マウスピース矯正で滑舌が悪い?慣れるまでの期間と改善のコツ

マウスピース矯正を始めた途端に言葉がうまく出てこなくなり、この滑舌のままで仕事や日常の会話を乗り切れるのだろうかと不安を感じている方は少なくありません。
装着してすぐの時期に発音のしにくさを覚えるのはよくあることで、慣れるまでの期間はおよそ数日から1〜2週間ほどが目安とされています。
なかでも影響が出やすいのはサ行やタ行、ラ行といった、舌を前歯の裏側や上あごに当てることで音を作り出している種類の発音です。
これは口の中が新しい環境に順応していく過程で起こる自然な反応であり、多くの場合は時間の経過とともに気にならなくなっていきます。
この記事では、発音しにくくなる仕組みから、慣れるまでの目安、早く慣れるための具体的な工夫、そして仕事などの場面をどう乗り切るかまでを、順を追って整理していきます。
会話への不安から治療をためらっている方にも、すでに始めて困っている方にも、この時期を無理なく過ごすための手がかりとして役立てていただければと思います。
マウスピース矯正で滑舌が悪くなるのはなぜ?
装置をつけた初日から思うように言葉が出てこなくなり、自分の声の響きに驚いたという経験をされる方は多くいらっしゃいます。
なぜこうしたことが起こるのかという仕組みを理解しておけば、必要以上に不安を抱え込まずに済むようになります。
原因が分かっていれば、どのような対処をすれば早く慣れられるのかという見通しも自然と立てられるようになるでしょう。
ここではまず、マウスピースを装着することで滑舌に影響が出る理由を、順を追って整理していきます。
舌の位置と空気の通り道が変わる
発音しにくくなるもっとも大きな理由は、これまで無意識に行ってきた舌の動きが通用しなくなることにあります。
私たちは舌を細かく動かすことで音の違いを作り出しており、その多くは舌を前歯の裏側や上あごに接触させることによって発音されているためです。
ところがマウスピースが歯全体を覆うと、それまで舌が当たっていた場所の形や位置がわずかに変化してしまいます。
その結果、これまでと同じつもりで舌を動かしても、狙ったとおりの音が出せないという状態が生まれるわけです。
意識して丁寧に発音しようとしてもうまくいかないのは、舌がまだ新しい口の中の形を覚えきれていないためだといえます。
装置の厚みが影響する
もう一つの理由として挙げられるのが、マウスピースそのものが持っているわずかな厚みです。
非常に薄い装置とはいえ、歯の表面をすべて覆っている以上、口の中で舌が使える空間はその分だけ狭くなってしまうためです。
とりわけ前歯の裏側というのは、日本語の多くの音を作り出すうえで舌が触れる重要な場所にあたります。
その部分に厚みが加わることによって、舌と歯のすき間から抜けていく空気の量や向きまで変わってしまうことになります。
息の抜け方が変われば音の響き方も当然変化するため、こもったように聞こえたり、息が漏れたような音になったりするのです。
ワイヤー矯正より影響は小さい
ここで知っておきたいのが、ほかの矯正方法と比べたときにマウスピース矯正がどのような位置づけにあるのかという点です。
同じ矯正治療であっても、使用する装置の形や取りつける場所によって、発音への影響の出方には大きな差が生まれるためです。
表側のワイヤー矯正では頬や唇の内側に装置が当たる違和感が生じ、裏側矯正では舌が装置そのものに直接触れることになります。
とくに歯の裏側に装置をつける方法では舌の動きが大きく制限されるため、装着当初は発音しにくさがはっきりと表れやすいとされています。
これに対してマウスピースは表面に凹凸がほとんどなく、なめらかな素材で作られているため、こうした影響は比較的抑えられているといえるでしょう。
失敗のサインとは限らない
しゃべりにくさを強く感じると、治療そのものがうまくいっていないのではないかと考えて不安になってしまうかもしれません。
しかし、装着直後に生じる発音のしづらさは、口の中が新しい環境に慣れていくまでの自然な反応であることがほとんどです。
同じ時期に同じような戸惑いを経験している方は数多くいらっしゃり、その多くは時間の経過とともに解消していきます。
ただし、装置が浮いている感覚がある、どこかが強く当たる、痛みをともなうといった場合には、単なる慣れとは別の要因が関わっている可能性もあります。
そうした違和感がある場合の見分け方については後の章であらためて扱いますので、まずは多くが一時的なものだと知っておいてください。
発音しにくくなりやすい音
滑舌が悪くなったと感じているとき、実はすべての音が同じように影響を受けているわけではありません。
舌をどこにどのように当てて音を作るのかによって、装置の影響を受けやすい音とそうでない音がはっきり分かれてくるためです。
自分がどの音でつまずいているのかを把握しておけば、あとで紹介する練習に取り組む際にも的を絞りやすくなります。
ここでは、マウスピースを装着したときに影響が出やすい音を、種類ごとに順番に見ていきましょう。
サ行(息が漏れたような音になる)
まず多くの方が最初に苦戦するのが、さしすせそというサ行の音です。
この音は、舌と前歯付近にできたごく細いすき間から空気を絞り出すようにして作られているためです。
マウスピースの厚みによってその空気の通り道が変わってしまうと、息が漏れたような不明瞭な響きになりやすくなります。
自分としては丁寧に発音しているつもりでも、聞き手の耳には少し違った音として届いてしまうこともあるでしょう。
サ行は日本語の会話のなかに非常に頻繁に登場するため、しゃべりにくさをもっとも実感しやすい音だといえます。
タ行・ダ行(舌の当たる位置が変わる)
たちつてとというタ行と、それに近い動きで発音するダ行も、影響を受けやすい音のひとつです。
これらの音は、舌先を上の前歯の裏側あたりにしっかり当て、その接触を素早く離すことによって作り出されているためです。
装置に厚みがあると舌の当たる位置がわずかにずれてしまい、発音がもたついたような印象になってしまいます。
音がうまく切れないことで、言葉全体がゆっくりとした話し方に聞こえてしまうこともあります。
とはいえ舌の当て方を少し調整する感覚さえつかめれば、比較的早い段階で慣れやすい音でもあります。
ナ行(こもって聞こえる)
なにぬねのというナ行も、装着してすぐの時期には発音しづらいと感じることがあります。
この音は舌を上あご側にしっかり当てながら、同時に鼻から息を抜くという二つの動作によって作られているためです。
舌の位置がわずかにずれるだけで音が不明瞭になり、全体がこもったように聞こえてしまうことがあります。
自分の耳には普段どおりに聞こえていても、相手にはやや違った響きとして届いている場合も少なくありません。
こちらも舌の位置が定まってくるにつれて、自然と元の響きに近づいていくことがほとんどです。
ラ行(舌をはじく動きが制限される)
らりるれろというラ行は、装着直後にもっとも難しさを感じやすい音のひとつだといえます。
というのも、この音は舌を素早く上あごに弾くように動かす必要があり、その繊細な動きに装置が干渉してしまうためです。
舌の動きがぎこちなくなると、いわゆる舌ったらずな話し方に聞こえてしまいやすくなります。
とくに早口で話そうとするほど音がつぶれてしまい、言い直す場面が増えてしまうかもしれません。
意識して少しゆっくり発音するよう心がけるだけでも、ある程度は改善が期待できる音でもあります。
英語のS・Th・Lにも影響
日本語だけでなく、仕事や学習で英語を話す機会がある方にとっても、この影響は無視できないものになります。
英語ではSやTh、L、Tといった音を出す際に、舌を歯につけたり歯と歯の間に挟んだりする動作が必要になるためです。
これらは日本語以上に舌の細かな位置取りが求められるため、装着してすぐの時期はとくに苦労しやすい部分だといえます。
オンラインでの英会話や英語での商談など、話す機会が多い方ほど慣れるまでに時間がかかると感じるかもしれません。
こちらについても、装置がある状態での舌の位置を練習によって覚えていけば、少しずつ発音できるようになっていきます。
慣れるまでどれくらいかかる?
しゃべりにくさを抱えている方にとって、この状態がいつまで続くのかという点は何より切実な関心事でしょう。
終わりが見えないまま我慢を続けるのと、あと数日で楽になると分かっているのとでは、気持ちの持ちようがまったく違ってくるものです。
ここでは、慣れるまでの一般的な目安と、その期間に差が生まれる要因について整理していきます。
自分の場合はどのあたりに当てはまりそうかを考えながら、読み進めてみてください。
目安は数日〜1〜2週間
一般的に、マウスピースによる発音のしにくさは、数日から1〜2週間ほどで気にならなくなることが多いとされています。
舌や脳が新しい口の中の環境を学習し、装置がある状態での動かし方を覚えていくためです。
最初の数日がもっともつらく、そこを過ぎると日を追うごとに楽になっていくと感じる方が大半です。
1週間ほど経つころには日常会話で困る場面がぐっと減り、2週間もすれば装置の存在をほとんど意識しなくなることも珍しくありません。
つらい時期は思っているより短いと知っておくだけでも、最初の数日を乗り切りやすくなるはずです。
個人差が出る要因
とはいえ、慣れるまでの期間には人によって幅があり、目安どおりに進まないこともあります。
もともとの舌の使い方や口の中の広さには個人差があり、装置への適応の速さも一人ひとり違ってくるためです。
仕事で長時間話し続ける方の場合、発音のしにくさを自覚する場面が多く、慣れるまで時間がかかると感じやすい傾向があります。
反対に、話す機会が少ない生活を送っている方は、いつのまにか気にならなくなっていたということもあります。
周囲と比べて遅いと焦る必要はないので、自分のペースで慣れていけば十分だと考えてください。
1か月以上続く場合は要相談
一方で、明らかに長期間にわたって改善しない場合には、別の要因を疑ってみる必要があります。
1か月以上たっても強い発音のしにくさが残っている場合、装置の適合状態や治療計画に問題があるケースも考えられるためです。
マウスピースが浮いていて正しく収まっていない、装置が変形しているといった状況では、慣れの問題では解決しません。
そのまま我慢を続けても改善しないばかりか、治療の進行そのものに影響が及んでしまう可能性もあります。
期間が目安を大きく超えていると感じたら、遠慮せず担当医に状況を伝えて確認してもらいましょう。
新しいマウスピースに替えるたびに戻る?
最初の時期を乗り越えても、装置を交換するたびにまた話しにくくなるのではないかと心配される方もいらっしゃいます。
マウスピース矯正では1〜2週間ごとに新しい装置へ交換していくため、そのたびに同じつらさが繰り返されるのかは気になるところでしょう。
ここでは、交換時に起こる変化とその受け止め方について整理していきます。
交換直後の違和感は軽く済む
結論から言えば、最初ほどの負担が毎回繰り返されるわけではありません。
新しいマウスピースに交換した直後は、一枚ごとに歯を動かすための形がわずかに変わっており、口の中の当たり方も少しずつ違ってくるためです。
そのため、交換した日に少し話しにくさが戻ったように感じるという方は少なくありません。
ただし、その程度は最初に装着したときと比べればはるかに軽く、多くは1日から数日で落ち着いていきます。
舌はすでに装置がある状態での動かし方を覚えているため、わずかな形の違いには早く適応できるからです。
毎回強く戻るときは装着を見直す
回を重ねるごとに違和感は小さくなっていき、やがて交換したことにさえ気づきにくくなるという方もいらっしゃいます。
もし交換のたびに強い発音のしにくさが繰り返される場合は、装置がうまく収まっていない可能性も考えられます。
その際は装着の仕方を見直したうえで、改善しなければ通院時に相談してみるとよいでしょう。
早く慣れるための5つの工夫
慣れるまでの期間はただ待つしかないと思われがちですが、実は自分でできる工夫がいくつもあります。
舌に新しい環境での動かし方を覚えてもらうという観点から、意識的に取り組めることがあるためです。
無理のない範囲で日々の生活に取り入れれば、慣れるまでの期間を短くできる可能性もあります。
ここでは、今日から始められる具体的な工夫を五つ紹介していきます。
水をこまめに飲んで乾燥を防ぐ
まず取り組みたいのが、口の中を乾かさないよう水分をこまめにとることです。
口の中が乾いていると舌がスムーズに動かず、発音がこもりやすくなってしまうためです。
マウスピースを装着していると唾液の流れが妨げられ、普段より乾きを感じやすくなることもあります。
こまめに水を飲む習慣をつけておけば、舌の動きが保たれ、話しやすさにつながります。
なお装置をつけたまま飲めるのは基本的に水なので、その点は覚えておくとよいでしょう。
サ行・タ行・ラ行を短く練習する
苦手になりやすい音を意識して声に出してみることも、慣れを早める助けになります。
舌の当たる位置や動かし方を、装置がある状態で覚え直していく作業になるためです。
さしすせそ、たちつてと、らりるれろというように、1日に数回ゆっくり声に出してみましょう。
長時間の練習は必要なく、数十秒ずつでも毎日続けることのほうが効果につながります。
入浴中や通勤中など、人目を気にせず声を出せる時間を使うと取り入れやすいはずです。
音読して録音で確認する
もう一歩進んだ方法として、文章を声に出して読んでみるという練習があります。
単語だけの練習と違い、実際の会話に近い形で舌を連続して動かすことになるためです。
新聞や本の一段落を選び、少しゆっくりめに読み上げてみるとよいでしょう。
さらに効果的なのが、その様子をスマートフォンなどで録音して聞き返してみることです。
自分が思っているほど聞き取りにくくないと気づけることも多く、不安をやわらげる助けにもなります。
歌を口ずさむ
肩の力を抜いて取り組める方法として、好きな歌を口ずさむという工夫もあります。
メロディーに合わせて口を動かすうちに、自然と口の周りの筋肉がほぐれていくためです。
練習という意識を持たずに続けられるので、億劫にならず習慣にしやすいという利点があります。
歌詞のなかにはさまざまな音が含まれているため、幅広い発音を無理なく練習できることにもなります。
移動中や家事の合間など、日常の隙間時間に取り入れてみてはいかがでしょうか。
口周りの体操を取り入れる
口の周りの筋肉そのものを動かす体操を加えると、さらに効果が期待できます。
舌や唇を大きく動かすことで、発音に必要な筋肉を意識的に使えるようになるためです。
口を大きく開けて「あー」「いー」「うー」「べー」と発音する体操は、その代表的なものです。
一つひとつの動きをはっきり行うことがポイントで、短時間でも毎日続けることが大切になります。
歯みがきのあとなど決まった場面と結びつけておけば、忘れずに続けやすくなるでしょう。
仕事や人前で話すときの乗り切り方
慣れるまでの期間が短いとはいえ、その数日から2週間のあいだにも仕事や人と会う予定は待ってくれません。
会議やプレゼン、接客といった場面が控えていると、それだけで気持ちが重くなってしまう方も多いのではないでしょうか。
ここでは、慣れきっていない時期をどう乗り切るかという実践的な工夫を整理していきます。
少しの心構えと準備で、その場をぐっと過ごしやすくすることができます。
少しゆっくり話す
もっとも手軽で効果が高いのが、いつもより少しだけゆっくり話すことを意識するという方法です。
早口になるほど舌の動きが追いつかず、音がつぶれて聞き取りにくくなってしまうためです。
一語ずつ丁寧に発音するよう心がけるだけで、相手にとっての聞きやすさは大きく変わってきます。
ゆっくり話すことは落ち着いた印象を与えることにもつながり、かえって好意的に受け取られることもあります。
意識するだけで今日から実践できるので、まずはここから試してみるとよいでしょう。
大事な場面の前に軽く声を出しておく
重要な場面を控えているときは、その直前に少し声を出しておくという準備が役に立ちます。
しばらく話していない状態からいきなり話し始めると、舌の動きが鈍く感じられやすいためです。
移動中や控え室などで、苦手な音を含む言葉を軽く口にしてみるだけでも構いません。
実際に使う予定の言葉やあいさつを何度か口にしておくと、本番での言いにくさを減らせます。
ウォーミングアップをしておくという感覚で、少しだけ準備の時間を取ってみてください。
周囲に伝えておくのも一つの方法
信頼できる相手には、矯正を始めたばかりであることをあらかじめ伝えておくという選択肢もあります。
聞き取りにくさの理由が分かっていれば、相手も自然に受け止めてくれるためです。
自分としても、隠さなければならないという緊張から解放され、かえって話しやすくなることがあります。
矯正治療を受ける大人は増えているので、伝えたところで気にされることはほとんどありません。
もちろん伝えるかどうかは自由なので、話しやすい相手にだけ共有するという形でも構いません。
自分が思うほど相手は気にしていない
最後にお伝えしたいのが、聞き手の受け取り方についてです。
自分の耳には装置越しの声が直接響くため、実際以上に不自然に聞こえてしまうという事情があるためです。
実際に周囲へ確認してみると、まったく気づいていなかったという反応が返ってくることも少なくありません。
先ほど紹介した録音して聞き返す方法を試すと、思っていたより聞き取りやすいと気づけることもあります。
過度に意識しすぎず、いつもどおり話すことを心がけるほうが結果的に自然な会話につながるでしょう。
滑舌が戻らないときに考えられる原因
多くの方は数日から2週間ほどで慣れていきますが、なかにはなかなか改善しないという方もいらっしゃいます。
その場合、単なる慣れの問題ではなく、別の要因が関わっている可能性を考える必要があります。
ここでは、長引くときに考えられる原因を順に整理していきましょう。
思い当たる点があれば、次の通院を待たずに相談してみることをおすすめします。
装置が浮いている
まず確認したいのが、マウスピースが歯にきちんと収まっているかどうかという点です。
装置と歯の間にすき間があると、その分だけ口の中で余分な厚みが生じ、舌の動きを妨げてしまうためです。
浮いた状態では発音しにくさが続くだけでなく、歯に力が正しく伝わらず治療の進行にも影響が及びます。
装着したあとに鏡を見て、前歯だけでなく奥歯まで均等にはまっているかを確認してみましょう。
浮きが見られる場合は、それ自体が対処すべき問題なので、早めに相談することが望まれます。
装着の仕方が合っていない
装置そのものに問題がなくても、はめ方が浅いために違和感が続いているというケースもあります。
前歯だけを押し込んで装着したつもりになっていると、奥歯側が浮いたままになってしまうことがあるためです。
装着後にシリコン製の補助具を噛んで密着させる工程を省いていると、こうした状態が起こりやすくなります。
毎回しっかり奥まで収めることを意識するだけで、違和感がやわらぐこともあります。
正しい装着の方法が分からない場合は、通院時にあらためて確認しておくとよいでしょう。
装置の変形や破損
長く使っているうちに、装置そのものの形が変わってしまっている可能性もあります。
薄い樹脂でできているため、無理な着脱や熱の影響によって歪みが生じることがあるためです。
一部が変形していると口の中での当たり方が変わり、舌の動きを妨げてしまうことになります。
ひび割れや欠けがある場合も、その部分が舌に当たって発音に影響することがあります。
装置の状態を目で確かめ、気になる点があれば診察時に見てもらいましょう。
舌の癖が関係していることも
装置とは別に、もともとの舌の使い方が影響している場合もあります。
普段から舌を前歯に押し当てる癖がある方では、装置が加わることでその動きがより制限されるためです。
こうした癖は無意識に行われていることが多く、自分では気づきにくいものです。
矯正治療では、必要に応じて舌の使い方そのものを見直す指導が行われることもあります。
長く改善しない場合には、こうした背景がないかも含めて相談してみるとよいでしょう。
我慢し続けないことが大切
どの原因であっても、共通して言えるのは自分だけで抱え込まないほうがよいということです。
慣れの問題だと思い込んで我慢を続けた結果、装置の不具合に気づくのが遅れてしまうこともあるためです。
発音のしにくさは治療の進み具合を知らせるサインになっている場合もあります。
目安とされる期間を大きく過ぎているなら、それは相談してよい十分な理由になります。
早い段階であれば装置の調整など軽い対応で済むことも多いので、気づいた時点で連絡してみてください。
相談すべきタイミング
発音のしにくさに悩んでいるとき、これは様子を見るべきなのか、それとも連絡したほうがよいのかという判断は意外と難しいものです。
多くは時間とともに解消していく一方で、放っておくと治療そのものに影響が及ぶケースも確かに存在するためです。
ここでは、歯科医院へ相談したほうがよい場面を具体的に整理していきます。
判断の目安を持っておけば、不必要に不安を抱えることも、必要な対応を先延ばしにすることも避けられます。
1か月以上経っても改善しない
まず目安になるのが、しゃべりにくさが始まってからどれくらい経過しているかという点です。
慣れるまでの期間はおよそ数日から1〜2週間とされているため、それを大きく超えている場合は別の要因を疑う必要があるからです。
1か月以上たっても強い発音のしにくさが残っているようであれば、装置の適合状態や治療計画を確認してもらったほうがよいでしょう。
そのまま我慢を続けても、原因が慣れ以外にある場合は自然に改善することはありません。
期間が目安を超えていること自体が、相談してよい十分な理由になると考えてください。
痛みをともなう場合
発音のしにくさと同時に痛みを感じている場合には、経過を待たずに連絡することが望まれます。
矯正では歯が動く際にある程度の痛みが生じますが、装置が特定の場所に強く当たっている痛みは性質が異なるためです。
装置の縁が舌や粘膜に当たって傷ができていると、その痛みから舌の動きが制限され、話しにくさにつながることもあります。
そのまま使い続ければ傷が広がり、日常生活の負担がさらに大きくなってしまいます。
我慢が必要な痛みかどうかは自分では判断できないので、早めに診てもらうようにしましょう。
装置が合っていない感覚があるとき
装着したときに何かおかしいと感じる場合も、相談すべき場面のひとつです。
浮いている、収まりが悪い、以前より外しにくいといった感覚は、装置の不具合を示していることがあるためです。
こうした状態では発音への影響が続くだけでなく、歯に力が正しく伝わらず治療の進行そのものが遅れてしまいます。
装置の変形や破損が原因であれば、作り直しが必要になることもあります。
違和感の内容をできるだけ具体的に伝えると、原因を特定してもらいやすくなります。
相談するときに伝えたいこと
実際に相談する際には、いくつかの情報を整理しておくと話が早く進みます。
いつから発音しにくさが始まったのか、どの音がとくに言いにくいのかを伝えられると、状況を把握してもらいやすいためです。
装置を交換したタイミングと重なっているかどうかも、原因を探るうえで手がかりになります。
痛みや浮きなど、ほかに気づいている点があればあわせて伝えておきましょう。
日常のなかで気づいたことをメモしておくと、通院時に伝え忘れることも防げます。
矯正が終われば滑舌はどうなる?
いま感じているしゃべりにくさが、治療を終えたあとも続くのではないかと心配される方もいらっしゃいます。
数年にわたる治療になるだけに、その後の見通しを知っておきたいと考えるのは自然なことです。
ここでは、装置を外したあとに滑舌がどうなるのかを整理していきましょう。
装置による影響はなくなる
結論から言えば、装置による影響については心配しなくて大丈夫です。
マウスピースによる発音のしにくさは、あくまで口の中に装置があることによって生じているものだからです。
そのため、歯を動かす工程が終わって装置を外せば、その影響そのものはなくなります。
長く装着していたぶん、外した直後は逆に少し違和感を覚えるという方もいますが、これもすぐに慣れていきます。
歯並びが整って話しやすくなることも
さらに、歯並びが整うことによって発音がしやすくなるという場合もあります。
前歯にすき間がある状態では息が漏れて発音しにくいことがあり、それが閉じることで改善が期待できるためです。
噛み合わせが整うことで舌の動かし方が安定し、以前より話しやすくなったと感じる方もいらっしゃいます。
保定装置の期間は多少の違和感が残る
ただし、治療を終えたあとには歯並びを保つための保定装置を使う期間が続きます。
このリテーナーも口の中に入れる装置であるため、装着している間は多少の違和感を覚えることがあります。
とはいえ、就寝時のみの装着へ移行していけば、日中の会話に影響することはほとんどなくなります。
いま感じているしゃべりにくさは治療の過程で生じる一時的なものなので、その先にある変化を思い描きながら乗り切っていきましょう。
マウスピース矯正の滑舌に関するよくある質問
Q:マウスピース矯正で滑舌はどれくらい悪くなりますか?
A:影響が出やすいのはサ行やタ行、ナ行、ラ行といった、舌を前歯の裏側や上あごに当てて発音する音です。
装置の厚みによって舌の位置や空気の通り道が変わるため、息が漏れたような音になったり、もたついて聞こえたりすることがあります。
ただし、ワイヤー矯正、とくに歯の裏側に装置をつける方法と比べると、影響は比較的小さいとされています。
Q:慣れるまでどれくらいかかりますか?
A:一般的には数日から1〜2週間ほどで気にならなくなることが多いとされています。
舌や脳が装置のある状態での動かし方を覚えていくため、最初の数日を過ぎれば日を追うごとに楽になっていきます。
1か月以上たっても強い発音のしにくさが続く場合は、装置の適合状態を確認してもらうことをおすすめします。
Q:仕事で話す機会が多いのですが大丈夫でしょうか?
A:いつもより少しゆっくり話すことを意識するだけで、相手にとっての聞き取りやすさは大きく変わってきます。
大事な場面の前に苦手な音を含む言葉を軽く声に出しておくと、本番での言いにくさを減らせます。
自分が思っているほど周囲は気にしていないことも多いので、過度に意識せず普段どおり話すことを心がけてみてください。
Q:ずっと治らない場合はどうすればいいですか?
A:慣れの問題だと思い込んで我慢を続けず、担当の歯科医院へ相談することが大切です。
装置が浮いている、装着の仕方が浅い、変形しているといった原因が隠れていることもあるためです。
いつから続いているのか、どの音が言いにくいのかを具体的に伝えると、原因を特定してもらいやすくなります。
まとめ
マウスピース矯正で滑舌が悪くなるのは、装置の厚みによって舌の位置や空気の通り道が変わることが主な理由です。
とくに影響が出やすいのはサ行やタ行、ナ行、ラ行といった、舌を前歯の裏側や上あごに当てて発音する音になります。
慣れるまでの期間は数日から1〜2週間ほどが目安とされ、多くの場合は時間とともに気にならなくなっていきます。
早く慣れるためには、水分をとって口の乾燥を防ぎ、苦手な音を短く練習したり音読を取り入れたりすることが役に立ちます。
仕事や人前で話す場面では、少しゆっくり話すことを意識し、大事な場面の前に軽く声を出しておくと乗り切りやすくなります。
1か月以上改善しない場合や痛みをともなう場合は、装置の浮きや変形など別の原因が隠れている可能性があるため、早めに相談しましょう。
装置を外せばこの影響はなくなり、歯並びが整うことでかえって話しやすくなることもありますので、いまの時期を前向きに乗り切っていってください。
参考文献
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「不正咬合の治療法の概要」(最終閲覧日:2026年7月24日)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-06-002.html
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯・口腔の健康」(最終閲覧日:2026年7月24日)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth.html
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯科健診(検診)」(最終閲覧日:2026年7月24日)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/teeth/yh-039.html
免責事項
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療アドバイスではありません。治療に関しては必ず歯科医師にご相談ください。
※慣れるまでの期間や発音への影響の出方には個人差があります。
※装置の装着方法や調整については、担当の歯科医師の指示に従ってください。