噛み合わせ矯正のマウスピース費用は?相場と保険適用の条件

噛み合わせをマウスピース矯正で治したいけれど、いくらかかるのか見当がつかず迷っていませんか。
噛み合わせを整えるには奥歯まで含めて歯列全体を動かす必要があるため、前歯だけを整える部分矯正の価格帯は当てはまりません。
さらに費用は、マウスピースだけで進むのか、ワイヤー矯正を併用するのか、外科手術をともなうのかという3つのルートによって大きく変わります。
この記事では相場と内訳に加えて、保険が使える条件と、自分がどのルートに当てはまるかを知る方法までを整理しましたので、予算を立てる材料としてお役立てください。
噛み合わせをマウスピース矯正で治す費用の相場
噛み合わせの治療費を調べていると、10万円台という金額を見かけることがあります。
その数字を見て、思っていたより安く済むのではないかと期待した方もいるかもしれません。
しかしその金額の多くは前歯だけを整える部分矯正のもので、噛み合わせを対象とした治療の相場とは別のものです。
噛み合わせを整えるには奥歯を含めた歯列全体を動かす必要があり、必要な装置の量も治療にかかる期間も大きく変わってきます。
まずは噛み合わせの治療がどの価格帯に位置するのかを、正確に把握するところから始めましょう。
噛み合わせの治療にかかる費用の目安
噛み合わせを含めて整えるマウスピース矯正の費用は、50万円から100万円程度が一つの目安になります。
歯列全体を動かすため作製する装置の枚数が数十枚に及び、治療にかかる期間も1年半から3年程度と長くなるためです。
同じマウスピース矯正でも、前歯を中心とした部分矯正であれば10万円台から60万円程度に収まることがあり、価格帯としては倍近い開きが生じます。
この差は装置の性能ではなく、動かす歯の本数と治療の難易度がそのまま反映された結果です。
さらに抜歯をともなう治療になれば、抜歯そのものの処置料が別に必要になります。
提示された金額がどこまでの範囲を対象としたものかを確認しないまま比べても、判断の材料にはならないと考えておきましょう。
部分矯正より高くなる理由
噛み合わせの治療が高くなるのは、動かす対象が前歯にとどまらないためです。
上下の歯が噛み合う関係は奥歯によって支えられており、前歯だけを並べ替えても噛み合わせそのものは変わらないという構造があるためです。
奥歯の位置や傾きを調整するには、歯列全体を対象とした計画を立て、それに合わせた装置を作製する必要があります。
装置の枚数が増えれば材料費も設計の手間も増え、治療期間が延びれば通院の回数も積み重なっていきます。
矯正治療では検査によって骨格・歯槽・機能のどこに問題点があるのかという成り立ちが解明されてから治療方針が決まりますが[1]、噛み合わせの問題はこの3つのいずれにも関わる可能性があります。
診断の難易度そのものが高い治療であるという点も、費用に反映されていると考えられます。
治療期間と費用の関係
治療期間の長さは、費用にも影響してきます。
通院のたびに調整料が発生する料金体系では、期間が延びるほど支払総額が積み上がっていくためです。
噛み合わせを整える全体矯正では1年半から3年程度かかることが多く、その間の通院は数十回に及びます。
1回あたりの調整料が数千円であっても、期間全体では十数万円規模の負担になる計算です。
治療にかかる費用をあらかじめまとめて提示する方式であれば、期間が延びても追加の請求は発生しにくくなります。
期間と料金体系はセットで確認することで、最終的な支払額の見通しが立てられます。
噛み合わせの状態によって費用は変わる
同じ噛み合わせの治療でも、金額に大きな幅が生まれます。
噛み合わせが合っていない原因が、歯の位置にあるのか骨格にあるのかで、必要な治療の規模がまったく変わってくるためです。
自分がどの状態に当てはまるかを知れば、提示される金額のおおよその範囲も見えてきます。
見た目の印象だけでは判断がつかない部分ですが、考え方を知っておくだけで相談の場での理解が変わります。
3つの状態に分けて確認していきましょう。
前歯の傾きが中心のケース
比較的軽度なのが、前歯の傾きや位置によって噛み合わせがずれているケースです。
奥歯の位置関係には大きな問題がなく、前歯を動かすことで上下の関係を整えられる状態を指します。
このタイプであれば動かす距離も限られ、マウスピース矯正の対応範囲に収まる可能性があります。
治療期間も比較的短く済むため、費用としては相場の下限に近い金額が提示されることがあります。
ただし前歯だけを動かせばよいという意味ではなく、噛み合わせを整える以上は全体を対象とした計画になります。
部分矯正で足りるかどうかは診断によって決まりますので、自己判断で範囲を狭めないことが大切です。
奥歯の位置まで動かすケース
奥歯の位置や傾きに問題がある場合、治療の規模は一段大きくなります。
奥歯は噛み合わせの土台にあたり、ここを動かすには歯列全体のバランスを設計し直す必要があるためです。
上下の奥歯がずれて噛んでいる、奥歯が倒れ込んでいるといった状態がこれに当たります。
歯を並べるスペースを確保するために抜歯が検討されることもあり、その場合は処置料と期間が加わります。
装置の枚数も増えるため、費用としては相場の上限に近づいていきます。
永久歯列では個々の歯を並べ直す目的でマルチブラケット装置が広く使われており[1]、装置の選択にも影響が出てくる領域です。
骨格にずれがあるケース
最も費用に影響するのが、あごの骨格そのものにずれがある場合です。
矯正治療で動かせるのは歯であり、あごの骨の位置関係を作り変えることはできないためです。
わずかな骨格性の不正であれば、歯を移動させることでカモフラージュすることが可能とされています[1]。
しかし程度が著しく大きい場合は一般的な矯正治療の適応の範囲を越え、あごの骨を切って動かす外科的手法を併用した外科矯正治療が行われます[1]。
この場合は手術の費用が加わる一方で、保険が適用される可能性も出てくるため、費用の構造そのものが変わります。
自分がこのケースに該当するかどうかは検査を受けて初めて分かりますので、記事の後半で詳しく確認していきましょう。
費用が分かれる3つのルート
噛み合わせの治療費に幅があるのは、進み方が一本道ではないためです。
同じ主訴で相談しても、検査の結果によって提案される治療はまったく別のものになります。
大きく分けると、マウスピースだけで進むルート、ワイヤー矯正を併用するルート、外科手術を併用するルートの3つがあり、それぞれ費用の構造が異なります。
自分がどのルートに近いのかを知っておけば、提示された見積もりの意味も理解しやすくなります。
3つのルートを順に確認していきましょう。
マウスピースだけで進むルート
最も費用が読みやすいのが、マウスピース矯正だけで治療が完結するルートです。
歯の位置や傾きを調整することで噛み合わせを整えられる状態であれば、装置を変えずに最後まで進められるためです。
費用は50万円から100万円程度の範囲に収まることが多く、装置代を中心とした構成になります。
透明な装置で治療を進められるため、見た目の負担を抑えながら噛み合わせまで整えられる点が利点です。
厚生労働省の情報サイトでも、近年の永久歯列の治療では透明な樹脂でできた取り外し式の矯正装置による治療も行われるようになったと記されています[1]。
このルートに該当するかどうかは、検査で歯の移動だけで対応できると判断されるかにかかっています。
ワイヤー矯正を併用するルート
次に、途中でワイヤー矯正を組み合わせるルートがあります。
奥歯を大きく動かす動きや、歯を根元から起こす動きは、装置が歯を包んで押す構造では力が逃げやすいためです。
歯を大きく動かす前半をワイヤー矯正で進め、細かく整える後半をマウスピース矯正に引き継ぐという進め方が取られることがあります。
永久歯列では、ほとんどの患者さんでマルチブラケット装置を用いた個々の歯の再配列が行われています[1]。
このルートでは両方の装置の費用が関わるため、マウスピースだけで進む場合より総額が上がることが一般的です。
見積もりの段階で併用の可能性を聞いておけば、途中で金額が変わって驚くことを避けられます。
外科手術を併用するルート
3つ目が、あごの骨を動かす手術を組み合わせるルートです。
骨格のずれが大きい場合、歯を移動させるだけでは噛み合わせを整えられないためです。
程度が著しく大きい場合は一般的な矯正治療の適応の範囲を越え、下あごを切断して動かすといった外科的手法を併用した外科矯正治療が行われます[1]。
このルートでは手術の費用と入院にかかる費用が加わるため、自由診療として受けると総額は数百万円規模になることもあります。
ただしこのルートには、保険が適用される可能性があるという他とは違う特徴があります。
費用の構造そのものが変わりますので、次の章で詳しく確認していきましょう。
保険が使える場合と使えない場合
矯正治療は保険が使えないという説明を、どこかで目にした方は多いはずです。
実際にその理解は大筋で正しいのですが、噛み合わせを主訴とする方の場合、例外に該当する可能性が他の方より高くなります。
保険が適用されるかどうかで自己負担の桁が変わるため、該当する可能性がある方にとっては最も重要な情報になります。
条件は明確に定められていますので、自分が当てはまるかどうかを確認しておく価値があります。
3つの観点から整理していきましょう。
噛み合わせの矯正は原則として自由診療
まず前提として、歯並びを整える目的の矯正治療は原則として自由診療にあたります。
健康保険は病気やけがの治療に適用される制度であり、歯並びや噛み合わせの改善は原則としてその枠に含まれないためです。
自由診療では料金を各医療機関が設定するため、同じ治療内容でも医院によって金額が異なります。
初診相談料や検査料の設定にも差があり、公定価格のような共通の基準は存在しません。
そのため複数の医院で見積もりを取って比べる作業が必要になります。
例外に該当しない場合は、この前提のもとで費用を組み立てていくことになります。
保険が適用される限られたケース
一部の不正咬合については、健康保険を使った矯正治療が認められています。
歯並びの問題が病気や生まれつきの疾患に起因する場合、治療の必要性が医学的に認められるためです。
骨格のずれが著しく大きく、外科的手法を併用した外科矯正治療が必要な場合、この骨格性不正が大きい病気は顎変形症と呼ばれ、一部の病院で保険診療の対象となります[1]。
顎変形症のほかにも、唇顎口蓋裂やダウン症候群、鎖骨・頭蓋骨異形成など、国の定める42の疾患に起因する不正咬合の矯正歯科治療には一部の病院で保険が適用されます[1]。
噛み合わせが大きくずれていて日常生活に支障を感じている方は、こうしたケースに該当する可能性を一度確認しておく価値があります。
該当すれば自己負担は大きく変わりますので、治療を始める前の確認が欠かせません。
保険が使える医療機関は限られる
保険が適用される場合でも、どこの医院でも受けられるわけではありません。
保険診療として矯正治療を行うには、施設として一定の要件を満たしている必要があるためです。
保険が適用される医療機関は限られており、その施設リストは日本矯正歯科学会のホームページで確認できるとされています[1]。
近所の歯科医院で相談しても、保険での対応ができないと案内される場合があります。
該当する可能性を感じたら、対応できる医療機関を先に調べてから相談に進むほうが確実です。
自由診療として治療を始めてしまうと、あとから保険に切り替えることは基本的にできませんので、順序を間違えないよう注意しましょう。
装置代以外にかかる費用
見積もりを比べるときに見落とされやすいのが、装置代以外に発生する項目です。
噛み合わせの治療は期間が長いため、通院のたびに積み重なる費用の総額も大きくなります。
治療前の検査から治療後の保定まで、費用が発生する場面は複数あり、それぞれが医院ごとに異なる扱いになっています。
装置代が同じでも、これらの項目が含まれるかどうかで最終的な支払額は数十万円変わることもあります。
代表的な3つの項目を順に確認していきましょう。
精密検査・診断料
治療を始める前の段階で、検査と診断の費用が発生します。
噛み合わせの問題が歯の位置によるものか骨格によるものかを判断するには、専門的な検査が欠かせないためです。
矯正治療を開始するにあたっては詳細な検査が行われ、側面頭部エックス線規格写真という一般的な歯科医院にはない特別な撮影などが用いられます[1]。
この検査によって骨格・歯槽・機能のどこに問題点があるのかが明らかにされ、治療方針が決まります[1]。
費用は3万円から6万円程度が目安で、治療費に含まれる医院と別途請求される医院に分かれます。
この検査こそが3つのルートのどれに進むかを決める工程ですので、費用としてではなく必要な投資として捉えておきたいところです。
調整料と通院回数
通院のたびに調整料が発生する料金体系では、期間の長さがそのまま費用に反映されます。
歯が計画どおりに動いているかの確認と、必要に応じた調整を毎回行う必要があるためです。
金額は1回3,000円から10,000円程度が目安で、マウスピース矯正では1〜3か月に1回程度の通院が続きます。
噛み合わせを整える治療は1年半から3年程度かかるため、通院回数は十数回から数十回に及びます。
調整料が1回5,000円で30回通院すれば、それだけで15万円が上乗せされる計算になります。
治療費に調整料が含まれている料金体系であれば、期間が延びても追加の負担は発生しませんので、必ず確認しておきましょう。
保定装置と再作製の費用
治療が終わったあとにも、保定装置の費用が必要になります。
動かし終えた歯は元の位置へ戻ろうとするため、位置を安定させる装置を使う期間が続くためです。
保定装置の費用は1万円から6万円程度が目安で、治療費に含まれる場合と別途請求される場合があります。
噛み合わせまで大きく動かした治療では、戻ろうとする力も強く働くため、保定の重要性はいっそう高まります。
紛失や破損による再作製にも費用がかかり、その金額も医院によって扱いが異なります。
治療中に装置を失くした場合の再作製費用とあわせて、契約前に確認しておくと予算を立てやすくなります。
見積もりの読み方と確認事項
必要な項目が分かったところで、実際の見積もりをどう読むかを整理します。
金額の欄だけを見比べても比較にならないという状態から抜け出すことが目的です。
噛み合わせの治療は金額が大きいぶん、含まれる範囲の違いが与える影響も大きくなります。
自分で検算できる状態になれば、複数の医院を同じ土俵で比べられるようになります。
3つの観点から確認していきましょう。
総額制と処置ごとの支払い
矯正治療の料金体系は、大きく2つの方式に分かれます。
治療にかかる費用を最初にまとめて提示する方式と、処置のたびに支払う方式です。
総額制では費用があらかじめ確定するため、治療期間が延びても追加の請求が発生しにくくなります。
処置ごとに支払う方式は初期の負担が軽い一方、通院が増えるほど支払総額が積み上がっていきます。
噛み合わせの治療は期間が読みにくく、当初の見込みより長引くことも起こりますので、この差は無視できません。
期間が不確実な治療ほど、総額が確定する方式のほうが家計を管理しやすいと考えられます。
確認しておきたい項目
見積もりを受け取ったら、金額より先に含まれている範囲を項目ごとに確かめます。
同じ80万円でも、検査料と保定装置まで含む金額と装置代だけの金額では意味がまったく違うためです。
確認したいのは、初診相談料、精密検査・診断料、装置代、通院ごとの調整料、保定装置の費用、装置の再作製費用の6項目になります。
噛み合わせの治療では、これに加えて抜歯が必要な場合の処置料と、ワイヤー矯正を併用する場合の費用も確認しておきたいところです。
同じ項目を複数の医院に質問して並べれば、金額の差がどこから生まれているのかが見えてきます。
口頭の説明で終わらせず書面で受け取っておけば、家族と相談しながら落ち着いて検討できます。
途中で治療方針が変わった場合
噛み合わせの治療では、進めるうちに方針が変わることがあります。
歯の動き方には個人差があり、当初の計画では対応しきれないと判明する場合があるためです。
マウスピースだけで進む予定がワイヤー矯正の併用に変わった場合、追加の費用が発生するのかを確認しておきます。
矯正診療は検査、診断、治療の順に進み、経過に応じて再診断が行われることもあります[1]。
再診断の結果として治療計画が変わったとき、費用の扱いがどうなるかは契約内容によって異なります。
想定外の展開に見えても、契約前に確認していれば慌てずに対応できますので、最初に聞いておきましょう。
マウスピース矯正で噛み合わせを治せる範囲
費用の話と並行して確認しておきたいのが、希望している装置で治療できるのかという点です。
金額に納得して契約したあとで、この装置では対応できないと分かるのは避けたいところです。
マウスピース矯正には得意な動きと苦手な動きがあり、噛み合わせの治療では苦手な動きが求められる場面も出てきます。
対応範囲を先に知っておけば、提示された治療計画の意味も理解しやすくなります。
3つの観点から整理していきましょう。
対応しやすいケース
マウスピース矯正で対応しやすいのは、歯を動かす距離が比較的短いケースです。
装置が歯を包み込んで押す構造のため、移動量が小さいほど計画どおりに進めやすいためです。
前歯の傾きを調整することで上下の関係を整えられる状態や、軽度のずれを整える治療がこれに当たります。
厚生労働省の情報サイトでも、透明な樹脂でできた取り外し式の矯正装置はある種の不正咬合の治療に効果を発揮すると位置づけられています[1]。
近年の永久歯列の治療では、この装置による治療も行われるようになったと記されています[1]。
自分の噛み合わせがこの範囲に収まるのであれば、透明な装置で進められる可能性は十分にあります。
装置が苦手とする動き
一方で、噛み合わせの治療には装置が苦手とする動きが含まれることがあります。
歯を沈める動きや引き出す動き、歯を根元から起こす動きでは、装置を包んで押す構造では力が逃げやすいためです。
奥歯の高さを調整する動きや、傾いた奥歯を起こす動きは、噛み合わせを整えるうえで必要になる場面があります。
抜歯をして大きなすき間を閉じる治療でも、歯を平行に移動させる精密な制御が求められます。
透明な樹脂の取り外し式装置については、マルチブラケット装置の治療効果には劣るものの効果があると報告されています[1]。
苦手な動きが多く含まれる場合、ワイヤー矯正の併用が提案されることがあると理解しておきましょう。
適応は精密検査で決まる
どの装置で治療できるかは、検査を受けて初めて確定します。
噛み合わせが合っていない原因が歯の位置によるものか骨格によるものかで、必要な治療がまったく変わってくるためです。
矯正治療を開始するにあたっては詳細な検査が行われ、側面頭部エックス線規格写真という特別な撮影などを用いて、骨格・歯槽・機能のどこに問題点があるのかという成り立ちが解明されます[1]。
わずかな骨格性の不正であれば歯の移動によってカモフラージュすることが可能とされていますが、程度が大きい場合は外科矯正治療が選ばれます[1]。
装置を先に決めてから検査を受けると、適応外だと分かった時点で計画をやり直すことになります。
費用の見通しを立てるうえでも、検査を受けてから装置を選ぶ順序が結果的に無駄を減らします。
費用の負担を軽くする方法
噛み合わせの治療は金額が大きいだけに、負担を軽くする手段は知っておきたいところです。
装置代を値切るという発想ではなく、制度を使い、支払い方を工夫し、正確に比較するという3つの方向から考えます。
特に噛み合わせを主訴とする方の場合、税の制度で有利になる可能性が他のケースより高くなります。
順に確認していきましょう。
3つの方法を整理します。
医療費控除の対象になるか
確定申告で医療費控除を申請すると、所得税や住民税の負担が軽くなる場合があります。
条件を満たせば、支払った医療費に応じて税の負担が減る仕組みがあるためです。
国税庁は、受ける人の年齢や矯正の目的などからみて歯列矯正が必要と認められる場合の費用は医療費控除の対象になるとしています[2]。
一方で、同じ歯列矯正でも容ぼうを美化するための費用は対象にならないと明記されています[2]。
噛み合わせの改善という機能面の目的がある治療は、見た目を整えることを主な目的とした治療より、必要と認められる可能性は高くなると考えられます。
診断書などで治療の目的を示せるかどうかが分かれ目になりますので、医院に相談してみてください。
支払い方法の選択肢
支払い方によっても、家計への負担は変わります。
一度にまとまった金額を用意しなくても、月々の負担に置き換えて始められる仕組みがあるためです。
医院が独自に設けている分割払いは金利がかからない設定が多く、治療期間に合わせて回数が決められます。
信販会社を通すデンタルローンは支払回数を長く取れる一方、金利や手数料が上乗せされます。
金額が大きい治療ほど手数料の総額も膨らみますので、月々の金額だけでなく最終的にいくら払うのかを確認しておきましょう。
支払いに不安がある場合は契約前に相談すれば、無理のない進め方を一緒に考えてもらえます。
複数の医院で見積もりを取る
最も確実な方法は、複数の医院で見積もりを取って比べることです。
同じ噛み合わせでも、提案される治療範囲や装置の選択によって総額が変わってくるためです。
2軒以上で相談を受け、同じ項目を質問して並べると、金額の差がどこから生まれているかが見えてきます。
診断された内容、提案された治療のルート、総額と内訳、期間の見通しを同じ形式で記録しておきます。
複数の医院で共通して指摘された点があれば、それは優先して対応すべき課題だと考えられます。
手間はかかりますが、数十万円から百万円規模の判断としては見合う時間の使い方だといえます。
治療後にかかる費用も見込んでおく
費用の見積もりを立てるとき、装置を外した時点で支払いが終わると考えてしまいがちです。
しかし矯正治療には歯を動かす期間のあとに、その位置を保つ保定の期間が続きます。
噛み合わせまで大きく動かした治療では、この保定の重要性がいっそう高まり、費用としても無視できない金額になります。
契約の段階で治療後の数年間まで含めて計画に入れておけば、あとから予算を組み直す必要がなくなります。
治療後に関わる3つの費用を確認していきましょう。
保定装置と保定期間
治療が終わったあとには、リテーナーと呼ばれる保定装置を使う期間が続きます。
動かし終えた歯は、それを支える骨や歯ぐきが新しい位置に慣れるまで元へ戻ろうとする性質があるためです。
保定装置の費用は1万円から6万円程度が目安で、治療費に含まれる場合と別途請求される場合に分かれます。
装置を外して最初の1年ほどは食事と歯磨き以外の時間に装着する指示が出ることが多く、その後は歯並びの安定を確認しながら段階的に減らしていきます。
保定にかかる期間は歯を動かした期間と同程度が一つの目安とされており、噛み合わせの治療であれば数年に及ぶ計算になります。
見積もりに含まれているかどうかで数万円の差が出ますので、必ず確認しておきましょう。
後戻りしたときの再治療
歯並びや噛み合わせが戻った場合の費用も、想定に入れておきたい項目です。
保定装置の使用が途切れると歯が動き、時間をかけて元の状態に近づいていくことがあるためです。
噛み合わせを大きく動かした治療ほど戻ろうとする力も強く働くため、保定の管理が結果を左右します。
わずかなずれであれば部分的な再矯正で対応できることもありますが、大きく戻った場合はあらためて検査を受けて計画を立て直す流れになります。
再治療の費用は新たに発生し、当初の見積もりには含まれていません。
保定装置を指示どおりに使い続けることが、そのまま将来の出費を防ぐ行動になります。
保定期間中の通院
保定の期間にも、通院の費用が発生する場合があります。
歯の位置が安定しているかを定期的に確認してもらう必要があるためです。
通院の間隔は、装置を外してから1か月後、3か月後、6か月後と徐々に空いていき、その後は年に1回程度へ移っていく流れが一般的です。
1回あたりの費用が発生する医院と、治療費に含まれている医院に分かれます。
矯正診療は検査、診断、治療の順に進み、経過に応じて再診断が行われることもありますので[1]、通院は経過を見てもらう機会そのものです。
保定期間が何年続き、その間の費用がどうなるのかを契約前に聞いておくと、総額の見通しが立てられます。
噛み合わせのマウスピース矯正の費用に関するよくある質問
Q:噛み合わせの矯正はいくらかかりますか?
A:マウスピース矯正で歯列全体を動かす場合、50万円から100万円程度が一つの目安になります。
前歯だけを整える部分矯正の価格帯とは別のものですので、10万円台という金額は当てはまりません。
検査料や調整料、保定装置が含まれるかどうかで総額は変わりますので、内訳を確認してください。
Q:マウスピースだけで噛み合わせは治りますか?
A:状態によって変わります。
歯を沈める動きや根元から起こす動きは装置が苦手とするため、ワイヤー矯正の併用が提案されることがあります[1]。
骨格にずれが大きい場合は、外科的手法を併用した外科矯正治療が行われます[1]。
Q:保険は使えますか?
A:原則として自由診療ですが、例外があります。
骨格性の不正が大きい顎変形症では、一部の病院で保険診療の対象になります[1]。
国が定める42の疾患に起因する不正咬合の矯正歯科治療にも保険が適用されますが、医療機関は限られます[1]。
Q:医療費控除の対象になりますか?
A:年齢や矯正の目的からみて必要と認められる場合は対象になります[2]。
容ぼうを美化するための費用は対象にならないと明記されているため[2]、目的をどう示せるかが分かれ目になります。
判断は最終的に税務署が行いますので、領収書と通院の記録は残しておきましょう。
まとめ
噛み合わせをマウスピース矯正で整える費用は、50万円から100万円程度が一つの目安になります。
前歯だけを整える部分矯正とは対象範囲が異なるため、10万円台という金額はこの治療には当てはまりません。
費用は、マウスピースだけで進むルート、ワイヤー矯正を併用するルート、外科手術を併用するルートの3つに分かれます。
骨格性の不正が大きい顎変形症では一部の病院で保険診療の対象となり、国が定める42の疾患に起因する不正咬合にも保険が適用されます[1]。
装置代のほかに精密検査・診断料、調整料、保定装置の費用が発生しますので、同じ項目をそろえて比べてください。
噛み合わせの改善という目的が示せる場合、医療費控除の対象と認められる可能性があります[2]。
自分がどのルートに当てはまるかは精密検査を受けて初めて分かりますので[1]、まずは検査を受けて費用の見通しを立てるところから始めてみてください。
参考文献
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「不正咬合の治療法の概要」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-06-002.html
(最終閲覧日:2026年9月2日/リンク生存を確認)
[2] 国税庁「No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1128.htm
(最終閲覧日:2026年9月2日/リンク生存を確認)