差し歯があってもマウスピース矯正はできる?前歯の注意点

前歯に差し歯があると、マウスピース矯正は受けられないのではと不安になっていませんか?

差し歯は自分の歯根が残った状態に被せ物をしたものなので、矯正の力を加えれば歯根ごと動かすことができます

ただし装置を固定するアタッチメントの接着に工夫が必要な場合があり、矯正後に差し歯を作り直すことになるケースも少なくありません

この記事では差し歯が動く仕組み、ブリッジやインプラントとの違い、作り直しにかかる費用の考え方、差し歯と矯正のどちらを先にすべきかまで整理しますので、前歯の被せ物を理由にためらっている方はぜひ参考にしてください。

前歯に差し歯があってもマウスピース矯正はできる?

歯並びを整えたいと思っても、前歯に差し歯があることで一歩踏み出せずにいる方は少なくありません

人工の歯が入っているのだから動かせないのではないか、と考えてしまうのは自然な感覚です。

結論からお伝えすると、差し歯があってもマウスピース矯正を受けられるケースは多くあります

差し歯は自分の歯根が残っている状態に被せ物をしたものであり、力を加えれば歯根ごと動かせるためです。

ただし本数や位置、歯根の状態によっては、計画に制約が生じる場合もあります。

自分のケースがどうなるかは検査を受けて初めて分かるため、あきらめる前に相談してみる価値があります。

ここではまず、差し歯と矯正の関係を4つの視点から整理していきます。

差し歯は歯根が残っているため動かせる

差し歯が動かせるかどうかは、その構造を知ると理解しやすくなります

差し歯は歯の見える部分を人工物で補ったもので、顎の骨に埋まっている歯根はご自身のものが残っているためです。

矯正で歯を動かすときに力が伝わるのは、この歯根と、それを支えている周囲の組織です。

被せ物の部分が人工であっても、土台となる歯根が健康であれば通常の歯と同じように動いていきます。

見た目には人工の歯に見えても、実際には自分の歯を動かしているという構造になります。

差し歯そのものが矯正の妨げになるわけではないという点を、まず知っておいてください。

動かせるかどうかは歯根の有無で決まる

判断の基準になるのは、素材でも見た目でもありません

矯正の力が作用するのは歯根と周囲の組織であり、そこが存在するかどうかで動かせるかが決まるためです。

歯根が残っている差し歯や被せ物であれば、動かすことができます。

一方で歯根そのものが失われている場合、人工物だけを動かすという方法は取れません。

自分の口の中に入っているものが、歯根の上に乗っているのか、それとは別の仕組みなのかが分かれ目になります。

この一本の軸で整理すると、次の章で扱う分類も理解しやすくなります。

差し歯の本数によっては計画に制約が出る

可能かどうかと、思いどおりに進むかどうかは別の問題です。

マウスピース矯正では歯の表面にアタッチメントという突起を付けて力を伝えますが、差し歯の表面は天然歯と素材が異なるためです。

接着に工夫が必要な場合があり、装着できる位置が限られることも考えられます。

差し歯が数本続いている場合、必要な位置に突起を配置できず、動かし方に制約が生じる可能性があります。

前歯の広い範囲に被せ物が入っている方は、この点が計画に影響してくる場面といえます。

本数と位置によって難易度が変わるという前提で、相談に臨むとよいでしょう。

最終的な可否は検査で判断される

自分の状況がどうなるかは、診てもらわなければ分かりません

歯根の長さや状態、周囲の組織の健康度、差し歯の内部の状況といった要素は、外からは確認できないためです。

レントゲン撮影によって、歯根の中に入っている土台の形状や、根の先端の状態が確認されます。

見た目には問題がなくても、内部に炎症が残っているケースが見つかることもあります。

矯正治療は一部の例外を除いて公的医療保険の対象外である自由診療にあたり、方針は医療機関ごとに異なります[1]。

判断材料を得るという目的だけでも、まず相談してみるところから始めてみてください。

差し歯・被せ物・ブリッジ・インプラントの違い

自分の口の中に入っているものが何なのか、正確に把握できていない方は意外に多いものです。

治療を受けたのが何年も前であれば、名称まで覚えていないのも無理はありません。

これらは見た目が似ていても構造がまったく異なり、矯正での扱いも変わってきます

違いを生んでいるのは、歯根が残っているかどうかと、複数の歯が連結されているかどうかの2点です。

自分がどれに当てはまるかを知っておけば、相談したときの理解も深まります。

ここでは4つの状態を、順に整理していきます。

差し歯(被せ物)とは

差し歯は、歯の見える部分を人工物で覆った状態を指します。

むし歯が大きく進行した場合や、神経を取る治療を行った場合に、残った歯を保護する目的で用いられるためです。

歯根の中に土台を立て、その上に被せ物を装着するという構造になっています。

前歯では見た目が重視されるため、白い素材が選ばれることが多くなります。

保険が適用される素材と、自由診療で選ぶ素材があり、色調や耐久性に違いがあります[2]。

いずれの場合も歯根は自分のものが残っているため、矯正で動かすことができます。

ブリッジは連結されているため個別に動かせない

失った歯を補う方法のひとつに、ブリッジがあります

抜けた部分の両隣の歯を支えにして、複数の歯を連結した被せ物を装着する方法だからです。

3本つながった形が一般的で、真ん中の部分には歯根がありません。

連結されているため、それぞれの歯を別々の方向へ動かすことができないという制約が生じます。

矯正の計画によっては、いったんブリッジを外して治療を進め、終了後に作り直すという方法がとられることもあります。

自分の被せ物が単体か連結かは、鏡で見ても分かりにくいため確認が必要です。

インプラントは矯正では動かせない

人工歯根を用いる方法についても、扱いが異なります

インプラントは顎の骨に埋め込んだ人工歯根が骨と直接結合しており、矯正の力では動かないためです。

天然の歯は歯根膜という組織を介して支えられており、この組織があることで移動が可能になります[3]。

インプラントにはその組織がないため、力を加えても位置は変わりません。

動かないという性質を逆に利用し、他の歯を動かすための固定源として活用される場合もあります。

インプラントがあるからといって矯正をあきらめる必要はなく、計画の立て方が変わってくると考えてください。

自分の口の中がどれか分からない場合

名称が分からなくても、心配する必要はありません

歯科医院で口の中を診てレントゲンを撮れば、どの歯にどんな処置がされているかはすぐに分かるためです。

治療を受けた時期や医療機関を覚えていれば、記録を照会してもらえる場合もあります。

前歯が何本つながっているか、鏡で見て境目を数えてみるという確認方法もあります。

過去の治療の資料が手元にあれば、カウンセリングに持参すると話が早く進みます。

分からないまま相談しても問題ないため、そこで足を止めないでください。

差し歯があるときに知っておきたい5つの注意点

矯正を受けられると分かっても、通常とまったく同じように進むわけではありません

始めてから「そんな話は聞いていなかった」と感じることのないよう、事前に把握しておきたい点があります。

注意点は装置の固定に関わるもの、歯そのものの状態に関わるもの、そして見た目に関わるものに分かれます

いずれもカウンセリングの段階で確認できる内容であり、質問すれば説明を受けられます。

事前に知っておけば、契約前に必要な情報をそろえたうえで判断できます。

ここでは差し歯がある場合の5つの注意点を、順に見ていきます。

アタッチメントの接着に工夫が必要な場合がある

最初に確認しておきたいのは、装置を固定するための突起に関する点です。

マウスピース矯正では歯の表面にアタッチメントを接着して力を伝えますが、差し歯の表面は天然歯と素材が異なるためです。

天然の歯の表面に接着する場合と、人工の素材に接着する場合では、必要な処置が変わってきます。

セラミックやジルコニアといった素材では、表面に処理を施したうえで装着するという対応がとられることもあります。

一方で、差し歯にはアタッチメントを装着せず、位置を調整して計画を立てるという方針をとる医療機関もあります。

対応の仕方は素材と医療機関の方針によって変わるため、カウンセリングで直接確認しておいてください。

神経を取った歯は動きが変わる可能性がある

差し歯の内部の状態も、押さえておきたい要素です。

差し歯を入れる前に神経を取る治療を受けている場合、その歯は天然の歯とは異なる性質を持つためです。

神経を取った歯は内部に血流が通っておらず、外からの刺激に対する反応も変わってきます。

こうした歯では、矯正での動きが通常より緩やかになる可能性が指摘されています。

痛みを感じにくいため、力が強くかかっていても自覚しにくいという側面もあります。

自分の差し歯が神経を取った歯かどうかを確認し、担当の歯科医師に伝えておきましょう。

歯根や周囲の組織の状態が前提になる

治療を進められるかどうかは、見えない部分の状態にかかっています

矯正の力は歯根と、それを支える周囲の組織に作用するため、そこが健康であることが前提になるためです。

歯を支える骨や歯周組織に炎症がある状態では、力を加えることで症状が進む可能性があります[3]。

歯根の先端に炎症が残っている場合は、そちらの治療を先に行う必要が生じることもあります。

歯根が短くなっている場合や、根にひびが入っている場合は、動かすこと自体が難しくなります。

レントゲン撮影で内部の状態を確認してもらうところから始めてください。

差し歯の素材によって対応が変わる

被せ物に使われている素材も、判断に関わってきます

素材ごとに硬さや表面の性質が異なり、接着のしやすさや欠けやすさに差があるためです。

保険が適用される素材と、自由診療で選ぶ素材では、性質が変わってきます[2]。

矯正中に装置の着脱を繰り返すなかで、被せ物の縁に力がかかる場面も生じます。

古い差し歯の場合は接着が弱まっていることもあり、途中で外れる可能性も考えられます。

自分の差し歯がどの素材でいつ入れたものかを把握しておくと、事前の相談に役立ちます。

矯正後に色や形が浮いて見えることがある

見た目に関する注意点も、前歯では特に重要になります

歯並びが変わると差し歯の位置や向きも変わり、周囲の歯との関係が今までと違って見えるためです。

これまで目立たなかった色の差が、位置が変わることで気になり始めることも考えられます。

差し歯を作った当時の歯並びに合わせて形が調整されている場合、新しい位置では不自然に見えることもあります。

前歯は人目に触れる部位のため、こうした変化が仕上がりの満足度に直結します。

作り直しを前提に計画を立てるかどうかを、最初の段階で相談しておくと安心です。

矯正後に差し歯を作り直す必要はある?

差し歯を作ったばかりの方にとっては、最も気になる部分ではないでしょうか

せっかく費用をかけて入れたものを、また作り直すことになるのかという不安は当然のものです。

前歯の差し歯については、矯正後に作り直すケースが多いという見方が一般的です。

歯並びが変わることで、既存の差し歯が新しい状態に合わなくなるためです。

作り直しにかかる費用は矯正費用とは別に発生するため、総額の見通しに影響します。

必要になる理由と費用の構造を知っておけば、計画を立てやすくなります。

ここでは作り直しに関する4つの論点を整理していきます。

前歯の差し歯は作り直すケースが多い

まず前提として、前歯では作り直しの可能性が高くなります

前歯は正面から見える位置にあり、わずかな色や形の違いも印象に影響するためです。

奥歯であれば多少の不一致が気にならなくても、前歯では同じようにはいきません。

矯正によって周囲の歯が動けば、差し歯だけが以前の状態のまま取り残される形になります。

きれいに並んだのに一本だけ色が違って見える、という結果は避けたいところです。

仕上がりの満足度を重視するなら、作り直しを織り込んで考えておくほうが現実的です。

作り直しが必要になる3つの理由

なぜ作り直すことになるのか、理由を知っておくと納得しやすくなります

理由は色調のずれ、形のずれ、そして噛み合わせの変化の3つに整理できるためです。

色については、周囲の歯との関係が変わることで差が目立ちやすくなります。

形については、以前の歯並びに合わせて作られているため、新しい位置では違和感が生じることがあります。

噛み合わせについては、上下の当たり方が変われば被せ物の高さや角度も合わなくなります。

3つのうち一つでも該当すれば、作り直しが検討される流れになります。

作り直しの費用は矯正費用に含まれない

金銭面での構造も、明確にしておきたい点です。

矯正治療と被せ物の治療は別の処置であり、それぞれに費用が発生するためです。

矯正の見積もりに提示された金額には、差し歯の作り直し費用は含まれていないのが一般的です。

差し歯を作り直す際は、素材の選び方によって費用が大きく変わってきます。

保険が適用される素材を選ぶか、自由診療の素材を選ぶかで負担は異なります[2]。

矯正費用だけを見て計画を立てると、後から想定外の支出が生じてしまいます。

総額の見通しを契約前に確認する

準備としてできるのは、事前に全体像を把握しておくことです。

作り直しの可能性がどの程度あるか、何本が対象になりそうかは、検査の段階である程度見通せるためです。

カウンセリングで「矯正後に差し歯の作り直しは必要になりそうか」と直接尋ねてみてください。

作り直しを前提とする場合、その費用の目安もあわせて確認しておくと計画が立てやすくなります。

矯正と補綴の両方を同じ医療機関で受けられるかどうかも、確認しておきたい項目です。

総額を把握したうえで判断すれば、途中で予定が狂う事態を避けられます。

差し歯と矯正はどちらを先にすべき?

順序を決めるだけで、支出が大きく変わってくる場面があります

作り直しを避けられるかどうかは、どちらを先に進めるかにかかっているためです。

原則として、これから差し歯を作る予定があるなら矯正を先に行うほうが無駄が生じません。

歯の位置が確定してから被せ物を作れば、その位置に合わせた色と形で仕上げられるからです。

すでに差し歯が入っている場合は、状態によって進め方が変わってきます。

順序の考え方を知っておけば、費用も期間も抑えられる可能性があります。

ここでは4つのパターンに分けて整理していきます。

これから差し歯を作る予定がある場合

前歯の治療を控えている方は、順序を決める前に相談してください

矯正で歯の位置が変わったあとに被せ物を作れば、最終的な歯並びに合わせて色も形も調整できるためです。

先に差し歯を作ってしまうと、矯正後に位置が変わって合わなくなり、作り直しが必要になる可能性があります。

同じ費用を二度支払うことになれば、負担は大きく膨らんでしまいます。

むし歯の進行が早く、治療を先延ばしにできない場合は別の判断になることもあります。

矯正を検討していることを伝えたうえで、治療の順序を相談してみてください。

すでに差し歯が入っている場合

現時点で差し歯が入っている方は、その状態を確認するところから始まります

差し歯の状態が良好であれば、そのまま矯正を進められる場合があるためです。

矯正後に噛み合わせや見た目に問題がなければ、作り直さずに使い続けるという選択もできます。

一方で差し歯が古くなっている、内部に問題があるという場合は、先に処置が必要になることもあります。

矯正中に差し歯が外れたり欠けたりすれば、治療の途中で対応することになります。

まずは現状を診てもらい、そのまま進められるかどうかを確認しておきましょう。

仮歯で治療を進める方法

差し歯の状態に不安がある場合、仮歯を使うという方法もあります

最終的な被せ物を入れる前に仮の歯で過ごすことで、矯正の進行に合わせて調整できるためです。

矯正中に歯の位置が変わっても、仮歯であれば形を修正しながら対応していけます。

治療が完了して位置が確定した段階で、最終的な被せ物を作るという流れになります。

仮歯は本来の被せ物より強度が低く、見た目も同等ではない点は理解しておく必要があります。

長期にわたる矯正期間中の見た目をどう考えるかも含めて、相談してみてください。

順序を誤ると費用が二重にかかる

順序の判断が金銭面に直結するという点は、繰り返し確認しておきたいところです。

矯正の直前に自由診療の被せ物を作り、矯正後にまた作り直すことになれば、その費用は二度分かかるためです。

前歯の被せ物は素材によって費用に幅があり、複数本となれば負担も大きくなります。

「矯正を考えている」と一言伝えていれば避けられた支出、という事態は珍しくありません。

歯科医院で治療を受ける際は、将来的な矯正の希望も含めて伝えておいてください。

先の計画を共有しておくことが、結果として費用を抑えることにつながります。

ブリッジやインプラントがある場合の進め方

差し歯以外の治療を受けている方も、進め方を知っておきたいところです。

ブリッジやインプラントは差し歯とは構造が異なり、矯正での扱いも変わってくるためです。

いずれの場合も矯正が不可能になるわけではなく、計画の立て方が変わると考えてください。

制約が生じる部分と、逆に活用できる部分の両方があります。

自分の状況に近いケースを知っておけば、相談時の理解も深まります。

ここでは4つの状況を、順に見ていきます。

ブリッジは外して作り直す場合がある

連結された被せ物が入っている場合、対応が分かれます

ブリッジは複数の歯がつながった構造のため、それぞれを別の方向へ動かすことができないためです。

動かしたい歯がブリッジに含まれている場合、いったん外して個別に動かすという方法がとられます。

外したあとは仮歯で過ごし、矯正が完了してから新しいブリッジを作る流れになります。

ブリッジの土台となっている歯の状態によっては、別の方法が検討されることもあります。

作り直しの費用も含めた見通しを、契約前に確認しておいてください。

インプラントは固定源として活用できることがある

人工歯根が入っている場合、意外な利点が生まれることもあります

インプラントは骨と結合していて動かないため、他の歯を動かすための支点として使える場合があるためです。

矯正では、動かしたい歯と、その反作用を受け止める歯を分けて計画を立てます。

動かない支点があることで、狙った歯を効率よく移動させられるケースも考えられます。

奥歯にインプラントがあり、動かしたいのが前歯という場合は、この関係が生きる場面といえます。

インプラントがあることを理由にあきらめず、まず相談してみてください。

インプラントの位置が制約になる場合

一方で、位置によっては計画の妨げになることもあります

インプラントは動かせないため、その位置を前提として周囲の歯を並べる必要があるためです。

理想的な歯並びを実現するうえで、インプラントの位置が合わないという状況も起こり得ます。

その場合は、達成できる範囲で計画を立てるか、別の方法を検討することになります。

インプラントを撤去するという判断は、身体への負担が大きいため簡単には選べません。

どこまで整えられるかを事前に確認したうえで、納得して進めることが大切です。

部分矯正で対応できるケース

治療範囲を限定するという選択肢もあります

動かしたい歯とインプラントやブリッジの位置が離れていれば、影響を受けずに進められる場合があるためです。

奥歯にインプラントがあり、気になるのが前歯の並びという場合が該当します。

前歯だけを動かす部分矯正であれば、奥歯の状態を大きく変える必要がありません。

費用と期間を抑えられるという利点もあり、条件が合えば現実的な選択肢になります。

部分矯正で対応できるかどうかは検査によって判断されるため、相談時に希望を伝えてみましょう。

差し歯がある人が矯正前に確認したいこと

相談に行く前に準備しておけば、限られた時間で必要な情報を引き出せます

差し歯がある場合は通常より確認すべき項目が多く、聞き漏らすと後から想定外の事態が生じかねません

確認したいのは、口の中の健康状態、差し歯の内部の状況、医療機関の対応範囲、そして見積もりの内訳の4点です。

いずれもカウンセリングの場で質問できる内容であり、遠慮する必要はありません。

事前に項目を書き出しておけば、緊張していても抜け漏れなく聞けます。

納得したうえで進めるための準備として、取り入れてみてください。

ここでは矯正前に確認したい4つのポイントを見ていきます。

むし歯や歯周組織の状態をまず整える

矯正を始める前提として、口の中が健康であることが求められます

歯を支える組織に炎症がある状態で力を加えると、症状が進んでしまう可能性があるためです[3]。

差し歯の周囲は被せ物と歯の境目に汚れがたまりやすく、トラブルが起きやすい部位でもあります。

被せ物の内部でむし歯が進行していても、外からは見えないという難しさもあります。

矯正中は装置を長時間装着するため、清掃が行き届きにくい環境が続きます[4]。

治療を始める前に一度口の中を整えておくことが、計画どおり進めるための土台になります。

差し歯の内部の状態を確認してもらう

見えない部分の状況を把握することも欠かせません

歯根の長さ、土台の形状、根の先端の状態といった要素は、レントゲン撮影によって初めて確認できるためです。

歯根が短くなっている場合や、根の先に炎症が残っている場合は、先に処置が必要になることがあります。

被せ物の接着が弱まっていれば、矯正中に外れる可能性も考えられます。

古い差し歯の場合は、この機会にあわせて確認しておくと安心です。

内部の状態が分かれば、どこまで動かせるかという見通しも具体的になります。

補綴と矯正の両方に対応できるか確認する

医療機関の体制についても、確認しておきたい項目です。

矯正と被せ物の治療は別の分野にあたり、対応できる範囲が医療機関によって異なるためです。

矯正のみを扱う医療機関では、差し歯の作り直しは別の歯科医院で受けることになります。

両方に対応している医療機関であれば、治療の流れを一貫して管理してもらえます。

複数の医療機関にまたがる場合は、情報の共有がどう行われるかも確認しておきたい点です。

自分の状況にとってどちらが進めやすいかを考えたうえで選んでみてください。

見積もりに含まれる範囲を確かめる

金額の内訳を把握することは、判断の土台になります

自由診療では医療機関が料金を独自に設定でき、含まれる項目にも違いがあるためです[1]。

精密検査料、通院ごとの調整料、治療後の保定装置の費用が確認の対象になります。

差し歯の作り直しが必要になった場合の費用が含まれるかどうかも、必ず確かめてください。

途中で計画の変更が生じた場合の扱いについても、あわせて聞いておきたいところです。

書面で受け取って持ち帰り、落ち着いて比較したうえで判断して構いません。

差し歯があるとマウスピース矯正が難しいケース

ここまで進められる前提で書いてきましたが、条件によっては難しい場合もあります

期待だけを持って相談に行き、その場で断られると落胆も大きくなってしまいますよね。

難しくなる要因は、歯根の状態、被せ物の範囲、そして口の中全体の健康度に分かれます

該当する可能性がある場合でも、別の方法が提案されることも多くあります。

あらかじめ知っておけば、どんな説明を受けても落ち着いて受け止められます。

まず歯根そのものに問題がある場合は、矯正の力を加えることが難しくなります。

歯周組織の炎症によって歯を支える骨が減っている場合、力を加えると歯が動揺してしまう可能性があります[3]。

歯根が短くなっている場合や、根にひびが入っている場合も、動かすことで状態が悪化する恐れがあります。

こうした場合は、まず歯そのものを守る治療が優先されることになります。

次に、前歯の広い範囲に被せ物が入っているケースも難易度が上がります。

アタッチメントを配置できる位置が限られ、必要な力を狙った方向へ伝えにくくなるためです。

上の前歯6本すべてが被せ物という状態では、計画の自由度が下がることも考えられます。

この場合はワイヤー矯正など、別の方法が提案されることもあります。

ブリッジが複数入っている場合も、動かせる範囲に制約が生じます。

連結された部分を個別に動かせないため、外して作り直す前提での計画になることが多くなります。

作り直しの費用と期間を含めると、負担が想定を超えてしまう場合もあります。

さらに、口の中全体にむし歯や歯周組織のトラブルが広がっている場合は、そちらの治療が先になります[4]。

矯正を始めるまでに時間がかかることもありますが、土台を整えることが結果として安全な進行につながります。

いずれのケースでも、難しいと言われたからといって道が閉ざされるわけではありません。

治療範囲を限定する、別の装置を使う、先に補綴を整えるといった選択肢が残されています。

一つの医療機関の判断だけで結論を出さず、必要であれば他の意見を聞いてみるという方法もあります。

矯正は自由診療にあたり、方針は医療機関によって異なるため、複数の説明を比べる価値があります[1]。

前歯の差し歯とマウスピース矯正に関するよくある質問

Q1. 差し歯があってもマウスピース矯正はできますか?

差し歯は自分の歯根が残った状態のため、歯根ごと動かすことができます

ただし本数や位置、歯根の状態によっては計画に制約が生じる場合があります。

最終的な可否は検査を受けたうえで判断されます。

Q2. 差し歯にアタッチメントは付きますか?

差し歯の表面は天然歯と素材が異なるため、接着に工夫が必要になる場合があります

表面処理を行って装着する方針の医療機関もあれば、差し歯には装着せず位置を調整する方針の医療機関もあります。

対応は素材と方針によって変わるため、カウンセリングで確認してください。

Q3. 矯正後に差し歯は作り直しになりますか?

前歯の差し歯は作り直すケースが多いとされています

歯並びが変わることで色や形、噛み合わせが合わなくなるためです。

作り直しの費用は矯正費用に含まれないのが一般的なため、総額を確認しておきましょう。

Q4. 差し歯と矯正はどちらを先にすべきですか?

これから差し歯を作る予定があるなら、矯正を先に行うほうが作り直しを避けられます

歯の位置が確定してから被せ物を作れば、その位置に合わせて仕上げられるためです。

歯科医院で治療を受ける際は、矯正を検討していることを伝えておいてください。

Q5. ブリッジがあると矯正できませんか?

ブリッジは複数の歯が連結しているため、個別に動かすことができません

動かしたい歯が含まれる場合は、いったん外して矯正後に作り直すという方法がとられます。

作り直しの費用と期間も含めて見通しを確認しておきましょう。

Q6. インプラントがあると矯正はあきらめるべきですか?

インプラントは矯正では動かせませんが、それだけで矯正を断念する必要はありません

動かないことを利用して、他の歯を動かす固定源として活用できる場合もあります。

奥歯にあり前歯を動かしたい場合は、部分矯正で対応できることもあります。

まとめ

差し歯は自分の歯根が残っている状態のため、マウスピース矯正で歯根ごと動かすことができます

動かせるかどうかは素材ではなく歯根の有無で決まり、インプラントは骨と結合しているため動かせません。

差し歯の表面は天然歯と素材が異なるため、アタッチメントの接着に工夫が必要になる場合があります。

前歯の差し歯は矯正後に色や形が合わなくなり、作り直すケースが多いとされています。

作り直しの費用は矯正費用に含まれないのが一般的なため、総額の見通しを契約前に確認してください。

これから差し歯を作る予定があるなら、矯正を先に進めるほうが二重の支出を避けられます。

歯根や周囲の組織の状態によって進め方は変わるため、まずは検査を受けて自分のケースを確認してみましょう。

参考文献

[1] 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html

[2] 厚生労働省「保険診療の理解のために【歯科】」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/index.html

[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周病とは」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-03-001.html

[4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「むし歯の特徴・原因・進行」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-002.html

[5] 独立行政法人国民生活センター「医療・美容医療」

https://www.kokusen.go.jp/t_box/t_box-faq/g-1.html

免責事項

※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療アドバイスではありません。

※治療の可否や進め方については必ず歯科医師にご相談ください。

※効果の現れ方や治療期間には個人差がございます。

※対応できる範囲や費用は医療機関により異なります。