銀歯があってもMRIは受けられる?画像への影響・注意すべき歯科材料・事前申告の方法を解説

「銀歯があるけれど、MRI検査を受けても大丈夫なのだろうか?」と不安に感じたことはありませんか。

結論からお伝えすると、銀歯(金銀パラジウム合金)は磁気に反応しにくい非磁性体の素材であるため、基本的にMRI検査を受けることができます

ただし、銀歯の金属が検査画像に「アーチファクト(画像の乱れ)」を生じさせることがあり、特に頭部・顎周辺のMRI撮影では診断への影響が問題になる場合があります。

この記事では、銀歯とMRIの関係を正しく理解するための基礎知識・部位別の影響の違い・注意が必要な歯科材料の種類・検査前に確認すべきことをわかりやすく解説します。

MRIを控えていて銀歯や歯科治療の材料について不安を感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。

MRI検査とは何か・なぜ金属が問題になるのか

MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)検査は、強力な磁場と電波を使って体内の断層画像を撮影する検査方法です。

X線やCT検査とは異なり放射線を使わないため被ばくの心配がなく、脳・脊髄・関節・内臓など軟部組織の状態を詳細に観察できる特徴があります[1]。

MRI装置が発生させる磁場は地球の磁場の約3万倍にも達するほど強力であり、この強力な磁場が体内の水素原子に作用し、その反応を画像化するのがMRI検査の基本的な仕組みです[1]。

この強力な磁場があるため、磁気に反応する性質を持つ金属(磁性体)が体内や口腔内にあると、磁場が乱れて画像の精度に影響が出たり、まれに金属が動く力が働いたりする可能性があります。

一方で、磁気に反応しない性質の金属(非磁性体)であれば磁場に大きく影響されないため、MRI検査を安全に受けられるとされています。

磁性体と非磁性体の違い

「磁性体」とは、磁石に引き寄せられる性質を持つ金属のことで、鉄・コバルト・ニッケルなどが代表的な素材です。

MRI装置の強力な磁場がこれらの磁性体に作用すると、金属が動こうとする力が生じたり、周囲の磁場が乱れて画像の歪みや黒い抜けが生じる「アーチファクト」と呼ばれる現象が起きたりする可能性があります。

「非磁性体」とは、磁石に引き寄せられない性質を持つ金属で、金・銀・白金・パラジウム・チタンなどが代表的な素材です。

歯科治療で広く使われる素材の多くは非磁性体であるため、MRI検査で問題になることは基本的に少ないとされています。

ただし「磁性体かどうか」だけでなく「金属の量・位置・撮影する部位との距離」によっても画像への影響が変わるため、口腔内に金属材料がある場合はMRI前に医療スタッフへ申告しておくことが安心への基本的な対処法といえるでしょう。

銀歯(金銀パラジウム合金)はMRIに影響するのか

銀歯と一言で言っても、使われている素材の種類や割合はクリニックや治療内容によって異なりますが、日本で広く使われている保険適用の銀歯の主成分は「金銀パラジウム合金」です。

金銀パラジウム合金は金・銀・パラジウム・白金などを組み合わせた合金で、これらの成分はいずれも非磁性体に分類されます。

そのため銀歯(金銀パラジウム合金)があるからといってMRI検査を受けられないということはなく、磁場によって銀歯が動いたり体内で加熱されたりするリスクは極めて低いとされています[2]。

「銀歯があるとMRIで痛みが出るのでは?」という不安を持つ方もいますが、金銀パラジウム合金が磁気に反応しにくい素材である以上、その心配は基本的に当てはまりません。

ただし銀歯がまったく影響を与えないかというと、そうとは言い切れない側面もあるため、以下で詳しく解説します。

銀歯の成分と磁性の関係

銀歯に使われる金銀パラジウム合金の成分は、金(12%程度)・銀(約50%)・パラジウム(約20%)・白金・その他の金属で構成されています。

これらの成分はいずれも磁石に引き寄せられない非磁性体であるため、MRIの強力な磁場に反応して動いたり熱を発生させたりする可能性は非常に低いとされています[2]。

日本人の成人の70%以上が銀歯を保有しているとされていますが、そのような方々も日常的にMRI検査を受けており、銀歯が原因で検査が中断されるケースは一般的ではありません

「銀歯がある=MRIを受けられない」という誤解は、金属全般に対する漠然とした不安から広まっていることが多く、銀歯の素材の特性を正確に理解することで不必要な心配を解消できます。

自分の銀歯がいつどのような素材で治療されたかが不明な場合は、かかりつけの歯科医院に問い合わせるか、MRI検査前に放射線技師や担当医に申告して確認してもらうことが確実な対処法といえるでしょう。

銀歯によるアーチファクト(画像の乱れ)とは

銀歯がMRI検査に与える最も一般的な影響が、「アーチファクト」と呼ばれる画像の乱れです。

金属は磁場をわずかに乱す性質を持つため、銀歯の周辺では画像が歪んだり黒く抜けて見えたりする現象が生じることがあります[2]。

アーチファクトは銀歯そのものが危険であることを意味するのではなく、あくまでも画像診断の精度に関わる問題であり、検査の安全性に影響するものではありません

銀歯のアーチファクトが問題になるかどうかは、撮影する部位と銀歯の位置との距離に大きく左右されます。

銀歯から遠い部位(腰・膝・腹部・四肢など)を撮影する場合は、アーチファクトの影響はほぼ問題にならないケースがほとんどです。

一方で銀歯に近い頭部・顎・口腔周辺を撮影する場合は、アーチファクトが診断に必要な部位に重なることがあるため、担当医や放射線技師と事前に撮影方法を相談することが大切といえるでしょう。

部位別の影響の違い(頭部・腰・膝など)

銀歯がMRI画像に与えるアーチファクトの影響は、撮影する部位と銀歯の位置との距離によって大きく変わります

腰・膝・肩・腹部・四肢など銀歯から物理的に離れた部位を撮影する場合は、銀歯によるアーチファクトがほぼ問題にならないケースがほとんどです。

銀歯を持つ大多数の方が整形外科・消化器科・泌尿器科などでMRI検査を受けており、銀歯が原因で診断に支障が出るケースは日常的にはほぼ見られません。

一方で頭部・顎・口腔底・舌・咽頭など銀歯に近い部位を撮影する場合は、金属の量や位置によってはアーチファクトが診断に必要な領域に重なることがあるため、事前に撮影担当者へ申告しておくことが推奨されます[2]。

特に脳神経外科・耳鼻科・口腔外科での頭頸部MRI撮影では、銀歯の本数・位置・大きさによって画像の見え方が変わる可能性があるため、検査前のカウンセリングで口腔内の金属の状況を詳しく伝えることが大切です。

撮影する部位と銀歯の位置関係を担当医や放射線技師があらかじめ把握しておくことで、必要に応じて撮影条件の調整や代替検査の検討が行われるため、正確な情報の申告がスムーズな検査につながるといえるでしょう。

MRI検査で注意が必要な歯科材料の種類

口腔内に使われる歯科材料はすべてが同じMRI適性を持つわけではなく、素材の種類によって注意の程度が大きく異なります

「銀歯があるから全部危ない」という認識は正確ではなく、問題になりにくい素材と慎重な確認が必要な素材を区別して理解することが重要です。

ここでは銀歯・金歯・セラミック・入れ歯・矯正装置・インプラントの6つのカテゴリについて、MRI検査との関係を整理します。

自分の口腔内にどの素材が使われているかを把握しておくことで、MRI前の申告や相談がより具体的かつスムーズに行えるようになるでしょう。

銀歯・金歯・セラミックの比較

銀歯(金銀パラジウム合金)・金歯(金合金・白金加金)・セラミック(陶材)は、MRI検査において安全性と画像への影響が異なります

銀歯(金銀パラジウム合金)は非磁性体であるため、MRI検査での安全性に問題はありませんが、金属量が多い被せ物の場合は頭部撮影時にアーチファクトが生じる可能性があります[2]。

金歯(金合金・白金加金)も非磁性体に分類され、磁場に反応しにくいためMRI検査での安全性については銀歯と同様に問題は少ないとされています。

セラミック(オールセラミック・ジルコニア)は金属成分を含まないため、MRI画像へのアーチファクトをほぼ発生させない素材です。

「MRIへの影響が最も少ない素材」という観点では、金属を使わないセラミックが最も理想的な選択肢といえますが、費用が高く保険適用外であるため、MRIのためだけに銀歯をセラミックに変える必要があるかどうかは担当医に相談した上で判断することをおすすめします。

素材磁性MRI安全性アーチファクトのリスク
銀歯(金銀パラジウム合金)非磁性問題なし頭部撮影では注意
金歯(金合金・白金加金)非磁性問題なし低い
セラミック(オールセラミック)なし問題なしほぼなし
ジルコニアなし問題なしほぼなし

入れ歯(磁性アタッチメント)の注意点

入れ歯(義歯)そのものは取り外しが可能なため、MRI検査前に外すことができます

金属のバネ(クラスプ)を使った一般的な部分入れ歯は、バネの素材が非磁性体であることが多く、MRI検査での安全性に大きな問題はないとされています[2]。

ただし「磁性アタッチメント」と呼ばれる磁石を利用した入れ歯の固定装置を使用している場合は、MRI検査前に特別な確認が必要です。

磁性アタッチメントは入れ歯を顎に固定するために磁石の力を利用しており、磁石に反応するキーパー(金属板)が歯根の上に埋め込まれているため、入れ歯を外してもキーパーが口腔内に残ります

このキーパーが銀歯と異なり磁性体の素材を含む場合、MRI検査時に画像のアーチファクトが生じる可能性があり、特に口腔・咽頭周辺の撮影では診断への影響が出るケースがあります[2]。

磁性アタッチメントを使用している方はMRI前に必ず担当医や放射線技師に申告し、撮影部位と磁性アタッチメントの位置関係を確認した上で検査を受けることが安全な対応といえるでしょう。

矯正装置(ワイヤー・ブラケット)の注意点

歯列矯正で使われるワイヤーやブラケットは、素材の種類によってMRI検査への影響が大きく異なります

取り外しが可能なマウスピース矯正(アライナー)は金属を含まないため、MRI検査前に外すことができ、検査への影響はほぼありません。

ステンレススチール製のワイヤーを使った固定式の矯正装置は、鉄・ニッケル・コバルトなどの磁性体を含む可能性があるため、頭部MRI撮影では特にアーチファクトが問題になりやすいとされています[3]。

チタン製のワイヤーやブラケットは非磁性体であるため、ステンレス製と比べてアーチファクトの影響が少ない傾向があります。

矯正治療中の方がMRI検査を受ける場合は、矯正担当の歯科医師に使用している装置の素材を確認してから、MRI検査を行う医療機関に事前申告することが推奨されます。

「矯正中だからMRIを受けられないのでは?」と思い込んで必要な検査を遅らせることは健康上のリスクにもなりうるため、まず専門家に相談することが最初の対処法といえるでしょう。

インプラントの注意点

歯科インプラントの本体(フィクスチャー)は主にチタンまたはチタン合金で製作されており、チタンは非磁性体であるためMRI検査での安全性に問題はないとされています[2]。

インプラントが顎骨にしっかり固定されている状態であれば、MRI装置の磁場によってインプラントが動いたり体温以上に発熱したりするリスクは極めて低いとされています。

ただし一部のインプラントシステムでは、入れ歯の固定に磁性アタッチメントを使用しているケースがあり、この場合は前述の磁性アタッチメントと同様の注意が必要です。

「インプラントを入れたらMRIが一生受けられない」という誤解が広まっていますが、チタン製インプラントのみを使用している場合はこの心配は当てはまりません。

インプラント治療を受けた方がMRI検査を控えている場合は、インプラントを施術した歯科医院に連絡して使用した素材のメーカーと種類を確認し、その情報をMRI検査を行う医療機関に提供しておくことが、安心して検査に臨むための確実な準備になるでしょう。

MRI前に確認・申告すべきこと

MRI検査を受ける前に口腔内の歯科材料について正確に申告しておくことは、安全な検査と正確な診断のために重要な準備です。

「銀歯があることをわざわざ言う必要があるのか」と思う方もいますが、担当医や放射線技師が撮影条件を適切に調整するためには、口腔内の金属の状況を事前に把握しておくことが大切です。

申告漏れや情報不足があると、検査後に画像の見直しや撮影のやり直しが必要になるケースもあるため、手間を省く意味でも正確な情報提供が結果的に効率的な対応につながります

ここでは申告の方法・確認しておくべきこと・不明な場合の対処法を順番に整理します。

MRI検査前に申告すべき歯科材料の情報

MRI検査を受ける前に医療機関のスタッフへ伝えておくべき歯科材料の情報として、以下の内容を確認しておくことをおすすめします。

銀歯・金歯などの詰め物や被せ物の有無については、本数・部位・治療を受けた時期を可能な範囲で把握しておくと、担当医が撮影部位との位置関係を判断しやすくなります。

入れ歯を使用している方は「磁性アタッチメント(磁石式の固定装置)を使用しているかどうか」を確認しておくことが特に重要です。

矯正装置を装着している方は、装置の種類(マウスピース型・固定式ワイヤー型)と使用している素材(ステンレス・チタン等)を矯正担当医に確認しておきましょう。

インプラントがある方は、施術した歯科医院に連絡してインプラントのメーカー・型番・素材を確認し、その情報をMRI検査を行う医療機関に伝えておくことが最も確実な準備になります。

「材料の詳細がわからない」という場合でも、「銀歯が〇本あります」「矯正装置をつけています」という大まかな情報でも申告しておくことで、担当医が適切な判断をするための手がかりになるでしょう。

MRI検査前に問診票や確認シートで聞かれること

多くの医療機関では、MRI検査前に「体内金属確認シート」や「問診票」への記入が求められます

この確認シートには「歯科治療を受けていますか?」「入れ歯・差し歯・ブリッジがありますか?」「矯正装置を使用していますか?」などの質問が含まれているケースが一般的です。

問診票の記入時に「銀歯は書く必要があるのか」と迷う方もいますが、口腔内の金属に関する項目はすべて正直に記入することが、安全な検査を受けるための基本的な対応です。

入れ歯については検査前に外すよう指示されることが多く、磁性アタッチメント付きの入れ歯については特別な対応が必要になる場合があるため、問診票への記入後に必ず担当スタッフへ口頭でも確認しておくことをおすすめします。

「以前にMRI検査を受けたことがあるか」という質問が設けられている場合は、過去に問題がなかった経験をそのまま伝えることも、担当者が判断するための参考情報になります。

問診票を記入した後は担当の放射線技師や看護師が内容を確認して補足質問を行うため、書き漏れや不安な点があればその場で確認するのが最も確実な対処法といえるでしょう。

銀歯の材質がわからない場合の対処法

「昔に治療した銀歯がいくつかあるが、どんな素材かわからない」という方は少なくありません。

特に治療から長年が経過していたり、転居や医院の閉院などでかかりつけ医が変わっていたりする場合は、使用された素材の詳細を把握するのが難しいことがあります

このような場合は、まず現在のかかりつけ歯科医院に相談することが最初のステップです。

歯科医院では口腔内を診察することで、使用されている素材の種類をある程度判断できるケースがあり、必要であれば歯科用X線撮影を参考に素材の推定を行ってもらえる場合があります。

かかりつけ医への相談が難しい場合は、MRI検査を実施する医療機関の担当医や放射線技師に「素材の詳細が不明な銀歯があります」と申告するだけでも、撮影担当者が対応方針を判断する上での重要な情報になります。

素材が不明であることを隠して検査を受けるよりも、わからないことを正直に伝えた上で専門家に判断を任せることが、安心して検査を受けるための最も適切な姿勢といえるでしょう。

銀歯があっても検査が中止になることはあるのか

銀歯(金銀パラジウム合金)が原因でMRI検査が中止されるケースは、通常ほとんどありません

銀歯は非磁性体であるため、MRI装置の磁場によって安全上の問題が生じるリスクは低く、検査を行う医師・放射線技師も銀歯を持つ患者への対応に慣れているのが一般的です[2]。

ただし撮影部位が口腔・顎・咽頭などの領域であり、銀歯のアーチファクトが診断対象の部位に重なると判断された場合は、撮影条件の変更・追加撮影・代替検査(CT・超音波など)の検討が行われることがあります。

「銀歯があるせいで検査ができなかった」という事態を防ぐためにも、検査前の問診で口腔内の状況を詳しく伝えておくことが、担当医が最適な撮影計画を立てるための大切な協力になります。

検査の中止よりも「撮影条件の調整」で対応されるケースの方がはるかに多いため、銀歯があることを理由にMRI検査を敬遠したり先延ばしにしたりすることは、必要な診断の機会を逃すことにつながる可能性があるでしょう。

銀歯をセラミックに変えることでMRIへの影響は減るか

「MRIに備えて銀歯をセラミックに変えた方がいいですか?」という疑問を持つ方は少なくありません。

結論からお伝えすると、MRIのためだけに銀歯をセラミックに変える必要は基本的にありません

銀歯(金銀パラジウム合金)はMRI検査を受けられない素材ではなく、アーチファクトが問題になるケースも撮影部位が限られるため、多くの場合は銀歯のまま検査を受けることができます。

ただし「頭部・顎・口腔周辺のMRIを定期的に受ける必要がある」「アーチファクトが診断の精度に影響すると担当医から指摘された」という特定の状況であれば、セラミックへの変更を検討する意味があります

セラミックへの変更を選ぶかどうかは、MRI検査上の理由だけでなく「審美性の改善」「金属アレルギーの回避」「長期的な耐久性」などの複合的なメリットも踏まえた上で、担当歯科医師と相談しながら判断することが望ましいです。

セラミックに変えた場合のMRIへの影響

銀歯をオールセラミックやジルコニアに変えた場合、金属成分を含まないためMRI画像へのアーチファクトはほぼ発生しなくなります

オールセラミックは天然の歯に近い透明感と白さを持ち、金属成分をまったく含まないため、MRI画像に対する影響という観点では最もクリアな選択肢といえます。

ジルコニアはセラミックの一種で非常に高い強度を持ち、奥歯にも使用できる点が特徴です。

金属を含まないため磁場への反応はなく、MRI画像への影響も極めて少ないとされています。

ハイブリッドセラミック(CADCAM冠)は陶材とプラスチックを組み合わせた素材で、保険適用で白い被せ物を選べる条件があり、金属を含まないためMRI画像への影響も少ない素材です。

いずれのセラミック素材も保険適用外となるケースが多く費用がかかりますが、「MRIへの影響をできるだけ減らしたい」という明確な理由がある場合は、担当歯科医師と費用・メリット・適応条件を確認した上で判断することが後悔のない選択につながるでしょう。

金属アレルギーとMRIの関係

金属アレルギーをお持ちの方が銀歯に対して不安を感じるケースもありますが、金属アレルギーとMRI検査の安全性は直接関係しません

金属アレルギーは特定の金属が皮膚や粘膜に接触することで生じる免疫反応であり、MRIの磁場による影響とは仕組みが異なります

ただし金属アレルギーがある方は、銀歯の素材そのものが口腔内で長期的にアレルギー反応を引き起こすリスクがあるため、MRIとは別の観点でセラミックへの変更を検討する価値があります[4]。

「銀歯があって口腔内が荒れやすい」「金属アレルギーがある」という方は、MRI検査とは切り離して、歯科医師に金属アレルギーの観点から素材の見直しを相談してみることをおすすめします。

金属アレルギーに関する正確な判断はパッチテストなどの検査を経て行われるため、自己判断ではなく専門医への相談を優先することが安心への適切なステップといえるでしょう。

銀歯以外の歯科材料とMRIの関係を整理する

銀歯以外にも歯科治療で使われる素材は多岐にわたり、それぞれのMRI検査との相性を正確に把握しておくことが、検査前の準備をスムーズに進める上で役立ちます

「自分の口の中に何が入っているのかよくわからない」という方は、この章を参考に自分の治療歴と照らし合わせながら確認してみてください。

特に複数の歯科治療を受けてきた方や、長期間にわたって定期的なMRI検査が必要な疾患を抱えている方にとって、口腔内の素材とMRIの関係を整理しておくことは重要な知識といえます。

ブリッジ・差し歯とMRIの関係

ブリッジとは、歯が欠損した部分を補うために隣の歯を支柱(支台歯)として人工の歯を橋渡し状に固定する補綴物です。

保険適用のブリッジには金銀パラジウム合金が使われることが多く、この素材は非磁性体であるためMRI検査に大きな問題は生じないとされています[2]。

差し歯(前装冠)は前歯に使われることが多く、表側がレジン(白いプラスチック)で裏側が金属でできた構造のものが保険適用として広く使われています。

裏側の金属部分も多くの場合は非磁性体の合金が使われているため、MRI安全性の観点では基本的に問題が少ない素材です。

ただしブリッジや差し歯の金属量は詰め物と比べて多い場合があるため、頭部・顎周辺の撮影では銀歯よりも広い範囲にアーチファクトが生じる可能性があります。

前歯付近に大きなブリッジや差し歯がある状態で頭頸部MRIを受ける場合は、担当医に口腔内の状況を事前に伝え、撮影条件の検討を相談することが望ましいでしょう。

根管治療後の金属ポスト(土台)とMRIの関係

虫歯が深く進行した歯の根管治療後には、被せ物を支えるための「ポスト(土台)」と呼ばれる芯棒が歯根に埋め込まれることがあります。

金属製のポストにはチタン・ニッケルクロム合金・ステンレス製などの種類があり、素材によってMRI画像への影響が異なります。

チタン製のポストは非磁性体であるためMRIへの影響は少なく、ニッケルやコバルトを含む合金は磁性体的な性質を持つためアーチファクトのリスクが若干高まる可能性があります[3]。

ファイバーポスト(ガラス繊維製の土台)は金属を含まないためMRI画像への影響がほぼなく、金属ポストの代替として近年広く使われている素材です。

「根管治療を受けたことがあるが土台の素材がわからない」という場合は、かかりつけ歯科医院に確認するか、MRI検査を行う医療機関に「根管治療後の金属ポストがある可能性があります」と申告しておくことが適切な対応です。

歯根に埋め込まれた金属ポストは表から見えないため見落とされやすい情報ですが、頭部MRIでは診断対象エリアに近い場合があるため、治療歴として忘れずに申告しておくことが大切といえるでしょう。

歯科用CTとMRIの違い

歯科医院で行われる「歯科用CT」とMRI検査は、使用する技術がまったく異なります

歯科用CTはX線を使った断層撮影であり、骨や歯の硬い組織の形状を精密に撮影することに優れています。

インプラント治療前の骨の状態確認や、埋伏歯(埋まっている歯)の位置確認などに使われることが多く、金属があっても基本的に検査を受けることができます。

一方でMRI検査は磁場と電波を使った撮影であり、筋肉・神経・腫瘍など軟部組織の状態を詳しく観察することに優れています

「歯科でCTを撮影したことがある」という情報は、MRI検査を受ける際には直接的な参考にならないため、MRI固有の金属確認の手続きとは別に行う必要があります。

「歯科CTで問題なかったからMRIも大丈夫」という判断は正確ではないため、MRI前の問診・申告は歯科CT検査の経験とは切り離して、改めて確認することが安全な対応といえるでしょう。

MRI検査を受ける際の実際の流れと心がけること

銀歯や歯科材料に関する事前準備が整ったところで、MRI検査当日の実際の流れと、口腔内に金属がある方が特に心がけておくべきことを確認しておきましょう。

「何を持参すればいいか」「当日どのように申告すればいいか」を事前に把握しておくことで、検査当日に慌てることなくスムーズに対応できます。

検査当日に準備しておくこと

MRI検査当日に持参すると役立つものとして、歯科治療の記録(お薬手帳・治療説明書・診療記録など)が挙げられます。

特にインプラントを使用している方は、施術した歯科医院からインプラントのメーカーと型番を記載した書類を取り寄せておくと、検査を行う医療機関での確認がスムーズになります。

矯正装置を使用している方は、担当矯正医に「MRI検査を受けます」と伝えてから、装置の素材と安全確認に関する情報を文書で準備してもらうことをおすすめします。

取り外せる入れ歯・マウスガード・矯正用マウスピースなどは検査前に外すよう指示されるため、保管ケースを持参しておくと安心です。

金属類を外す際の時間的な余裕を考えて、検査開始時刻より15〜20分程度早めに到着しておくと、問診票の記入と確認をゆっくり行うことができるでしょう。

担当医・放射線技師への伝え方

MRI検査当日に担当スタッフへ口腔内の金属について伝える際は、以下の情報を具体的に伝えることが効果的です。

「銀歯が上の奥歯に〇本あります」「固定式の矯正装置をつけています」「インプラントが右下に1本入っています」といった具体的な情報は、担当者が適切な撮影条件を判断するための重要な材料になります。

「とにかく金属のようなものがいくつかあります」という大まかな伝え方でも受け付けてもらえますが、可能な範囲で具体的な本数・位置・種類を伝えることでより正確な対応が取りやすくなります

「素材の詳細がわからない」という場合も正直に伝えることが誠実な対応であり、担当技師が既往の撮影経験や一般的な歯科材料の知識をもとに適切な判断を行ってくれます。

不安なことや疑問点があれば検査前に遠慮なく質問することで、「この検査は安全に受けられるか」「画像に影響が出る場合にはどう対処するか」について担当者から具体的な説明を受けることができるでしょう。

近年のMRI技術の進歩と金属への対応

近年のMRI装置は技術の進化により、金属によるアーチファクトの影響を最小限に抑えるための撮影シーケンス(撮影プログラム)が開発されており、以前よりも金属があっても高品質な画像が得られるようになっています

「MARS(Metal Artifact Reduction Sequence)」と呼ばれるアーチファクト低減技術は、金属周囲の画像の歪みを補正する機能を持ち、骨盤内や四肢のインプラント周辺の撮影などで活用されています。

装置の磁場強度も機関によって異なり、1.5テスラと3テスラの装置が広く使われていますが、磁場強度が高いほどアーチファクトも大きくなる傾向があるため、金属がある患者の頭部MRIでは1.5テスラ装置が選択されることがあります

こうした技術の進歩により、従来は撮影が難しいとされていたケースでも対応できる場面が増えており、「銀歯や金属があるからMRIは無理」という状況は以前と比べて大幅に少なくなっています。

最新の撮影技術とMRI装置の性能については医療機関によって異なるため、銀歯や歯科金属に対する不安がある方は検査前に担当医に相談することで、現在の装置でどの程度対応できるかを確認できるでしょう。

MRIと銀歯に関するよくある質問

Q. 銀歯があるとMRI検査は受けられませんか?

銀歯(金銀パラジウム合金)は磁気に反応しにくい非磁性体の素材であるため、基本的にMRI検査を受けることができます[2]。

銀歯があることを理由に検査が中止されるケースは通常ほとんどなく、日本人の70%以上が銀歯を保有しているとされていますが、そのような方々も日常的にMRI検査を受けています。

ただし頭部・顎周辺のMRI撮影では画像にアーチファクト(乱れ)が生じる可能性があるため、銀歯の有無を事前に担当医や放射線技師へ申告しておくことが大切です。

Q. 銀歯があるとMRIで痛みが出ますか?

銀歯(金銀パラジウム合金)は非磁性体であるため、MRIの磁場に反応して動いたり発熱したりするリスクは極めて低く、銀歯が原因でMRI中に痛みが生じることは基本的にありません[2]。

「金属が磁場に引き寄せられて痛い」という不安を持つ方は多いですが、磁場に引き寄せられるのは鉄・ニッケル・コバルトなどの磁性体の金属であり、銀歯の主成分はこれらとは異なります。

不安が強い場合は検査前に担当医へ相談することで、個別の状況に応じた説明と対応を受けることができるでしょう。

Q. 磁性アタッチメント付きの入れ歯がありますが、MRIは受けられますか?

磁性アタッチメントを使用している方は、MRI検査前に必ず担当医や放射線技師へ申告することが必要です[2]。

入れ歯そのものは取り外せますが、歯根に埋め込まれたキーパー(金属板)は取り外せないため、撮影部位との位置関係によっては画像に影響が生じる可能性があります。

撮影部位が口腔・咽頭から離れている場合は問題なく検査を受けられるケースが多いため、担当医に状況を詳しく伝えて個別の判断を仰ぐことが最も確実な対処法です。

Q. 頭部のMRIを受けますが、銀歯の影響は大きいですか?

頭部MRIは銀歯と撮影部位が近いため、腰や膝のMRIと比べると銀歯によるアーチファクトの影響が出やすい状況です[2]。

ただし銀歯(金銀パラジウム合金)は非磁性体であり、安全性の問題ではなく画像診断の精度に関わる問題であることを理解しておくことが大切です。

検査前に担当医や放射線技師へ銀歯の本数と位置を伝えておくことで、撮影条件の調整や必要に応じた代替検査の検討が行われるため、申告を省略せずに正確な情報を提供することをおすすめします。

まとめ

銀歯(金銀パラジウム合金)は磁気に反応しにくい非磁性体の素材であるため、基本的にMRI検査を受けることができます

銀歯が原因でMRI中に痛みが生じたり検査が中止されたりするケースは通常ほとんどなく、腰・膝・腹部など銀歯から離れた部位の撮影では画像への影響もほぼ問題になりません。

頭部・顎周辺のMRI撮影では銀歯によるアーチファクト(画像の乱れ)が診断に影響する可能性があるため、検査前に担当医や放射線技師へ口腔内の金属の状況を正確に申告することが大切です。

入れ歯の磁性アタッチメント・ステンレス製の矯正ワイヤー・ニッケルやコバルトを含む金属は銀歯よりも注意が必要な素材であるため、これらの材料を使用している方は特に詳しい申告と事前相談が推奨されます。

「銀歯の材質がわからない」という場合は、かかりつけ歯科医院に確認するか、MRI検査を行う医療機関に「詳細不明の銀歯があります」と伝えた上で専門家の判断に委ねることが安全な対応です。

MRIのためだけに銀歯をセラミックに変える必要は基本的にありませんが、頭部MRIを定期的に受ける状況や担当医から画像への影響を指摘された場合は、セラミックへの変更を検討する価値があります。

銀歯があることを過剰に不安視して必要なMRI検査を先延ばしにすることは、大切な診断の機会を逃すことになりうるため、正確な知識を持った上で医療スタッフと連携しながら検査に臨んでみてください。

参考文献

[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「口腔の健康状態と全身的な健康状態の関連」(最終閲覧日:2026年4月29日)

https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-01-006.html

[2] 日本口腔外科学会「口腔外科相談室」(最終閲覧日:2026年4月29日)

https://www.jsoms.or.jp/public/soudan/kouku/

[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯・口腔の健康」(最終閲覧日:2026年4月29日)

https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth.html

[4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周病の予防と治療」(最終閲覧日:2026年4月29日)

https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-03-006.html

※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療アドバイスではありません。

MRI検査を受ける際は必ず担当医や放射線技師にご相談ください。

※歯科材料の種類・MRI装置の性能・撮影条件は医療機関によって異なります。

※個人の口腔内の状況によって対応が異なる場合があります。