかったという比較結果になることもあります。

書面で受け取って持ち帰り、項目ごとに比べてみると差が見えてきます。

追加費用が生じる場面

想定外の支出が生まれる場面も、あらかじめ聞いておきたいところです。

治療は計画どおりに進むとは限らず、途中で修正が必要になる可能性があるためです。

歯が計画どおりに動かなかった場合、追加のマウスピースを作り直すことになります。

その費用が総額に含まれるのか、別途請求になるのかは医療機関ごとに定めが異なります。

装置を紛失したり破損したりした場合の再製作費用も、確認しておきたい項目です。

治療の途中でむし歯が見つかれば、そちらの治療費が別に発生することも考えられます[3]。

医療費控除の対象になる場合がある

自由診療であっても、税制上の仕組みは活用できます。

医療費控除は1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、確定申告によって所得税の一部が戻る仕組みだからです[4]。

歯列矯正については、受ける人の年齢や矯正の目的からみて必要と認められる場合の費用が対象になると示されています[5]。

歯並びの乱れによって噛む機能に影響が及んでいる場合は、対象になる可能性があります。

一方で、容ぼうを美化することを目的とした矯正の費用は対象になりません[5]。

該当するかどうかの判断は個別の事情によるため、歯科医師や税務署に確認してみてください。

複数の医療機関で比較する

最後に、比べるという行動そのものが費用を左右します。

自由診療では料金の設定が医療機関ごとに異なり、同じ内容でも金額に差が生まれるためです[1]。

初回のカウンセリングを無料としている医療機関も多く、契約せずに話だけ聞くことができます。

2〜3か所で相談すれば、下の歯だけで対応できるという判断が共通しているかも確認できます。

一方で下だけでは難しいという意見が出れば、それも重要な判断材料になります。

その場で契約を求められた場合は、持ち帰って検討したいと伝えて構いません。

下の歯だけの矯正が難しいケース

希望する方法と、症状に適した方法が一致するとは限りません。

相談に行って「下だけでは対応できません」と言われる可能性も、あらかじめ想定しておきたいところです。

難しくなる要因は、動かす距離の大きさ、上下の関係、そして口の中全体の状態に分かれます。

該当する場合でも、別の方法が提案されることがほとんどです。

事前に知っておけば、どんな説明を受けても落ち着いて受け止められます。

ここでは対応が難しくなる4つのケースを、順に見ていきます。

重なりが大きい場合

最も多いのが、必要なスペースを確保できないケースです。

下の前歯を並べるには隙間が必要ですが、下の前歯は面積が小さく、削って作れる幅にも限りがあるためです。

重なりが大きい場合、前歯の範囲だけでは必要なスペースを生み出せません。

奥歯を後方へ移動させる、あるいは抜歯を含めた計画が検討されることになります。

こうした大きな移動は、部分矯正の範囲を超えると判断されるのが一般的です。

自分では軽度だと思っていても、検査で必要なスペースを計算すると足りないと分かる場合もあります。

奥歯の噛み合わせにずれがある場合

前歯だけの問題ではないケースも少なくありません。

奥歯の噛み合わせに前後や左右のずれがあると、前歯を整えても全体が安定しないためです。

前歯の見た目だけを直しても、噛み合わせの機能面は改善されません。

治療後に噛みにくさが残る、後戻りが起こりやすくなるといった結果につながる可能性もあります。

奥歯まで含めた改善が必要かどうかは、検査によって判断されることになります。

この場合は全体矯正が提案され、費用も期間も当初の想定を上回ることになります。

上の歯にも問題がある場合

下だけを診て判断できない場面もあります。

上の歯の位置や角度に問題がある場合、下だけを動かしても上下の関係が整わないためです。

上の前歯が内側に傾いている、前方に出ているといった状態があれば、そちらへの対応も必要になります。

下の歯を動かせる範囲が、上の歯との関係で制限されているケースも考えられます。

上下を同時に治療する計画になれば、費用は下だけの場合の倍近くになることもあります。

鏡で見て気にならなくても、検査で初めて分かる部分があるという前提を持っておいてください。

むし歯や歯周組織のトラブルがある場合

矯正を始める前提として、口の中が健康であることが求められます。

歯を支える組織に炎症がある状態で力を加えると、症状が進んでしまう可能性があるためです[2]。

下の前歯は歯石がたまりやすい部位でもあり、歯周組織の状態に注意が必要な場所です。

むし歯が見つかれば、そちらの治療を優先してから矯正に入ることになります[3]。

治療に時間がかかれば、矯正の開始も後ろにずれていきます。

土台を整えてから始めることが、結果として計画どおりに進める近道になります。

下の歯だけの矯正で後悔しないために

費用を抑えられるという点は、確かに大きな魅力です。

全体矯正の半分以下で済む可能性があるなら、そちらを選びたいと考えるのは自然なことです。

ただし安さを優先した結果、後から別の負担が生じてしまうケースがあることも知っておいてください。

最も避けたいのは、部分矯正で始めたものの目標に届かず、途中から全体矯正に切り替えることになる展開です。

その場合は費用も期間も当初の想定を大きく超え、結果的に最初から全体矯正を選んだほうが安く済んだということにもなりかねません。

安く始めることと、安く終えることは別の話だという視点を持っておきたいところです。

判断の軸になるのは、自分が何を求めているのかという点です。

見た目の改善だけを目的とするのか、噛み合わせの機能まで整えたいのかで、選ぶべき治療は変わってきます。

下の前歯のガタつきが気になるだけで、噛み合わせに支障を感じていないのであれば、部分矯正で十分な場合もあります。

一方で食べ物を噛み切りにくい、顎が疲れやすいといった自覚があるなら、全体を診てもらう価値があります。

自分の目的を言葉にしてカウンセリングで伝えれば、それに合った提案を受けられます。

「安く済ませたい」という希望も、遠慮せずに伝えて構いません。

もう一つ意識しておきたいのが、治療後をどう過ごすかという視点です。

下の前歯は後戻りが起こりやすく、加齢に伴う自然な変化も重なる部位だからです。

数か月で整えられたとしても、保定を続けなければ数年で元の状態に近づいてしまいます。

保定装置の費用と、続ける期間の見通しまで含めて計画を立てておいてください。

短期間で安く整えられるという利点は、その後の管理があって初めて生きてきます。

始める前に全体像を把握しておけば、納得したうえで治療を進められるでしょう。

下の歯だけのマウスピース矯正に関するよくある質問

Q1. 下の歯だけ矯正できますか?

前歯を中心とした軽度の乱れであれば、対応できる可能性があります。

ただし上下の歯は互いに位置を支え合っているため、噛み合わせへの影響を確認する必要があります。

適応かどうかは検査を受けたうえで判断されます。

Q2. 費用はいくらですか?

下の歯だけを対象としたマウスピース矯正は、10万円台から40万円程度が目安として示されています。

自由診療にあたるため、料金は各医療機関が独自に設定しています[1]。

検査料や調整料、保定装置の費用まで含まれるかを確認してください。

Q3. 噛み合わせは悪くなりませんか?

下だけを動かすと上下の関係が変わり、噛み合わせのバランスに影響が及ぶ可能性があります。

そのため事前の検査で、動かした場合の変化を確認することが欠かせません。

必要と判断されれば、上の歯も対象になる場合があります。

Q4. 期間はどのくらいですか?

軽度の症例であれば、数か月で変化が得られるケースもあります。

下の前歯を約4か月で整えたという事例も紹介されています。

これに加えて、1年から3年程度の保定期間が必要になります。

Q5. 全体矯正とどのくらい費用が違いますか?

全体矯正はマウスピース矯正で50万円から100万円程度が目安とされています。

下の歯だけであれば、その半分以下に収まる可能性があります。

ただし全体矯正が必要な症状に部分矯正を選ぶと、途中で切り替えることになる場合もあります。

Q6. 医療費控除は使えますか?

受ける人の年齢や矯正の目的からみて必要と認められる場合の費用が対象になると示されています[5]。

見た目を美しくすることだけを目的とした矯正は対象になりません[5]。

判断は個別の事情によるため、税務署に確認してみてください。

まとめ

下の歯だけを対象としたマウスピース矯正は部分矯正にあたり、10万円台から40万円程度が目安として示されています。

全体矯正の相場が50万円から100万円程度とされるため、半分以下に収まる可能性があります。

対応しやすいのは前歯の軽度なガタつき、ねじれ、隙間、そして過去の矯正からの後戻りです。

上下の歯は互いに位置を支え合っているため、下だけを動かすと噛み合わせのバランスが変わる可能性があります。

重なりが大きい場合や奥歯の噛み合わせにずれがある場合は、部分矯正では対応できないこともあります。

下の前歯は後戻りが起こりやすい部位のため、保定装置の費用と続ける期間まで含めて計画を立ててください。

安く始めることと安く終えることは別のため、まず検査を受けて自分の状態を確認するところから始めましょう。

参考文献

[1] 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html

[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周病とは」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-03-001.html

[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「むし歯の特徴・原因・進行」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-002.html

[4] 国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm

[5] 国税庁「No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1128.htm

免責事項

※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療アドバイスではありません。

※治療の可否や費用については必ず歯科医師にご相談ください。

※効果の現れ方や治療期間には個人差がございます。

※記載の費用や期間は一般的な目安であり、医療機関や症例により異なります。